やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 私が学生だった頃は,組織学,口腔組織学・発生学は病理学や臨床歯科医学を理解するための教養的要素が強く,歯科医師国家試験での組織学関連の出題数は今ほど多くなかったと記憶しています.最近では,CBTや国家試験でも歯科基礎医学の問題が出題されるためか,学生さんの歯科基礎科目に対するモチベーションは上がっているように感じます.
 このたび,そのような学生さんの一助となるよう“歯科国試パーフェクトマスター”シリーズの1冊として,組織学,口腔組織学・発生学の重要ポイントを簡潔にまとめました.カラーの組織像や模式図を多く用いて,学生さんがわかりやすいようにという編集方針にもとづいて執筆しました.また,過去の国家試験に出題された組織像についても関連するChapterに組み込みました.コラムでは,細かいことにとらわれるのではなく,大きくとらえると理解しやすいというところを解説しました.
 多くの学生さんは歯科基礎医学の講義は2年生で受けており,CBT受験前に復習しているとはいえ,国家試験受験前には忘れていることも多々あると思います.しかし,受験勉強にあたって一から教科書を読み直す時間的余裕はないのではないでしょうか.私は専門用語を覚えるためではなく,本書を基本的知識の確認に使ってほしいと思っています.もし,自分自身で理解不足と感じる項目があったら,教科書等で理解するよう努めてください.
 歯科医師国家試験出題基準では1つの分野に限定せずに解剖学,生理学,生化学の知識を統合して理解することを要求しています.それは患者さんの中には内科的疾患をもつ方も多く,歯科医療を行ううえで全身状態を踏まえて治療を行わなければならないことと関連しています.組織学,口腔組織学・発生学はさまざまな基礎分野を橋渡しする科目です.それぞれの領域を関連づけて,自分の中でイメージしながら知識を整理していくと,応用力を身につけることができます.本書が学生さんの知識の整理に役立つことを願っております.
 本書のいくつかの組織像は大阪医科大学・平田あずみ講師,松本歯科大学・佐原紀行元教授にご提供いただきました.深く感謝申し上げます.
 2017年7月 中村浩彰
Chapter 1 上皮組織
Chapter 2 支持組織
Chapter 3 筋組織
Chapter 4 神経組織
Chapter 5 リンパ性器官
Chapter 6 消化器系
Chapter 7 泌尿器系
Chapter 8 内分泌系
Chapter 9 歯の構造
Chapter 10 歯周組織の構造
Chapter 11 口腔粘膜の構造
Chapter 12 唾液腺の構造
Chapter 13 顎関節の構造
Chapter 14 歯の発生
Chapter 15 口腔・顔面領域の発生
 付録 三胚葉の分化と組織発生を示す模式図
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