やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

『口腔インプラント学学術用語集 第5版』発刊にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 理事長 細川隆司
 本学会は日本歯科医学会の専門分科会の中で名実ともに最大規模の学会として活動し発展してきました.本学会は法人格としては公益社団法人ですが,あくまで学術団体として各種事業を行っています.医学系学術団体としての主要な事業としては,学術雑誌の編集発行,学術講演会の開催,会員の専門性認定制度の運用と国民への啓蒙活動があげられます.
 学術雑誌の編集において,また学術講演会の抄録・プログラムの作成,そしてケースプレゼンテーション試験の概要報告書や専門医,専門歯科衛生士,専門歯科技工士などの症例資料作成など,あらゆる学会活動において,学術用語の適正な使用と統一が求められます.学術団体として,本学会編さんの学術用語集による用語の整理と統一は限りなく重要な意味を持つことに異論はありません.
 学術用語は生き物であり,日々の医学の発展や技術革新に伴い,新たな学術用語が生み出され,同義のものは統一が図られ,学会の学術活動において諸般の理由で使用を避けるべき用語には注意喚起が必要となります.そのため,学術用語集は,定期的な見直しが必要で,本用語集は初版から数えて,ほぼ4年に一度の改訂を行っており,今回で第5版を数えることとなりました.第5版においては,第4版に続いてデジタル歯科関係の用語を中心に新たな用語を収載し,いくつかの用語については,統合・削除し,解説内容を整理して加筆修正致しております.
 当学会会員はもとより,インプラントに関する学術的な著作に携わろうとする歯科関係者におかれましては,この用語集を座右に置いて,学会活動は当然のこと,日々の診療,教育・研修,ならびに研究に活用していただきたいと考えております.
 最後になりましたが第5版の制作を担当していただいた村上 弘委員長ほか,用語委員会の先生方,学会事務局,医歯薬出版編集部諸氏に改めて御礼申し上げます.
 2024年4月


第5版の編集にあたって
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
 用語委員長 村上 弘
 公益社団法人日本口腔インプラント学会は2020年に50周年記念学術大会を開催しました.この半世紀の間に口腔インプラント学は目覚ましい発展を遂げ,その包括範囲も急速に広がりました.研究では他分野と連携し,治療も広く行われるようになり,教育においても,全国の歯科大学,歯学部で講義・実習が行われるようになりました.その過程で新しい用語も次々と生まれてきました.口腔インプラント学はその包括分野が広いだけでなく,それぞれの分野の専門性も高いため,統一用語を使用することはコミュニケーションを図り,相互に議論を深めるために極めて重要です.また,海外からの研究,臨床例の報告も多く,外来専門用語を安易に翻訳したり,独自の用語を作って使用したりすることは,その内容を正しく把握することが難しくなるばかりでなく,事柄の理解を惑わすことにもなりかねません.
 本用語集の初版は鈴木和夫会長の下,斎藤 毅用語委員長を中心として口腔インプラント関連用語を整理・収載するため,9年間にわたりインプラント関連の重要用語が選定されました.第2版は初版から7年後に川添堯彬理事長の下,赤川安正先生を用語委員長として,新たな学術用語の導入,古くなった用語の整理,日本語と英語の併記など,時代のニーズに対応した編集がなされました.第3版は渡邉文彦理事長の下,諏訪文彦先生を用語委員長として,第2版の4,000語の中から1,075用語を選別し,その解説が収載されました.また,第3版は2018年3月に窪木拓男委員長の下で補訂版が刊行され,用語の修正と71用語の追加が行われました.第4版では,昨今のデジタル化を反映して,日本デジタル歯科学会に用語の推薦を依頼し,その用語も含めて検討し,56用語が追加されました.その第4版の出版から4年が経過し,その間,デジタル改革ともいうべきDX(デジタルトランスフォーメーション)の波がさらに大きくなり,インプラント治療にもその応用が拡大されてきました.この学術用語集第5版は,第4版に掲載された用語やその解説を再検討し,用語の取捨選択および修正・追加を目的として編集作業に入りました.児玉利朗副委員長はじめ用語委員の先生方のご尽力により,まだ新型コロナウイルス感染症の流行が残る中,Web会議を利用しながら,令和4年9月14日から令和6年2月20日の約1年半にわたる編集会議と,査読作業によって出版することができました.この学術用語集が新しい時代の座右の書となることを切に願っております.
 最後になりましたが,第5版の制作に専門分野の知識を存分に発揮していただいた用語委員,執筆者の先生方,用語委員会のマネジメントを担当していただいた学会事務局,医歯薬出版編集部に厚く御礼を申し上げます.
 2024年4月


口腔インプラント用語集の発刊にあたって(初版)
 日本口腔インプラント学会
 会長 鈴木和夫
 用語集は学問領域の道標となるもので,内容と利用に一般学術書とは違った意味をもっています.歯科診療においてインプラント治療が多く行われるようになるに従い,インプラントに関連する用語が歯科医学の教育・研究および臨床に多く使われるようになってきました.このような専門用語には,用語をただ呼称させるだけでなく,その内容をある程度意味付けることが多いようです.新しく用語を設定・使用するには,共通した理解のもとに使用されるに至る研究・臨床面での長い間のインプラント学修学のなかで多くの検討がなされ,その結果として使われることが望ましいと考えます.
 口腔インプラント学は,外国での歴史も長く,外国からの研究・臨床例が多く報告され,発表などに使用される用語は英語をはじめとする外国語が多く,翻訳文に専門用語を外来専門語として直ちに使用することは,内容を正しく把握することが難しくなる傾向にあります.さりとて安易に翻訳し,訳語として使用することはその内容を誤って伝えることの不安もあります.また,個々独自に用語を作り,使用することは事柄の理解を惑わすことになります.また,インプラントに関する教育・研究・診療にあたっては,口腔インプラント学に関連する用語を的確に理解し,使用することが大切です.あらゆる領域での教育・研究にあたっては,用語について正しく理解し,より正確,かつ効果的に使用することが正しく内容を伝える第一歩と考えます.
 そのため,本書がインプラントを志すもののみならず,歯科医学の教育・研究・臨床に携わるすべての歯科医学関係者の座右の書として広く活用されることを期待しています.
 斎藤 毅教授(日本大学歯学部)を中心に,多くの委員によりインプラント学に関連する用語を纏めることを心がけてから,早くも9年余の歳月が過ぎました.これもこの間インプラント学が発展・変貌し,幾度となく見直し,整理の必要が起こり,そのため用語集の発刊が遅れ,今日に至ったと伺っております.
 当然のことながら,今後も,口腔インプラント学の進歩・変貌に伴い多くの用語が変化していくことは必至で,適正な用語,表記の統一など修正への努力を続ける必要があると思います.今後ともインプラント学の進歩・発展に伴って委員会の詳細な検討により修正・改正されることを願っています.
 また,用語集が論文執筆や診療の用語使用の規制となることなく,内容が正しく伝えられるための基準となることを期待しています.
 最後に,口腔インプラント学会独自の用語集の出版を強く希望した学会員と,これを高く評価しご尽力下さった古本啓一元会長ならびに末次恒夫前会長に深甚なる敬意を表するとともに心から感謝申し上げます.


序文(初版)
 日本口腔インプラント学会
 用語委員会委員長 斎藤 毅
 20世紀は科学技術の進歩の著しい100年であったと言われております.科学の進歩に伴って学問,技術は体系化が進み,それぞれ専門に分化して発展の道をたどってきました.学問と秘伝・奥義の類とが大きく異なるところは,その哲学,理論,技術を包括する学術的背景を「文字」で表現し,人に伝えることが出来るか否かにあると言われております.この意味で口腔インプラントの専門用語集が編集されて発刊の運びとなりましたことは,歯科医学におけるインプラント学の進歩と発展を示すものであり,またこの分野の今後の展開に寄与するところが大きいものと考えられます.
 この度の用語集は,日本口腔インプラント学会・平成6年度執行部(古本啓一会長)で企画されて学会用語委員会に付託されたもので,当初,インプラント用語集に対する期待は過度に大きいものでありました.しかし口腔インプラント学は基礎歯科医学から臨床の各専門領域を包括する学際的な領域であるため,その用語は解剖,病理,無機・有機材料,生体材料,外科技術,咬合の回復,生体の治癒力,予後管理あるいは社会科学など膨大な領域に亙るものであり,さらに用語の統一や解説を望む声も聞かれました.
 用語委員会では,これらの問題を整理し,今回の用語集では現在口腔インプラントを取り巻く歯科医学の領域で使用されている用語を整理して収録することとし,用語の解説は次の企画に委ねることとしました.すなわち,用語の蒐集は国内外の口腔インプラント関連の成書,学会誌を中心に進めました.また,同じ事象を異なる表現・用語で使われているもの,あるいはカタカナ表示で使用されているものもあり,これらの用語の統一は本委員会の能力を越えるものであり,また経時的に一つの用語に集約されて使われていくもので,これらの用語は同義語として複数併記して編集することとしました.
 口腔インプラント用語集の編集は平成9年度からは末次恒夫会長に,平成12年度からは鈴木和夫会長に引き継がれ,それぞれ委員会も改組され上記企画を継承して編集作業が継続され,この度,初版として完成したものであります.学術用語集の編集作業は着手して9年に亙るものでありますが,この間,日新月歩の著しい学問の進歩に合わせてup to dateの新しい用語を逐次追加して編集を進めました.また,前会期末(平成12年3月)には口腔インプラント用語集・暫定版を発刊し,これを学会役員(理事,評議員)に提供して広く意見を求めて完成度を高めました.
 本用語集は,インプラントに関する事象を英語,日本語および分類(カテゴリー)として3段に分けて編集し,利用者の便を図るために日本語索引を設けてあります.また巻末には,市販のインプラントシステムおよび世界のインプラント学会名を表示し,学術論文作成の助けとなるインプラント関連用語をまとめて記載してあります.さらに,本用語集は現鈴木会長の強い要請を受けて印刷物(ハードコピー)として全会員に配布することが認められ,また情報化の時代に即してCD-ROM化を行い会員の要請に応えられるよう準備がされております.
 以上のように,本用語集は学会の経年的な事業として企画され,3期,9年間に亙る精力的な努力によって資料の蒐集,採択,見直しなどの編集作業を通じて完成されたものであることを報告し,この間の作業に当たられた用語委員会の委員各位,特に地道な作業を進められた小委員会委員および学会事務局の御労苦に対し,深甚なる感謝の意を申し上げる次第であります.
 なお,口腔インプラントはその学術的背景が広く,学際領域に及び歯科における研究面および臨床面での活性が高い分野であるので,継続的な検討と改訂作業が必要であることを付記する.