やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 “審美修復治療”というと,かつては全周削ってクラウンにする治療,と誤解されることもしばしばであったが,「機能性と審美性を両立し,生体とも調和し,構造的にも長持ちする」いわゆる“Function““Esthetic”“Biology““Structure”の4原則を満たす治療という認識が歯科界でも少しずつ定着しつつあるように思われる.
 しかし,実際にわれわれが講習会などで若手の先生から質問を受けると,意外と基本的な事項を認識されていないことに驚かされる.これは,ある意味,簡単に情報が入手できるようになったことの弊害ではないだろうか.審美,インプラントといった治療は,本来はアドバンスな治療なのだが,情報,器具,材料などが簡単に入手できるようになり,たとえ経験が不足していても,その成否は別として,治療自体を行うことはできるようになった.しかし本来は,歯内療法,歯周治療,補綴治療などさまざまな基本的な手技を積み重ねて,その上に審美修復治療やインプラント治療が成り立つのである.
 そこで本書においては,まずは基本的な治療の流れに沿って,その考え方やマネジメントについて記した.そして,若手の先生方に症例を提示していただき,症例のポイントについて論じている.読者の方々も,ご自身がこの症例を手がけるとしたらどのような点に注意して治療するか,一緒に考えながら読み進めていただければ理解もより深まるのではないだろうか.
 また本書は,隔月刊『補綴臨床』誌上において2007年9月号から現在に至るまで続いている連載を再構成したものである.書籍化にあたり,当時,各先生方に提示していただいた症例のその後の経過も可能な限り掲載した.
 これから審美修復治療に取り組もうと考えている先生はもちろんのこと,すでに経験を積まれている先生まで,本書が多くの先生方の臨床の一助となれば幸いである.
 2011年9月
 東京都世田谷区・ウエマツ歯科医院
 植松厚夫
 東京都中央区・ノブデンタルオフィス
 北原信也
 序文
 目次
序章 審美修復治療の流れ
Part1 基礎資料の収集と診査・診断
 Case Study1(小原正嗣)
Part2 診断用ワックスアップ
 Case Study2(西 耕作)
 Case Study3(徳田将典)
Part3 プロビジョナルレストレーション
 Case Study4(徳田将典)
 Case Study5(西 耕作)
Part4 最終補綴物の製作
 Chapter1 オールセラミックスの基礎知識
 Chapter2 ラミネートベニア
 Chapter3 ラボコミュニケーション
 Chapter4 さまざまな患者の要望に応える審美修復治療
 Case Study6(加部聡一)
 Case Study7(加部聡一)
Part5 矯正治療との連携
 Case Study8(浦 嘉訓)
Part6 インプラント
 Chapter1 前歯部領域のインプラント治療
 Case Study9(松尾幸一)
 Chapter2 GBRを伴う処置
 Case Study10(田中志歩)
 Chapter3 臼歯部領域におけるインプラント治療

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