やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯科衛生士は大変可能性のある職業だと思います.
 歯科衛生士の活動範囲は,どんどん広がり,現在では,寝たきり者や要介護者等に対する訪問口腔ケア,食育支援,高齢者における摂食・嚥下機能訓練など,歯科保健指導の分野における活躍も期待されています.
 また,歯科は定期的なメインテナンスが重要となっています.長きにわたり患者さんと関わっていくなかで,歯科衛生士は患者さんにとっても,何でも話しやすい身近な専門家として頼りにされる存在となっているのではないでしょうか.
 こうしたなかで,歯科衛生士には,う蝕や歯周病に関する知識だけでなく,より広範囲の知識が求められるようになってきました.
 本書のテーマである顎関節症は難しい疾患であると考えられていますが,基本的なことを知っていれば,そのほとんどはそれほど難しい症例ではありません.また,顎関節症を知ることで咀嚼筋,顎関節への対応法,力のコントロール,そして,コミュニケーション力,ストレスなどの心理社会的要因をもった患者さんへの対処についても理解することができ,日常臨床のスキルも上がるはずです.
 以上のようなことを考え,歯科衛生士の皆さんに,もっと顎関節症を知ってもらいたいと思い本書を上梓しました.本書は,実際に顎関節症治療に関わっている歯科衛生士にも参加していただき,なるべく歯科衛生士の目線で,顎関節症の基本から実際の対処法までをわかりやすく解説しました.
 ぜひ,顎関節症を理解することで,皆さん自身のスキルをあげるとともに,より多くの人を笑顔にしてあげてください!
 島田 淳
CHAPTER 1 顎関節症って何?
 01 顎関節症の考え方―どんな症状があるのだろう?―(島田 淳)
 02 顎関節症治療に必要な解剖の知識(島田 淳)
 03 歯周病メインテナンスと顎関節症の関係(根橋杏未)
 歯科衛生士からみた顎関節症(1)―患者さんを知ることの大切さ―(根橋杏未)
CHAPTER 2 顎関節症を知ろう!
 01 顎関節症の鑑別診断と病態分類(澁谷智明)
 02 顎関節症の診察・検査,診断,治療の流れ(澁谷智明)
 03 歯科衛生士はどこまでできる?(日玲奈)
 歯科衛生士からみた顎関節症(2)―歯科保健指導のなかの顎関節症治療―(日玲奈)
CHAPTER 3 なぜ顎関節症になるのだろう?
 01 顎関節症のリスク因子(佐藤文明)
 02 かくれ顎関節症を見つけよう―一般患者さんのここを診る―(佐藤文明)
 03 生活習慣と顎関節症(佐藤文明)
 04 歯ぎしりとTCH(佐藤文明)
 05 歯科衛生士が顎関節症と関わるポイント(兜森彩日)
 歯科衛生士からみた顎関節症(3)―これまでの歯科衛生指導との違い―(兜森彩日)
CHAPTER 4 顎関節症の診察と検査をしよう!
 01 既往歴とは?―服薬状態も聞こう―(澁谷智明)
 02 医療面接を知ろう(島田 淳)
 03 咀嚼筋と顎関節を触診しよう(澁谷智明)
 04 下顎運動を確認しよう―動かない,音がする―(佐藤文明)
CHAPTER 5 顎関節症を治そう!
 01 疾患教育,病態説明とインフォームド・コンセント(島田 淳)
 02 食事指導と生活習慣・悪習癖・TCHの是正(佐藤文明)
 03 プロフェッショナルケアとセルフケア(島田 淳)
 04 理学療法―物理療法と運動療法―(島田 淳)
 05 薬物療法(澁谷智明)
 06 アプライアンス(スプリント)療法(島田 淳)
 07 咬合治療(島田 淳)
 08 外科治療(佐藤文明)
 09 顎関節症の患者さんへの心身医学的対応とは(根橋杏未・島田 淳)
 10 歯科衛生士が行うセルフケア指導の実際―歯科医師と歯科衛生士の連携―(佐藤文明・兜森彩日・日玲奈)

 索引