序
近年,さまざまな研究が進み,質の高いEvidenceを簡単にインターネットで入手することが可能となりました.さらにそうした研究に基づいた新しい治療器具や薬剤が次々と開発され,日本においても応用が可能となってきています.
しかし,最新のEvidenceや新しい器具・薬剤を使用するだけで,歯内療法を成功に導くことができるのでしょうか.私たちはEvidenceにしても,新しい材料にしても,それを本当に臨床に生かせているのでしょうか.
たとえば,多々あるNiTiロータリーファイルのなかで,最も折れにくく,そして切削効率も高いファイルが研究によって明らかにされた場合,そのファイルを使いさえすれば誰もが同じように歯内療法を成功に導けるのでしょうか.また,さまざまな次亜塩素酸ナトリウム濃度のなかで,最も安全で消毒効果が高いとされる濃度が明らかにされた場合,それを使用すれば,誰もが根管内を適切に消毒できるのでしょうか.
本書では,こうした歯科治療の核心に迫りたいと思います.
これまで行ってきた手技で,本当に根管清掃をはじめとする基本操作が達成されているのか.これが本書の命題です.新しい治療器具,材料,薬剤が日進月歩で発表されるなかで,現実的に何をどう使用すれば,安全に,そして効果的な治療を提供できるのでしょうか.
私は歯内療法専門医ではありません.あくまでも一般開業医(General Practitioner:GP)として,現実的に私たちの日常歯内療法の質を少しでも高めるために,どのような工夫ができるのかについて,教科書的な記述はなるべく避け,すべてにおいて臨床の実際の場面を中心に,可能なかぎりEvidence Basedに解説させていただいたつもりです.
本書は2010年4月から2011年6月までの15ヵ月間,歯界展望誌において連載された内容に,新しい臨床症例を加えて加筆修正したものです.ここにまとめた内容が,GPである先生方の日常歯内療法にほんの少しでもお役に立つことができたとしたら,また一人でも多くの患者さんの歯を残すことにつながるとしたら,歯科医師としてこれ以上の喜びはありません.
2012年8月
阿部 修
近年,さまざまな研究が進み,質の高いEvidenceを簡単にインターネットで入手することが可能となりました.さらにそうした研究に基づいた新しい治療器具や薬剤が次々と開発され,日本においても応用が可能となってきています.
しかし,最新のEvidenceや新しい器具・薬剤を使用するだけで,歯内療法を成功に導くことができるのでしょうか.私たちはEvidenceにしても,新しい材料にしても,それを本当に臨床に生かせているのでしょうか.
たとえば,多々あるNiTiロータリーファイルのなかで,最も折れにくく,そして切削効率も高いファイルが研究によって明らかにされた場合,そのファイルを使いさえすれば誰もが同じように歯内療法を成功に導けるのでしょうか.また,さまざまな次亜塩素酸ナトリウム濃度のなかで,最も安全で消毒効果が高いとされる濃度が明らかにされた場合,それを使用すれば,誰もが根管内を適切に消毒できるのでしょうか.
本書では,こうした歯科治療の核心に迫りたいと思います.
これまで行ってきた手技で,本当に根管清掃をはじめとする基本操作が達成されているのか.これが本書の命題です.新しい治療器具,材料,薬剤が日進月歩で発表されるなかで,現実的に何をどう使用すれば,安全に,そして効果的な治療を提供できるのでしょうか.
私は歯内療法専門医ではありません.あくまでも一般開業医(General Practitioner:GP)として,現実的に私たちの日常歯内療法の質を少しでも高めるために,どのような工夫ができるのかについて,教科書的な記述はなるべく避け,すべてにおいて臨床の実際の場面を中心に,可能なかぎりEvidence Basedに解説させていただいたつもりです.
本書は2010年4月から2011年6月までの15ヵ月間,歯界展望誌において連載された内容に,新しい臨床症例を加えて加筆修正したものです.ここにまとめた内容が,GPである先生方の日常歯内療法にほんの少しでもお役に立つことができたとしたら,また一人でも多くの患者さんの歯を残すことにつながるとしたら,歯科医師としてこれ以上の喜びはありません.
2012年8月
阿部 修
Prologue
第1編 根管治療を考える/Evidenceに基づいた治療とは
第1章 治らないエンドの原因を考える
1 歯内療法の成功条件とは?
2 難しい歯内療法/なぜ治らないのか?
3 Evidenceは溢れているのに
第2章 GPの歯内療法/Evidenceに基づいた治療とは?
1 Evidenceが臨床に生かされているのか?
2 EBMのその前に
3 細菌(感染源)との戦い
4 治療によって感染させていないか?
5 歯内療法の現実
Column 1 ラバーダムのための浸潤麻酔
Column 2 抜歯を避けることの意義
6 歯科におけるEvidenceと歯内療法
第2編 実践・根管治療/NiTiロータリーファイルの活用
第3章 根管清掃は本当にできているのか?
1 根管清掃のスタンダードとは?
2 機械的根管清掃と化学的根管清掃
3 機械的根管清掃は本当にできているのか?
Column 3 実験/根管拡大はできているのか?
4 機械的根管清掃の質を上げるために
5 化学的根管清掃/おもに何を用いるか?
6 スメア層への対応
7 化学的根管清掃は本当にできているのか?
Column 4 実験/根管洗浄液は根尖まで到達しているのか?
8 化学的根管清掃の質を上げるために
Column 5 実験/根管洗浄液は根尖孔外に溢出していないのか?
Column 6 根管バキューム/ただ入れるだけではデブリを押し込む可能性がある
9 化学的洗浄において,決して無視できない根管洗浄薬剤の危険性
10 根管清掃の質を上げるために必要な根管清掃プロトコルとは?
Column 7 根管中央部まで入れた超音波ファイルで,根尖部の薬剤は撹拌されるか?
11 実験をすることで基本手技の大切さを知る
第4章 根管拡大のコンセプト
1 どこまで拡大するべきか?
2 何号まで根管拡大形成するべきか?
3 抜髄根管における拡大
4 感染根管における拡大
5 穿通できない場合,どうしたらよいか?
第5章 NiTiロータリーファイルの活用
1 NiTiロータリーファイルは有効か?
2 NiTiロータリーファイルのメリット
3 NiTiロータリーファイルのデメリット
4 積極的に,かつ安全第一に
第6章 NiTiロータリーファイルの破折を予防する
1 NiTiロータリーファイルの使用は危険か?
2 ファイルの破折を予防するための知識
3 ファイルの破折を予防するための臨床手技
4 練習は破折リスクを減少させるか?
5 NiTiロータリーファイルを使用するうえで大切なこと
第7章 NiTiロータリーファイルによる臨床の実際
1 グライドパスの確認後に使用する/ハンドファイルとの併用
2 クラウンダウンテクニック
3 臨床の実際/ProTaper Universalシステム
4 臨床の実際/Twisted Files
Column 8 最新のNiTiロータリーファイル
5 NiTiロータリーファイルの交換時期
6 ファイル洗浄の問題
7 次亜塩素酸ナトリウムはNiTiロータリーファイルを劣化させるか?
第8章 根管貼薬のスタンダードとは?
1 根管貼薬には何を使用するのが効果的なのか?
2 根管貼薬は必要か?
3 水酸化カルシウムですべて解決するのか?
4 根管貼薬効果を確実に上げるために
5 水酸化カルシウムの貼薬と除去
6 仮封は本当にできているのか?
Column 9 簡易防湿というタブー
第9章 根管充填から支台築造,そして歯冠補綴/GPはすべてを行う
1 歯内療法の成功は歯冠補綴の質にも左右される
2 よりよい根管充填を求めて
3 自分の歯内療法の質を常に検証する
4 根管充填の危険性
5 根管充填,どこを目指すのか?
6 理想的な支台築造とは?
7 完璧な歯内療法は不可能/常に将来への備えを!
第3編 歯内療法の成功のために/難症例への対応
第10章 歯内療法の成功基準・臨床成績とは?
1 システマティックレビューを利用する
2 歯内療法の成功率はどの程度なのか?
3 成功率の低い歯内療法? 成功率の高いインプラント治療?
4 まずは歯内療法の質を上げる努力を!
Column 10 無症状の根尖病巣/治療するかしないか?
第11章 患者さんに知っておいてもらうべきこと
1 治っていない歯科治療
2 難しい歯内療法/けれども簡単にあきらめないこと
第12章 治りにくい症例への対応
1 難症例とは何か?
2 GPがどこまで対応すべきなのか?
3 治りにくい10症例への対応
4 なぜ治りにくい症例となってしまうのか?
5 基本手技の質を確実に高めることが解決につながる
Column 11 そのCTスキャンは本当に必要なのか?
Epilogue
使用器材・薬剤
さくいん
あとがき
第1編 根管治療を考える/Evidenceに基づいた治療とは
第1章 治らないエンドの原因を考える
1 歯内療法の成功条件とは?
2 難しい歯内療法/なぜ治らないのか?
3 Evidenceは溢れているのに
第2章 GPの歯内療法/Evidenceに基づいた治療とは?
1 Evidenceが臨床に生かされているのか?
2 EBMのその前に
3 細菌(感染源)との戦い
4 治療によって感染させていないか?
5 歯内療法の現実
Column 1 ラバーダムのための浸潤麻酔
Column 2 抜歯を避けることの意義
6 歯科におけるEvidenceと歯内療法
第2編 実践・根管治療/NiTiロータリーファイルの活用
第3章 根管清掃は本当にできているのか?
1 根管清掃のスタンダードとは?
2 機械的根管清掃と化学的根管清掃
3 機械的根管清掃は本当にできているのか?
Column 3 実験/根管拡大はできているのか?
4 機械的根管清掃の質を上げるために
5 化学的根管清掃/おもに何を用いるか?
6 スメア層への対応
7 化学的根管清掃は本当にできているのか?
Column 4 実験/根管洗浄液は根尖まで到達しているのか?
8 化学的根管清掃の質を上げるために
Column 5 実験/根管洗浄液は根尖孔外に溢出していないのか?
Column 6 根管バキューム/ただ入れるだけではデブリを押し込む可能性がある
9 化学的洗浄において,決して無視できない根管洗浄薬剤の危険性
10 根管清掃の質を上げるために必要な根管清掃プロトコルとは?
Column 7 根管中央部まで入れた超音波ファイルで,根尖部の薬剤は撹拌されるか?
11 実験をすることで基本手技の大切さを知る
第4章 根管拡大のコンセプト
1 どこまで拡大するべきか?
2 何号まで根管拡大形成するべきか?
3 抜髄根管における拡大
4 感染根管における拡大
5 穿通できない場合,どうしたらよいか?
第5章 NiTiロータリーファイルの活用
1 NiTiロータリーファイルは有効か?
2 NiTiロータリーファイルのメリット
3 NiTiロータリーファイルのデメリット
4 積極的に,かつ安全第一に
第6章 NiTiロータリーファイルの破折を予防する
1 NiTiロータリーファイルの使用は危険か?
2 ファイルの破折を予防するための知識
3 ファイルの破折を予防するための臨床手技
4 練習は破折リスクを減少させるか?
5 NiTiロータリーファイルを使用するうえで大切なこと
第7章 NiTiロータリーファイルによる臨床の実際
1 グライドパスの確認後に使用する/ハンドファイルとの併用
2 クラウンダウンテクニック
3 臨床の実際/ProTaper Universalシステム
4 臨床の実際/Twisted Files
Column 8 最新のNiTiロータリーファイル
5 NiTiロータリーファイルの交換時期
6 ファイル洗浄の問題
7 次亜塩素酸ナトリウムはNiTiロータリーファイルを劣化させるか?
第8章 根管貼薬のスタンダードとは?
1 根管貼薬には何を使用するのが効果的なのか?
2 根管貼薬は必要か?
3 水酸化カルシウムですべて解決するのか?
4 根管貼薬効果を確実に上げるために
5 水酸化カルシウムの貼薬と除去
6 仮封は本当にできているのか?
Column 9 簡易防湿というタブー
第9章 根管充填から支台築造,そして歯冠補綴/GPはすべてを行う
1 歯内療法の成功は歯冠補綴の質にも左右される
2 よりよい根管充填を求めて
3 自分の歯内療法の質を常に検証する
4 根管充填の危険性
5 根管充填,どこを目指すのか?
6 理想的な支台築造とは?
7 完璧な歯内療法は不可能/常に将来への備えを!
第3編 歯内療法の成功のために/難症例への対応
第10章 歯内療法の成功基準・臨床成績とは?
1 システマティックレビューを利用する
2 歯内療法の成功率はどの程度なのか?
3 成功率の低い歯内療法? 成功率の高いインプラント治療?
4 まずは歯内療法の質を上げる努力を!
Column 10 無症状の根尖病巣/治療するかしないか?
第11章 患者さんに知っておいてもらうべきこと
1 治っていない歯科治療
2 難しい歯内療法/けれども簡単にあきらめないこと
第12章 治りにくい症例への対応
1 難症例とは何か?
2 GPがどこまで対応すべきなのか?
3 治りにくい10症例への対応
4 なぜ治りにくい症例となってしまうのか?
5 基本手技の質を確実に高めることが解決につながる
Column 11 そのCTスキャンは本当に必要なのか?
Epilogue
使用器材・薬剤
さくいん
あとがき








