やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 パーシャルデンチャー補綴学は,歯を喪失した部分歯列欠損の患者に対し,形態や機能,審美性を回復してQuality of Lifeの向上を図ることを目的とし,パーシャルデンチャーによる補綴治療の理論と技術を追求する学問です.歯を失って生じる顎口腔系の形態的変化だけではなく,機能や審美性に関連した訴えは患者により多様であり,歯科医師には,患者個々人に対応したオーダーメイド医療の実現が求められています.加えて,近年の高齢者人口の急速な増加に伴い,部分歯列欠損患者は増加の一途をたどっており,パーシャルデンチャーによる補綴治療が果たす社会的な役割は非常に大きく,それに伴い歯科医師国家試験の出題傾向や出題内容も変化しています.
 歯科医師国家試験出題基準では,知識や技能を適切に評価するための基本的事項が出題範囲の大項目としてあげられています.しかし,昨今の歯科医師国家試験では,より臨床に即した知識や最新の歯科医療の動向と紐付けられた知識も求められています.
 これらの点をふまえて,本書では以下の点を考慮して執筆しました.
 標準的なパーシャルデンチャー関連の教科書に準拠した構成とし,要点をできるだけ簡潔にまとめました.学術用語については,『歯科補綴学専門用語集 第4版』(医歯薬出版)を基本として,歯科医師国家試験出題基準との整合性を図りながら,本書内で用語を統一しました.治療に関するセクションでは,理解の一助となるよう,写真や図を多く取り入れ,基礎的事項も充実させました.
 本書が,歯学生の卒前教育の教材として幅広く活用され,パーシャルデンチャー補綴学への理解が深まれば幸甚に存じます.
 2018年5月
 馬場一美
Chapter 1 歯の欠損とパーシャルデンチャー
Chapter 2 歯の欠損様式と義歯の分類
Chapter 3 パーシャルデンチャーの構成要素と支持・把持・維持
Chapter 4 支台装置
Chapter 5 連結子と義歯床
Chapter 6 治療計画の立案
Chapter 7 前処置
Chapter 8 印象採得と模型製作
Chapter 9 義歯の設計
Chapter 10 咬合採得
Chapter 11 フレームワーク
Chapter 12 人工歯排列とろう義歯
Chapter 13 埋没・重合・研磨
Chapter 14 義歯の装着
Chapter 15 義歯装着後の変化への対応
Chapter 16 各種義歯

 付録 1 パーシャルデンチャーの製作手順
 付録 2 フレームワークの製作手順
 付録 3 咬合採得の目的とトラブル
 付録 4 即時義歯の製作と装着
 付録 5 各種材料・器具と主な使用用途
 文献
 索引