やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 高齢社会が急速に進んでいる現在,少子化は大きな社会問題となっています.そのようななかで助産学実習をする学生は,家族の出産という大変貴重なライフイベントの一場面に立ち会っています.そこでは臨床助産師の多大なる指導・助言が必須であり,分娩期の援助をする一事例の助産過程をていねいに進めていくことが求められます.
 本書の初版を2015年に刊行してから約8年が経過し,その間さまざまなガイドラインが発刊・改訂され,エビデンスに基づく助産実践が定着してきています.助産学実習では正常分娩の介助が原則ですが,正常に経過していても,分娩進行の過程で正常から逸脱する事例もあります.また,高年妊娠や無痛分娩の増加に伴い,助産学生がハイリスク産婦や胎児・新生児の援助をする機会もあることでしょう.このような産科医療,実習現場の変化に合わせて本書を改訂し,第2版を発刊することになりました.
 本書の特徴は,「事例のアセスメントに必要な知識の確認」⇒「アセスメント」⇒「助産診断(または看護診断)」⇒「助産計画(または看護計画)の立案」の4段階で構成し,助産過程の思考プロセスに沿って事例を展開していることにあります.この基本構成は第2版でも踏襲し,知識の確認やアセスメントはさまざまなガイドラインの科学的根拠に準拠しています.また,本書は姉妹編である『母性看護実習プレブック 第2版』とともに,より詳細な情報からアセスメントとケア計画を“自己学習できるワークブック”として位置づけています.
 第2版での改訂点の一つは,初版では別立てとしていた「産婦」と「新生児」のアセスメントやケアを,一連の流れとして学べるよう統合し,理解しやすくしたことです.「I.産婦・新生児のアセスメントとケア―基本編」では,初産婦の事例,経産婦の事例,生後24時間までの新生児の事例を,「II.正常分娩から逸脱した産婦・新生児のアセスメントとケア」では,予定帝王切開,分娩誘発,疲労性微弱陣痛による促進分娩,回旋異常による遷延分娩,分娩停止による緊急帝王切開分娩,胎児機能不全による吸引分娩の事例を提示しています.また,「III.ハイリスク産婦・新生児のアセスメントとケア」では,妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,早産に加えて,新たに「無痛分娩」の事例を収載し,より臨床に即した助産過程を学べるようにしました.
 助産学生は,実習前あるいは実習中に臨床で必要な知識とアセスメント能力を養うために,本書を活用しながら助産過程の基本的な展開について学んでもらえばと考えます.臨床助産師にとっては助産過程の基本を学びなおす良い機会になるでしょうし,助産学生の指導・助言に役立てていただければ幸いです.
 本書を通して,事例のアセスメントに必要な知識の確認・整理,アセスメントポイントの理解,事例の個別的なケアにつながる助産診断(または看護診断),助産計画(または看護計画)への理解を深めていただくことを期待しています.
 最後になりましたが,第2版の企画から出版に至るまで長期間にわたり根気強く支援してくださり,いつも的確なご助言をいただきました編集部の皆様に心より感謝申し上げます.
 2023年 秋
 編者
 はじめに
 本書の特徴と使い方
I 産婦・新生児のアセスメントとケア―基本編
 1.初産婦の分娩期(町浦美智子)
  1)分娩第1期 電話連絡時
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  2)分娩第1期 入院時
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  3)分娩第1期 極期〜分娩第2期
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  4)分娩第3期
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  5)分娩第4期
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  6)分娩2時間後〜初回歩行まで
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
 2.経産婦の分娩期(町浦美智子)
  1)分娩第1期 電話連絡時
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  2)分娩第1期 入院時
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  3)入院1時間後
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  4)分娩室入室後〜分娩まで
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過
 3.生後24時間までの新生児( 知恵)
  1)出生直後〜2時間後
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   4 看護計画の立案(目標と具体策)
  2)生後6時間後
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   4 看護計画の立案(目標と具体策)
  3)生後12〜24時間後
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   4 看護計画の立案(目標と具体策)
II 正常分娩から逸脱した産婦・新生児のアセスメントとケア
 1.予定帝王切開を受ける産婦・新生児( 知恵)
  1)産婦
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  2)新生児
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   4 看護計画の立案(目標と具体策)
 2.分娩誘発を行う産婦(山田加奈子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過
 3.疲労性微弱陣痛により促進分娩を行う産婦(佐々木くみ子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過
 4.回旋異常(後方後頭位)により遷延分娩となった産婦(佐々木くみ子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過
 5.分娩停止により緊急帝王切開分娩となった産婦(佐々木くみ子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過
 6.分娩第2期の胎児機能不全により吸引分娩となった産婦(佐々木くみ子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過
III ハイリスク産婦・新生児のアセスメントとケア
 1.妊娠高血圧症候群のある産婦(山田加奈子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
 2.妊娠糖尿病のある産婦・新生児(山田加奈子)
  1)産婦
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  2)新生児
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   4 看護計画の立案(目標と具体策)
 3.早産(妊娠32〜36週)となる産婦・新生児(古山美穂)
  1)産婦
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
  2)新生児
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の健康課題の導き方と健康課題の決定
   4 看護計画の立案(目標と具体策)
 4.無痛分娩を行う産婦(宇田川直子)
   1 アセスメントに必要な知識
   2 事例の情報整理と情報の分析・解釈・統合(アセスメント)
   3 事例の助産診断の導き方と助産診断の決定
   4 助産計画の立案(目標と具体策)
   5 その後の経過

 索引