はじめに
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は,睡眠中に呼吸が弱くなる,あるいは停止し,体内の酸素濃度が下がり,睡眠が障害されることにより,日中の眠気や頭痛,集中力の低下が生じ生活の質(QOL)を低下させる疾患です.それだけではなく,高血圧症や糖尿病,メタボリックシンドロームの発症に関与し,重症例では心血管障害や脳血管障害の危険因子となる全身性の疾患です.
日本では,全国で約500万人のOSAS患者が存在すると言われていますが,実際に治療を受けているのは2万人程度と,ごくわずかです.2003年,OSASによる睡眠障害のあった新幹線の運転士が引き起こした居眠り運転事故以来,新聞,テレビなどのメディアに取り上げられることが多くなり,病気の存在が国民に広く知られるようになりました.歯科では,2004年にOSASに対する口腔内装置治療が保険適用となったことから,歯科に寄せられる期待は高まっています.
本書では,実際の口腔内装置の作製方法,治療方法はもちろん,医科との連携に必要となるOSASに関する基本的な知識についても学ぶことができます.また,要望の多かった,医科から送られてくる終夜睡眠ポリグラフ検査の結果の読み方,さまざまな口腔内の状況に合わせた口腔内装置の設計例,医科との情報提供書の文例なども掲載しています.明日からの臨床にすぐ利用できる問診票や装置の取扱説明書なども付録につけています.本書の読み方については,基礎知識から学びたい方は最初から読んでいただき,ともかく実践を知りたい!という方は,実践編から読んでいただいてもすぐ理解できるように構成しています.また,実際の臨床での疑問点をQ&A方式で解説しています.これから睡眠歯科臨床を始める先生にとって,わかりやすく,かつ実用的な構成にしました.
人生の3分の1は睡眠です.人間の健康は食事と睡眠によって支えられています.食事に対して,歯科は今まで齲蝕や歯周病の治療により,また最近では摂食嚥下障害の治療により支えてきました.睡眠に対しても,このOSAS患者への口腔内装置治療により支えることができます.本書が先生方の臨床のお役に立つことができ,睡眠を支える歯科医療がますます発展することを願っています.
最後に,本書におけるOSASの資料集積,編集に関して大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部の方々に協力をいただきましたことに感謝の意を表します.
2014年10月
阪井 丘芳
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は,睡眠中に呼吸が弱くなる,あるいは停止し,体内の酸素濃度が下がり,睡眠が障害されることにより,日中の眠気や頭痛,集中力の低下が生じ生活の質(QOL)を低下させる疾患です.それだけではなく,高血圧症や糖尿病,メタボリックシンドロームの発症に関与し,重症例では心血管障害や脳血管障害の危険因子となる全身性の疾患です.
日本では,全国で約500万人のOSAS患者が存在すると言われていますが,実際に治療を受けているのは2万人程度と,ごくわずかです.2003年,OSASによる睡眠障害のあった新幹線の運転士が引き起こした居眠り運転事故以来,新聞,テレビなどのメディアに取り上げられることが多くなり,病気の存在が国民に広く知られるようになりました.歯科では,2004年にOSASに対する口腔内装置治療が保険適用となったことから,歯科に寄せられる期待は高まっています.
本書では,実際の口腔内装置の作製方法,治療方法はもちろん,医科との連携に必要となるOSASに関する基本的な知識についても学ぶことができます.また,要望の多かった,医科から送られてくる終夜睡眠ポリグラフ検査の結果の読み方,さまざまな口腔内の状況に合わせた口腔内装置の設計例,医科との情報提供書の文例なども掲載しています.明日からの臨床にすぐ利用できる問診票や装置の取扱説明書なども付録につけています.本書の読み方については,基礎知識から学びたい方は最初から読んでいただき,ともかく実践を知りたい!という方は,実践編から読んでいただいてもすぐ理解できるように構成しています.また,実際の臨床での疑問点をQ&A方式で解説しています.これから睡眠歯科臨床を始める先生にとって,わかりやすく,かつ実用的な構成にしました.
人生の3分の1は睡眠です.人間の健康は食事と睡眠によって支えられています.食事に対して,歯科は今まで齲蝕や歯周病の治療により,また最近では摂食嚥下障害の治療により支えてきました.睡眠に対しても,このOSAS患者への口腔内装置治療により支えることができます.本書が先生方の臨床のお役に立つことができ,睡眠を支える歯科医療がますます発展することを願っています.
最後に,本書におけるOSASの資料集積,編集に関して大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部の方々に協力をいただきましたことに感謝の意を表します.
2014年10月
阪井 丘芳
はじめに(阪井丘芳)
第1編 基礎知識編─診療の前に必要な基礎知識を身につけよう─
第1章 OSAS総論(奥野健太郎)
(1)OSASとは
(2)OSASの疫学
(3)OSASの病態
(4)OSASの原因
(5)OSASの症状
(6)OSASの全身への影響
第2章 OSASの検査・診断(野原幹司)
(1)OSASの診断基準
(2)PSG検査
(3)簡易PSG検査,パルスオキシメーター検査
第3章 OSASの治療法(佐々生康宏)
(1)CPAP治療
(2)OA治療
(3)外科的治療法
(4)その他の治療法
第2編 臨床実践編─実際の診療の流れに沿って─
Step 1 歯科での問診・診査(小谷泰子)
(1)問診
(2)エプワース眠気尺度
(3)口腔内・口腔外の診査
(4)セファログラム
Step 2 医科での検査(奥野健太郎)
(1)終夜睡眠ポリグラフ検査について
(2)検査サマリーの解読
(3)簡易PSG検査結果の解読
(4)パルスオキシメーター検査結果の解読
Step 3 口腔内装置の治療(奥野健太郎)
(1)OAの適応症
(2)口腔内の診査
(3)OAの技工操作
(4)OAの装着
(5)OAの調整
Step 4 OA治療の評価・管理(奥野健太郎)
(1)歯科における治療評価
(2)医科における治療評価
(3)歯科での管理
第3編 Q&A編─OSAS臨床でよくある疑問を解説─
(奥野健太郎)
Q1 OAの効果が不十分だった場合には,どうしたらよいですか?
Q2 患者がなかなか睡眠検査を受けてくれません.どのように勧めればよいですか?
Q3 顎関節症の患者にもOAは適応できますか?
Q4 睡眠時ブラキシズムの患者にもOAは適応できますか?
Q5 小児OSAS患者には,どのような治療法がありますか?
Q6 OAを長期間装着することによる副作用はありますか?
Q7 CPAPとOAを併用することは有効ですか?
Q8 OA治療後も眠気が改善しない場合はどうしたらいいですか?
Q9 OAとCPAP,治療法を選択する際に,参考とする基準はありますか?
Q10 OAの下顎前方移動量は,どうやって決めるのですか?
Q11 OAに口呼吸路は必要でしょうか?
付録(奥野健太郎)
初診時問診票
眠気の自覚的評価
歯科技工指示書
スリープスプリントを装着される患者さんへ
再診時問診票
診療情報提供書
コラム(奥野健太郎)
(1)OSASと死亡率
(2)OSAS以外の睡眠障害─107種類もある睡眠障害─
(3)突然寝てしまう病気─ナルコレプシー─
(4)足がムズムズして眠れない─むずむず足症候群─
(5)家族が大迷惑!─レム睡眠行動障害─
(6)昼夜逆転!?─概日リズム性睡眠障害─
(7)セファロで発見された舌扁桃肥大の症例
(8)OA治療における内視鏡検査の有用性
(9)良好な医科?歯科連携について
第1編 基礎知識編─診療の前に必要な基礎知識を身につけよう─
第1章 OSAS総論(奥野健太郎)
(1)OSASとは
(2)OSASの疫学
(3)OSASの病態
(4)OSASの原因
(5)OSASの症状
(6)OSASの全身への影響
第2章 OSASの検査・診断(野原幹司)
(1)OSASの診断基準
(2)PSG検査
(3)簡易PSG検査,パルスオキシメーター検査
第3章 OSASの治療法(佐々生康宏)
(1)CPAP治療
(2)OA治療
(3)外科的治療法
(4)その他の治療法
第2編 臨床実践編─実際の診療の流れに沿って─
Step 1 歯科での問診・診査(小谷泰子)
(1)問診
(2)エプワース眠気尺度
(3)口腔内・口腔外の診査
(4)セファログラム
Step 2 医科での検査(奥野健太郎)
(1)終夜睡眠ポリグラフ検査について
(2)検査サマリーの解読
(3)簡易PSG検査結果の解読
(4)パルスオキシメーター検査結果の解読
Step 3 口腔内装置の治療(奥野健太郎)
(1)OAの適応症
(2)口腔内の診査
(3)OAの技工操作
(4)OAの装着
(5)OAの調整
Step 4 OA治療の評価・管理(奥野健太郎)
(1)歯科における治療評価
(2)医科における治療評価
(3)歯科での管理
第3編 Q&A編─OSAS臨床でよくある疑問を解説─
(奥野健太郎)
Q1 OAの効果が不十分だった場合には,どうしたらよいですか?
Q2 患者がなかなか睡眠検査を受けてくれません.どのように勧めればよいですか?
Q3 顎関節症の患者にもOAは適応できますか?
Q4 睡眠時ブラキシズムの患者にもOAは適応できますか?
Q5 小児OSAS患者には,どのような治療法がありますか?
Q6 OAを長期間装着することによる副作用はありますか?
Q7 CPAPとOAを併用することは有効ですか?
Q8 OA治療後も眠気が改善しない場合はどうしたらいいですか?
Q9 OAとCPAP,治療法を選択する際に,参考とする基準はありますか?
Q10 OAの下顎前方移動量は,どうやって決めるのですか?
Q11 OAに口呼吸路は必要でしょうか?
付録(奥野健太郎)
初診時問診票
眠気の自覚的評価
歯科技工指示書
スリープスプリントを装着される患者さんへ
再診時問診票
診療情報提供書
コラム(奥野健太郎)
(1)OSASと死亡率
(2)OSAS以外の睡眠障害─107種類もある睡眠障害─
(3)突然寝てしまう病気─ナルコレプシー─
(4)足がムズムズして眠れない─むずむず足症候群─
(5)家族が大迷惑!─レム睡眠行動障害─
(6)昼夜逆転!?─概日リズム性睡眠障害─
(7)セファロで発見された舌扁桃肥大の症例
(8)OA治療における内視鏡検査の有用性
(9)良好な医科?歯科連携について














