やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯学部の学生に「麻酔」という科目の印象を尋ねると,「難しい,よくわからない」という答えが返ってきます.歯科医師国家試験では苦手科目のトップ3に入る歯科麻酔学ですが,解剖学や生理学,薬理学などの基礎的知識が十分に身についていないことが,その理由といえるようです.そこで本書では神経,呼吸器,循環器の解剖と生理について解説することから始めました.これらをしっかり習得しておけば,後に続く項目の理解が楽になること請け合いです.というわけで,初めの3つのChapterが特に重要です.繰り返し学習して自家薬籠中の物(この熟語の意味はわかりますか?)としてください.中盤から後半にかけては臨床的な項目を配置しました.こちらには,近年の出題傾向に合わせて,有病者の全身管理に関連する内容を加えました.
 本書のもう1つの特徴として,通常,全身麻酔の前に説明される鎮静法を,あえて後にまわしたことがあげられます.全身麻酔をしっかり理解すれば,鎮静法もよくわかるからです.
 いずれにおいても,まずは疾患の概念や言葉の定義を覚えましょう.これらがあやふやだと,何を勉強しているのかがわからなくなってしまいます.繰り返しになりますが,麻酔の問題を解くうえで大切なことは,解剖学や生理学,薬理学などの基礎的事項を身につけること,概念や定義をしっかり覚えることです.これらのことに注意すれば,歯科医師国家試験など何ほどのこともありません.さあ本書を十分に活用して,歯科麻酔学をパーフェクトにマスターしましょう.
 2018年9月
 砂田勝久
Chapter 1 神経の解剖と生理
Chapter 2 呼吸器の解剖と生理
Chapter 3 循環器の解剖と生理
Chapter 4 局所麻酔
Chapter 5 全身麻酔
Chapter 6 精神鎮静法
Chapter 7 BLS
Chapter 8 有病者の歯科治療
Chapter 9 救急処置が必要な症状・病態
Chapter 10 ペインクリニック

 付録 おもな救急薬・アドレナリンと相互作用を示す常用薬
 文献
 索引