やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「歯科放射線学って覚えることが多すぎて,どうやって勉強をすればいいかわからない」,と国家試験の勉強を始める学生たちからよく言われます.その背景に,近年の医用画像モダリティーの多様化と画像情報の利活用の高度化があげられます.現代の画像診断機器を駆使することで,以前では観察できなかった解剖学的構造や病変の微細な変化をみることができるようになりました.さらに,放射線治療装置の発達と国民の健康への意識向上により,自らのがん治療に放射線治療を選択するひとが増え,放射線生物学に対する正しい知識を患者に提供する必要性も増しています.そのこと自体は非常に素晴らしいのですが,最近の難しい歯科医師国家試験を受験する学生にとっては,新たに覚えなくてはならない歯科放射線学の知識は膨大となっています.
 今回私たちは,“歯科国試パーフェクトマスター”シリーズとして歯科放射線学をまとめるにあたり,ポケットサイズに収まりながらも,歯科医師として知っておくべき知識を取りこぼすことなく記載し,さらに最新の技術・用語などを写真と表を用いて解説することで,学生に親しみやすい本となることを目指しました.特に学生にとって難解と思われがちな放射線物理学や放射線生物学に関しては,いつも楽しく学生の気持ちになって教育を行っている村上秀明教授に執筆を依頼しました.また,中堅や若手の教員にも執筆に参加していただき,学生にとって何が知りたいか,どうすれば理解しやすいかを話し合いながら作り上げました.
 歯科放射線学を学ぶ最も大きな目的は,歯科疾患を正しく診断することです.診断「diagnosis」の語源は,ギリシャ語のdia(through)+gnosis(knowledge)です.執筆者一同,本テキストは国家試験対策のみならず,将来も必携となる実践的な知識(knowledge)が身に付くテキストであると確信しています.
 2021年8月 飯久保正弘
Chapter 1 放射線の性質と分類
 (眞嶋みなみ,村上秀明)
Chapter 2 エックス線機器,画像検査における医療情報
 (眞嶋みなみ)
Chapter 3 エックス線画像の形成
 (眞嶋みなみ,村上秀明)
Chapter 4 エックス線撮影法(口内法,口外法,パノラマ,CT)
 (飯久保正弘,小嶋郁穂)
Chapter 5 その他の画像検査法
 (小嶋郁穂,飯久保正弘)
Chapter 6 放射線の生体への影響
 (眞嶋みなみ,村上秀明)
Chapter 7 放射線防護と各種画像検査の安全管理
 (眞嶋みなみ)
Chapter 8 頭頸部の画像解剖
 (小嶋郁穂,飯久保正弘)
Chapter 9 歯および歯周組織の画像診断
 (飯久保正弘,小嶋郁穂)
Chapter 10 顎骨,顎関節および上顎洞の画像診断
 (小嶋郁穂,飯久保正弘)
Chapter 11 頭頸部軟組織の画像診断
 (小嶋郁穂,飯久保正弘)
Chapter 12 全身疾患の画像診断
 (飯久保正弘,小嶋郁穂)
Chapter 13 インプラント,嚥下,IVR
 (眞嶋みなみ)
Chapter 14 放射線治療
 (眞嶋みなみ,村上秀明)

 付録 CT,MRI正常解剖(小嶋郁穂)
 参考文献
 索引