やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Prologue
 歯科臨床に身を置き,早くも18年が経過した.
 セラミックワークとの出会いは歯科技工士養成校を卒業後間もなく訪れ,その神秘的な再現技法に魅了された.そして,審美修復治療に携わる喜びや楽しさは,必然的に醒めることのない情熱へと変わっていった.
 しかしながらその道のりは決して平坦なものではなく,どこか物足りなさを感じる日々も続いていた.そこには,何かしらの審美的要素を満たすエッセンスが欠如していたのだ.それは時に形態や色調の再現力であったり,歯列のバランス構成であったりした.また,技術的な問題とは別に,そもそもの修復条件さえ整っていないことに気付けないこともあった.
 審美修復治療がもたらす結果は,患者のみならず術者にとっても大きな喜びを反映してくれるが,その反面,見た目の評価というものは残酷なまでに正直であった.
 本書は,ここ10年を費やして撮り溜めた症例を一冊にまとめたものであるが,それぞれの治療背景や製作過程等を十分に想い浮かべながらご高覧いただければ幸いである.
 口腔内印象が到着してから,模型上で想像を巡らせ製作した補綴装置が,わずかな緊張感を帯びながら口腔内へと装着される瞬間を,ぜひとも想い描いていただきたい.
 そして,修復治療が無事完成にたどりつくためには,チェアサイドとの緊密な連携と相互の信頼関係が何よりも欠かせないということを感じ取っていただきたい.
 そのうえで,審美修復治療の持つ可能性や趣を改めて感じ,歯科技工士として何ができるのか,また何をするべきなのか,読者諸氏にとってその道筋を心に明確に描くためのきっかけの一部となることを静かに願いたい.
 そんな願いを込めた本書のタイトル『Envisage』であるが,セドナの広い夜空の下で林 直樹先生よりアドバイスをいただいたことを今でも鮮明に思い出す.常に,新たなチャレンジと指標を示して下さる林先生には,この場を借りて尊敬の念を伝えさせていただきます.
 最後に,筆者をパートナーとして受け入れ,日常臨床からも多大な理解とご協力をいただいている歯科医師の先生方,そしてこれまでのRay Dental Laborを支えてくれたスタッフや関係者の皆様,また常に全力でサポートして下さるIvoclar Vivadent株式会社に心より感謝したい.
 Ray Dental Labor
 都築 優治
 Prologue
Case Gravures
Part 1:Mimicking Nature Maxillary Single Central Incisor
Part 2:Individuality Maxillary Central Incisors
Part 3:Harmony between Esthetic and Function
Part 4:Creations for a best smile
Ceramic Works
Behind the scenes
 Epilogue