第6版改訂にあたって
本書の上梓(1998年)から,はや18年が経過しました.その間に,関連の情報や資料等の更新に基づき,これまで5度の改訂を行ってまいりました.
本書は,2000(平成12)年の栄養士改正により,管理栄養士・栄養士養成施設の教科課程の改正で示された教科目の目的を踏まえて内容を構成しています.
2015(平成27)年の第5版では,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の公表を受けて内容の見直しに取り組みましたが,今回の改訂では,2015年末の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」の公表により,全献立の栄養価の見直しを行い,さらに「健康日本21(第2次)」や「食育推進基本計画(第3次)」などの新しい情報等を参照して見直しをいたしました.2006(平成18)年,食育基本法制定後に公表された「食育推進基本計画」の第1次からすでに10年が経過しました.国民運動として展開されてきたこの運動も一定の成果をあげながら,さらに新たな課題に直面しています.今回の第3次計画では,食をめぐる状況の変化として,“若い世代の食育の実践に関する改善,充実の必要性”“世帯構造の変化”“貧困の状況にある子どもに対する支援の推進”“新たな成長戦略における「健康寿命の延伸」のテーマ化”“食品ロスの削減を目指した国民運動の展開”“「和食」のユネスコ無形文化遺産への登録決定”“市町村の食育推進計画作成に関する課題”など7つの項目をあげています.これに対応すべく,取り組みの重点課題は,従来の課題に加えて「多様な暮らしに対応した食育の推進」「食の環境や環境を意識した食育の推進」「食文化の継承に向けた食育の推進」等新たに示されました.本教科では,このような食の変化をしっかりと捉えて,献立作成の実習・演習などを展開していきます.
国が目指す国民の“健康づくり”や“生活習慣病の発症予防・重症予防”には毎日の食生活が基本になることは言うまでもありません.これらの背景を踏まえて策定された食事摂取基準の正しい理解と運用を基本に,関連教科で学んだ知識や技術を生かしつつ,ライフステージごとに“おいしい食事”が提供できる管理栄養士・栄養士を目指していただくよう,引き続き本書の活用を願っています.
今回の改訂にあたり多大なご尽力をいただきました医歯薬出版株式会社編集部の皆様方に厚く御礼を申し上げます.
2017年3月
著者一同
発刊にあたって
日本人の平均寿命は世界一になっていますが,果たして健康な生活を送っている人が増加しているのでしょうか.いまや生活習慣病の時代を迎え,さらに高齢化に伴う心身機能の低下への対応や,小児の食環境の整備,充実などへの対応をめぐって,私たちは健康の尊さについて今一度真剣に見直していかなければなりません.生活習慣病は,加齢によって起こるいろいろな病気や前病状態のこと,すなわち高血圧,高脂血症,糖尿病,痛風,骨粗鬆症,更年期障害をはじめ心臓病,脳血管疾患,さらに癌や老人性認知症にいたるまで多くのものを含んでいます.その原因は特定できないものが多いのですが,若いころからの生活習慣(ライフスタイル)の歪みが問題となっています.日常生活における代表的な七つの健康習慣(Breslowら)は,標準体重の維持,適度な運動,非喫煙,適量の飲酒,朝食の習慣,間食の制限,十分な睡眠です.こうしてみても,健康づくりの主軸は,栄養と運動,休養であることがわかります.ここでは,特に栄養(食生活)について,最近の知見によりながら生活習慣病予防ひいては,健康づくりの立場から考えていきます.
私たちの食生活は,長い歴史をもつ“米”を主食として,魚,大豆,野菜などを組み合わせた伝統的な食パターンに,肉,牛乳・乳製品,油脂,果実など多様な食材が豊富に加わって栄養摂取の面からも大きく変化してきました.この変化が生活習慣病の増加と無関係であるとはいえません.栄養学実習においては,このような歴史的な推移を踏まえて,栄養学総論・各論との連携のなかで,“健康づくり”に視点をおいて,それぞれのライフサイクルごとに,献立作成の実習・演習を展開していきます.人間の栄養状態を評価,判定することをnutritional assessmentとよんでいますが,あくまでも,個人の栄養状態に応じた個人対応が基本になります.栄養素等摂取量は,多すぎても少なくてもよくありません.質においても極端な片寄りは修正が必要です.さらに,一日のなかの食事量の配分も大切です.成人における好ましい食事の比率は,朝食30%,昼食30%,夕食40%などが示されていますが,子どもにおいてはさらに間食も栄養学的に重要な意義があります.高齢者においても,十分な配慮が求められます.しかも,季節感を取り入れた心やさしいおいしい料理が提供されなければ,どんなに高邁な理論構築があっても何の役にも立ちません.関連教科である“食品学”や“調理学”さらに“調理学実習”などとの連携学習が重要になってきます.
栄養学実習では,栄養所要量の正しい理解と運用,食品構成の作り方や使い方などはもとより,食膳の構成を基本として献立作成理論からの展開をしていきます.栄養士を目指す学生のほかに,すでに現場で働いている多くの栄養士,管理栄養士の方々に使っていただき,ご意見をいただければ幸甚に存じます.
本書を作成するにあたりご支援いただきました医歯薬出版編集部に心より御礼申しあげます.
1998年9月
著者一同
本書の上梓(1998年)から,はや18年が経過しました.その間に,関連の情報や資料等の更新に基づき,これまで5度の改訂を行ってまいりました.
本書は,2000(平成12)年の栄養士改正により,管理栄養士・栄養士養成施設の教科課程の改正で示された教科目の目的を踏まえて内容を構成しています.
2015(平成27)年の第5版では,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の公表を受けて内容の見直しに取り組みましたが,今回の改訂では,2015年末の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」の公表により,全献立の栄養価の見直しを行い,さらに「健康日本21(第2次)」や「食育推進基本計画(第3次)」などの新しい情報等を参照して見直しをいたしました.2006(平成18)年,食育基本法制定後に公表された「食育推進基本計画」の第1次からすでに10年が経過しました.国民運動として展開されてきたこの運動も一定の成果をあげながら,さらに新たな課題に直面しています.今回の第3次計画では,食をめぐる状況の変化として,“若い世代の食育の実践に関する改善,充実の必要性”“世帯構造の変化”“貧困の状況にある子どもに対する支援の推進”“新たな成長戦略における「健康寿命の延伸」のテーマ化”“食品ロスの削減を目指した国民運動の展開”“「和食」のユネスコ無形文化遺産への登録決定”“市町村の食育推進計画作成に関する課題”など7つの項目をあげています.これに対応すべく,取り組みの重点課題は,従来の課題に加えて「多様な暮らしに対応した食育の推進」「食の環境や環境を意識した食育の推進」「食文化の継承に向けた食育の推進」等新たに示されました.本教科では,このような食の変化をしっかりと捉えて,献立作成の実習・演習などを展開していきます.
国が目指す国民の“健康づくり”や“生活習慣病の発症予防・重症予防”には毎日の食生活が基本になることは言うまでもありません.これらの背景を踏まえて策定された食事摂取基準の正しい理解と運用を基本に,関連教科で学んだ知識や技術を生かしつつ,ライフステージごとに“おいしい食事”が提供できる管理栄養士・栄養士を目指していただくよう,引き続き本書の活用を願っています.
今回の改訂にあたり多大なご尽力をいただきました医歯薬出版株式会社編集部の皆様方に厚く御礼を申し上げます.
2017年3月
著者一同
発刊にあたって
日本人の平均寿命は世界一になっていますが,果たして健康な生活を送っている人が増加しているのでしょうか.いまや生活習慣病の時代を迎え,さらに高齢化に伴う心身機能の低下への対応や,小児の食環境の整備,充実などへの対応をめぐって,私たちは健康の尊さについて今一度真剣に見直していかなければなりません.生活習慣病は,加齢によって起こるいろいろな病気や前病状態のこと,すなわち高血圧,高脂血症,糖尿病,痛風,骨粗鬆症,更年期障害をはじめ心臓病,脳血管疾患,さらに癌や老人性認知症にいたるまで多くのものを含んでいます.その原因は特定できないものが多いのですが,若いころからの生活習慣(ライフスタイル)の歪みが問題となっています.日常生活における代表的な七つの健康習慣(Breslowら)は,標準体重の維持,適度な運動,非喫煙,適量の飲酒,朝食の習慣,間食の制限,十分な睡眠です.こうしてみても,健康づくりの主軸は,栄養と運動,休養であることがわかります.ここでは,特に栄養(食生活)について,最近の知見によりながら生活習慣病予防ひいては,健康づくりの立場から考えていきます.
私たちの食生活は,長い歴史をもつ“米”を主食として,魚,大豆,野菜などを組み合わせた伝統的な食パターンに,肉,牛乳・乳製品,油脂,果実など多様な食材が豊富に加わって栄養摂取の面からも大きく変化してきました.この変化が生活習慣病の増加と無関係であるとはいえません.栄養学実習においては,このような歴史的な推移を踏まえて,栄養学総論・各論との連携のなかで,“健康づくり”に視点をおいて,それぞれのライフサイクルごとに,献立作成の実習・演習を展開していきます.人間の栄養状態を評価,判定することをnutritional assessmentとよんでいますが,あくまでも,個人の栄養状態に応じた個人対応が基本になります.栄養素等摂取量は,多すぎても少なくてもよくありません.質においても極端な片寄りは修正が必要です.さらに,一日のなかの食事量の配分も大切です.成人における好ましい食事の比率は,朝食30%,昼食30%,夕食40%などが示されていますが,子どもにおいてはさらに間食も栄養学的に重要な意義があります.高齢者においても,十分な配慮が求められます.しかも,季節感を取り入れた心やさしいおいしい料理が提供されなければ,どんなに高邁な理論構築があっても何の役にも立ちません.関連教科である“食品学”や“調理学”さらに“調理学実習”などとの連携学習が重要になってきます.
栄養学実習では,栄養所要量の正しい理解と運用,食品構成の作り方や使い方などはもとより,食膳の構成を基本として献立作成理論からの展開をしていきます.栄養士を目指す学生のほかに,すでに現場で働いている多くの栄養士,管理栄養士の方々に使っていただき,ご意見をいただければ幸甚に存じます.
本書を作成するにあたりご支援いただきました医歯薬出版編集部に心より御礼申しあげます.
1998年9月
著者一同
第6版改訂にあたって
発刊にあたって
第1章 栄養学実習の基本理念
(城田知子)
1.食事と健康のかかわり
2.食事の食文化的かかわり
3.食事の基本パターン
第2章 献立作成の基礎知識
(城田知子 内田和宏)
1.健康な人の食品構成
2.肥満,その他の生活習慣病予防のための食品構成
3.献立作成の手順
第3章 成長期の栄養
(城田知子 森脇千夏 林 辰美)
1.乳児期の栄養
乳児期栄養の特性
乳児期の区分
乳児期の食事摂取基準
乳児期栄養の実際
2.離乳期の栄養
離乳の定義
離乳の必要性
離乳食の進め方の目安
離乳食の進め方の実際
フォローアップミルク,ベビーフード
3.幼児期の栄養
幼児期栄養の特性
幼児期の食事摂取基準
食生活上の留意点
保育所給食
4.学齢期の栄養
学齢期栄養の特性
学齢期の食事摂取基準
食生活上の留意点
献立作成上の留意点
小児生活習慣病の予防と食事
学校給食
【献立例】
幼児期の食事:3〜5歳児
幼児期の食事:間食
保育所給食:1〜2歳児
保育所給食:3〜5歳児
小児期の生活習慣病予防の食事
学校給食:高学年10〜11歳
中学・高校生の食事:肥満予防
中学・高校生の食事:貧血予防
第4章 青年期の栄養
(小川洋子)
青年期栄養の特性
貧血予防の食事
肥満予防の食事
【献立例】
青年期の食事:生活習慣病予防
青年期の食事:貧血予防
青年期の食事:肥満予防
第5章 壮年期の栄養
(小川洋子)
壮年期栄養の特性
脂質異常症予防の食事
貧血(鉄欠乏性貧血)予防の食事
メタボリックシンドローム
肥満予防の食事
高血圧予防の食事
骨粗鬆症予防の食事
【献立例】
壮年期の食事:脂質異常症予防(身体活動レベルI;50〜69歳,女性,1,650kcal)
壮年期の食事:脂質異常症予防(身体活動レベルI;30〜49歳,男性,2,250kcal)
壮年期の食事:鉄欠乏性貧血予防(身体活動レベルII;50〜69歳,男性,2,400kcal)
壮年期の食事:肥満予防(身体活動レベルII;50〜69歳,女性,1,950kcal)
壮年期の食事:肥満予防(身体活動レベルI;30〜49歳;男性,2,250kcal)
壮年期の食事:高血圧予防(身体活動レベルII;30〜49歳,女性,2,000kcal)
壮年期の食事:高血圧予防(身体活動レベルII;50〜69歳,女性,1,950kcal)
壮年期の食事:骨粗鬆症予防(身体活動レベルI;50〜69歳,女性,1,600〜1,700kcal)
第6章 高齢期の栄養
(大石明子)
1.健康な老人食
高齢期栄養の特性
高齢期の食事摂取基準と食品構成
献立作成上の留意点
2.咀しゃく困難,嚥下困難のある人の食事
嚥下困難のある場合
3.訪問栄養指導
調理のポイント
ヘルパーによる好評なアイデア料理
4.公的食事サービス
5.低栄養予防
低栄養の状態とは…(栄養状態の指標)
低栄養状態の要因
高齢者の「食べること」の意義
低栄養を予防するために
【献立例】
高齢期の食事:デイ・サービス(軟食と嚥下食)
高齢期の食事:保健食と嚥下食
第7章 妊産婦の食事(母性栄養)
(城田知子 森脇千夏)
妊娠期栄養の特性
妊婦の食事摂取基準と食品構成
妊娠前半期の食事
妊娠後半期の食事
授乳期の食事
【献立例】
妊娠前半期の食事:つわり予防(目標エネルギー2,000kcal;25単位)
妊娠後半期の食事:妊娠高血圧症候群予防(目標エネルギー2,150kcal;約27単位)
授乳婦の食事
第8章 スポーツ栄養
(内田和宏)
スポーツ栄養の特性
スポーツ栄養の基本的考え方
給与栄養目標量
食事計画
【献立例】
スポーツ選手の食事
参考資料1─日本人の食事摂取基準(2015年版)
参考資料2─食生活・休養・睡眠・身体活動指針(厚生労働省)
発刊にあたって
第1章 栄養学実習の基本理念
(城田知子)
1.食事と健康のかかわり
2.食事の食文化的かかわり
3.食事の基本パターン
第2章 献立作成の基礎知識
(城田知子 内田和宏)
1.健康な人の食品構成
2.肥満,その他の生活習慣病予防のための食品構成
3.献立作成の手順
第3章 成長期の栄養
(城田知子 森脇千夏 林 辰美)
1.乳児期の栄養
乳児期栄養の特性
乳児期の区分
乳児期の食事摂取基準
乳児期栄養の実際
2.離乳期の栄養
離乳の定義
離乳の必要性
離乳食の進め方の目安
離乳食の進め方の実際
フォローアップミルク,ベビーフード
3.幼児期の栄養
幼児期栄養の特性
幼児期の食事摂取基準
食生活上の留意点
保育所給食
4.学齢期の栄養
学齢期栄養の特性
学齢期の食事摂取基準
食生活上の留意点
献立作成上の留意点
小児生活習慣病の予防と食事
学校給食
【献立例】
幼児期の食事:3〜5歳児
幼児期の食事:間食
保育所給食:1〜2歳児
保育所給食:3〜5歳児
小児期の生活習慣病予防の食事
学校給食:高学年10〜11歳
中学・高校生の食事:肥満予防
中学・高校生の食事:貧血予防
第4章 青年期の栄養
(小川洋子)
青年期栄養の特性
貧血予防の食事
肥満予防の食事
【献立例】
青年期の食事:生活習慣病予防
青年期の食事:貧血予防
青年期の食事:肥満予防
第5章 壮年期の栄養
(小川洋子)
壮年期栄養の特性
脂質異常症予防の食事
貧血(鉄欠乏性貧血)予防の食事
メタボリックシンドローム
肥満予防の食事
高血圧予防の食事
骨粗鬆症予防の食事
【献立例】
壮年期の食事:脂質異常症予防(身体活動レベルI;50〜69歳,女性,1,650kcal)
壮年期の食事:脂質異常症予防(身体活動レベルI;30〜49歳,男性,2,250kcal)
壮年期の食事:鉄欠乏性貧血予防(身体活動レベルII;50〜69歳,男性,2,400kcal)
壮年期の食事:肥満予防(身体活動レベルII;50〜69歳,女性,1,950kcal)
壮年期の食事:肥満予防(身体活動レベルI;30〜49歳;男性,2,250kcal)
壮年期の食事:高血圧予防(身体活動レベルII;30〜49歳,女性,2,000kcal)
壮年期の食事:高血圧予防(身体活動レベルII;50〜69歳,女性,1,950kcal)
壮年期の食事:骨粗鬆症予防(身体活動レベルI;50〜69歳,女性,1,600〜1,700kcal)
第6章 高齢期の栄養
(大石明子)
1.健康な老人食
高齢期栄養の特性
高齢期の食事摂取基準と食品構成
献立作成上の留意点
2.咀しゃく困難,嚥下困難のある人の食事
嚥下困難のある場合
3.訪問栄養指導
調理のポイント
ヘルパーによる好評なアイデア料理
4.公的食事サービス
5.低栄養予防
低栄養の状態とは…(栄養状態の指標)
低栄養状態の要因
高齢者の「食べること」の意義
低栄養を予防するために
【献立例】
高齢期の食事:デイ・サービス(軟食と嚥下食)
高齢期の食事:保健食と嚥下食
第7章 妊産婦の食事(母性栄養)
(城田知子 森脇千夏)
妊娠期栄養の特性
妊婦の食事摂取基準と食品構成
妊娠前半期の食事
妊娠後半期の食事
授乳期の食事
【献立例】
妊娠前半期の食事:つわり予防(目標エネルギー2,000kcal;25単位)
妊娠後半期の食事:妊娠高血圧症候群予防(目標エネルギー2,150kcal;約27単位)
授乳婦の食事
第8章 スポーツ栄養
(内田和宏)
スポーツ栄養の特性
スポーツ栄養の基本的考え方
給与栄養目標量
食事計画
【献立例】
スポーツ選手の食事
参考資料1─日本人の食事摂取基準(2015年版)
参考資料2─食生活・休養・睡眠・身体活動指針(厚生労働省)