やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

『口腔インプラント学学術用語集 第4版』発刊にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 理事長 宮ア 隆
 日本口腔インプラント学会は前身の学会設立から間もなく50周年を迎えます.この半世紀の間に,本学会は目覚ましい発展を遂げ,わが国歯科界の最大学会に成長し,わが国におけるインプラント診療を牽引してきました.
 学会の主要な事業は,学術大会の開催,機関誌および書籍の刊行,そして専門医等の教育・研修ならびに認定になります.
 本学会では,会員だけでなくわが国の歯科医師がインプラント診療を行う際のバイブルになっている「治療指針」,および全国の歯科大学,歯学部で学部学生に対する講義・実習で使用される「実習書」を刊行し,また学会の指定研修施設で実施する研修カリキュラムを制定しています.これらでは口腔インプラント学の専門性を明確にするために,共通言語としての専門用語が重要になります.
 また,毎年開催される学術大会では多くの基礎ならびに臨床研究が発表され,機関誌である「日本口腔インプラント学会誌」で論文が公表されており,他の学術領域と整合しつつ口腔インプラント学の専門性を明確にするために,会員が使用する専門用語を規定しておく必要があります.
 このような観点から専門学会においては,学術用語集の発行は非常に重要になります.本学会の学術用語集は,鈴木和夫会長時代に初版が発行され,川添堯彬理事長時代に第2版,渡邉文彦理事長時代に第3版とその補訂版が発行されてきました.
 今回の第4版では,近年急速に発展し臨床導入が進められているデジタル歯科関係の用語の選定を中心に,全面的な見直しを行い,学会ならびに会員に必須の最新用語を選定しました.
 歯科関係者におかれましてはこの用語集を座右に置いて,日々の診療,教育・研修,ならびに研究に活用していただきたいと思います.
 最後になりましたが第4版の制作を担当していただいた村上 弘委員長ほか,用語委員会の先生方,学会事務局,医歯薬出版編集部に改めて御礼申し上げます.
 2020年4月


第4版の編集にあたって
 この数十年,口腔インプラント学は目覚ましい発展を遂げ,その包括範囲が広がりました.教育では,全国の歯科大学,歯学部で講義・実習が行われるようになり,研究では他分野と連携し,治療も広く行われるようになりました.その過程で新しい用語も次々生まれてきました.口腔インプラント学はその包括分野が広いだけでなく,それぞれの分野の専門性も高いため,統一用語の使用はコミュニケーションを図り,相互に議論を深めるために極めて重要です.また,口腔インプラント学は海外からの研究,臨床例の報告も多く,外来専門用語を安易に翻訳したり,独自の用語を作って使用したりすることは,その内容を正しく把握することが難しくなるばかりでなく,事柄の理解を惑わすことにもなりかねません.
 この『口腔インプラント学学術用語集 第4版』は宮ア 隆理事長の命を受け,公益社団法人日本口腔インプラント学会設立50周年記念の事業の一つとして企画されました.初版は鈴木和夫会長の下,斎藤 毅用語委員長を中心として口腔インプラント関連用語を整理・収載するため,9年間にわたりインプラント関連の重要用語が選定されました.第2版は初版から7年後に川添堯彬理事長の下,赤川安正先生を用語委員長として,新たな学術用語の導入,古くなった用語の整理,日本語と英語の併記など,時代のニーズに対応した編集がなされました.第3版は渡邉文彦理事長の下,諏訪文彦先生を用語委員長として,第2版の4,000語の中から1,075用語を選別し,その解説が収載されました.また,この第3版は2018年3月に窪木拓男委員長の下で補訂版が刊行され,用語の修正と71用語の追加が行われました.そして,この第4版では,昨今のデジタル化を反映して,日本デジタル歯科学会に用語の推薦を依頼し,その用語を検討し,56用語を追加しました.
 この第4版は,平成30年9月27日から令和元年12月24日のクリスマスイブまでの5回の用語委員会とその間の多くの編集,査読作業によって結実しました.平成から令和にかけて編集されたこの学術用語集が新しい時代の座右の書となることを切に願っております.
 最後になりましたが,第4版の制作に専門分野の知識を存分に発揮していただいた執筆者の先生方,学会事務局,医歯薬出版編集部に改めて御礼申し上げます.
 2020年4月
 公益社団法人日本口腔インプラント学会
 用語委員会
 委員長 村上 弘
 副委員長 加藤仁夫
 委員 児玉利朗
    高橋 哲
    西村正宏
    本田雅規
    山口秀紀
    代居 敬
    (五十音順)

『口腔インプラント学学術用語集 第3版 補訂版』公開にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 用語委員長 窪木拓男
 『口腔インプラント学学術用語集 第3版』は,2012年9月から2014年6月にかけて,諏訪文彦前用語委員長のもと,大変な努力を払って発刊されました.その際の膨大な作業は,伝説のように語り継がれております.また,第3版の内容の確定プロセスにおいても,本学会理事や研修施設の先生方にいただいた多くの貴重なご意見に対応するかたちでブラッシュアップがなされ,本学術用語集がこれまで大変慎重に,吟味を重ねて編纂されてきたことがうかがわれます.本用語集の作業スケジュールはすでに前委員会で決定されており,今期は第3版のWeb版とともに第3版補訂版をWeb版として公開することとされていました.そして,渡邉理事長の命により,諏訪委員長の後任を拝したのが私ですが,このような重大な委員会を担うなどとは思いも及ばず,当初は右も左もわからない状況でした.しかし,用語集編纂のすべてを熟知しておられる加藤仁夫副委員長をはじめ,ほぼ前期と同様の委員会メンバーのご尽力により,着々と作業を進めることができました.
 本補訂版は,第3版に含まれていた用語を修正したものと,新たに追加した用語に分かれます.これをみれば一目瞭然ですが,この数年間に口腔インプラント学では新しい学術的概念がつぎつぎ創出され,周辺診療科も含め大きく発展しています.また,この間に歯学教育のコアカリキュラムも改訂され,デンタル(歯科)インプラントと口腔インプラントという概念そのものが再定義されたこともここに明記すべきと思われます.すなわち,歯列を補うための人工歯根を指す狭義の「デンタルインプラント」という用語とは別に,我々の学会名でもある「口腔インプラント」は,顎骨再建時やサイナスリフトの際に用いる自家骨や骨補填材,メンブレンなどの移植材料を含み,ザイゴマインプラント,結合組織移植,顎顔面インプラントなどの新しい手技を含んだより広義な用語として用いられます.したがって,本学会としては,公式文書等ではその指し示す意味に照らして「口腔インプラント」という包括名称をなるべく用いていただくよう,お願いを差し上げたところです.
 診療ガイドライン同様,学術用語集も定期的に改訂がなされるべきとされます.これは,学問の進歩により,新しい治療概念が創生され,有害事象や治療効果に関係した臨床エビデンスが蓄積されるためです.今回からWeb版での公開に対応したことにより,改訂作業が比較的効率的に行われると考えます.会員の利便性や委員会活動の効率化を考えると,学術用語の電子データーベース化にさらに取り組む必要があるかもしれません.
 最後になりましたが,本補訂版の作成において,専門分野の知識を存分に発揮していただきご執筆いただいた先生方に心より御礼申し上げます.また学会事務局,医歯薬出版編集部の尽力に感謝申し上げます.
 2018年3月


『口腔インプラント学学術用語集 第3版』発刊にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 理事長 渡邉文彦
 日本口腔インプラント学会は1986年発足以来,多くの事業を次々と行ってきた.これらの学術的事業においては常に日進月歩の口腔インプラントでは海外からの新しい治療技術や材料が導入され,これに伴いインプラント用語も膨大な数と内容となり,その定義や解説の重要性が問われてきた.このような背景から用語集は斎藤 毅理事を中心に2003年に初版が上梓された.第2版は前赤川安正委員長のもとにこれらの用語の中からさらに見直しと整理を行い,日本語と英語を併記し,2011年に上梓された.これらはインプラント関連用語の抜粋であったが,昨今,急速に発展してきた口腔インプラント学に伴い専門用語としての解説が強く求められている.そこでこれらの用語の中から重要と思われる用語,また頻繁に使用される用語について諏訪文彦用語委員長のもと10名の用語委員会委員により,2014年6月をめどに解説を加えるよう依頼した.第2版の4,000語の用語から1,075用語を選択し,これについて種々な面から検討し,解説を加える作業であった.多忙の中,委員の先生方の熱意により2年間で18回の会議を経て,今度上梓の運びとなった.この事業に関してのご努力,ご尽力に際して,委員長をはじめ委員諸氏には学会員を代表し,厚く感謝を申し上げる.適切な口腔インプラント用語の定義,解説は研究発表,論文投稿,治療技術の伝達に非常に重要である.
 本『口腔インプラント学学術用語集 第3版』は昨今,インプラント治療に関連して急速に増加した新技術,材料の用語を加え,解説しており,日常臨床での正しい治療技術の伝達,また国内外での学会発表,研究論文執筆に活用していただきたい.
 2014年6月


第3版の編集にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 用語委員長 諏訪文彦
 初版が2003年に,ついで第2版が2011年に日本語と英語を併記した用語集として出版されました.この間においても,口腔インプラント学は日々進歩を遂げるとともに,学会会員も1万3千余となりました.更なる発展を遂げるには,用語を解説した学術用語集が必要であるとの認識から,改訂第3版を発行するべく,2012年に理事会で決定され,用語委員会に2年間をめどとして制作するようにとの命が出されました.これを受けて,同年9月の第1回の用語委員会を皮切りに,計18回にも及ぶ会議を経て,このたび本用語集の発刊に至りました.
 本用語集の編集方針は下記の点に留意をしました.
 ・用語は主として第2版から1,075語を選別し,解説する.
 ・本委員会で必要と考える用語を付け加える.
 ・口腔インプラント学学術用語の日本語標記をできる限り定める.
 ・第2版から汎用性の高い用語を解説する.
 ・用語の用い方をできる限り統一する.
 ・用語集は会員のみを対象とするものではなく,歯科の学生,一般人も利用できるようできる限り平易な解説文とするように努める.など
 委員会で選定した用語は選別後に理事会に提出し,ご意見をいただきました.そして,選別された用語の解説は,理事,代議員,用語委員の中から委員会で選出した方々にご執筆を依頼させていただきました.ご執筆者によって解説された用語を本委員会で再度検討を加えさせていただき,加筆あるいは修正させていただきました.さらに,編集方針にできるだけ沿っているかも検討を行い,委員会での合意を得て用語の解説としました.
 用語(言葉)は,時代とともに,生きもののように,次々と新しく誕生し,一方で古語として使われなくなり,廃語となります.口腔インプラント学の用語もこの運命にあることを感じながら,編集をさせて頂きました.
 用語は学問の発展に極めて重要で,臨床あるいは研究論文の執筆に愛用される用語集となるよう,全用語委員はこれを目標にして,編集に努めてきました.本用語集が口腔インプラント学の発展に少しでも貢献することができればと,用語委員の全員が祈念しております.
 最後に,本用語集の出版にあたって,賛助会員の方々,学会事務局,医歯薬出版編集部に多大なる援助をいただいたこと,心より厚く御礼を申し上げます.
 2014年6月


『口腔インプラント学学術用語集 第2版』の出版にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 理事長 川添堯彬
 現在,わが国においては口腔インプラント治療が広く行われるようになっています.それに伴い,多くの口腔インプラントに関連する学術用語が歯科医学の教育,研究および臨床の場で使われるようになってきました.しかしながら,口腔インプラントに関する教育・研究・臨床にあたっては,口腔インプラント学に関連する統一的学術用語を的確に理解し,使用することが大切であります.口腔インプラント学は,外国での歴史も長く,外国からの研究・臨床例が多く報告され,発表などに使用される専門学術用語は英語をはじめとする外国語が多いのが現状です.このような専門学術用語を外来専門語として直ちに使用することは,内容を正しく把握することが難しくなる懸念があります.さりとて安易に翻訳し,訳語として使用することは,その内容を誤って伝えることの不安もあります.また,独自に学術用語を作り,使用することは事柄の理解を惑わすことにもなります.
 このような観点から,旧日本口腔インプラント学会では,斎藤 毅理事(当時)を中心に,多くの時間を費やしインプラント学に関連する学術用語を纏めて第1版として2003年3月30日に出版致しました.その後インプラント学が発展・変貌したため,見直し,整理が必要との声が起こり,この度口腔インプラント学学術用語集の第2版を出版することが待たれていました.
 加えて一昨年の調査では,全国29大学の卒前教育において口腔インプラント学の授業が始まっており,国家試験への出題も増える傾向にあります.これらの状況に鑑み,早急に,本学会が率先して口腔インプラント学に関連する統一的学術用語集を編纂することは,本学会の念願であり,喫緊の課題となっていました.
 この大仕事を,わずか1年の間に完成してくれるよう赤川安正用語委員長ならびに委員各位に懇願して,お引き受けいただきました.
 会員におかれましてはこの学術用語集を論文執筆や診療時に活用され,内容が正しく伝えられるための基準となることを期待してやみません.
 最後に,公益社団法人日本口腔インプラント学会独自の学術用語集の出版を強く待望された学会員の皆様,改訂を高く評価し,労力を惜しまずにご尽力下さった赤川安正用語委員長ならびに用語委員会委員の皆様に深甚なる敬意を表すとともに,心から感謝申し上げます.
 2011年3月


第2版の編集にあたって
 2003年に口腔インプラント学会(鈴木和夫会長,斎藤毅用語委員長)が自ら学術用語集を編集して上梓して以来,約7年が経過しました.この間にあって口腔インプラント学の発展はまことに目ざましく,新たな学術用語(以下,用語)の導入,古くなった用語の整理など,ニーズに対応する新しい展開が必要となりました.ここに,口腔インプラント学の新しい学術用語集を編集し発刊の運びとなったことは,まさに口腔インプラント学の進歩と発展を示すものであり,さらにこの分野の今後の展開に口腔インプラント学会が大きく寄与できる可能性を提示するものであります.
 口腔インプラント学は基礎歯科医学から臨床の各専門領域を包括するきわめて学際的な領域であり,その用語は膨大な領域にまたがるものです.本用語委員会では,川添堯彬理事長からの指示を受け,これらのニーズに即時に対応すべく問題を整理し,今回の学術用語集では現代の口腔インプラント学で使用されている用語をできるだけ網羅して収録しました.また,各用語の解説は次の企画に委ねることとしました.すなわち,編纂方針としては,2003年度に出版された口腔インプラント学会学術用語集をベースとし,国内外の口腔インプラント関連の成書や学会誌,また日本歯科医学会学術用語集や日本補綴歯科学会用語集など専門分野での用語も丁寧に蒐集することとし,また,古くなったものでもはや使わない用語は棄却し,さらに進歩に伴って使用されてきている新しい用語は可能なかぎり入れることにしました.また,口腔インプラントの進歩を牽引してきた商品名も歴史的意義の大きなものは残しましたが,この時代に合わせて整理もしました.さらに,同じ事象を異なる表現や用語で使われているもの,あるいは英語をカタカナ表示するものなど口腔インプラント関連では特に多くあり,これらの用語の統一は本委員会の能力を越えるものであることから,ひとまず列記しました.すでにカタカナで用いられている用語はそのままとし,和文が同じで英語が異なるもの,英語は同じで和文が異なるものなどもそのまま用いることにしました.これらは経時的に用いられていくことで,一つに集約されるものと思われます.さらに,より見やすくするため,用語の日本語と英語を併記し,利用者の利便性を図るため英語索引も設けました.また,付録として,市販のインプラントシステムとそのパーツの用語も列記し,学会発表や論文作成の助けとなるよう記載しました.本学術用語集は川添堯彬理事長の強い要請を受けて印刷物として会員全員に配布することとし,さらに将来的にCD-ROM化も可能なように手はずしています.
 この作業に当たった用語委員会は,短期間で迅速に作業を進めることができたことに誇りを持ちます.しかしながらここに至る推進力となった旧評議員の方々の多くの示唆やコメントがなければ,洗練された完成にはとうてい至りませんでした.それゆえ,旧評議員,旧理事の方々に深甚なる感謝の意を申し上げる次第であります.また,まとめや連絡で多大な労をいただいた賛助会員の方々,学会事務局,医歯薬出版編集部に対し,心からお礼を申し上げます.
 このように編集した学術用語集を,学会会員は是非ともうまく活用され,優れた学会発表や論文作成を行って下さい.すなわち,学会会員は学会発表や論文作成に勝手な造語など活用せず,この学術用語集に従っていただくこと,このことを委員会は最も強く望みます.一方で,口腔インプラント学の進歩の速度はあまりにも速く,追加や変更されるべき用語が存在しており,継続的な検討と改訂作業が必要であることは言うまでもなく,次回はさらに改訂されるべきものと認識いたします.
 2011年3月
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 用語委員会
 委員長 赤川安正
 副委員長 加藤仁夫
 委員 児玉利朗
 塩田 真
 内藤宗孝
 原 宜興
 松浦正朗
 宮ア 隆
 (五十音順)


口腔インプラント用語集の発刊にあたって(初版)
 日本口腔インプラント学会
 会長 鈴木和夫
 用語集は学問領域の道標となるもので,内容と利用に一般学術書とは違った意味をもっています.歯科診療においてインプラント治療が多く行われるようになるに従い,インプラントに関連する用語が歯科医学の教育・研究および臨床に多く使われるようになってきました.このような専門用語には,用語をただ呼称させるだけでなく,その内容をある程度意味付けることが多いようです.新しく用語を設定・使用するには,共通した理解のもとに使用されるに至る研究・臨床面での長い間のインプラント学修学のなかで多くの検討がなされ,その結果として使われることが望ましいと考えます.
 口腔インプラント学は,外国での歴史も長く,外国からの研究・臨床例が多く報告され,発表などに使用される用語は英語をはじめとする外国語が多く,翻訳文に専門用語を外来専門語として直ちに使用することは,内容を正しく把握することが難しくなる傾向にあります.さりとて安易に翻訳し,訳語として使用することはその内容を誤って伝えることの不安もあります.また,個々独自に用語を作り,使用することは事柄の理解を惑わすことになります.また,インプラントに関する教育・研究・診療にあたっては,口腔インプラント学に関連する用語を的確に理解し,使用することが大切です.あらゆる領域での教育・研究にあたっては,用語について正しく理解し,より正確,かつ効果的に使用することが正しく内容を伝える第一歩と考えます.
 そのため,本書がインプラントを志すもののみならず,歯科医学の教育・研究・臨床に携わるすべての歯科医学関係者の座右の書として広く活用されることを期待しています.
 斎藤 毅教授(日本大学歯学部)を中心に,多くの委員によりインプラント学に関連する用語を纏めることを心がけてから,早くも9年余の歳月が過ぎました.これもこの間インプラント学が発展・変貌し,幾度となく見直し,整理の必要が起こり,そのため用語集の発刊が遅れ,今日に至ったと伺っております.
 当然のことながら,今後も,口腔インプラント学の進歩・変貌に伴い多くの用語が変化していくことは必至で,適正な用語,表記の統一など修正への努力を続ける必要があると思います.今後ともインプラント学の進歩・発展に伴って委員会の詳細な検討により修正・改正されることを願っています.
 また,用語集が論文執筆や診療の用語使用の規制となることなく,内容が正しく伝えられるための基準となることを期待しています.
 最後に,口腔インプラント学会独自の用語集の出版を強く希望した学会員と,これを高く評価しご尽力下さった古本啓一元会長ならびに末次恒夫前会長に深甚なる敬意を表するとともに心から感謝申し上げます.


序文(初版)
 日本口腔インプラント学会
 用語委員会委員長 斎藤 毅
 20世紀は科学技術の進歩の著しい100年であったと言われております.科学の進歩に伴って学問,技術は体系化が進み,それぞれ専門に分化して発展の道をたどってきました.学問と秘伝・奥義の類とが大きく異なるところは,その哲学,理論,技術を包括する学術的背景を「文字」で表現し,人に伝えることが出来るか否かにあると言われております.この意味で口腔インプラントの専門用語集が編集されて発刊の運びとなりましたことは,歯科医学におけるインプラント学の進歩と発展を示すものであり,またこの分野の今後の展開に寄与するところが大きいものと考えられます.
 この度の用語集は,日本口腔インプラント学会・平成6年度執行部(古本啓一会長)で企画されて学会用語委員会に付託されたもので,当初,インプラント用語集に対する期待は過度に大きいものでありました.しかし口腔インプラント学は基礎歯科医学から臨床の各専門領域を包括する学際的な領域であるため,その用語は解剖,病理,無機・有機材料,生体材料,外科技術,咬合の回復,生体の治癒力,予後管理あるいは社会科学など膨大な領域に亙るものであり,さらに用語の統一や解説を望む声も聞かれました.
 用語委員会では,これらの問題を整理し,今回の用語集では現在口腔インプラントを取り巻く歯科医学の領域で使用されている用語を整理して収録することとし,用語の解説は次の企画に委ねることとしました.すなわち,用語の蒐集は国内外の口腔インプラント関連の成書,学会誌を中心に進めました.また,同じ事象を異なる表現・用語で使われているもの,あるいはカタカナ表示で使用されているものもあり,これらの用語の統一は本委員会の能力を越えるものであり,また経時的に一つの用語に集約されて使われていくもので,これらの用語は同義語として複数併記して編集することとしました.
 口腔インプラント用語集の編集は平成9年度からは末次恒夫会長に,平成12年度からは鈴木和夫会長に引き継がれ,それぞれ委員会も改組され上記企画を継承して編集作業が継続され,この度,初版として完成したものであります.学術用語集の編集作業は着手して9年に亙るものでありますが,この間,日新月歩の著しい学問の進歩に合わせてup to dateの新しい用語を逐次追加して編集を進めました.また,前会期末(平成12年3月)には口腔インプラント用語集・暫定版を発刊し,これを学会役員(理事,評議員)に提供して広く意見を求めて完成度を高めました.
 本用語集は,インプラントに関する事象を英語,日本語および分類(カテゴリー)として3段に分けて編集し,利用者の便を図るために日本語索引を設けてあります.また巻末には,市販のインプラントシステムおよび世界のインプラント学会名を表示し,学術論文作成の助けとなるインプラント関連用語をまとめて記載してあります.さらに,本用語集は現鈴木会長の強い要請を受けて印刷物(ハードコピー)として全会員に配布することが認められ,また情報化の時代に即してCD-ROM化を行い会員の要請に応えられるよう準備がされております.
 以上のように,本用語集は学会の経年的な事業として企画され,3期,9年間に亙る精力的な努力によって資料の蒐集,採択,見直しなどの編集作業を通じて完成されたものであることを報告し,この間の作業に当たられた用語委員会の委員各位,特に地道な作業を進められた小委員会委員および学会事務局の御労苦に対し,深甚なる感謝の意を申し上げる次第であります.
 なお,口腔インプラントはその学術的背景が広く,学際領域に及び歯科における研究面および臨床面での活性が高い分野であるので,継続的な検討と改訂作業が必要であることを付記する.