やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年,歯科医学教育は著しく変貌し,生命科学の発展によって,歯科医療関係者にはさらに多くの知識や技能の修得が求められています.小児は,その成長発育過程の形態・生理・病理が成人と異なっているのはもちろんですが,最近ではその過程で生じる健康問題も多様化してきています.小児の歯科医療は,身体的・精神的に未成熟な生体を対象とし,口腔の疾病治療だけでなく,発育障害の予防を重視し,これを達成するための継続的管理を行うものと捉えられています.また,小児歯科医療には小児の身体面だけを診るのではなく,心理的・社会的な面も同時に診ていくという,全人的視点による医療が求められています.こうした社会の要求に応えるためには,小児歯科学という歯科医学を系統的に全人的視点で学んでいくことが大切です.
 本書は,過去の小児歯科学講義内容を凝縮し,重要ポイントをなるべく明瞭かつ簡潔に説明しています.読者の皆さんが,本書に興味をもてるように,著者らが学生だったころにどのようなテキストを望んでいたかを考え,従来のテキストのような厳格な形式を避けるように考慮しました.本書の本文中や欄外には,読者に理解しやすいようにポイント解説を設けました.各章のはじめにはCheck Pointとして,その章で最も大切な項目を箇条書きにしてあります.さらに,本文中のよくでる(歯科医師国家試験や歯科衛生士試験に頻出内容),CHECK!(おさえておきたい重要ポイント),本文に関連した参照ポイント,コラム(著者らのメッセージ)を活用することで,効率的に学ぶことができます.本書は,リラックスした親しみのあるスタイルではありますが,平成19年(2007年)改訂の歯科医学教授要綱を加味した内容になっています.読者の皆さんが本書を活用し,小児歯科学の知識を十分に修得されることを願っています.
 2009年4月
 苅部洋行
Chapter1 小児の全身発達
Chapter2 歯の発育と異常
Chapter3 歯列と咬合の成長発育
Chapter4 乳歯および幼若永久歯の特徴
Chapter5 小児齲蝕の特徴
Chapter6 齲蝕の予防と進行抑制
Chapter7 歯周疾患
Chapter8 歯冠修復
Chapter9 歯内療法
Chapter10 歯の外傷
Chapter11 外科的処置
Chapter12 口腔軟組織疾患
Chapter13 咬合誘導
Chapter14 歯科治療時に留意すべき小児疾患
Chapter15 小児患者への歯科的対応
Chapter16 障害児の歯科診療
 付録 パノラマエックス線写真の読み方
 文献
 索引