序
近年,わが国では高齢化社会を迎え平均寿命の延長がみられますが,食習慣を含むライフスタイルの多様化・欧米化も進んでいます.その結果,高脂血症,糖尿病,高血圧,動脈硬化などを基盤とする“生活習慣病“の患者が著しく増えています.最近では,内臓肥満,高TG血症,低HDL―C血症,高血圧,耐糖能異常などをもつメタボリックシンドロームが注目されています.これらの疾患・病態は互いに関連し,心疾患,糖尿病性腎症,痛風,腎機能障害,肝臓病の発症や進展を引き起こしています.一方,胃・十二指腸潰瘍の発症には,これまでストレスが深く関わっているとされていましたが,最近ではHelicobacter pyloriというグラム陰性桿菌の関与が注目されています.ライフスタイルの変化や“やせ願望”とともに食習慣も変化し,肥満や貧血を示す若者も多く認められます.
こうした生活習慣病の増加に,食生活の変化が深く関与していることに異論はないと思います.食の現状をみると,摂取総エネルギーは所要量に十分達していると思われますが,食のバランスに乱れが認められます.特に,動物性脂肪や食塩の過剰摂取,Ca/Mg摂取比の増加やCa ・鉄の摂取不足は,生活習慣病と深く関連していると考えられます.そうした観点から食事療法の重要性が叫ばれているのです.
現在,医師をリーダーとする看護師,栄養士,薬剤師などからなるチーム医療がなされ,医師は個々の患者の主訴・既往歴・家族歴・臨床経過・理学的所見・検査成績などから診断し,食事内容を考えます.また,臨床経過の変化から食事内容が再検討されることもあります.その結果,食事箋が栄養士・看護師へと伝達されていきます.
食事療法に関する教科書やガイドブックは数多く刊行されていますが,栄養士や看護師の皆さんが指示された一枚の食事箋のなかにある患者の病態を理解することのできる書籍は見当たりません.
本書は,そうした欠点を補う目的で代表的な生活習慣病をとりあげ,診断から食事箋発行に至る経過をケーススタディとしてまとめたものです.特に,ベッドサイドや栄養教室で指導を行う栄養士にとっては,各疾患の病態生理を学ぶことができる画期的な企画だと思います.内容はやや難しいかもしれませんが,大いに学んでいただきたいと思います.また,栄養学部や看護学部のサブテキストとしてご利用いただければ望外の喜びです.しかし,不備な点も多々あろうかと思いますので,読者の皆様のご批判やご叱正を心から願う次第です.
最後に,ご尽力いただきました順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部の皆様,医歯薬出版の関係各位に厚くお礼申し上げます.
2004 年盛夏
神田川のほとりにて
富野康日己
近年,わが国では高齢化社会を迎え平均寿命の延長がみられますが,食習慣を含むライフスタイルの多様化・欧米化も進んでいます.その結果,高脂血症,糖尿病,高血圧,動脈硬化などを基盤とする“生活習慣病“の患者が著しく増えています.最近では,内臓肥満,高TG血症,低HDL―C血症,高血圧,耐糖能異常などをもつメタボリックシンドロームが注目されています.これらの疾患・病態は互いに関連し,心疾患,糖尿病性腎症,痛風,腎機能障害,肝臓病の発症や進展を引き起こしています.一方,胃・十二指腸潰瘍の発症には,これまでストレスが深く関わっているとされていましたが,最近ではHelicobacter pyloriというグラム陰性桿菌の関与が注目されています.ライフスタイルの変化や“やせ願望”とともに食習慣も変化し,肥満や貧血を示す若者も多く認められます.
こうした生活習慣病の増加に,食生活の変化が深く関与していることに異論はないと思います.食の現状をみると,摂取総エネルギーは所要量に十分達していると思われますが,食のバランスに乱れが認められます.特に,動物性脂肪や食塩の過剰摂取,Ca/Mg摂取比の増加やCa ・鉄の摂取不足は,生活習慣病と深く関連していると考えられます.そうした観点から食事療法の重要性が叫ばれているのです.
現在,医師をリーダーとする看護師,栄養士,薬剤師などからなるチーム医療がなされ,医師は個々の患者の主訴・既往歴・家族歴・臨床経過・理学的所見・検査成績などから診断し,食事内容を考えます.また,臨床経過の変化から食事内容が再検討されることもあります.その結果,食事箋が栄養士・看護師へと伝達されていきます.
食事療法に関する教科書やガイドブックは数多く刊行されていますが,栄養士や看護師の皆さんが指示された一枚の食事箋のなかにある患者の病態を理解することのできる書籍は見当たりません.
本書は,そうした欠点を補う目的で代表的な生活習慣病をとりあげ,診断から食事箋発行に至る経過をケーススタディとしてまとめたものです.特に,ベッドサイドや栄養教室で指導を行う栄養士にとっては,各疾患の病態生理を学ぶことができる画期的な企画だと思います.内容はやや難しいかもしれませんが,大いに学んでいただきたいと思います.また,栄養学部や看護学部のサブテキストとしてご利用いただければ望外の喜びです.しかし,不備な点も多々あろうかと思いますので,読者の皆様のご批判やご叱正を心から願う次第です.
最後に,ご尽力いただきました順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部の皆様,医歯薬出版の関係各位に厚くお礼申し上げます.
2004 年盛夏
神田川のほとりにて
富野康日己
食事指導のための生活習慣病ケーススタディ 目次
1●高脂血症
[CASE STUDY]1 コレステロール制限食(高脂血症食)
食事療法の基本は
高脂血症とはどんな病気
臨床症状と診断法は
合併症にはどのようなものがありますか
食事療法以外の非薬物療法にはどのようなものがありますか
薬物療法にはどのようなものがありますか
肥満とはどのような状態をいうのですか
肥満の食事療法の基本は
超低エネルギー食とは
肥満の合併症にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
2●高血圧・心臓病
[CASE STUDY]2 エネルギー・食塩制限食(高血圧・心臓病食)
食事療法の基本は
食事療法の実際は
高血圧とはどんな病気
臨床症状にはどのようなものがありますか
検査成績に変化はみられますか
合併症にはどのようなものがありますか
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
3●糖尿病
[CASE STUDY]3 エネルギーコントロール食(糖尿病食)
食事療法の基本は
糖尿病とはどんな病気
臨床症状と診断法は
合併症にはどのようなものがありますか
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
4●糖尿病性腎症
[CASE STUDY]4 たんぱくコントロール食(糖尿病性腎症食)
食事療法の基本は
糖尿病性腎症とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
5●痛風
[CASE STUDY]5 たんぱくコントロール食(痛風食)
食事療法の基本は
痛風とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
6●腎炎・ネフローゼ
[CASE STUDY]6-1 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
[CASE STUDY]6-2 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
[CASE STUDY]6-3 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
[CASE STUDY]6-4 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
食事療法の基本は
腎炎・ネフローゼとはどんな病気
臨床症状と診断法は
予防と治療にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
7●腎不全
[CASE STUDY]7-1 たんぱくコントロール食(腎不全食)
[CASE STUDY]7-2 たんぱくコントロール食(腎不全食)
食事療法の基本は
治療用特殊食品とは
腎不全とはどんな病気
臨床症状と診断法は
透析療法ってなんですか
予防と治療法はありますか
栄養アセスメント
8●胃潰瘍
[CASE STUDY]8 易消化食(胃潰瘍食)
食事療法の基本は
胃・十二指腸潰瘍とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
9●肝臓病
[CASE STUDY]9-1 脂質制限食(肝臓病食)
[CASE STUDY]9-2 脂質制限食(肝臓病食)
[CASE STUDY]9-3 たんぱくコントロール食(肝臓病食)
食事療法の基本は
肝臓病とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
なにか感染に対する予防法はあるのですか
栄養アセスメント
10●膵臓病
[CASE STUDY]10 脂質制限食(膵臓病食)
食事療法の基本は
膵炎とはどんな病気
臨床症状と診断法は
予防と治療にはなにがありますか
栄養アセスメント
11●鉄欠乏性貧血
[CASE STUDY]11 貧血食
食事療法の基本は
貧血とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
付録
■ 栄養基準一覧
■ 栄養士に必要な臨床検査の基準値
■ 略語一覧
索引
1●高脂血症
[CASE STUDY]1 コレステロール制限食(高脂血症食)
食事療法の基本は
高脂血症とはどんな病気
臨床症状と診断法は
合併症にはどのようなものがありますか
食事療法以外の非薬物療法にはどのようなものがありますか
薬物療法にはどのようなものがありますか
肥満とはどのような状態をいうのですか
肥満の食事療法の基本は
超低エネルギー食とは
肥満の合併症にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
2●高血圧・心臓病
[CASE STUDY]2 エネルギー・食塩制限食(高血圧・心臓病食)
食事療法の基本は
食事療法の実際は
高血圧とはどんな病気
臨床症状にはどのようなものがありますか
検査成績に変化はみられますか
合併症にはどのようなものがありますか
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
3●糖尿病
[CASE STUDY]3 エネルギーコントロール食(糖尿病食)
食事療法の基本は
糖尿病とはどんな病気
臨床症状と診断法は
合併症にはどのようなものがありますか
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
4●糖尿病性腎症
[CASE STUDY]4 たんぱくコントロール食(糖尿病性腎症食)
食事療法の基本は
糖尿病性腎症とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
5●痛風
[CASE STUDY]5 たんぱくコントロール食(痛風食)
食事療法の基本は
痛風とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
6●腎炎・ネフローゼ
[CASE STUDY]6-1 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
[CASE STUDY]6-2 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
[CASE STUDY]6-3 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
[CASE STUDY]6-4 たんぱくコントロール食(腎炎・ネフローゼ食)
食事療法の基本は
腎炎・ネフローゼとはどんな病気
臨床症状と診断法は
予防と治療にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
7●腎不全
[CASE STUDY]7-1 たんぱくコントロール食(腎不全食)
[CASE STUDY]7-2 たんぱくコントロール食(腎不全食)
食事療法の基本は
治療用特殊食品とは
腎不全とはどんな病気
臨床症状と診断法は
透析療法ってなんですか
予防と治療法はありますか
栄養アセスメント
8●胃潰瘍
[CASE STUDY]8 易消化食(胃潰瘍食)
食事療法の基本は
胃・十二指腸潰瘍とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
9●肝臓病
[CASE STUDY]9-1 脂質制限食(肝臓病食)
[CASE STUDY]9-2 脂質制限食(肝臓病食)
[CASE STUDY]9-3 たんぱくコントロール食(肝臓病食)
食事療法の基本は
肝臓病とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
なにか感染に対する予防法はあるのですか
栄養アセスメント
10●膵臓病
[CASE STUDY]10 脂質制限食(膵臓病食)
食事療法の基本は
膵炎とはどんな病気
臨床症状と診断法は
予防と治療にはなにがありますか
栄養アセスメント
11●鉄欠乏性貧血
[CASE STUDY]11 貧血食
食事療法の基本は
貧血とはどんな病気
臨床症状と診断法は
薬物療法にはどのようなものがありますか
栄養アセスメント
付録
■ 栄養基準一覧
■ 栄養士に必要な臨床検査の基準値
■ 略語一覧
索引











