やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 このたび,雑誌『臨床栄養』の別冊として発刊された本書が,書籍化される運びとなり,たいへんうれしく思っています.
 摂食嚥下障害の栄養食事指導の知識は,管理栄養士さんである読者にとって,下記のようなときに役に立ちます.
 ・摂食嚥下障害でお食事に制限のある方の在宅療養(準備)の強力な支援
 ・摂食嚥下障害が軽症,あるいは自覚しておられない方の,悪化予防・低栄養予防
 ・ほかの疾患や病態での栄養食事指導の場合であっても,嚥下障害が併存している場合
 ・管理栄養士さんが,個別指導以外の,市民啓発活動をする場合
 ・入所・入院中で嚥下調整食を提供する際の知識,利用者からの要望に応える際の参考に
 また,管理栄養士さん以外の,嚥下障害の方に接する可能性のあるすべての職種の人にとっても,本書の内容は役に立ちます.
 本書は,25名以上の,第一線のベテラン管理栄養士さんの知識と知恵を集めたものです.編集作業で読ませていただいているときから,すぐに使える内容が豊富で,臨床に直結して役に立ちました.
 摂食嚥下障害の栄養食事指導は,単に食形態の指導に留まらず,その食形態を実際にどうやっておいしく実現するかの,相手に合わせた内容,そして,栄養面での指導,QOL面での配慮,さまざまな要素を含みます.そのどれをとっても奥が深く,そして適切な指導は,患者さんの医療的な安全と回復に寄与し,ご本人ご家族の生活を支え,喜びを届けることになる,とても重要なお手伝いです.食事は個別性の高い生活習慣であり,個々に合わせた指導がたいへん重要であるため,知識や表現の引き出しは多いにこしたことはありません.
 ぜひ,日本中の多くの管理栄養士さんに,この書籍を利用してよりよい栄養食事指導を行い,摂食嚥下障害の患者さんと家族の支援をしていただきたいと思います.
 2019年9月 藤谷順子
 序文(藤谷順子)
1 栄養食事指導の進め方―情報収集のポイント
 (江頭文江)
2 コード別 摂食嚥下障害の栄養食事指導
 嚥下訓練食品 0j 0t(栢下 淳)
 嚥下調整食 1j −病院(工藤美香)
  レシピ−ゼラチンゼリーの作り方(例:濃厚流動食ゼリー)
  レシピ−市販のゲル化剤を用いたゼリーの作り方(例:鮭の酒蒸しゼリー)
  Q:ゼリー状でも,ゼリー飲料(いわゆるドリンクゼリー)は,コード1jとなるのでしょうか?
 嚥下調整食 1j −在宅(工藤美香)
  レシピ−なすのみそ田楽風
  レシピ−あんみつ
  レシピ−経口補水ゼリー
  Q:お薬はどうやって飲めばいいでしょうか?
 嚥下調整食 2-1 −病院(房 晴美)
  レシピ−寿食の作り方(ミキサー粥・鯛の煮付け・里いものそぼろ煮(添え))
 (にんじんの甘煮(添え)・フルーチェ)
  Q:嚥下調整食は手間がかかりそうで作れるか不安です
 嚥下調整食 2-1 −在宅(尾関麻衣子)
  コラム:訪問エリアの“介護食品マップ”をつくろう
  レシピ−だし巻き卵
  レシピ−鶏のから揚げ
  Q1:患者や家族が胃瘻ではなく経口摂取を強く望んでいる場合,どのように対応したらよいでしょうか?
  Q2:「ミキサー食は噛まなくてもいいから,脳に悪いのでは?」,「ミキサー食を食べていると噛む力が衰えてしまうのでは?」と介護者から聞かれたら,どのように答えたらよいでしょうか?
  Q3:「ミキサー食はドロドロで見た目が悪いので,食欲がわかないのではないか?」という質問に対しては,どのように答えたらよいでしょうか?
  Q4:「ミキサー食はQOLの低下につながるのではないか?」という質問に対しては,どのように答えたらよいでしょうか?
 嚥下調整食 2-2 −病院(小澤惠子)
  Q1:家族が障害の起こった現実を認めてくださらない場合,どのように対応したらよいでしょうか?
  Q2:老老介護のケースで,「とろみを付ける」と言葉で説明しても正確に理解していただけない場合,どのように説明すればよいでしょうか?
 嚥下調整食 2-2 −在宅(水島美保)
  レシピ−スベラカーゼ粥
  レシピ−パン粥
  レシピ−揚げ物のミキサーパテ風
  レシピ−とろみあんかけ茶碗蒸し
  Q1:嚥下機能と食形態が不一致の場合は,どのように対応したらよいでしょうか?
  Q2:本人が頑固な場合で,ミキサー食を見て「こんな鳥のえさのような物は食べたくない」と言われた場合,どのように対応したらよいでしょうか?
  Q3:家族から食形態を上げたいと言われた場合,どのように対応したらよいでしょうか?
  Q4:在宅訪問栄養食事指導の場で,キッチンスケール,計量カップ,計量スプーンは必須ですか?
 嚥下調整食 3 −病院(安原みずほ)
  レシピ−はんぺんと鶏肉のふわふわ蒸し しょうがあんかけ
  レシピ−魚と長いものふわふわ蒸し わさびあんかけ
  Q:もともと甘党です.市販のお菓子を食べてもよいですか?
 嚥下調整食 3 −在宅(安田淑子)
  レシピ−カフェオレくずもち
  Q1:本人が頑固で,家族と同じものを食べたいという場合はどうしたらよいでしょうか?
  Q2:形のあるもの(常食)が食べたいという場合はどうしたらよいでしょうか?
 嚥下調整食 4 −病院(安原みずほ)
  Q:お餅を食べるにはどうすればよいですか?
 嚥下調整食 4 −在宅(江頭文江)
  Q1:もともとお粥は嫌いだという場合,鮭もほぐせば食べられるし,ご飯にしたらダメでしょうか?
  Q2:いも類やかぼちゃなどの野菜はよく食べるが,葉物がなかなか食べられない場合,何かよい方法はありますか?
  Q3:ひじきや切干しだいこんなどの乾物は,どうやって調理したらよいですか?
  Q4:普段はお粥を食べている場合,誕生祝いの席で,お寿司を出しても食べられるでしょうか?
  Q5:噛む時間が長くて,食事が疲れてしまっているように見える場合,何か工夫はありますか?
3 とろみ調整食品の使い方の実際
 嚥下調整食学会分類ととろみ調整食品の種類(小城明子)
  コラム:とろみ調整食品 試飲・試食のススメ
  Q1:飲み物にとろみを付けるのがどうしても嫌だという患者には,どのように対応すればよいでしょうか?
  Q2:とろみがべたついてのどに残るような気がするという患者には,どのように対応すればよいでしょうか?
 とろみ液の作り方(大塚純子)
  Q1:とろみは濃いほうがよいでしょうか?
  Q2:とろみを付けるときにダマができてしまいます.
  Q3:ダマができたらどうすればよいでしょうか?
  Q4:とろみ調整食品を買いたがらない患者への指導はどうすればよいでしょうか?
4 摂食嚥下障害と胃瘻栄養
 (手塚波子・小川滋彦)
  コラム:在宅訪問管理栄養士とは?
  コラム:胃瘻についての「2017年問題」とは?
  コラム:HENとHPNとは?
  Q1:近い将来,経口からの栄養管理が見込まれないと判断したとき,強制栄養の必要性を栄養士として本人・家族にいつのタイミングでどのように話しますか?
  Q2:「胃瘻」ではなく「点滴」を希望する本人・家族には,どのように説明しますか?
  Q3:在宅経腸栄養に伴う消化器合併症(下痢,逆流・嘔吐,悪心・腹部膨満感)の対策はどのようにしていますか?
  Q4:在宅経腸栄養に伴う代謝性合併症(脱水,高血糖,電解質異常)の対策はどのようにしていますか?
  Q5:在宅経腸栄養に伴う機械的合併症(チューブ閉塞,上半身の姿勢・瘻孔からの漏れ)の対策はどのようにしていますか?
5 合併症がある場合の対応
 肥満(藤井文子)
 糖尿病(原 純也・松野さおり)
  Q1:偏食でおかずを出しても食べない場合,お粥だけだとどうしても低血糖になってしまいます.何かよい方法はありますか?
  Q2:食事内容はそれほどバランスが崩れていないと思いますが,食後血糖値が高くなります.何かよい工夫はありますか?
  Q3:食欲がないときの糖尿病のコントロールと摂食嚥下障害用の食事の工夫を教えてください(シックデイ対策).
 高血圧(中村芽以子・古田 雅・下田正人・海老原 覚)
  Q:とうがらしやこしょうなどの香辛料が嚥下障害によいといわれていますが,どうでしょうか?
 脂質異常症(徳永佐枝子)
  レシピ−ゼラチン粥
  レシピ−やわらか炊き込みご飯
  レシピ−やわらかみそカツ
  レシピ−豆乳豆腐
  レシピ−ほうれんそうの白和え
  Q1:お粥だけではまずいという患者の場合,のり佃煮や梅干しなどは1日どのくらい食べてもよいですか?
  Q2:ゼラチン粥はたくさん炊いて冷凍保存することもできますか?
  Q3:脂質異常症でも油脂をとって大丈夫ですか?
  Q4:脂質異常症の場合,卵は1日何個まで食べられますか? 制限したほうがよいのでしょうか?
 CKD(慢性腎臓病)(川村順子)
  Q1:料理をミキサーにかけるだけではダメですか?
  Q2:たんぱく制限を守っているのに,腎機能の検査データが悪くなった場合,どのように考えればよいでしょうか?
  Q3:カリウムが高いので,カリウム処理のため,必ず熱を加えているのに,カリウムの検査データが改善されないのはどうしてですか?
 COPD(慢性閉塞性肺疾患)(田中弥生)
  Q1:腹部膨満感が強い場合,どのように対応したらよいでしょうか?
  Q2:早期膨満感がある場合,温かい食事より冷えた食事のほうがよいのはなぜですか?
  Q3:「経腸栄養剤の味が甘いので飽きてきた」という患者には,どのように対応したらよいでしょうか?
 認知症(前田佳予子・井戸由美子)
 低栄養(西村一弘)
  Q1:低栄養の方への初回訪問栄養食事指導で高エネルギー食品をお勧めしたのですが,2回目の訪問時に確認すると,まったく買っていませんでした.どのように対応したらよいでしょうか?
  Q2:お酒ばかり飲んで食事をとらない患者には,どう指導したらよいでしょうか?
  Q3:スーパーマーケットやコンビニエンスストアで買える栄養価が高くて安価な商品について教えてください
  Q4:腎臓病用の高エネルギーのゼリーなどを,低栄養の方に勧めてもよいでしょうか?
  Q5:6回食を勧めてもなかなか食べてくれない患者がいます.まわりから「食べろ」と言われるとよけい本人がかたくなになり,家族も「せっかく用意したのに食べてくれない」といらだっています.どう助言したらよいでしょうか?
 脱水(桐谷裕美子・波多野 桃)
6 摂食嚥下障害評価表の読み方
 (大森まいこ)
7 ミールラウンド―食事場面のチェックポイント
 ミールラウンドにおける評価ポイント(高橋賢晃・菊谷 武)
 病院での食事を診る(下田 靜)
 施設での食事を診る(増田邦子)
 在宅での食事を診る(米山久美子)
 デイサービスでの食事を診る(栗原明子)
8 事例紹介
 自宅退院後の訪問栄養食事指導の介入により経口摂取への強い希望に対応した事例(江頭文江)
 嚥下内視鏡検査の情報を共有して食事形態の適正化へつなげた事例(水島美保)
 早期の脱水改善により全身状態悪化を免れた事例(桐谷裕美子・波多野 桃)
9 摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士認定制度―概要と取得の流れ
 (小城明子)
10 えん下困難者のための特別用途食品:最新情報
 (宇野 薫)
11 スマイルケア食:最新情報
 (東野昭浩)
もっと知りたい! 仲間を見つけて
 (河野公子)

 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013(全文掲載)
 索引