やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 保存修復学の目的について紐解いてみますと,(1)歯の硬組織疾患の発症と進行の抑制,(2)歯の硬組織疾患によって生じた歯の欠損部の修復と継発症の制止,(3)歯の欠損部修復による歯の解剖的な形態,機能,審美性の回復と維持,(4)歯,歯列の審美性も含めた健康増進による患者の生活の質(QOL)の維持,があげられています.あわせて,時の流れの中における臨床的な保存修復治療に目を向けてみますと,“drill and fill(削って詰める)”というような対症療法から“MI;minimal intervention(最小限侵襲)”に基づく生物学的療法へと変遷し,さらに人口動態や生活様式の変化に伴い,日々直面する症例やそれらの病態は,時勢を反映させながら変貌を遂げています.また一方では,理工学的性質に優れ,かつ審美性・信頼性・利便性に長けた各種修復用器材が開発改良され,患者・術者の期待に応える医療の具現化に大きく寄与しています.
 このような背景をもつ保存修復学は,科学的根拠を重ねながら歯科臨床に欠くことのできない分野として位置づけられています.したがって,保存修復分野に係る知識・技能・態度・習慣の修得は,次世代の歯科医療を担う若き歯学部学生・研修歯科医をはじめ,学習支援者としての教員・指導医にとっても大切な要件といえましょう.
 本書は保存修復学の総論・各論領域について20に区分したChapterによって簡潔明瞭に説明しています.特に,歯科医師国家試験ならびに共用試験歯学系CBT・OSCEを見据えながら勉学に励む学生にとっての支援にもなるように,「歯科医師国家試験出題基準」と「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」の内容確認を経て編纂しています.また効率的な理解が深められるよう,説明文については箇条書きや明確な器材・技法などの列記に努め,あわせて多数のカラー写真・図・表を盛り込み,重要なポイントについては“CHECK“や“よくでるマーク”を添える工夫を図りました.
 本書がこれからの歯科医療の担い手となる若き歯学部学生・研修歯科医・教員・指導医にとっての助力となり,患者・国民の健康増進に向けた一助になることを願ってやみません.
 2017年11月 執筆者一同
Chapter 1 歯の構造と加齢による変化
Chapter 2 歯の硬組織疾患
Chapter 3 齲蝕の病因と病態
Chapter 4 齲蝕の予防・管理
Chapter 5 滅菌・消毒と感染対策
Chapter 6 口腔検査
Chapter 7 齲蝕の治療
Chapter 8 非齲蝕性硬組織疾患の治療
Chapter 9 硬組織の切削
Chapter 10 窩洞
Chapter 11 歯髄保護法
Chapter 12 治療の前準備
Chapter 13 修復物の具備すべき形状と面
Chapter 14 コンポジットレジン修復
Chapter 15 グラスアイオノマーセメント修復
Chapter 16 メタルインレー修復
Chapter 17 コンポジットレジンインレー修復
Chapter 18 セラミックインレー修復
Chapter 19 ベニア修復
Chapter 20 合着・接着・歯髄保護に用いるセメント
 参考文献
 索引