やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 我々の体をつくるパーツは,地球上の生物の長い進化の歴史の中で勝ち残ってきた“かたち”を持っています.“かたち”は機能するために必要で,必要がないものは淘汰されてきました.特に「口腔」は,生物にとって最も重要な「栄養摂取」のための長いトンネルの入口です.入口は最大限に効率を上げるため,歯・顎の骨・舌・唇・頬などの形を進化させてきました.これは全身の機能と連動した,口腔機能を発揮するための“かたち”の獲得です.よって口腔領域はもちろん,口腔と連動する全身の機能解剖学的な基礎知識を持った歯科医師になるという自覚が大切です.
 解剖学とは医療系の学校において,専門科目のスタートで取り組む学問です.骨学から始まり,筋学,脈管学,神経学と続いていく中で,その形態の複雑さに戸惑い,学習すべき項目の多さから,解剖学の学習を難しいと感じる学生は少なくありません.解剖学を「名前を覚えるだけの学問」とは思わないでください.「機能解剖学」という観点から,頭頸部を中心に全身解剖学への理解を深めていってほしいと考えています.そのことが臨床系の科目とリンクする糸口となり,読者の臨床を安全確実なものにします.自分の仕事に必要な知識,という観点からヒトの体に興味を持って勉強に取り組んでください.
 この度,そんな学生さんの勉強の一助となるように“歯科国試パーフェクトマスター”シリーズの1冊として,口腔を中心とした解剖学の重要項目についてまとめました.本書の内容は,文章の隅々まで歯科医師として必要なミニマムリクワイアメントです.重要項目に絞った関係上,理解が難しい部分もあると思います.その箇所を見つけ出すことも重要で,口腔領域の解剖は『口腔解剖学 第2版』(医歯薬出版),また歯の解剖学,全身の解剖学はそれぞれの専門書でしっかり周辺知識も含めて理解してください.
 では,皆さんがしっかりとした基礎的知識を持った歯科医師となることを祈念しています.
 2018年3月 阿部伸一
Chapter 1 頭蓋骨の基本構造
Chapter 2 頭蓋骨の成長発育・加齢変化
Chapter 3 咀嚼筋,前頸筋
Chapter 4 顔面筋,広頸筋,舌筋
Chapter 5 軟口蓋,咽頭
Chapter 6 頭頸部の動脈
Chapter 7 頭頸部の静脈・リンパ・扁桃
Chapter 8 頭頸部の神経
Chapter 9 頭頸部の内臓
Chapter 10 頭頸部の特殊感覚
Chapter 11 全身の解剖生理(1)循環器系
Chapter 12 全身の解剖生理(2)呼吸器系
Chapter 13 全身の解剖生理(3)消化器系
Chapter 14 全身の解剖生理(4)泌尿生殖器系
Chapter 15 全身の代表的な関節と周囲の構造
Chapter 16 歯の解剖
Chapter 17 パノラマエックス線像の解剖
 付録 覚えておきたい口腔解剖学関連基本英単語
 参考文献
 索引