やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 生体に異常をきたすことが病態で,それを正常化することが医療であることから,正常な構造と機能を理解する解剖学と生理学は基礎医学の中でもはじめに学習することになります.医療実施の基礎知識として生理学では全身の機能について学ばなければならず,領域が広範に過ぎると思うかもしれません.口腔の専門医になるのになぜ循環や呼吸まで勉強しないといけないのか,とは学生からよく言われる代表的な不満です.しかし,歯科医師といっても医療従事者として,人体の構造と機能は熟知することが求められます.
 近年は,正常機能と病態についての口腔と全身の関連も歯科側から注目されるようになってきました.歯科医療の実地において,全身状態を理解したうえで口腔診療を行うことが求められてきているからです.生理学に関する国試での出題も,単純な口腔の機能よりも,全身の機能と口腔を関連づけた出題が増えています.あるいは,解剖学や組織学,生化学などの知識と生理機能を総合した理解を要する設問など,出題も多岐にわたってきました.生理学に関する出題は難問化してきています.
 このような状況で,歯科医師国家試験出題基準が改定となり,本書も改訂第2版を発行することとなりました.生理学の出題基準は大きな変更はなく,本書でも皆さんにとって必要不可欠な内容は変わりなく網羅しています.そのうえで,初版発行からこれまでの国家試験で新たに出題のあった内容や学問上の新知見などもできるだけ取り入れるように試みました.ただし,本書の記載は理解のための説明よりも,学習した基本知識の確認や整理の一助になることを目的としていますので,詳細な説明は割愛しています.試験前の知識の確認には十分と想定していますが,本書だけでの学習では理解が困難な箇所もあると思います.生理学は暗記ではなく理解することが何よりも重要な科目です.内容理解については『基礎歯科生理学(第7版)』などの教科書・参考書を併用して下さい.
 それでは,本書が皆さんの生理学の理解度確認や国家試験受験準備等に役立ち,有効に活用いただけることを願っています.
 2022年10月 村本和世
Chapter 1 興奮性組織
Chapter 2 体液と血液
Chapter 3 循環器系
Chapter 4 呼吸器系
Chapter 5 腎機能と体液の調節
Chapter 6 ホルモンと内分泌
Chapter 7 感覚機能
Chapter 8 運動機能
Chapter 9 神経系と脳の高次機能
Chapter 10 自律機能・体温調節
Chapter 11 顎・口腔・顔面皮膚の体性感覚
Chapter 12 味覚・嗅覚(化学感覚)
Chapter 13 顎運動
Chapter 14 咀嚼と吸啜
Chapter 15 摂食嚥下と嘔吐
Chapter 16 唾液腺と唾液分泌
Chapter 17 消化と吸収
Chapter 18 発声と構音
 参考文献
 索引