監訳者の序
Netter博士による『Atlas of Human Anatomy』は図解医学書として,長年にわたり,日本を含め世界各国で医学生から教員,研究者まで広く愛用されてきています.頭頸部の複雑かつ精緻な解剖構造をより理解させるために,Netter博士の解剖図を補足する新たな図がつくられ,『Netter's Head and Neck Anatomy for Dentistry』として出版されました.本書でも『Atlas ofHuman Anatomy』から脈々と続くNetter博士の力強いタッチによる作画,写真だけでは理解できない構造の視覚化により,複雑かつ繊細な頭頸部の構造が見事なほどまでに描出されています.全身解剖向けの『Atlas of Human Anatomy』では図譜としての価値が非常に高いのですが,本書では図に加え,詳細だが簡潔にまとめられた説明文を加えることにより,読者の頭頸部解剖学への理解を深める試みがなされています.また,臨床歯学を強く意識した内容となっており,各章の終わりには臨床との関連が述べられ,基礎歯学のなかの頭頸部解剖学から,臨床歯学への橋渡しとなる頭頸部解剖学として編纂されています.
解剖学を教育する者にとって,平面的に描かれた図によって三次元的に複雑に配列している頭頸部の構造を学生に理解させることは困難を伴い,系統解剖学実習で立体的配置を理解させる必要があります.しかしながら,頭頸部のような狭い領域で微細な構造を正確に剖出し,理解していくことは学生にとって甚だ容易ではなく,本書のような頭頸部図解解剖学書の出版が待ち望まれていました.
本書を訳すにあたり,全国歯科大学・歯学部で解剖学を担当している第一線でご活躍の先生方に翻訳を打診したところ,きわめて好意的な承諾が得られ,短期間で翻訳を完了することができたことからも,本書に対する期待は非常に大きいと考えられます.
翻訳にあたり,用語については日本解剖学会解剖学用語委員会編集の『解剖学用語』第13 版を参照しましたが,本用語集に収録されていない英語名も多く,このような用語は説明文を元に,適切と思われる解剖学用語を採用しました.また臨床を意識した用語も多く用いられており,解剖学と臨床歯学で用いられる用語に統一することが難しい用語もあることをご理解いただきたいと思います.特に,あまり解剖学の分野では用いられない,人名を付した用語も多く掲載されています.
本書が歯学・歯科医療を目指す歯学部学生から教育・研究者,歯科医療に従事する人々の頭頸部解剖学の理解に役立ち,歯科医学,歯科医療の向上・進歩に貢献することを願っております.また,稿を終えるにあたり,本書の出版における意義を十二分に理解され,翻訳の機会を与えていただき,また困難かつ膨大な編集作業にあたられた医歯薬出版ならびに編集部の関係者に感謝を申し上げます.
2012 年1 月
新潟大学大学院医歯学総合研究科
前田健康
原著者序
『Netter's Head and Neck Anatomy for Dentistry(邦題:ネッター頭頸部・口腔顎顔面の臨床解剖学アトラス)』は,歯学部の学生や専門家が頭頸部解剖学を学び,また確認するためのテキストで,アトラスともいえる豊富なイラストが特徴です.本書は初年次の歯学生が理解できるように書かれていますが,歯科衛生士学校の学生に対する解剖学教育にも有用であり,さらには開業医の復習や検討にも役立つと考えています.頭頸部の構造を理解することは歯科解剖学の基盤となるものですが,多数の小さな構造物が複雑に関連しあっているので観察が難しく,頭頸部解剖学は学生にとってマスターするのが非常に困難な学問となっています.
解剖学を理解すれば,その臨床的な意義はおのずと明らかになるはずです.それゆえ,歯科における臨床的関連事項を各章の終わりにまとめて掲載してあります.頭頸部に関する解剖学的なトピックは多岐にわたり,本書においてもそれを十分にフォローしています.顎関節については1 つの章を充て,口腔の章では歯列のトピックなどのより詳細な情報を提供しています.頭頸部の発生および基礎神経科学を扱った章では,複数の解剖学的領域をそれぞれ関連づけて考えることができるように配慮されています.また,口腔内麻酔の章を設けたことで,看過しがちな事項を学び再確認するのに役立ちます.これらの章では,頭頸部解剖学に関連する重要な概念が簡潔にまとめられて読者に提示されています.
優れたメディカルイラストレーターのチームにより新たな図が追加され,Frank H.Netter博士の解剖図を補足することで,より完全な教材となりました.それらのイラストと関連する不可欠な情報は,表と短い文章にまとめてあります.これにより概念を視覚的に理解しやすくなり,読者諸氏の頭頸部解剖学の知識をさらに高めることに役立つと考えています.
『Netter's Head and Neck Anatomy for Dentistry』は,あらゆる歯科関係者のために書かれたテキストです.読者が頭頸部の複雑な解剖学を学び理解するための助けとなるべく,本書が重要な情報源として活用されることを願ってやみません.
Neil S.Norton,PhD
Netter博士による『Atlas of Human Anatomy』は図解医学書として,長年にわたり,日本を含め世界各国で医学生から教員,研究者まで広く愛用されてきています.頭頸部の複雑かつ精緻な解剖構造をより理解させるために,Netter博士の解剖図を補足する新たな図がつくられ,『Netter's Head and Neck Anatomy for Dentistry』として出版されました.本書でも『Atlas ofHuman Anatomy』から脈々と続くNetter博士の力強いタッチによる作画,写真だけでは理解できない構造の視覚化により,複雑かつ繊細な頭頸部の構造が見事なほどまでに描出されています.全身解剖向けの『Atlas of Human Anatomy』では図譜としての価値が非常に高いのですが,本書では図に加え,詳細だが簡潔にまとめられた説明文を加えることにより,読者の頭頸部解剖学への理解を深める試みがなされています.また,臨床歯学を強く意識した内容となっており,各章の終わりには臨床との関連が述べられ,基礎歯学のなかの頭頸部解剖学から,臨床歯学への橋渡しとなる頭頸部解剖学として編纂されています.
解剖学を教育する者にとって,平面的に描かれた図によって三次元的に複雑に配列している頭頸部の構造を学生に理解させることは困難を伴い,系統解剖学実習で立体的配置を理解させる必要があります.しかしながら,頭頸部のような狭い領域で微細な構造を正確に剖出し,理解していくことは学生にとって甚だ容易ではなく,本書のような頭頸部図解解剖学書の出版が待ち望まれていました.
本書を訳すにあたり,全国歯科大学・歯学部で解剖学を担当している第一線でご活躍の先生方に翻訳を打診したところ,きわめて好意的な承諾が得られ,短期間で翻訳を完了することができたことからも,本書に対する期待は非常に大きいと考えられます.
翻訳にあたり,用語については日本解剖学会解剖学用語委員会編集の『解剖学用語』第13 版を参照しましたが,本用語集に収録されていない英語名も多く,このような用語は説明文を元に,適切と思われる解剖学用語を採用しました.また臨床を意識した用語も多く用いられており,解剖学と臨床歯学で用いられる用語に統一することが難しい用語もあることをご理解いただきたいと思います.特に,あまり解剖学の分野では用いられない,人名を付した用語も多く掲載されています.
本書が歯学・歯科医療を目指す歯学部学生から教育・研究者,歯科医療に従事する人々の頭頸部解剖学の理解に役立ち,歯科医学,歯科医療の向上・進歩に貢献することを願っております.また,稿を終えるにあたり,本書の出版における意義を十二分に理解され,翻訳の機会を与えていただき,また困難かつ膨大な編集作業にあたられた医歯薬出版ならびに編集部の関係者に感謝を申し上げます.
2012 年1 月
新潟大学大学院医歯学総合研究科
前田健康
原著者序
『Netter's Head and Neck Anatomy for Dentistry(邦題:ネッター頭頸部・口腔顎顔面の臨床解剖学アトラス)』は,歯学部の学生や専門家が頭頸部解剖学を学び,また確認するためのテキストで,アトラスともいえる豊富なイラストが特徴です.本書は初年次の歯学生が理解できるように書かれていますが,歯科衛生士学校の学生に対する解剖学教育にも有用であり,さらには開業医の復習や検討にも役立つと考えています.頭頸部の構造を理解することは歯科解剖学の基盤となるものですが,多数の小さな構造物が複雑に関連しあっているので観察が難しく,頭頸部解剖学は学生にとってマスターするのが非常に困難な学問となっています.
解剖学を理解すれば,その臨床的な意義はおのずと明らかになるはずです.それゆえ,歯科における臨床的関連事項を各章の終わりにまとめて掲載してあります.頭頸部に関する解剖学的なトピックは多岐にわたり,本書においてもそれを十分にフォローしています.顎関節については1 つの章を充て,口腔の章では歯列のトピックなどのより詳細な情報を提供しています.頭頸部の発生および基礎神経科学を扱った章では,複数の解剖学的領域をそれぞれ関連づけて考えることができるように配慮されています.また,口腔内麻酔の章を設けたことで,看過しがちな事項を学び再確認するのに役立ちます.これらの章では,頭頸部解剖学に関連する重要な概念が簡潔にまとめられて読者に提示されています.
優れたメディカルイラストレーターのチームにより新たな図が追加され,Frank H.Netter博士の解剖図を補足することで,より完全な教材となりました.それらのイラストと関連する不可欠な情報は,表と短い文章にまとめてあります.これにより概念を視覚的に理解しやすくなり,読者諸氏の頭頸部解剖学の知識をさらに高めることに役立つと考えています.
『Netter's Head and Neck Anatomy for Dentistry』は,あらゆる歯科関係者のために書かれたテキストです.読者が頭頸部の複雑な解剖学を学び理解するための助けとなるべく,本書が重要な情報源として活用されることを願ってやみません.
Neil S.Norton,PhD
CHAPTER 1 頭頸部の発生
概観
鰓弓
鰓嚢(咽頭嚢),鰓膜(咽頭膜),鰓裂(咽頭裂)
頭蓋
顔面
口蓋
舌
甲状腺
臨床との関連
CHAPTER 2 骨学
概観
頭蓋骨
観察方向と縫合
主な孔と裂
頸椎
臨床との関連
CHAPTER 3 神経解剖学の基礎と脳神経
神経組織
中枢神経系
末梢神経系
脳神経
臨床との関連
CHAPTER 4 頸部
概観と局所解剖
頸部の三角
前頸三角
後頸三角
後頭下三角
内臓
頸の基部
筋
頸部の血液供給
頸部の神経支配
臨床との関連
CHAPTER 5 頭皮と表情筋
概観と局所解剖
頭皮の概説
頭皮の血液供給
頭皮の神経支配
表情筋の概説
顔面の血液供給
顔面の神経支配
臨床との関連
CHAPTER 6 耳下腺隙と耳下腺
概観と局所解剖
耳下腺隙陥凹
耳下腺隙の内容物
臨床との関連
CHAPTER 7 側頭窩および側頭骨下窩
概観と局所解剖
側頭窩の境界構造
側頭窩に含まれる構造
側頭下窩の境界構造
側頭下窩に含まれる構造
CHAPTER 8 咀嚼筋群
概観と局所解剖
咀嚼筋群
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 9 顎関節
概観と局所解剖 256
解剖
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 10 翼口蓋窩
概観と局所解剖
境界と開口部
翼口蓋窩の内容物
CHAPTER 11 鼻および鼻腔
概観と局所解剖
鼻
鼻腔
臨床との関連
CHAPTER 12 副鼻腔
概観と局所解剖
前頭洞
篩骨洞
上顎洞
蝶形骨洞
副鼻腔の画像
臨床との関連
CHAPTER 13 口腔
概観と局所解剖
外部構造の解剖
口腔の境界構造
歯
口腔の血液供給
口腔の神経支配
唾液腺
臨床との関連
CHAPTER 14 舌
概観と局所解剖
肉眼解剖
筋
神経支配
血液供給
臨床との関連
CHAPTER 15 咽頭
概観と局所解剖
咽頭の区分
筋
咽頭壁の間隙
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 16 喉頭
概観と局所解剖
軟骨
膜と靱帯
筋
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 17 頸部の筋膜
概観と局所解剖
頸部の筋膜
筋膜隙
臨床との関連
CHAPTER 18 耳
概観と局所解剖
構造と境界
筋
神経支配
血液供給
臨床との関連
CHAPTER 19 眼球と眼窩
眼窩の概観と局所解剖
眼窩の骨学
眼窩の内容
臨床との関連
CHAPTER 20 頭頸部の自律神経
自律神経系の概観
頭頸部の交感神経
頭頸部の副交感神経
臨床との関連
CHAPTER 21 口腔内麻酔
概観と局所解剖
下顎の麻酔
上顎の麻酔
付録 リンパ管
索引
和文索引
欧文索引
概観
鰓弓
鰓嚢(咽頭嚢),鰓膜(咽頭膜),鰓裂(咽頭裂)
頭蓋
顔面
口蓋
舌
甲状腺
臨床との関連
CHAPTER 2 骨学
概観
頭蓋骨
観察方向と縫合
主な孔と裂
頸椎
臨床との関連
CHAPTER 3 神経解剖学の基礎と脳神経
神経組織
中枢神経系
末梢神経系
脳神経
臨床との関連
CHAPTER 4 頸部
概観と局所解剖
頸部の三角
前頸三角
後頸三角
後頭下三角
内臓
頸の基部
筋
頸部の血液供給
頸部の神経支配
臨床との関連
CHAPTER 5 頭皮と表情筋
概観と局所解剖
頭皮の概説
頭皮の血液供給
頭皮の神経支配
表情筋の概説
顔面の血液供給
顔面の神経支配
臨床との関連
CHAPTER 6 耳下腺隙と耳下腺
概観と局所解剖
耳下腺隙陥凹
耳下腺隙の内容物
臨床との関連
CHAPTER 7 側頭窩および側頭骨下窩
概観と局所解剖
側頭窩の境界構造
側頭窩に含まれる構造
側頭下窩の境界構造
側頭下窩に含まれる構造
CHAPTER 8 咀嚼筋群
概観と局所解剖
咀嚼筋群
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 9 顎関節
概観と局所解剖 256
解剖
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 10 翼口蓋窩
概観と局所解剖
境界と開口部
翼口蓋窩の内容物
CHAPTER 11 鼻および鼻腔
概観と局所解剖
鼻
鼻腔
臨床との関連
CHAPTER 12 副鼻腔
概観と局所解剖
前頭洞
篩骨洞
上顎洞
蝶形骨洞
副鼻腔の画像
臨床との関連
CHAPTER 13 口腔
概観と局所解剖
外部構造の解剖
口腔の境界構造
歯
口腔の血液供給
口腔の神経支配
唾液腺
臨床との関連
CHAPTER 14 舌
概観と局所解剖
肉眼解剖
筋
神経支配
血液供給
臨床との関連
CHAPTER 15 咽頭
概観と局所解剖
咽頭の区分
筋
咽頭壁の間隙
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 16 喉頭
概観と局所解剖
軟骨
膜と靱帯
筋
血液供給
神経支配
臨床との関連
CHAPTER 17 頸部の筋膜
概観と局所解剖
頸部の筋膜
筋膜隙
臨床との関連
CHAPTER 18 耳
概観と局所解剖
構造と境界
筋
神経支配
血液供給
臨床との関連
CHAPTER 19 眼球と眼窩
眼窩の概観と局所解剖
眼窩の骨学
眼窩の内容
臨床との関連
CHAPTER 20 頭頸部の自律神経
自律神経系の概観
頭頸部の交感神経
頭頸部の副交感神経
臨床との関連
CHAPTER 21 口腔内麻酔
概観と局所解剖
下顎の麻酔
上顎の麻酔
付録 リンパ管
索引
和文索引
欧文索引








