やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の発刊に寄せて
 2008年3月に発刊されました『老年歯科医学用語辞典』が,明るい素敵な表紙と充実した内容で第2版として生まれ変わりました.近年では,インターネットを利用して用語を調べる方も多いと思われますが,その内容がどの程度信頼できるのかは不明です.本用語辞典に関しては,用語の選択と執筆を一般社団法人日本老年歯科医学会学術用語委員会が中心となり,日本老年歯科医学会が責任を持って担当いたしました.2012年から那須郁夫学術用語委員長のもとで第2版の改訂計画が開始され,2014年から眞木吉信学術用語委員長がその事業を引き継ぎ,多くの方々のご協力の下ここに完成いたしました.関係各位のご尽力に心から敬意を表します.
 用語というものは生き物で,時代と共に変わっていきます.そして,使用される領域によって同じ意味をさす用語が異なり,同義語が複数ある場合も多いようです.また,同じ用語でもすべての人が同じ意味で使用しているとは限らず,それらをまとめる苦労は計り知れません.本学術用語委員会も大変苦心されたことと思いますが,ここにその成果として素晴らしい用語辞典が誕生したことを心から喜ばしく思います.
 この用語辞典は,歯科関連職種以外の領域の方にも利用できるようになっており,大変有益なものと思います.必ずや多くの方に論文執筆や学会発表の際などに有効に利用していただけると確信しております.数年後には第3版を発刊する予定でおりますので,ご意見をいただければ幸いです.
 結びに,本用語辞典の発刊に携わられた方々に深甚なる感謝の意を表します.
 2016年3月
 一般社団法人日本老年歯科医学会
 理事長 櫻井 薫



第2版 序文
 「高齢社会」「超高齢社会」のみならず,「フレイル(ティ)」「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム」など横文字の用語まで,さらには口腔機能や保健機能食品に代表される栄養に関する定義のはっきりしない,いわゆる学術用語があふれている時期に,『老年歯科医学用語辞典』の改訂版(第2版)が発行される運びとなった.
 平成6年(1994年)に日本老年歯科医学会に用語検討委員会ができ,毎号の学会誌に掲載された用語解説をまとめて,平成20年(2008年)に本学会の法人化記念として『老年歯科医学用語辞典』が出版されてから7年が経過した.その間も,日本における高齢化は急速に進み,介護分野のみならず保健・医療分野においても,2025年問題を目前にして,さまざまな対応策がとられているところである.したがって,この分野では日々新たな専門用語が導入され,保健・医療・福祉(介護)の現場においては専門職間のコミュニケーションを図るうえで大きな混乱の元になる可能性すら否定できない.さらに,初版の時には混乱を避けて棚上げしてしまった,「口腔ケア」の問題にも決着をつける必要があった.そこで,2015年度だけでも4回の学術用語委員会を開催し,足りない部分は常時メールによる意見交換を行い,最終段階では理事の先生方より貴重なご意見をいただいた.内容的には,日本歯科医学会および各学会の用語集を参考に,約200語におよぶ新たな専門用語に英文表記と学術的な解説を加え,初版の875語に対して本書は1,000語をはるかに超える,新しい時代に相応しい辞典となった.
 一方,初版の発行時には2,000名台半ばであった学会員は3,100名を上回るほど増加したため,財務には増刷分の予算措置をお願いすることによって,ようやく本会会員へ1冊ずつ寄贈できることになった.学会報告と論文作成のみならず,学会員各位の知識と技術の向上に役立てて頂くとともに,本学会の学術的発展につながることを祈念している.
 奇遇にも初版時と同様,今回の改訂に際しても学術用語委員会を預かった私としては,学術用語委員会のこの上ないメンバーのみならず,歯科医学各分野の重鎮といわれる先生方の協力が得られたことに深謝するとともに,医歯薬出版株式会社関係諸氏に謝意を表したい.
 2016年3月
 一般社団法人日本老年歯科医学会学術用語委員会
 委員長 眞木 吉信


老年歯科医学用語辞典の発刊に寄せて
 有限責任中間法人日本老年歯科医学会からこのたび『老年歯科医学用語辞典』が発刊される運びとなりました.今回の発刊に至る道程は決して平坦ではありませんでした.学会の発展にともない,多くの会員が学術大会に参加して熱い討論を行うたびに,用語の統一が必要であることを誰しもが強く感じましたが,本学会は基礎から臨床各科のいろいろな分野の会員で構成されており,学際的であるがゆえに用語の問題は深刻でした.特に学会誌では,使用する用語の統一は重要であり,学会誌に掲載された用語は本学会が承認したものと同等の重みをもちます.平成6年(1994年),本学会に用語委員会がつくられ,編集委員会と連絡を取りながら作業が始まりましたが,老年歯科医学はわが国では初めての分野であり,すでに先行使用されていた各用語は混乱していました.学術専門用語は,大多数の方が理解し了承していただけるものでなければ何ら意味がありません.最初の用語委員会は会誌掲載論文から老年歯科医学に関連する用語を抽出する作業から始められ,平成10年になってようやく形をなし,老年歯科医学会誌の巻末に老年歯科医学用語集という形で掲載されました.当時は580語の解説でしたが,委員会業務として着実に継続され,用語委員会と編集委員会の共同作業で平成11年,平成12年と毎年用語を増やし,それらが老年歯科医学会誌に順次掲載されました.
 会員からは好評の雑誌掲載版ではありましたが,老年歯科医学の急速な発展とともに,臨床面だけでなく教育面および研究面においても用語の重要性が認識され,辞典としての出版が切望されました.今,『老年歯科医学用語辞典』を手にできることは,本学会会員のひとりとして大きな喜びです.
 長年にわたり用語の収集から,一語一語の解説に誠心誠意ご尽力いただきました関係者の皆様に心より感謝申し上げます.
 今後,本辞典をより一層充実したものに育てることができるのは,これを座右に置かれる皆様です.気がつかれた点のご指摘や,新しい用語の追補などをいただければ,改訂版へ反映されることと思います.
 2008年3月
 有限責任中間法人日本老年歯科医学会
 理事長 山根 源之


序文
 老年歯科医学か高齢者歯科医学か,高齢化社会か高齢社会か,臨床分野では口腔乾燥症か口腔乾燥感かなど,老年歯科医学会の学術大会で発表された内容や,学会誌に使用されている学術用語には,幾多のあいまいな言葉と適切とは思えない用語が見られるため,これらの解説と学会誌への掲載論文に適した用語の選択を目的として,1994年9月に組織されたのが老年歯科医学会の用語委員会である.当時は大阪歯科大学の上田 裕教授が委員長で,メンバーは学会誌の編集を担当していた高江洲義矩教授,海野雅浩教授,井上 宏教授の4人体制であった.上田教授は医学部出身ということもあり,老年歯科医学に関する用語の分類で委員会を方向付け,編集委員会のメンバーを包含して,学会誌の掲載論文よりキーワードを収集するという大変な作業から,1998年には580語を8項目に分類して『老年歯科医学用語集』という形で,老年歯科医学会誌に掲載した(12巻3号).この頃は,社会の高齢化とともに介護保険制度の制定などもあり,保健・医療・福祉分野の用語はめまぐるしく変わると同時に新しい用語が次々と造語されてくるため,1年後の1999年には,選定された用語が900語にのぼる改訂版が掲載された(14巻1号).さらに2000年には正確を期した増補改訂版が一部用語の解説とともに出された(15巻2号).この号から学会誌には逐次用語集に選定された用語の解説が掲載されることになった.この間,編集委員長が日本大学松戸歯学部の那須郁夫助教授に交代したが,これまでの方針は変わらず用語の解説は継続され,また,新しい学術用語の収集も繰り返されて,2007年まで掲載された(22巻1号).
 老年歯科医学は基礎から臨床まで,生命科学から社会科学まで,保健・医療・福祉の幅広い分野にわたる学際的な研究領域であり,学術用語も多岐にわたり,細心の注意を払いながら使用するか,または独自の造語をするか,意外と自由な雰囲気がこれまではあった.そして,エイジングに対するアンチエイジングや生活習慣病に対するメタボリックシンドロームなどまだまだ新しい用語が追加される世界でもある.しかし,医療に加えて介護も予防の時代を迎えた現在,技術中心のタテ割りの専門分野で構成され,老年医学や保健・福祉分野も包含する本学会としては,用語委員会が組織された当初の目的を全うするために,老年歯科医学学術用語の解説・整理と選択の指針を提示することが急務であると考えた.
 委員会では,これまで老年歯科学会誌に掲載されてきた用語解説をもとに,評議員の先生方よりご意見をいただき,既に掲載された用語の加筆・修正・削除を行った.また,本書のために新規の用語解説も追加した.用語解説のうち,摂食嚥下関係は昭和大学の向井美惠教授,栄養学関係は東京歯科大学の山中すみへ客員教授に検討をいただいた.本書の編纂過程において,ご協力をいただいた関係者には,心より感謝申し上げたい.
 最後に本書が,今後の社会情勢の変化や学術の進歩にともない,さらなる充実がはかられるとともに,老年歯科医学を中心とするさまざまな分野に貢献することを願うものである.
 2008年3月
 日本老年歯科医学会用語検討委員会
 委員長 眞木 吉信