やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

改訂の序
 本書は,管理栄養士国家試験の「社会・環境と健康」分野について策定されている出題基準に忠実に準拠して作成されたもので,管理栄養士の国家試験対策を主眼とした教科書である.しかし実質的には,社会医学全般につきかなり詳細な内容を含んだものとなっている.医学生,看護学生や医師,保健師・看護師を含むすべての保健医療従事者にとって,衛生学公衆衛生学および健康科学の分野の参考書として大いに役立てることのできる書として,このたび初版を全面的に見直し,改訂版として発行することとなったものである.
 今日わが国では,政治経済および社会環境のめまぐるしい変化,少子高齢化の急速な進行などと相まって,「健康」という問題を社会および環境との関わりの中で正しく理解することが,保健医療従事者あるいはこれらの職種への志望者にとってきわめて重要となってきている.本書ではこのような考え方に基づき,I.公衆衛生編,II.健康情報・健康管理学編,III.保健医療・保健福祉編の3編構成とした上で,多数の専門執筆者陣の分担により,初版に引き続き,次のような教育到達目標を設定した上で執筆を行った.
 (1)人間や生活を生態系に位置づけて理解する.
 (2)人間の行動特性とその基本的メカニズムを理解する.
 (3)社会や環境と健康との関係を理解するとともに,社会や環境の変化が健康に与える影響を理解する.
 (4)健康の概念,健康増進や疾病予防の考え方やその取り組みについて理解する.
 (5)健康情報の利用方法,情報管理や情報処理について理解する.
 (6)保健・医療・福祉・介護システムの概要を理解する.
 なおこの改訂版では,初版の内容を踏まえた上で,
 (1)国民衛生の動向などを含め,ほとんどすべての統計データの更新およびそれに伴う内容の修正.
 (2)栄養機能食品,食育基本法,介護保険法,児童虐待防止法,水道法などの新設や改正に伴う内容の追加修正.
 (3)メタボリックシンドロームなど,新しい概念の紹介.
 (4)アスベスト曝露など最近問題になっている環境問題の充実.
 などの,大きな見直しを行った.
 衛生学公衆衛生学および健康科学について正しい理解を深める上での有力なツールとして本書をご活用いただくことを願っている.
 編者

編者序文
 本書は,管理栄養士国家試験の「社会・環境と健康」分野について策定されている出題基準に忠実に準拠して作成されたもので,管理栄養士の国家試験対策を主眼とした教科書である.しかし実質的には,社会医学全般につきかなり詳細な内容を含んだものとなっており,医学生,看護学生や医師,看護師を含む全ての保健医療従事者にとって,衛生学公衆衛生学および健康科学の分野の参考書として大いに役立てることのできる書として完成している.
 今日わが国では,政治経済および社会環境等の変化に伴い,われわれ国民の生活行動も大きな変容を遂げつつあるとともに,健康や疾患の状況にも大きな変化が認められている.特に少子高齢化の急速な進行は,社会医学や保健医療従事者の果たすべき役割を増大させているとともに,必然的にその多様化,複雑化を推し進めているという現実がある.このような状況下で,「健康」という問題を社会および環境との関わりの中で正しく理解することが,保健医療従事者あるいはこれらの職種への志望者にとってきわめて重要となってきていることはいうまでもない.
 本書ではこのような考え方に基づき,I.公衆衛生編,II.健康情報・健康管理学編,III.保健医療・保健福祉編の3編構成としたうえで,多数の専門執筆者陣の分担により,次のような教育到達目標を設定したうえで執筆を行っている.
 (1)人間や生活を生態系に位置づけて理解する.
 (2)人間の行動特性とその基本的メカニズムを理解する.
 (3)社会や環境と健康との関係を理解するとともに,社会や環境の変化が健康に与える影響を理解する.
 (4)健康の概念,健康増進や疾病予防の考え方やその取り組みについて理解する.
 (5)健康情報の利用方法,情報管理や情報処理について理解する.
 (6)保健・医療・福祉・介護システムの概要を理解する.
 なおこの分野の教科書において常に問題となるのは,統計数値や法制度の変更に伴い,内容が比較的すぐに,旧くて使えないものとなってしまいがちなことである.本書ではこの点に注意を払い,最新の情報を収載することに特に留意した.
 衛生学公衆衛生学および健康科学について正しい理解を深めるうえでの有力なツールとして,本書をご活用いただければ幸いである.
 編者
改訂の序
序文
I.公衆衛生編
 I.社会と健康
  1.健康の概念とその歴史的変遷(高島 豊)
   1)健康の定義
   2)健康の目的とwell-being
   3)健康の概念図
  2.公衆衛生の概念(高島 豊)
   1)公衆衛生の定義と目標
   2)公衆衛生と予防医学
   3)公衆衛生の目標と公衆衛生活動の過程
   4)プライマリーヘルスケア
   5)ヘルスプロモーションとプレシード・プロシードモデル
  3.公衆衛生の歴史(高島 豊)
   1)世界における歴史
   2)日本における公衆衛生の歴史
 II.環境と健康
  1.生態系の中の人間生活(武井貞治)
   1)人間と環境の相互作用
   2)環境保全(環境基本法)
   3)環境基本計画
   4)環境アセスメント(環境影響評価)
  2.環境汚染と健康(武井貞治)
   1)環境汚染(大気汚染,水質汚濁,土壌汚染)
   2)公害
   3)地球的規模の環境
   4)内分泌攪乱化学物質
  3.環境衛生(木ノ上高章)
   1)気候,季節
   2)空気
   3)圧力
   4)温度環境
   5)高所環境
   6)無重力環境
   7)上水道と下水道
   8)居住・衣服環境
   9)廃棄物処理
   10)騒音
   11)振動
   12)放射線(電離・非電離)
   13)鼠族・衛生害虫
 III.健康,疾病,行動に関わる統計資料
  1.保健統計・人口静態統計と人口動態統計(高橋秀人)
   1)保健統計の概要
   2)人口静態統計の概要
   3)人口の推移
   4)人口ピラミッド,人口指標
   5)高齢化と少子化
   6)世界の人口
   7)人口動態統計の概要
   8)出生率・再生産率
   9)死亡
   10)死因分類
   11)年齢調整死亡率と標準化死亡比
   12)母子保健統計
   13)婚姻・離婚統計
  2.生命表(櫻井 裕)
   1)生命表の作成
   2)平均寿命の推移
   3)健康寿命(DALYs)
  3.傷病統計(島田直樹)
   1)患者調査
   2)国民生活基礎調査
   3)その他の傷病統計
  4.その他の統計(中谷弥栄子)
   1)国民健康・栄養調査
   2)県民健康・栄養調査
   3)学校保健統計調査
   4)食料需給表
   5)家計調査
   6)生活習慣・保健行動に関する調査
   7)健康意識に関する調査
 IV.健康状態・疾病の測定と評価
  1.疫学の概念(本荘 哲)
   1)疫学の定義
   2)疫学の対象と領域
   3)疫学的因果関係
  2.疫学指標(本荘 哲)
   1)疾病頻度
   2)曝露効果の指標(リスク評価)
  3.疫学の方法(本田 靖)
   1)記述疫学と分析疫学
   2)理想の研究
   3)研究デザイン
   4)症例対照研究(case-control study)
   5)横断研究(cross-sectional study)
   6)生態学的研究(ecological study)
  4.精度と妥当性(本田 靖)
   1)精度を決めるもの
   2)妥当性を阻むもの
  5.スクリーニング(高島 豊)
   1)スクリーニングとは
   2)スクリーニングの有効性と敏感度,特異度,的中度
   3)スクリーニング検査の集団への適用条件
  6.エビデンスに基づく保健対策(岡本博照)
   1)エビデンスのレベル
   2)無作為化比較対照試験(RCT)
   3)系統的レビューとメタアナリシス
   4)ハイリスク戦略とポピュレーション戦略
   5)効能,効果,効率の評価
   6)主な疾病管理ガイドラインとその活用
  7.医学研究と倫理(角田 透)
   1)医学研究に関する倫理指針
   2)現行の指針と要点
II.健康情報・健康管理学編
 I.情報化社会におけるコミュニケーション―栄養学領域の関連項目
  1.情報収集の方法(等々力英美)
   1)データベースの種類
   2)データベースの利用法
   3)情報の批判的吟味
  2.情報マネージメント(等々力英美)
   1)ITによるプレゼンテーション
   2)インターネット,WWWによる情報活用
   3)健康情報管理と個人情報管理
 II.生活習慣の現状と対策
  1.健康に関連する行動と社会(高島 豊)
   1)健康の生物心理社会モデル
   2)認知様式の基本形の決定
  2.食習慣(吉田正雄)
   1)食習慣,栄養摂取の現状
   2)食行動の規定因子
  3.身体活動,運動(照屋浩司)
   1)身体活動の現状
   2)体力の現状
   3)身体活動・運動と健康増進
   4)運動指針
  4.喫煙行動(照屋浩司)
   1)喫煙の現状
   2)喫煙の健康影響および社会的問題
   3)禁煙サポートと喫煙防止
   4)分煙と受動喫煙
   5)たばこ対策
  5.飲酒行動(岡本博照)
   1)飲酒の現状
   2)飲酒の健康影響および社会的問題
   3)適正飲酒
   4)アルコール対策
  6.睡眠,休養,ストレス(角田 透)
   1)睡眠習慣と生活リズム
   2)睡眠不足・不眠の現状
   3)休養の概念
   4)ストレスの概念
   5)休養指針
   6)ストレスマネージメント
  7.歯科保健行動(松井知子)
   1)歯科保健行動-各ライフステージにおける生活環境と歯科保健行動-
   2)歯科保健対策
  8.健康状態に関与するその他の行動特性(増田由美)
   1)疾患関連行動と心身相関
   2)タイプA行動パターン
   3)うつの心身相関
   4)性行動
   5)交通安全行動
   6)薬物乱用・依存
  9.健康日本21(石川 守)
   1)健康日本21に到るまで;第3次国民健康づくり対策としての健康日本21
   2)健康日本21の特徴
   3)高齢化社会への対策としての健康日本21
   4)健康日本21の法的基盤整備としての健康増進法
   5)健康日本21の趣旨
   6)健康日本21の目的
   7)健康日本21の内容
   8)地域等における健康づくり運動の推進について
   9)健康増進法
 III.主要疾患の疫学と予防
  1.生活習慣病の概念(櫻井 裕)
   1) 生活習慣に関わる疾患
   2) 生活習慣病の一次予防の施策
  2.がん(井上真奈美)
   1)部位別統計
   2)リスクファクターと一次予防対策
   3)生活習慣等の環境的要因と発がん
   4)リスクファクターの分析
   5)がん検診の実情と評価
  3.循環器疾患(万波俊文)
   1)高血圧
   2)脳卒中(脳血管疾患)
   3)冠動脈疾患(虚血性心疾患)
  4.代謝疾患(肥満,糖尿病,脂質異常症等)(櫻井 裕)
   1)肥満
   2)糖尿病
   3)脂質異常症等
  5.骨・関節疾患(島田直樹)
   1)骨粗鬆症・骨折
  6.歯科・口腔疾患(竹前健彦)
   1)う歯(う蝕)
   2)歯周疾患(歯周病)
  7.感染症(小風 暁)
   1)感染症成立の三大要因
   2)感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
   3)主要感染症の疫学
   4)新興感染症・再興感染症
   5)予防接種
   6)結核の疫学と結核対策
  8.精神疾患(井原一成)
   1)精神疾患の現状と予防対策
   2)主な精神疾患
  9.自殺(井原一成)
   1)わが国の自殺の現状
   2)自殺の予防
  10.その他の疾患(高島 豊)
   1)肝臓疾患
   2)腎臓疾患
   3)消化器疾患
   4)呼吸器疾患
III.保健医療・保健福祉編
 I.保健・医療・福祉・介護の制度
  1.社会保障の概念(松田晋哉)
   1)社会保障の定義と歴史
   2)公衆衛生と社会保障
  2.医療制度(松田晋哉)
   1)医療保険制度
   2)医療施設
   3)医療従事者
   4)医療費
   5)医療経済
   6)医薬分業
  3.福祉・介護制度(櫻井 裕)
   1)社会福祉
   2)社会福祉施設
   3)介護保険
   4)要介護認定とケアプラン
   5)介護サービスの種類
   6)地域支援事業
  4.地域レベルでの保健対策(小風 暁)
   1)保健所
   2)市町村保健センター
   3)地方衛生研究所
   4)健康増進施設
   5)地域保健従事者
  5.母子保健対策(加藤英世)
   1)母子保健の目的と課題
   2)母子保健事業
   3)母子健康手帳
   4)乳幼児健診
   5)育児指導
   6)新生児マススクリーニング
   7)健やか親子21
   8)新エンゼルプラン
   9)子ども・子育て応援プラン
  6.中高年者への保健対策(櫻井 裕)
   1)老人保健制度の変更の軌跡
   2)現在の老人保健制度の概要
   3)現在の高齢者医療の概要
   4)新しい局面を迎える中高年の健康対策
  7.職域での保健対策(寶珠山 務・タナカ千恵子・今井鉄平)
   1)労働と健康
   2)職業と健康障害
   3)労働災害
   4)産業保健従事者
   5)労働安全衛生対策
   6)特殊健康診断
   7)生物学的モニタリング
   8)THP(トータルヘルスプロモーションプラン)
  8.学校保健対策(吉田正雄)
   1)学校保健の概要
   2)学校保健従事者
   3)児童・生徒の健康「身体発育,体力,健康状態」
   4)学校保健対策
  9.保健,医療,福祉,介護の連携(高島 豊)
   1)在宅医療・介護推進プロジャクト―「新生在宅医療・介護元年」(平成24年度)
   2)地域包括ケアシステム
   3)業務における規制緩和と連携
  10.国際保健(松田晋哉)
   1)国際協力
   2)世界保健機関(World Health Organization:WHO)
   3)国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)
   4)国連児童基金(United Nations International Children's Emergency Fund:UNICEF)
   5)その他の組織
 II.保健・医療・福祉・介護関連法規
  1.衛生法規の定義とその種類(兼板佳孝・大井田 隆)
   1)法一般について
   2)衛生法規について
  2.栄養関連法規 飯樋洋二
   1)栄養関係法規の種類
   2)食品安全基本法
   3)健康増進法
   4)食育基本法
   5)栄養教諭制度について(学校教育法の一部を改正する法律:教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令)
   6)食品衛生法
   7)学校給食法
   8)栄養士法
   9)調理師法
  3.一般衛生法規(兼板佳孝・大井田 隆)
   1)公衆衛生法規
   2)医務衛生法規(医療法)
   3)薬務衛生法規(薬事法)
索引