やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 口腔インプラント治療の目的は,歯の欠損に対してインプラント体を顎骨に埋入し,これに支持された上部構造により失われた口腔機能と審美性の回復を図ることです.口腔インプラント治療を行うためには,基礎医学として解剖・組織学,病理学,微生物学,生体材料学の知識が,また臨床歯科医学としては歯科放射線学,口腔外科・麻酔学,歯科補綴学,歯周病学,矯正学の知識と医療技術が必要です.これらに加え,隣接医学や社会歯科学の知識も求められます.口腔インプラント学では,これらすべてを包括的に学習する必要があります.
 歯科疾病構造は口腔衛生の向上と高齢化により大きく変貌し,急性期疾患である小児や若年者の齲蝕は大幅に減少した半面,中・高齢者の歯科慢性疾患が増加しています.それに伴い口腔インプラント治療の社会的ニーズが高まり,呼応するように「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」や「歯科医師国家試験出題基準」における口腔インプラントの占める割合も変化しています.特に歯科医師国家試験では,以前と比較して出題数のみならず,単に口腔インプラントの基本知識を問う問題から実際の術式や使用器具に関連する設問が増加してきました.
 このような状況を踏まえて,本書では以下の点を考慮した構成といたしました.
 ・標準的な口腔インプラント学の教科書である『よくわかる口腔インプラント学第3版』に準拠し,治療手順に従って重要な項目をできるだけ簡潔に記載しました.
 ・歯科医師国家試験出題基準との整合性を図り,表や図を多用して歯科医師国家試験の出題傾向の変容に対応できる内容を加味しました.
 ・学術用語は『口腔インプラント学学術用語集第4版』と『歯科補綴学専門用語集第5版』に準拠し,歯科医師国家試験出題基準との整合性を図りました.
 本書が歯学生の卒前教育の教材として幅広く活用され,口腔インプラント学への理解がいっそう深まることを祈念しております.
 2021年3月 萩原芳幸
Chapter 1 口腔インプラント学総論
 I.インプラント治療の基本的事項
 II.生体材料(インプラント材料)
 III.オッセオインテグレーション
 IV.インプラントの成功基準
Chapter 2 検査・診断・治療計画
 I.医療面接
 II.検 査
 III.インプラントの画像診断
 IV.治療計画
Chapter 3 外科術式
 I.インプラント埋入手術
 II.骨補填材と骨伝導能,骨誘導能
 III.硬組織のマネジメント(ハードティッシュマネジメント)
 IV.軟組織のマネジメント(ソフトティッシュマネジメント)
 V.手術・外科処置に伴うトラブル・合併症
 VI.コンピュータ支援のインプラント外科手術(ガイデッドサージェリー)
Chapter 4 補綴術式
 I.インプラント補綴の基本事項
 II.上部構造の種類とアバットメント
 III.上部構造の適合性,咬合,装着
 IV.暫間上部構造の製作
 V.インプラントオーバーデンチャー
 VI.機能開始後のインプラントにみられる合併症
 VII.超高齢社会における今後の課題・問題点
Chapter 5 リコールとメインテナンス
 I.リコールとメインテナンスの基本事項
 II.インプラントと天然歯の周囲組織の違い
 III.インプラント周囲炎
 IV.支持療法(supportive therapy:SPT)

 参考文献
 索引