やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Prologue
 はじめまして.「ペイント番長」こと横田浩史(よこたひろふみ)です.最近,ペイント番長として講演やレクチャーのオファーをいただけるようになり,様々な土地で多くの仲間たちにお会いすることができるようになりました.ラボに篭ってひたすらステイン法に没頭するのではなく,参加者と膝を突き合わせて,ステイン法の「何に期待しているのか?」「何に不満を持っているのか?」「何を習得したいのか?」を直接聞け,その声はその後に大きな財産とモチベーションになっています.同様に患者や歯科医師の声にも常に耳を傾けるようにしています.
 特に近年は,歯科用CAD/CAMシステムやステイン材料進化のスピードも速く,それらの普及に伴ってステイン法(表面ステイン法)も次第に術者に受け入れられるようになってきました.ただ,臨床においてステイン法が確立されてからの日は築盛法などと比べても浅く,知識も経験も共有されていないのが現状です.その分,まだまだ伸び代のある面白いテクニックでもあることは間違いありません.
 ステイン法については約2年間,月刊「歯科技工」誌上にて「表面/内部ステイン法解体新書」という形で,渡邉一史氏と共に連載をさせていただきました.内部ステイン法については,既刊の『実践 内部ステインテクニック』に譲るとして,今回はその内容をモノリシック材における表面ステイン法のみに特化し,修正・アップデート,及び書き下ろしを追加したものが本書になります.
 本書では,ペイント番長と称する筆者が長年の日常臨床から学び得たテクニックを,「ステイン法のちょっとしたアドバイス」として紹介していきます.モノリシック補綴物だけではなく,築盛法と併用した表面ステインの参考にもなれば幸いです.
 2020年6月吉日
 横田浩史(ペイント番長)
 Ouverture
I ステイン法を始める前に
 1.ステイン法って初心者向きなんですか?
  ─筆者の考えるステイン法の立ち位置
 2.何を揃えたら良いんですか?
  ─ステイン法に必要な材料・器材
 3.始める前に何を覚えたら良いですか?
  ─彩色に必要な基礎知識
 4.焼成は何回くらいすれば良いんですか?
  ─焼成回数の考え方とそれぞれの役割
 5.歯の特徴が見えません……
  ─歯の特徴をどのように捉えるか?
II 3回焼成ステイン法の実践
 1.Foundation
  ─色の調和,ベース色の調整と淡い色
 2.Characterization (1)
  ─白帯,白線,白濁の描き方
 3.Characterization (2)
  ─切縁の透明感とインサイザイルヘイロー,マメロンの描き方
 4.Characterization (3)
  ─クラックライン,ヘアラインの描き方
 5.Glaze
  ─コーティングと質感の付与
 6.歯肉色の再現
  ─母材の色調遮蔽と自然な歯肉の描き方
III トラブルシューティング
 1.予期せぬことが起こった……
  ─材料,道具,周辺機器の取り扱いの注意点
 2.うまく描けない……
  ─彩色にまつわるトラブル
 3.色が合わない,合わせられない……
  ─色にまつわるトラブル
 4.理想的な形が作れない……
  ─形態にまつわるトラブル
 5.「色を変えてくれ」と言われた……
  ─色変更,色修正の指示にどう対応するか?

 Case Report

 Mini Talk(Column)
  (1)ステイン法開始当時のレシピ
  (2)ハンドメイド筆の製作
  (3)天然歯の複印象による石膏モデルの製作方法
  (4)ペイント番長のステイン法創世記
  (5)フリカケ法による焼成前処理の効果
  (6)ナチュラルハーモニーを彩色に活かす
  (7)切縁部の透明感を表現するアドバンステクニック
  (8)汚れ(ステイン)の彩色
  (9)支台歯色のマスキング処理
  (10)完成後の追加修正