やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年,小児を取り巻く環境は変化しており,その成長過程で生じる健康問題も多様化しています.小児の歯科医療は,身体的・精神的に未成熟な生体を対象とし,口腔の疾病治療だけでなく,発育障害の予防を重視し,これを達成するための継続的管理を行うものと捉えられています.社会が求める「全人的視点による小児の歯科医療」に応えるためには,小児歯科学という歯科医学を系統的,かつ社会的な視野から学んでいくことが重要となっています.
 歯科医師国家試験は,歯科医師法第9条に基づき,「臨床上必要な歯科医学および口腔衛生に関して,歯科医師として具有すべき知識および技能」について実施される試験です.その試験内容を具体的項目によって示した歯科医師国家試験出題基準は,平成22年版が2009年6月に発行されました.本書の第1版刊行からすでに3年余りが経過しており,今回,最新の歯科医師国家試験出題基準に沿った内容へと改訂を行うことになりました.
 本書は,過去の小児歯科学講義内容を凝縮し,重要ポイントをなるべく明瞭かつ簡潔に説明しています.読者の皆さんが,本書に興味をもてるように,著者らが学生だったころにどのようなテキストを望んでいたかを考え,従来のテキストのような厳格な形式を避けるように考慮しました.本書の本文中や欄外には,読者に理解しやすいようにポイント解説を設けました.各章のはじめにはCheck Pointとして,その章で最も大切な項目を箇条書きにしてあります.さらに,本文中の●よくでる(歯科医師国家試験や歯科衛生士試験に頻出内容),●CHECK!(おさえておきたい重要ポイント), や  (本文に関連した参照ポイント),●コラム(著者らのメッセージ)を活用することで,効率的に学ぶことができます.本書は,リラックスした親しみのあるスタイルではありますが,平成19年(2007年)改訂の歯科医学教授要綱を加味した内容になっています.読者の皆さんが本書を活用し,小児歯科学の知識を十分に修得されることを願っています.
 2012年4月 苅部洋行
Chapter 1 小児の全身発達
Chapter 2 歯の発育と異常
Chapter 3 歯列と咬合の成長発育
Chapter 4 乳歯および幼若永久歯の特徴
Chapter 5 小児齲蝕の特徴
Chapter 6 齲蝕の予防と進行抑制
Chapter 7 歯周疾患
Chapter 8 歯冠修復
Chapter 9 歯内療法
Chapter 10 歯の外傷
Chapter 11 外科的処置
Chapter 12 口腔軟組織疾患
Chapter 13 咬合誘導
Chapter 14 歯科治療時に留意すべき小児疾患
Chapter 15 小児患者への歯科的対応
Chapter 16 障害児の歯科診療

 付録 虐待関連法のまとめ
 付録 パノラマエックス線写真の読み方
 文献
 索引