やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第7版改訂にあたって
 2017年1月に本書の第6版を上梓しました.今回の改訂は,2019(令和元)年12月に「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が公表されたことによる内容の見直しが中心となります.加えて,本書は初版発行(1998年)からすでに22年が経過しており,新しく加わった著者とともに,本書が“応用栄養学の実習書である”という初版で整備したオリジナリティの内容等の見直しを行いました.
 2002(平成14)年に改正施行された栄養士法の趣旨を踏まえて,管理栄養士・栄養士養成カリキュラムが実施されました.そのような中で,少子・高齢化など社会状況の変化や,多様化・高度化する国民のニーズに対応できる管理栄養士・栄養士の養成が大きな課題となり,2017(平成29)年に厚生労働省は「管理栄養士・栄養士養成のための栄養学教育モデル・コア・カリキュラム」の検討を日本栄養改善学会に委託しました.本書では,その検討の結果において示された「ライフステージと栄養管理の実践」をもとに,章立ての検討を行いました.
 第1章 栄養学実習の基本理念 第2章 献立作成の基礎知識
 第3章 妊娠期,授乳期の栄養 第4章 新生児期,乳児期の栄養
 第5章 幼児期,学童期,思春期の栄養 第6章 成人期,更年期の栄養
 第7章 高齢期の栄養 第8章 スポーツ栄養
 第9章 災害時の栄養(現代的な課題として取り上げました)
 今回公表された「食事摂取基準(2020年版)」の策定の方向性において,従来の「健康日本21(第二次)」の推進方策に加えて“国民の栄養評価・栄養管理の標準化と質の向上”のために管理栄養士等の有効活用が示されています.
 国がめざす国民の“健康づくり“や“生活習慣病の発症予防・重症化予防”には毎日の食生活が基本になることはいうまでもありません.これらの背景を踏まえて策定された食事摂取基準の正しい理解と運用を基本に,関連教科で学んだ知識や技術をいかしつつ,ライフステージごとに“おいしい食事”が提供できる管理栄養士・栄養士をめざしていただくよう,引き続き本書の活用を願っています.
 今回の改訂にあたり,これまでご執筆いただいた先生方に御礼を申し上げますとともに今後ともご指導賜りますようにお願い申し上げます.また,改訂にあたり多大なご尽力をいただいた医歯薬出版株式会社編集部の皆様に厚く御礼を申し上げます.
 2020年12月
 著者一同


発刊にあたって
 日本人の平均寿命は世界一になっていますが,果たして健康な生活を送っている人が増加しているのでしょうか.いまや生活習慣病の時代を迎え,さらに高齢化に伴う心身機能の低下への対応や,小児の食環境の整備,充実などへの対応をめぐって,私たちは健康の尊さについて今一度真剣に見直していかなければなりません.生活習慣病は,加齢によって起こるいろいろな病気や前病状態のこと,すなわち高血圧,高脂血症,糖尿病,痛風,骨粗鬆症,更年期障害をはじめ心臓病,脳血管疾患,さらに癌や老人性認知症にいたるまで多くのものを含んでいます.その原因は特定できないものが多いのですが,若いころからの生活習慣(ライフスタイル)の歪みが問題となっています.日常生活における代表的な七つの健康習慣(Breslowら)は,標準体重の維持,適度な運動,非喫煙,適量の飲酒,朝食の習慣,間食の制限,十分な睡眠です.こうしてみても,健康づくりの主軸は,栄養と運動,休養であることがわかります.ここでは,特に栄養(食生活)について,最近の知見によりながら生活習慣病予防ひいては,健康づくりの立場から考えていきます.
 私たちの食生活は,長い歴史をもつ“米“を主食として,魚,大豆,野菜などを組み合わせた伝統的な食パターンに,肉,牛乳・乳製品,油脂,果実など多様な食材が豊富に加わって栄養摂取の面からも大きく変化してきました.この変化が生活習慣病の増加と無関係であるとはいえません.栄養学実習においては,このような歴史的な推移を踏まえて,栄養学総論・各論との連携のなかで,“健康づくり”に視点をおいて,それぞれのライフサイクルごとに,献立作成の実習・演習を展開していきます.人間の栄養状態を評価,判定することをnutritional assessmentとよんでいますが,あくまでも,個人の栄養状態に応じた個人対応が基本になります.栄養素等摂取量は,多すぎても少なくてもよくありません.質においても極端な片寄りは修正が必要です.さらに,一日のなかの食事量の配分も大切です.成人における好ましい食事の比率は,朝食30%,昼食30%,夕食40% などが示されていますが,子どもにおいてはさらに間食も栄養学的に重要な意義があります.高齢者においても,十分な配慮が求められます.しかも,季節感を取り入れた心やさしいおいしい料理が提供されなければ,どんなに高邁な理論構築があっても何の役にも立ちません.関連教科である“食品学“や“調理学”さらに“調理学実習”などとの連携学習が重要になってきます.
 栄養学実習では,栄養所要量の正しい理解と運用,食品構成の作り方や使い方などはもとより,食膳の構成を基本として献立作成理論からの展開をしていきます.栄養士を目指す学生のほかに,すでに現場で働いている多くの栄養士,管理栄養士の方々に使っていただき,ご意見をいただければ幸甚に存じます.
 本書を作成するにあたりご支援いただきました医歯薬出版編集部に心より御礼申しあげます.
 1998年9月
 著者一同
 第7版改訂にあたって
 発刊にあたって
第1章 栄養学実習の基本理念
 (城田知子)
 1.食事と健康のかかわり
 2.食事の食文化的かかわり
 3.食事の基本パターン
第2章 献立作成の基礎知識
 (城田知子)
 1.健康な人の食品構成
 2.献立作成の手順
第3章 妊娠期,授乳期の栄養
 (森脇千夏 城田知子)
 1.妊娠期の栄養
   妊娠期栄養の特性
   妊娠期の疾病と胎児への影響
  献立例
   妊娠初期の食事:つわり予防(目標エネルギー2,000kcal)
   妊娠後期の食事:妊娠高血圧症候群予防(目標エネルギー2,450kcal)
 2.授乳期の栄養
   授乳期栄養の特性
  献立例
   授乳婦の食事:目標エネルギー2,350kcal
第4章 新生児期,乳児期の栄養
 (森脇千夏 城田知子)
 1.乳児期の栄養
   乳児期栄養の特性
   乳児期の区分
   乳児期の食事摂取基準
   乳児期栄養の実際
 2.離乳期の栄養
   離乳の定義
   離乳の必要性と役割
   離乳の開始
   離乳の完了
   離乳食の進め方の目安
  献立例
   離乳期の食事:離乳食中期7〜8か月頃
第5章 幼児期,学童期,思春期の栄養
 (林 辰美 武部幸世)
 1.幼児期の栄養
   幼児期栄養の特性
   幼児期の食事摂取基準
   食生活上の留意点
   保育所給食
  献立例
   幼児期の食事:3〜5歳児
   幼児期の食事:間食
   保育所給食:1〜2歳時
   保育所給食:3〜5歳児
 2.学童期の栄養
   学童期栄養の特性
   学童期の食事摂取基準
   食生活上の留意点
   献立作成上の留意点
   小児生活習慣病の予防と食事
   学校給食
  献立例
   小児期の生活習慣病予防の食事
   学校給食:高学年10〜11歳
   学童期の食事:貧血予防(10〜11歳,女子,身体活動レベルII)
 3.思春期の栄養
   思春期栄養の特性
   思春期の食事摂取基準
   肥満予防の食事
   献立作成上の留意点
   鉄欠乏性貧血予防の食事
   献立作成上の留意点
   やせ予防の食事
   献立作成上の留意点
   起立性調節障害の予防に備えての日常の食事
  献立例
   思春期の食事:生活習慣病予防(10〜15歳,男性,身体活動レベルII)
   思春期の食事:貧血予防(12〜14歳,女性,身体活動レベルII)
第6章 成人期,更年期の栄養
 (林 辰美 改元 香)
 1.成人期の栄養
   成人期栄養の特性
   成人期の食事摂取基準および食品構成
   生活習慣病予防の食事
   肥満とメタボリックシンドローム予防の食事
   献立作成上の留意点
   インスリン抵抗性と糖尿病予防の食事
   献立作成上の留意点
   高血圧症予防の食事
   献立作成上の留意点
   脂質異常症予防の食事
   献立作成上の留意点
   脳血管疾患の予防の食事
   虚血性心疾患の予防の食事
   献立作成上の留意点(脳血管疾患,虚血性心疾患)
  献立例
   成人期の食事:肥満予防(18〜29歳,男性,身体活動レベルII)
   成人期の食事:高血圧予防(30〜49歳,男性,身体活動レベルII)
   成人期の食事:脂質異常症予防(50〜64歳,女性,身体活動レベルII)
 2.更年期の栄養
   更年期栄養の特性
   更年期の食事摂取基準および食品構成
   献立作成上の留意点
   骨粗鬆症予防の食事
   献立作成上の留意点
  献立例
   更年期の食事:骨粗鬆症予防(50〜64歳,女性,身体活動レベルI)
第7章 高齢期の栄養
 (大石明子)
 1.健康な高齢者の食事
   高齢期栄養の特性
   高齢期の食事摂取基準と食品構成
   献立作成上の留意点
 2.低栄養予防
   低栄養状態の要因
   低栄養リスクのスクリーニング
   高齢者の「食べること」の意義
   低栄養を予防するために
 3.咀しゃく,嚥下機能が低下している場合の食事
   嚥下機能が低下している場合
 4.訪問栄養食事指導
 5.公的食事サービス
  献立例
   高齢期の食事:保健食
   高齢期の食事:嚥下調整食(コード4)
第8章 スポーツ栄養
 (内田和宏)
   スポーツ栄養の特性
   スポーツ栄養の基本的考え方
   給与栄養目標量
   食事計画
  献立例
   スポーツ選手の食事
第9章 災害時の栄養
 (林 辰美 改元 香)
 1.災害発生時に配慮を必要とする人たちの栄養問題とその備え
   乳幼児
   妊婦・授乳婦
   高齢者
   慢性疾患および食物アレルギー
 2.災害時の備えと栄養支援
 3.災害時の栄養・食生活の実際
   フェイズ0〜1(災害発生から72時間以内)
   フェイズ2〜3(災害発生4日目〜1か月)
 4.献立作成の留意点
  献立例
   災害時の食事

 参考資料1─日本人の食事摂取基準(2020年版)
 参考資料2─幼児食の基本と具体的な幼児食
 参考資料3─食生活・休養・睡眠・身体活動指針(厚生労働省)