序文
近年,回復期リハビリテーション病棟入院患者における栄養障害のADL改善や自宅復帰への悪影響が明らかとなったことから,2018年診療報酬改定において回復期リハビリテーション病棟入院料1に病棟専任管理栄養士の配置や栄養管理が努力義務として要件化されました(2020年義務化).2018年以前は2割程度であった回復期リハビリテーション病棟における管理栄養士配置率は,2023年時点で89%に上り,栄養管理を担う専門職の量的整備は大きく進んだと言えます.
これに対して,栄養管理の質的整備はまだ道半ばです.一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会栄養委員会は,協会理事をはじめ多くの方のご協力のもと,「管理栄養士10か条」および「回復期リハビリテーション病棟管理栄養士必携」を作成し,栄養管理を担う管理栄養士の資質向上を図っています.しかし,これらはあくまで「回復期の栄養管理」のエッセンスであり,より網羅的な教科書となるべき書籍が必要だと考えていました.そのような中,医歯薬出版株式会社のご協力で,本書が発行されることになりました.
本書は,回復期リハビリテーション病棟の栄養管理に特化した初めての書籍です.主な読者は,回復期リハビリテーション病棟に勤務する管理栄養士を想定しています.リハビリテーション医療への理解を深める「1.リハビリテーション医療を知る」から始まり,栄養部門の運営,栄養管理総論および各論,退院後のフォローアップ,そして各病院における栄養管理の実例から構成され,回復期栄養管理のスペシャリストを目指す人が習得すべき内容を網羅しているのが特徴です.ご執筆は,当該分野の第一人者であるリハビリテーション科医や管理栄養士をはじめとする先生方にお願いしました.回復期の現場に役立てることを重視したため,時には何度も修正をご依頼することになり,大変なご苦労をおかけしました.多大なるお力添えをいただいた執筆者の先生方にはこの場をお借りして心から御礼を申し上げます.また,実際に勤務する若手・ベテランの管理栄養士の皆様には回復期の魅力に関するコラムをご執筆いただきました.管理栄養士だけでなく,回復期リハビリテーション病棟で栄養管理に従事する医師,歯科医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,歯科衛生士,薬剤師,社会福祉士,介護福祉士等の皆様にも有益な書籍になると確信しています.
最後に,本書の企画趣旨に賛同してくださった,回復期リハビリテーション病棟協会三橋尚志会長をはじめ協会理事の皆様に深く感謝申し上げます.
編者代表 西岡心大
近年,回復期リハビリテーション病棟入院患者における栄養障害のADL改善や自宅復帰への悪影響が明らかとなったことから,2018年診療報酬改定において回復期リハビリテーション病棟入院料1に病棟専任管理栄養士の配置や栄養管理が努力義務として要件化されました(2020年義務化).2018年以前は2割程度であった回復期リハビリテーション病棟における管理栄養士配置率は,2023年時点で89%に上り,栄養管理を担う専門職の量的整備は大きく進んだと言えます.
これに対して,栄養管理の質的整備はまだ道半ばです.一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会栄養委員会は,協会理事をはじめ多くの方のご協力のもと,「管理栄養士10か条」および「回復期リハビリテーション病棟管理栄養士必携」を作成し,栄養管理を担う管理栄養士の資質向上を図っています.しかし,これらはあくまで「回復期の栄養管理」のエッセンスであり,より網羅的な教科書となるべき書籍が必要だと考えていました.そのような中,医歯薬出版株式会社のご協力で,本書が発行されることになりました.
本書は,回復期リハビリテーション病棟の栄養管理に特化した初めての書籍です.主な読者は,回復期リハビリテーション病棟に勤務する管理栄養士を想定しています.リハビリテーション医療への理解を深める「1.リハビリテーション医療を知る」から始まり,栄養部門の運営,栄養管理総論および各論,退院後のフォローアップ,そして各病院における栄養管理の実例から構成され,回復期栄養管理のスペシャリストを目指す人が習得すべき内容を網羅しているのが特徴です.ご執筆は,当該分野の第一人者であるリハビリテーション科医や管理栄養士をはじめとする先生方にお願いしました.回復期の現場に役立てることを重視したため,時には何度も修正をご依頼することになり,大変なご苦労をおかけしました.多大なるお力添えをいただいた執筆者の先生方にはこの場をお借りして心から御礼を申し上げます.また,実際に勤務する若手・ベテランの管理栄養士の皆様には回復期の魅力に関するコラムをご執筆いただきました.管理栄養士だけでなく,回復期リハビリテーション病棟で栄養管理に従事する医師,歯科医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,歯科衛生士,薬剤師,社会福祉士,介護福祉士等の皆様にも有益な書籍になると確信しています.
最後に,本書の企画趣旨に賛同してくださった,回復期リハビリテーション病棟協会三橋尚志会長をはじめ協会理事の皆様に深く感謝申し上げます.
編者代表 西岡心大
I章 リハビリテーション医療を知る
1.リハビリテーション医学・医療とは(三橋尚志)
2.国際生活機能分類(ICF)と障害(宮村紘平)
3.リハビリテーションとチーム医療(岡本隆嗣)
4.リハビリテーション医療に不可欠な基礎知識
(1)身体機能評価(神谷健太郎)
(2)筋力評価(松下武矢・田中裕香)
(3)摂食嚥下機能評価(高畠英昭)
(4)日常生活機能評価(森 直樹)
(5)認知機能評価(井上英二・山内温子)
(6)口腔機能評価(白石 愛)
II章 回復期リハビリテーション病棟における栄養部門の運営
1.回復期リハビリテーション病棟における栄養部門の理念(山仁子)
2.人材育成(西岡心大)
3.臨床データの蓄積(小蔵要司)
4.他職種,他部門との協働(中原さおり)
5.フードサービスマネジメントのポイント
(1)直営の場合(嶋津さゆり)
(2)委託の場合(木崎恵梨子)
6.回復期リハビリテーション病棟のための食事基準の策定(山仁子)
7.回復期リハビリテーション病棟における嚥下調整食のあり方(桐谷裕美子)
8.楽しみとしての食の重要性
(1)農作業とリハビリテーション医療の融合(屋代朋子)
(2)オリジナルメニューと給食管理担当者との連携(漆原真姫)
III章 回復期リハビリテーション病棟の栄養管理 総論
1.回復期リハビリテーション病棟の入院中の流れ(中島龍星)
2.回復期リハビリテーション病棟入院中の栄養管理の概要(西岡心大)
3.回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の実践
(1)栄養スクリーニング(井村沙織)
(2)栄養アセスメント・栄養診断(西岡心大)
(3)低栄養診断(西岡心大)
(4)ゴール設定(角原杏奈・鈴木尚子)
(5)必要栄養量の算出(西岡絵美)
(6)栄養プランニング(経口摂取/経管栄養/静脈栄養)(西岡心大)
(7)リハビリテーション実施計画と栄養管理の関連(井村沙織)
(8)カンファレンス(新谷恵子)
(9)栄養モニタリング(岡本泰幸)
(10)栄養指導・調理指導(大桃春菜)
(11)栄養ケアの調整(阿部沙耶香)
IV章 回復期リハビリテーション病棟の栄養管理 各論
1.回復期リハビリテーション病棟適応疾患の病態・治療・リハビリテーション/栄養管理
(1)脳卒中
【病態〜リハ】(畠中めぐみ・宮井一郎)
【栄養管理】(二井麻里亜)
(2)頭部外傷
【病態〜リハ】(青木重陽)
【栄養管理】(西岡心大)
(3)脳腫瘍
【病態〜リハ】(長谷川雄紀)
【栄養管理】(小蔵要司)
(4)脊髄損傷
【病態〜リハ】(有賀隆裕・横山 修)
【栄養管理】(森山大介)
(5)大腿骨近位部骨折
【病態〜リハ】(西村一志)
【栄養管理】(岡ア亜美伽・森 菜美・西岡心大)
(6)脊椎椎体骨折
【病態〜リハ】(江崎祥太)
【栄養管理】(酒井友恵)
(7)変形性股関節症・膝関節症
【病態〜リハ】(酒井康生)
【栄養管理】(木愛斗・西岡心大)
(8)四肢切断
【病態〜リハ】(石原 健)
【栄養管理】(河野真莉菜・西岡心大)
(9)廃用症候群
【病態〜リハ】(栗原佳穂・三上幸夫)
【栄養管理】(宇野千晴)
(10)急性心筋梗塞,狭心症,心大血管術後
【病態〜リハ】(木田圭亮・小幡裕明)
【栄養管理】(島田晶子)
2.併存疾患・栄養障害等の栄養管理
(1)低栄養(西岡心大)
(2)サルコペニア(上島順子)
(3)肥満/サルコペニア肥満(鈴木達郎)
(4)摂食嚥下障害(園井みか)
(5)高血圧症(安武健一郎)
(6)脂質異常症(竹谷 豊)
(7)糖尿病(高島美和)
(8)慢性腎不全(透析期含む)(柴田みち)
(9)肝疾患(非代償性肝硬変)(古田 雅)
(10)慢性心不全(宮島 功)
(11)悪性腫瘍(斎野容子)
(12)慢性閉塞性肺疾患(一島妃東美)
(13)認知症(本川佳子)
(14)小児(藤谷朝実)
V章 退院後のフォローアップ
1.これからの管理栄養士に期待:地域を支える―地域リハビリテーション活動への理解と参画(栗原正紀)
2.介護保険制度と生活資源(佐藤庸平)
3.退院後の栄養支援
(1)外来栄養食事指導(山仁子)
(2)デイケア・デイサービスにおける栄養支援(西岡絵美)
(3)在宅訪問栄養指導(居宅療養管理指導)(桐谷裕美子)
(4)退院後のフォローアップのシステム化(影山典子)
(5)その他の栄養支援―地域ケア会議,栄養ケア・ステーションなど(西山 愛)
VI章 回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の実際
1.専任管理栄養士(給食業務委託)
(1)熊本機能病院(山仁子)
(2)東京湾岸リハビリテーション病院(木崎恵梨子)
(3)長崎リハビリテーション病院(西岡心大)
2.専任管理栄養士(給食業務直営)
(1)初台リハビリテーション病院(桐谷裕美子)
(2)やわたメディカルセンター(漆原真姫)
(3)西広島リハビリテーション病院(影山典子)
コラム 回復期のココが面白い!
食べる幸せを取り戻した患者様との関わりを通して(河野真莉菜)
コミュニケーションを大切に(木崎恵梨子)
幸せな経験(山仁子)
家族から教わる栄養管理の深み(漆原真姫)
病棟へ行って変わったこと(荻阪美夏)
回復期リハ病棟での栄養管理の大切さを痛感した出来事(二井麻里亜)
シームレスな栄養管理を目指して(屋代朋子)
患者もその周囲の人々も笑顔に(篠倉史恵)
栄養の力で生活再建を支えよう!(西岡心大)
試行錯誤の4カ月(高畠朋子)
少量高栄養な粥の効用―日々の食事への工夫(河上澄子)
多職種からの情報を栄養管理に活かす(白崎聖実)
チームの力(友利聖美)
回復期の魅力はチーム医療(新谷恵子)
栄養指導を通して退院後も栄養管理をサポート(杉浦理子)
一人ひとりの願いを支えて(桐谷裕美子)
“食べる”喜びを支えたい(影山典子)
病棟管理栄養士としてできること(三奈木優花)
1.リハビリテーション医学・医療とは(三橋尚志)
2.国際生活機能分類(ICF)と障害(宮村紘平)
3.リハビリテーションとチーム医療(岡本隆嗣)
4.リハビリテーション医療に不可欠な基礎知識
(1)身体機能評価(神谷健太郎)
(2)筋力評価(松下武矢・田中裕香)
(3)摂食嚥下機能評価(高畠英昭)
(4)日常生活機能評価(森 直樹)
(5)認知機能評価(井上英二・山内温子)
(6)口腔機能評価(白石 愛)
II章 回復期リハビリテーション病棟における栄養部門の運営
1.回復期リハビリテーション病棟における栄養部門の理念(山仁子)
2.人材育成(西岡心大)
3.臨床データの蓄積(小蔵要司)
4.他職種,他部門との協働(中原さおり)
5.フードサービスマネジメントのポイント
(1)直営の場合(嶋津さゆり)
(2)委託の場合(木崎恵梨子)
6.回復期リハビリテーション病棟のための食事基準の策定(山仁子)
7.回復期リハビリテーション病棟における嚥下調整食のあり方(桐谷裕美子)
8.楽しみとしての食の重要性
(1)農作業とリハビリテーション医療の融合(屋代朋子)
(2)オリジナルメニューと給食管理担当者との連携(漆原真姫)
III章 回復期リハビリテーション病棟の栄養管理 総論
1.回復期リハビリテーション病棟の入院中の流れ(中島龍星)
2.回復期リハビリテーション病棟入院中の栄養管理の概要(西岡心大)
3.回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の実践
(1)栄養スクリーニング(井村沙織)
(2)栄養アセスメント・栄養診断(西岡心大)
(3)低栄養診断(西岡心大)
(4)ゴール設定(角原杏奈・鈴木尚子)
(5)必要栄養量の算出(西岡絵美)
(6)栄養プランニング(経口摂取/経管栄養/静脈栄養)(西岡心大)
(7)リハビリテーション実施計画と栄養管理の関連(井村沙織)
(8)カンファレンス(新谷恵子)
(9)栄養モニタリング(岡本泰幸)
(10)栄養指導・調理指導(大桃春菜)
(11)栄養ケアの調整(阿部沙耶香)
IV章 回復期リハビリテーション病棟の栄養管理 各論
1.回復期リハビリテーション病棟適応疾患の病態・治療・リハビリテーション/栄養管理
(1)脳卒中
【病態〜リハ】(畠中めぐみ・宮井一郎)
【栄養管理】(二井麻里亜)
(2)頭部外傷
【病態〜リハ】(青木重陽)
【栄養管理】(西岡心大)
(3)脳腫瘍
【病態〜リハ】(長谷川雄紀)
【栄養管理】(小蔵要司)
(4)脊髄損傷
【病態〜リハ】(有賀隆裕・横山 修)
【栄養管理】(森山大介)
(5)大腿骨近位部骨折
【病態〜リハ】(西村一志)
【栄養管理】(岡ア亜美伽・森 菜美・西岡心大)
(6)脊椎椎体骨折
【病態〜リハ】(江崎祥太)
【栄養管理】(酒井友恵)
(7)変形性股関節症・膝関節症
【病態〜リハ】(酒井康生)
【栄養管理】(木愛斗・西岡心大)
(8)四肢切断
【病態〜リハ】(石原 健)
【栄養管理】(河野真莉菜・西岡心大)
(9)廃用症候群
【病態〜リハ】(栗原佳穂・三上幸夫)
【栄養管理】(宇野千晴)
(10)急性心筋梗塞,狭心症,心大血管術後
【病態〜リハ】(木田圭亮・小幡裕明)
【栄養管理】(島田晶子)
2.併存疾患・栄養障害等の栄養管理
(1)低栄養(西岡心大)
(2)サルコペニア(上島順子)
(3)肥満/サルコペニア肥満(鈴木達郎)
(4)摂食嚥下障害(園井みか)
(5)高血圧症(安武健一郎)
(6)脂質異常症(竹谷 豊)
(7)糖尿病(高島美和)
(8)慢性腎不全(透析期含む)(柴田みち)
(9)肝疾患(非代償性肝硬変)(古田 雅)
(10)慢性心不全(宮島 功)
(11)悪性腫瘍(斎野容子)
(12)慢性閉塞性肺疾患(一島妃東美)
(13)認知症(本川佳子)
(14)小児(藤谷朝実)
V章 退院後のフォローアップ
1.これからの管理栄養士に期待:地域を支える―地域リハビリテーション活動への理解と参画(栗原正紀)
2.介護保険制度と生活資源(佐藤庸平)
3.退院後の栄養支援
(1)外来栄養食事指導(山仁子)
(2)デイケア・デイサービスにおける栄養支援(西岡絵美)
(3)在宅訪問栄養指導(居宅療養管理指導)(桐谷裕美子)
(4)退院後のフォローアップのシステム化(影山典子)
(5)その他の栄養支援―地域ケア会議,栄養ケア・ステーションなど(西山 愛)
VI章 回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の実際
1.専任管理栄養士(給食業務委託)
(1)熊本機能病院(山仁子)
(2)東京湾岸リハビリテーション病院(木崎恵梨子)
(3)長崎リハビリテーション病院(西岡心大)
2.専任管理栄養士(給食業務直営)
(1)初台リハビリテーション病院(桐谷裕美子)
(2)やわたメディカルセンター(漆原真姫)
(3)西広島リハビリテーション病院(影山典子)
コラム 回復期のココが面白い!
食べる幸せを取り戻した患者様との関わりを通して(河野真莉菜)
コミュニケーションを大切に(木崎恵梨子)
幸せな経験(山仁子)
家族から教わる栄養管理の深み(漆原真姫)
病棟へ行って変わったこと(荻阪美夏)
回復期リハ病棟での栄養管理の大切さを痛感した出来事(二井麻里亜)
シームレスな栄養管理を目指して(屋代朋子)
患者もその周囲の人々も笑顔に(篠倉史恵)
栄養の力で生活再建を支えよう!(西岡心大)
試行錯誤の4カ月(高畠朋子)
少量高栄養な粥の効用―日々の食事への工夫(河上澄子)
多職種からの情報を栄養管理に活かす(白崎聖実)
チームの力(友利聖美)
回復期の魅力はチーム医療(新谷恵子)
栄養指導を通して退院後も栄養管理をサポート(杉浦理子)
一人ひとりの願いを支えて(桐谷裕美子)
“食べる”喜びを支えたい(影山典子)
病棟管理栄養士としてできること(三奈木優花)