序文
歯科矯正学は,不正咬合の予防および診断と治療に関連する問題を研究する歯科医学の専門領域の1つです.本書は,読者の皆さんが教科書や講義で学んだ歯科矯正学の知識を,実習を通じていっそう深く理解し,より多角的な視野で臨床的な知識として身につけることを目的として編纂されました.
まず診断の章では,講義で学んだ知識を実際の症例の診断過程をシミュレーションして体験することで理解を深めます.初診の患者さんの検査資料について,基本的な計測と分析方法(口腔模型分析とセファロ分析)を学び,さらにそれらを統合してTweedの分析を体験することで矯正歯科治療における抜歯について基本的な考え方を修得します.
治療の章では,ワイヤーベンディングと自在ろう着の基本的な技術を修得します.さらにそれらの技術を応用して,代表的な固定式矯正装置(舌側弧線装置とマルチブラケット装置),可撤式矯正装置(アクチバトールと咬合斜面板),ならびに保定装置(HawleyタイプリテーナーとBeggタイプリテーナー)の製作を実習します.装置の製作を通して矯正装置の三次元的な構造を理解するとともに,シミュレーションによって発揮される矯正力の作用機序について理解を深めていきます.
実習は,臨床で使うさまざまな材料,器具・機器などを初めて手にする機会でもあります.なかには生涯にわたって毎日のように使うことになるものも含まれているでしょう.患者さんに安全・安心な医療を提供するために,それらの名称と機能を理解し,適切な使用方法を身に着けることも実習の目的の1つとなります.
本書は,読者の皆さんが効率的に学習を進められるよう,多くの写真や図を用いて視覚的に理解しやすい構成としました,また,重要なポイントや静止画ではわかりにくい作業は,動画でも学ぶことができるようになっています.これまではインストラクターの手元を注意深く観察して学んでいた細かい作業も,これからはスマートフォンやタブレットの画面で繰り返し視聴して予習や復習をすることが可能となりました.
さて,読者の皆さんも近いうちに不正咬合を伴う患者さんの相談を受ける日がやってきます.その方の症状をどうやって分析・診断し,わかりやすく説明するのでしょうか.また,適切な効果を発揮する矯正装置をどうやって選び,そして毎回の治療を進めていくのでしょうか.無限に広がる未来の活躍に思いを馳せ,積極的に実習に取り組んでいくことで,皆さんがこれから出会う未来の患者さんのQOLの改善に寄与し,歯科医師として実り多い道を歩まれることを願っています.
最後に,本書の制作に多大なるご協力をいただいた編集委員および執筆者の先生方,そして学生教育に情熱を注いでおられるすべての実習担当の先生方に深く感謝申し上げます.
編集代表 新井一仁
歯科矯正学は,不正咬合の予防および診断と治療に関連する問題を研究する歯科医学の専門領域の1つです.本書は,読者の皆さんが教科書や講義で学んだ歯科矯正学の知識を,実習を通じていっそう深く理解し,より多角的な視野で臨床的な知識として身につけることを目的として編纂されました.
まず診断の章では,講義で学んだ知識を実際の症例の診断過程をシミュレーションして体験することで理解を深めます.初診の患者さんの検査資料について,基本的な計測と分析方法(口腔模型分析とセファロ分析)を学び,さらにそれらを統合してTweedの分析を体験することで矯正歯科治療における抜歯について基本的な考え方を修得します.
治療の章では,ワイヤーベンディングと自在ろう着の基本的な技術を修得します.さらにそれらの技術を応用して,代表的な固定式矯正装置(舌側弧線装置とマルチブラケット装置),可撤式矯正装置(アクチバトールと咬合斜面板),ならびに保定装置(HawleyタイプリテーナーとBeggタイプリテーナー)の製作を実習します.装置の製作を通して矯正装置の三次元的な構造を理解するとともに,シミュレーションによって発揮される矯正力の作用機序について理解を深めていきます.
実習は,臨床で使うさまざまな材料,器具・機器などを初めて手にする機会でもあります.なかには生涯にわたって毎日のように使うことになるものも含まれているでしょう.患者さんに安全・安心な医療を提供するために,それらの名称と機能を理解し,適切な使用方法を身に着けることも実習の目的の1つとなります.
本書は,読者の皆さんが効率的に学習を進められるよう,多くの写真や図を用いて視覚的に理解しやすい構成としました,また,重要なポイントや静止画ではわかりにくい作業は,動画でも学ぶことができるようになっています.これまではインストラクターの手元を注意深く観察して学んでいた細かい作業も,これからはスマートフォンやタブレットの画面で繰り返し視聴して予習や復習をすることが可能となりました.
さて,読者の皆さんも近いうちに不正咬合を伴う患者さんの相談を受ける日がやってきます.その方の症状をどうやって分析・診断し,わかりやすく説明するのでしょうか.また,適切な効果を発揮する矯正装置をどうやって選び,そして毎回の治療を進めていくのでしょうか.無限に広がる未来の活躍に思いを馳せ,積極的に実習に取り組んでいくことで,皆さんがこれから出会う未来の患者さんのQOLの改善に寄与し,歯科医師として実り多い道を歩まれることを願っています.
最後に,本書の制作に多大なるご協力をいただいた編集委員および執筆者の先生方,そして学生教育に情熱を注いでおられるすべての実習担当の先生方に深く感謝申し上げます.
編集代表 新井一仁
I 診断
1 使用する器材・器具
2 一般的な矯正歯科治療のプロセス
3 検査
1.顔面写真の評価
2.口腔内写真の評価
3.口腔模型の評価
4.パノラマエックス線画像の評価
5.口腔模型の分析(1)
6.口腔模型の分析(2)
7.正面頭部エックス線規格写真の分析
8.側面頭部エックス線規格写真の分析
4 Tweedの分析,抜歯・非抜歯の判定
1.Tweedの抜歯基準
2.Tweedの三角
3.アーチレングスディスクレパンシー
4.ヘッドプレートコレクション
5.トータルディスクレパンシーの算出
6.Tweedの抜歯基準
5 問題リストと解決策の作成
II ワイヤーベンディング(線屈曲)
1 使用する器材・器具
2 ワイヤーベンディングに使用するプライヤーの選択
1.ライトワイヤープライヤー
2.バードビークプライヤー
3.Tweedのアーチベンディングプライヤー
4.Youngのプライヤー
3 プライヤーの把持
4 ワイヤーベンディングの原則
1.鈍角の屈曲
2.鋭角の屈曲
5 オープンバーティカルループ
1.用途
2.屈曲方法
6 ホリゾンタルループ
1.用途
2.屈曲方法
7 オメガループ
1.用途
2.屈曲方法
8 クロージングループ
1.用途
2.屈曲方法
9 アーチフォーム
1.用途
2.屈曲方法
III 自在ろう着
1 使用する器材・器具
2 事前準備
1.製作前に行うこと
2.器材の配置
3.歯科用バーナー使用時の注意事項
4.歯科用銀ろう
5.アンチフラックス
6.フラックス
3 自在ろう着の方法
1.流ろう
2.ろう着
3.ろう着部の修正
4 ろう着時の注意事項
1.ワイヤーの焼なまし(焼鈍)の防止
2.ワイヤーやろうの酸化の防止
3.適切なろう着面の状態
4.適切なろうの量
5.適切なろうの範囲
5 研磨
1.自在ろう着における研磨
2.研磨後の確認
6 ワイヤー断端部の調整
7 製作物
1.製作方法
2.提出
IV 舌側弧線装置
1 使用する器材・器具
2 バンドの製作
1.バンドの試適
2.バンドの圧入
3.バンドの適合
3 維持装置の溶接(ろう着)
1.維持装置の確認
2.脚部と維持部の取り外し
3.維持部の溶接位置
4.バンドの撤去
5.電気溶接
4 印象採得
1.バンドの再装着
2.印象材の盛りつけと印象採得
3.バンドの撤去
4.バンドの印象面への移動
5.バンド内面へのパラフィンワックスの塗布
5 作業用模型の製作
1.石膏の注入
2.作業用模型の取り出し
3.作業用模型の調整
4.外形線の記入
6 維持装置のろう着
1.アンチフラックスの塗布
2.フラックスの塗布
3.銀ろうの準備
4.ろう着
7 脚部の屈曲
1.維持装置の確認
2.脚部の屈曲
3.脚部の挿入
4.脚部の切断
8 主線の屈曲
1.主線の切断
2.主線の屈曲
3.主線の切断
9 主線と脚部のろう着
1.ろう着部直下の石膏の削合
2.主線と脚部の断端部の調整
3.主線と脚部のろう着
10 複式弾線のろう着と屈曲
1.複式弾線の切断
2.アンチフラックスの塗布
3.ろう着部へのフラックスの塗布
4.ろう着部への流ろう
5.複式弾線のろう着
6.複式弾線の屈曲
11 舌側弧線装置の合着
1.舌側弧線装置の取り出し
2.研磨
3.矯正用顎模型への試適
4.セメント合着
12 歯の移動の観察
1.複式弾線の活性化
2.ワックスの軟化による歯の移動の観察
V アクチバトール
1 使用する器材・器具
2 アクチバトールとは
1.基本構造
2.特徴
3.構成咬合位
3 症例の把握,分析結果
補足 構成咬合位の採得について
4 アクチバトールの製作
1.構成咬合器への作業用模型の付着
2.外形線(誘導線・レジン床部)の記入
3.誘導線の屈曲
4.誘導線の固定と模型のボクシング
5.レジン床の製作(ふりかけ法)
6.形態修正,研磨,完成
付録 仮床とワックスパターンの製作による方法
5 症例
VI マルチブラケット装置
1 使用する器材・器具
1.材料
2.器具
2 スタンダードエッジワイズ装置による実習
1.ブラケットの装着
2.歯列のレベリング,ニッケルチタンワイヤーの装着
3.写真撮影,ワックスの軟化
4.結紮線の除去,アーチワイヤーの取り出し
5.レベリングの達成
6.スペースの閉鎖
7.アイデアルアーチの屈曲
8.アイデアルアーチの装着と歯の移動
3 ストレートワイヤー装置による実習
1.構造と機能
2.スタンダードブラケットとストレートワイヤーブラケットの特徴と違い
3.使用する器材・器具
4.ブラケットの装着
5.歯列のレベリング,ニッケルチタンワイヤーの装着
6.上顎前歯部の空隙閉鎖と下顎のレベリングの継続
7.スペースの閉鎖
8.アイデアルアーチの装着と歯の移動
VII 保定装置(Hawleyタイプリテーナー,Beggタイプリテーナー)と咬合斜面板
1 Hawleyタイプリテーナー
1.使用する器材・器具
2.製作方法
2 咬合斜面板
1.基本構造
2.特徴と作用機序
3.製作方法
3 Beggタイプリテーナー
1.使用する器材・器具
2.製作方法
参考文献
別冊
I 診断
症例1
症例2
II ワイヤーベンディング(線屈曲)
III 自在ろう着
IV 舌側弧線装置
V アクチバトール
VI マルチブラケット装置
VII-1 Hawleyタイプリテーナー,咬合斜面板
VII-2 Beggタイプリテーナー
1 使用する器材・器具
2 一般的な矯正歯科治療のプロセス
3 検査
1.顔面写真の評価
2.口腔内写真の評価
3.口腔模型の評価
4.パノラマエックス線画像の評価
5.口腔模型の分析(1)
6.口腔模型の分析(2)
7.正面頭部エックス線規格写真の分析
8.側面頭部エックス線規格写真の分析
4 Tweedの分析,抜歯・非抜歯の判定
1.Tweedの抜歯基準
2.Tweedの三角
3.アーチレングスディスクレパンシー
4.ヘッドプレートコレクション
5.トータルディスクレパンシーの算出
6.Tweedの抜歯基準
5 問題リストと解決策の作成
II ワイヤーベンディング(線屈曲)
1 使用する器材・器具
2 ワイヤーベンディングに使用するプライヤーの選択
1.ライトワイヤープライヤー
2.バードビークプライヤー
3.Tweedのアーチベンディングプライヤー
4.Youngのプライヤー
3 プライヤーの把持
4 ワイヤーベンディングの原則
1.鈍角の屈曲
2.鋭角の屈曲
5 オープンバーティカルループ
1.用途
2.屈曲方法
6 ホリゾンタルループ
1.用途
2.屈曲方法
7 オメガループ
1.用途
2.屈曲方法
8 クロージングループ
1.用途
2.屈曲方法
9 アーチフォーム
1.用途
2.屈曲方法
III 自在ろう着
1 使用する器材・器具
2 事前準備
1.製作前に行うこと
2.器材の配置
3.歯科用バーナー使用時の注意事項
4.歯科用銀ろう
5.アンチフラックス
6.フラックス
3 自在ろう着の方法
1.流ろう
2.ろう着
3.ろう着部の修正
4 ろう着時の注意事項
1.ワイヤーの焼なまし(焼鈍)の防止
2.ワイヤーやろうの酸化の防止
3.適切なろう着面の状態
4.適切なろうの量
5.適切なろうの範囲
5 研磨
1.自在ろう着における研磨
2.研磨後の確認
6 ワイヤー断端部の調整
7 製作物
1.製作方法
2.提出
IV 舌側弧線装置
1 使用する器材・器具
2 バンドの製作
1.バンドの試適
2.バンドの圧入
3.バンドの適合
3 維持装置の溶接(ろう着)
1.維持装置の確認
2.脚部と維持部の取り外し
3.維持部の溶接位置
4.バンドの撤去
5.電気溶接
4 印象採得
1.バンドの再装着
2.印象材の盛りつけと印象採得
3.バンドの撤去
4.バンドの印象面への移動
5.バンド内面へのパラフィンワックスの塗布
5 作業用模型の製作
1.石膏の注入
2.作業用模型の取り出し
3.作業用模型の調整
4.外形線の記入
6 維持装置のろう着
1.アンチフラックスの塗布
2.フラックスの塗布
3.銀ろうの準備
4.ろう着
7 脚部の屈曲
1.維持装置の確認
2.脚部の屈曲
3.脚部の挿入
4.脚部の切断
8 主線の屈曲
1.主線の切断
2.主線の屈曲
3.主線の切断
9 主線と脚部のろう着
1.ろう着部直下の石膏の削合
2.主線と脚部の断端部の調整
3.主線と脚部のろう着
10 複式弾線のろう着と屈曲
1.複式弾線の切断
2.アンチフラックスの塗布
3.ろう着部へのフラックスの塗布
4.ろう着部への流ろう
5.複式弾線のろう着
6.複式弾線の屈曲
11 舌側弧線装置の合着
1.舌側弧線装置の取り出し
2.研磨
3.矯正用顎模型への試適
4.セメント合着
12 歯の移動の観察
1.複式弾線の活性化
2.ワックスの軟化による歯の移動の観察
V アクチバトール
1 使用する器材・器具
2 アクチバトールとは
1.基本構造
2.特徴
3.構成咬合位
3 症例の把握,分析結果
補足 構成咬合位の採得について
4 アクチバトールの製作
1.構成咬合器への作業用模型の付着
2.外形線(誘導線・レジン床部)の記入
3.誘導線の屈曲
4.誘導線の固定と模型のボクシング
5.レジン床の製作(ふりかけ法)
6.形態修正,研磨,完成
付録 仮床とワックスパターンの製作による方法
5 症例
VI マルチブラケット装置
1 使用する器材・器具
1.材料
2.器具
2 スタンダードエッジワイズ装置による実習
1.ブラケットの装着
2.歯列のレベリング,ニッケルチタンワイヤーの装着
3.写真撮影,ワックスの軟化
4.結紮線の除去,アーチワイヤーの取り出し
5.レベリングの達成
6.スペースの閉鎖
7.アイデアルアーチの屈曲
8.アイデアルアーチの装着と歯の移動
3 ストレートワイヤー装置による実習
1.構造と機能
2.スタンダードブラケットとストレートワイヤーブラケットの特徴と違い
3.使用する器材・器具
4.ブラケットの装着
5.歯列のレベリング,ニッケルチタンワイヤーの装着
6.上顎前歯部の空隙閉鎖と下顎のレベリングの継続
7.スペースの閉鎖
8.アイデアルアーチの装着と歯の移動
VII 保定装置(Hawleyタイプリテーナー,Beggタイプリテーナー)と咬合斜面板
1 Hawleyタイプリテーナー
1.使用する器材・器具
2.製作方法
2 咬合斜面板
1.基本構造
2.特徴と作用機序
3.製作方法
3 Beggタイプリテーナー
1.使用する器材・器具
2.製作方法
参考文献
別冊
I 診断
症例1
症例2
II ワイヤーベンディング(線屈曲)
III 自在ろう着
IV 舌側弧線装置
V アクチバトール
VI マルチブラケット装置
VII-1 Hawleyタイプリテーナー,咬合斜面板
VII-2 Beggタイプリテーナー














