序
日本における歯科用ジルコニアの臨床応用は2005年にCerconが歯科医療用材料として承認されたことに始まります.その後,拡大の一途をたどり,2010年代以降の現在においても,歯科界で最も注目されている材料であると言えます.しかも,年々,歯科用ジルコニアの素材自体の改良,周辺技術・材料の改良・発展が進んでおり,その変化の激しさと情報の多さには驚愕するばかりです.正しい情報を識別・認識するための科学知識の必要性を感じざるを得ません.
一方,2014年4月にCAD/CAMハイブリッドレジン冠が保険適用になり,CAD/CAMを中心としたデジタルデンティストリーが特殊なものではなく,一般的な手法として普及するようになってきました.日本では保険適用の影響はきわめて大きく,現在ではCAD/CAMハイブリッドレジン冠の売上金額,製作本数ともジルコニアを上回っています.ジルコニアはCAD/CAMマテリアルを意味する代名詞のようなものでしたが,CAD/CAMマテリアルとしてレジンの存在が大きくなってきました.また,金属の成形においても,鋳造ではなくCAD/CAMを応用したシステムが実用化され,さらにガラスセラミックスにおいても多くの素材が依然として使用されています.したがって,きわめて多くの素材がCAD/CAMマテリアルとして臨床応用されています.
本書はこうしたCAD/CAMマテリアルを対象に,それぞれの素材自体の利点・欠点を含めた特有の性質について科学的に,客観的に,まとめて解説しました.工業界の材料科学の本はすでにありますが,きわめて難解であり,歯科領域特有の問題に対する回答をこれらの書籍から見いだすことは難しいと思います.そこで,歯科用材料研究に長年携わってきた材料学者の立場から,臨床現場でCAD/CAMによる修復物製作に携わっておられる歯科医師および歯科技工士の方々が,CAD/CAMマテリアルの材料科学的疑問に対して十分に満足な答えが得られるような一冊に仕上げるよう努力しました.ジルコニアについては,最近の臨床応用例の変化が大きいため,臨床例を臨床家に供覧して頂きました.また,CAD/CAM製修復物が装着されるときに用いられる接着材およびその操作は,その修復の成功の可否を握る重要な事項であり,各素材により特徴的になっています.そこで,接着材開発の立場から日本を代表する歯科企業の研究者に,素材に応じた解説をお願いしました.
本書を,症例に応じたマテリアルの科学的な選択を可能とする最新ガイドとして,歯科臨床の現場で活用して頂ければ幸甚です.
なお,本書で用いた実験結果は,鹿児島大学大学院医歯学総合研究科に在職中の多くの大学院生の研究成果および愛知学院大学歯学部における研究成果であり,関係各位に感謝申し上げます.また,各企業関係各位におきましては,情報機密の制約のあるなかで可能な限りの多くの資料・材料の提供をしてくださり,心より感謝申し上げます.
愛知学院大学歯学部 歯科理工学講座
伴 清治
日本における歯科用ジルコニアの臨床応用は2005年にCerconが歯科医療用材料として承認されたことに始まります.その後,拡大の一途をたどり,2010年代以降の現在においても,歯科界で最も注目されている材料であると言えます.しかも,年々,歯科用ジルコニアの素材自体の改良,周辺技術・材料の改良・発展が進んでおり,その変化の激しさと情報の多さには驚愕するばかりです.正しい情報を識別・認識するための科学知識の必要性を感じざるを得ません.
一方,2014年4月にCAD/CAMハイブリッドレジン冠が保険適用になり,CAD/CAMを中心としたデジタルデンティストリーが特殊なものではなく,一般的な手法として普及するようになってきました.日本では保険適用の影響はきわめて大きく,現在ではCAD/CAMハイブリッドレジン冠の売上金額,製作本数ともジルコニアを上回っています.ジルコニアはCAD/CAMマテリアルを意味する代名詞のようなものでしたが,CAD/CAMマテリアルとしてレジンの存在が大きくなってきました.また,金属の成形においても,鋳造ではなくCAD/CAMを応用したシステムが実用化され,さらにガラスセラミックスにおいても多くの素材が依然として使用されています.したがって,きわめて多くの素材がCAD/CAMマテリアルとして臨床応用されています.
本書はこうしたCAD/CAMマテリアルを対象に,それぞれの素材自体の利点・欠点を含めた特有の性質について科学的に,客観的に,まとめて解説しました.工業界の材料科学の本はすでにありますが,きわめて難解であり,歯科領域特有の問題に対する回答をこれらの書籍から見いだすことは難しいと思います.そこで,歯科用材料研究に長年携わってきた材料学者の立場から,臨床現場でCAD/CAMによる修復物製作に携わっておられる歯科医師および歯科技工士の方々が,CAD/CAMマテリアルの材料科学的疑問に対して十分に満足な答えが得られるような一冊に仕上げるよう努力しました.ジルコニアについては,最近の臨床応用例の変化が大きいため,臨床例を臨床家に供覧して頂きました.また,CAD/CAM製修復物が装着されるときに用いられる接着材およびその操作は,その修復の成功の可否を握る重要な事項であり,各素材により特徴的になっています.そこで,接着材開発の立場から日本を代表する歯科企業の研究者に,素材に応じた解説をお願いしました.
本書を,症例に応じたマテリアルの科学的な選択を可能とする最新ガイドとして,歯科臨床の現場で活用して頂ければ幸甚です.
なお,本書で用いた実験結果は,鹿児島大学大学院医歯学総合研究科に在職中の多くの大学院生の研究成果および愛知学院大学歯学部における研究成果であり,関係各位に感謝申し上げます.また,各企業関係各位におきましては,情報機密の制約のあるなかで可能な限りの多くの資料・材料の提供をしてくださり,心より感謝申し上げます.
愛知学院大学歯学部 歯科理工学講座
伴 清治
第1章 CAD/CAMマテリアル概論
1 CAD/CAMの歯科応用
2 CAD/CAMマテリアルの所要性質
3 CAD/CAMマテリアルの種類
4 CAD/CAMマテリアルの需要動向
第2章 セラミックス系CAD/CAMマテリアル
第1項 ジルコニア
第1節 ジルコニアの種類
1 歯科用ジルコニアの分類
2 ジルコニアの微細構造
3 ジルコニアの性質
第2節 ジルコニアの研磨
1 ジルコニア用研削材
2 ジルコニア用研磨剤
3 ジルコニアに適する研削・研磨の方法
4 対合歯の摩耗
5 ジルコニアの研磨の基本
第3節 ジルコニアの焼成
1 焼結プロセス
2 ジルコニア高密度焼結体の製造要件
3 ジルコニア用焼成電気炉
4 ジルコニアの焼成スケジュール
5 焼成収縮
6 結晶粒径
7 硬さ
8 透光性
9 焼成前に付着した汚染物質の影響
10 焼結による変形の抑制
第4節 ジルコニアの低温劣化対策
1 ジルコニアの低温劣化
2 ジルコニアの低温劣化が生じやすい条件
3 ジルコニアの口腔内での低温劣化
4 高透光性ジルコニアの低温劣化
5 焼成温度と劣化
6 ジルコニアの低温劣化の抑制
第5節 ジルコニアの着色
1 ジルコニアの透光性
2 アルミナ粒子の光散乱
3 着色液
4 プリシェード型半焼結ジルコニア
5 積層型ジルコニア
6 表面ステインおよびグレーズ
7 蛍光性の付与
8 透光性改良材
第6節 ジルコニアの臨床応用(奥田祐司)
1 ジルコニアの分類と使い分け
2 フルジルコニア冠のための支台歯形成
3 CAD/CAMを用いた技工
4 フルジルコニア冠の製作手順
5 ジルコニアの咬合調整および研磨
6 ジルコニアの接着
7 フルジルコニア冠の臨床例
8 再治療が必要になった場合
第7節 ジルコニアの接着操作
ジルコニアの接着操作(1) ホスホン酸系モノマーを用いた接着 松風(信野和也)
ジルコニアの接着操作(2) リン酸エステル系モノマー+シランカップリングによる接着 クラレノリタケデンタル(藤村優介)
第2項 ガラスセラミックス
第1節 ガラスセラミックスの種類と性質
1 ガラスセラミックスとは?
2 ガラスセラミックス系CAD/CAMマテリアルの種類
(1)長石系
(2)リューサイト系
(3)2ケイ酸リチウム系
(4)メタケイ酸リチウム系
3 ガラスセラミックス系CAD/CAMマテリアルの性質
(1)熱膨張係数
(2)透光性
(3)機械的性質
(4)化学的性質
(5)接触角と生物学的性質
(6)摩耗特性
第2節 ガラスセラミックス系CAD/CAMマテリアルの接着操作
リン酸エステル系モノマー+シランカップリングによる接着 ジーシー(松本尚史)
第3章 レジン系CAD/CAMマテリアル
第1項 レジン系CAD/CAMマテリアルの種類
1 レジン系歯科修復物を製作するためのCAD/CAMシステム
2 歯科修復物を製作するためのレジン系CAD/CAMマテリアル
3 CAD/CAM用PMMA
4 CAD/CAM用繊維強化レジン
5 CAD/CAM用コンポジットレジン
6 CAD/CAM用ワックス
7 CAD/CAM用模型材
8 スーパーエンプラ
第2項 保険適用CAD/CAMハイブリッドレジンの特徴
1 保険適用とその後の進展
2 CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンの微細構造
3 CAD/CAMハイブリッドレジン冠の耐久性
第3項 レジン系CAD/CAMマテリアルの接着操作
1 レジン系材料の接着操作(1) フィラーに作用するリン酸エステル系モノマー+シランカップリングによる接着 ジーシー(石塚 創)
2 レジン系材料の接着操作(2) レジンマトリックスによる接着 松風(長藤明博)
第4章 金属系CAD/CAMマテリアル
第1項 金属系CAD/CAMマテリアルの種類と性質
1 金属系CAD/CAMマテリアルの種類
(1)切削法
(2)SLM法
(3)EBM法
(4)切削・焼結法
2 金属系CAD/CAMマテリアルの性質
(1)陶材との溶着
(2)製作方法による性質の違い
(3)適合精度
第2項 金属系CAD/CAMマテリアルの接着操作
メタルプライマーによる接着 クラレノリタケデンタル(藤村優介)
Coffee break (1) こんなところに!ジルコニア
Coffee break (2) CZダイヤモンド
1 CAD/CAMの歯科応用
2 CAD/CAMマテリアルの所要性質
3 CAD/CAMマテリアルの種類
4 CAD/CAMマテリアルの需要動向
第2章 セラミックス系CAD/CAMマテリアル
第1項 ジルコニア
第1節 ジルコニアの種類
1 歯科用ジルコニアの分類
2 ジルコニアの微細構造
3 ジルコニアの性質
第2節 ジルコニアの研磨
1 ジルコニア用研削材
2 ジルコニア用研磨剤
3 ジルコニアに適する研削・研磨の方法
4 対合歯の摩耗
5 ジルコニアの研磨の基本
第3節 ジルコニアの焼成
1 焼結プロセス
2 ジルコニア高密度焼結体の製造要件
3 ジルコニア用焼成電気炉
4 ジルコニアの焼成スケジュール
5 焼成収縮
6 結晶粒径
7 硬さ
8 透光性
9 焼成前に付着した汚染物質の影響
10 焼結による変形の抑制
第4節 ジルコニアの低温劣化対策
1 ジルコニアの低温劣化
2 ジルコニアの低温劣化が生じやすい条件
3 ジルコニアの口腔内での低温劣化
4 高透光性ジルコニアの低温劣化
5 焼成温度と劣化
6 ジルコニアの低温劣化の抑制
第5節 ジルコニアの着色
1 ジルコニアの透光性
2 アルミナ粒子の光散乱
3 着色液
4 プリシェード型半焼結ジルコニア
5 積層型ジルコニア
6 表面ステインおよびグレーズ
7 蛍光性の付与
8 透光性改良材
第6節 ジルコニアの臨床応用(奥田祐司)
1 ジルコニアの分類と使い分け
2 フルジルコニア冠のための支台歯形成
3 CAD/CAMを用いた技工
4 フルジルコニア冠の製作手順
5 ジルコニアの咬合調整および研磨
6 ジルコニアの接着
7 フルジルコニア冠の臨床例
8 再治療が必要になった場合
第7節 ジルコニアの接着操作
ジルコニアの接着操作(1) ホスホン酸系モノマーを用いた接着 松風(信野和也)
ジルコニアの接着操作(2) リン酸エステル系モノマー+シランカップリングによる接着 クラレノリタケデンタル(藤村優介)
第2項 ガラスセラミックス
第1節 ガラスセラミックスの種類と性質
1 ガラスセラミックスとは?
2 ガラスセラミックス系CAD/CAMマテリアルの種類
(1)長石系
(2)リューサイト系
(3)2ケイ酸リチウム系
(4)メタケイ酸リチウム系
3 ガラスセラミックス系CAD/CAMマテリアルの性質
(1)熱膨張係数
(2)透光性
(3)機械的性質
(4)化学的性質
(5)接触角と生物学的性質
(6)摩耗特性
第2節 ガラスセラミックス系CAD/CAMマテリアルの接着操作
リン酸エステル系モノマー+シランカップリングによる接着 ジーシー(松本尚史)
第3章 レジン系CAD/CAMマテリアル
第1項 レジン系CAD/CAMマテリアルの種類
1 レジン系歯科修復物を製作するためのCAD/CAMシステム
2 歯科修復物を製作するためのレジン系CAD/CAMマテリアル
3 CAD/CAM用PMMA
4 CAD/CAM用繊維強化レジン
5 CAD/CAM用コンポジットレジン
6 CAD/CAM用ワックス
7 CAD/CAM用模型材
8 スーパーエンプラ
第2項 保険適用CAD/CAMハイブリッドレジンの特徴
1 保険適用とその後の進展
2 CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンの微細構造
3 CAD/CAMハイブリッドレジン冠の耐久性
第3項 レジン系CAD/CAMマテリアルの接着操作
1 レジン系材料の接着操作(1) フィラーに作用するリン酸エステル系モノマー+シランカップリングによる接着 ジーシー(石塚 創)
2 レジン系材料の接着操作(2) レジンマトリックスによる接着 松風(長藤明博)
第4章 金属系CAD/CAMマテリアル
第1項 金属系CAD/CAMマテリアルの種類と性質
1 金属系CAD/CAMマテリアルの種類
(1)切削法
(2)SLM法
(3)EBM法
(4)切削・焼結法
2 金属系CAD/CAMマテリアルの性質
(1)陶材との溶着
(2)製作方法による性質の違い
(3)適合精度
第2項 金属系CAD/CAMマテリアルの接着操作
メタルプライマーによる接着 クラレノリタケデンタル(藤村優介)
Coffee break (1) こんなところに!ジルコニア
Coffee break (2) CZダイヤモンド

















