やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯周病は別名“沈黙の病(silent disease)”と言われています.歯周病にかかっていてもむし歯と違って痛みを感じることが少なく,病気になっていることを自覚しないまま放置して,気がついたときには取り返しがつかない状態になっていることが多いからです.
 歯周病はかつては“歯槽膿漏”と呼ばれていたため,なんとなく中高年からの病気というイメージがありますが,25歳以上の成人の約8割が歯周病に罹患しているというデータもあり,最近では10代,20代といった若い人たちにも歯周病が広がっていることが報告されています.
 歯周病は放っておけば歯が抜け落ちてしまう怖い病気ですが,予防可能な病気でもあります.たとえ歯周病にかかったとしても,ブラッシングなど患者さんの努力と,適切な治療がなされれば,歯を抜かずに治すことができます.できれば歯周病にならないよう予防する,あるいはなるべく軽症のうちに治療を始めて健康を取り戻し,その後の歯科医院での定期検診と自己努力により,生涯よい状態を保っていただきたいと願っています.
 歯周病にはさまざまな治療法がありますが,この本は主として“患者さんがご自身の努力によって健康を取り戻すために助力をする医療”の立場で構成してあります.
 前半では歯周病について知っていただきたいこと,後半ではどんなふうに治すかということと,治療の実例をご紹介してあります.重症の歯周病になってしまったけれども,これから頑張ってよくしたいという方にも,ぜひ読んでいただきたいと思います.
 2006年 夏 小西昭彦
(1)さっそくチェックしてみましょう
(2)口の中の観察
 ―歯肉観察のポイント―
(3)歯肉の炎症は手当てをすれば治ります
(4)歯肉だけでは進行度はわからない!
 ―どちらが重症でしょうか?―
 ―歯周病は,外界とのバリアーが壊され,骨が溶ける病気―
(5)歯周病の進行
 ―外界とのバリアーが破られ,歯周ポケットができます―
 ―歯を支える骨が破壊されます―
(6)歯周病の進行とX線写真
(7)歯周病との戦い方
 ―感染症としての歯周病―
 ―生活習慣病としての歯周病―
(8)歯周病治療の主役はあなたです
 ―歯周病治療は患医共同作戦―
(9)治療のブラッシング
 ―ブラッシングの処方せん―
 ―ブラッシング時の5つの注意点―
 ―治療のブラッシングは3段階―
 ―使用する歯ブラシと磨く順序―
(10)ブラッシングのステップ
 ―第1段階・プラーク除去のブラッシング―
 ―第2段階・歯肉回復のブラッシング―
 ―第3段階・再発防止のブラッシング―
(11)歯周病原菌の攻撃をはね返す
(12)歯周病の治り方
 ―軽度歯周炎の治り方―
 ―中等度歯周炎の治り方―
 ―重度歯周炎の治り方―
 ―失われた歯間乳頭も回復します―
 ―溶けた骨もよみがえります―
あとがき・参考資料
コラム
 歯を失う原因 デンタルプラーク(歯垢)と歯石 喫煙者の歯肉 歯周病と早産・低体重児 予防 歯肉は体調のバロメーター 唾液の毒消し効果 腹式呼吸でなごむ心 歯科衛生士の指導日記から(1) 歯科衛生士の指導日記から(2)