第5版 序
歯科医学の進歩と医療内容の充実への寄与を重要な責務とする私たちは,とくに新進気鋭の歯学生諸氏の向学心に応えるため,本書の改訂を重ねてきた.多くの歯科大学教授のご支援を得て,本書刊行以来,ほぼ10年ごとに版を改め,刷を重ね,ときにはご退任による著者交替も経験しつつ,早や30年の年月を閲した.今日まで,学務ご繁忙のなか多大なるご支援を賜った著者諸先生方に対し,紙上を借りて衷心より謝意を表したい.
さて,このたびの改訂にあたり,最大の課題であった編者の選定(前版は三谷の1人編集であった)に際しては,第1要件として時代をリードする優れた現役指導者であること,かつ複数の先生にお願いする必要を感じた.結果,小林,赤川両先生を編者に迎えたことの意義は大きく,このうえない幸せと感謝している.
さて,大まかにみて,いまの時代は世紀の移行期ともいえよう.患者中心の医療システムへの医療体制転換期(DOSからPOSへ)にあたり,インフォームド・コンセント,セカンドオピニオン,EBMなどに象徴される新しい医療の流れに戸惑うこともある.また,国家試験の制度も様変わりし,コンピュータを用いた客観試験(CBT)や客観的臨床能力試験(OSCE)の導入など根本的な改変が行われた(2007年).卒直後研修として歯科医師臨床研修制度も導入されたが,いまだ改革の過程であり,歯学生や若手歯科医師を取り巻く情勢がめまぐるしく急速に進歩し続けているのが現状であろう.
さて,第5版の出版基準であるが,用語は,基本的に『歯科補綴学専門用語集 第2版(日本補綴歯科学会編,2004年)』に準拠した.類語の用法は,文中に定めた一定のルールに従い,外国語は原則カナとし併記を避け簡明な記載にした.
最初の6章は歯科補綴学総論ともいうべき章が続き,歯科補綴学を学ぶ前の心構え(フィロソフィ)を中心にまとめており,基盤になる部分である.人類発達の歴史や近世の歯科医療の発達過程を含め,歯科補綴学全般の根底をなす頭頸局所の解剖学と生理学をやや詳細に,しかも実際の歯科補綴臨床に直結させた形で述べられている.本書を読み進めていくうちに,この基礎的な知識がだんだん重みを増して効いてくる点が,本書の特徴の1つである.基礎医学の知識と臨床の医術とが,表裏一体の関係にあることはいうまでもない.
限られた紙面であるため略述するが,「30章:暫間義歯,即時義歯,移行義歯,診断用義歯,ならびに治療用義歯」と「31章:インプラント補綴」は他書に比類ない貴重な内容であり,まさに基礎医学と歯科補綴臨床との通底(底面での繋がり)が実感される章である.歯学生諸氏に有用な紙面になるよう努めた本書の構成意図と,章ごとの特徴の一部を記すことで,巻頭の言葉に代えたい.
2009年2月
編者を代表して 三谷春保
第1版 序
本書は,大阪,岐阜,城西の3歯科大学で従来おこなわれてきた可撤性局部義歯学の講義内容を骨子としてまとめたものである.表紙の書名に“パーシャル窶cfンチャー“の語を用いたのは,その邦訳がまちまちだからで,本書では章の見出しなどフォーマルなところでは“可撤性局部義歯”とし,文中では便宜上使いなれた“局部床義歯”に統一した.
この種の本はまず簡明ですじが通ってまとまっていることが必要であろうが,それにつけても,臨床歯学教育の一環に携わるものの一人としてつねづね思い悩むことは,なにを教え,なにを教えざるべきかということである.専門的内容の正確さとバランスのみでなく,その意義と動向についての示唆を含めなければ,学生諸君の心に生涯燃えつづけるモチベーションとはならないからである.彼ら一人ひとりの手によってそれが多数の患者に施され,学問や技術はたえず進歩していく,それを貫くフィロソフィーとコンセプトが必要なのである.
そこで本書では,基礎編と臨床編に分け,基礎編ではまず咬合をとりあげて,補綴処置に対する咀嚼系の反応を重視し,可撤性局部義歯の占めるシチュエーションと特徴を明らかにしたうえで,そのメリットをたかめ,デメリットをなくして用途をひろげるという動向を強調した.
臨床編は,当然ながら常に病者と歯科医師との人間関係を基礎にしていることに留意して学んでほしい.記載は,可撤性局部義歯に関する術式を主とするようにつとめたが,すべてブリッジや総義歯(全部床義歯)にも通ずると考えてよい.
各章の末尾に掲載した関連問題は,最近4ヵ年間の厚生省の歯科医師国家試験問題が主体になっているから,学生諸君の参考となれば幸いである.ただし,まだ数も少ないために,その内容はたまたまその出題者の教育上のコンセプトのレベルを反映したにすぎないという見方もできるだろう.それらが学問の正しい趨向を示すところまでリファインされることが望まれるゆえんである.
最後に,本書の出版にあたって,岐阜歯科大学窶p・二泣E授と城西歯科大学窶v帥J嘉博教授の適切なご助言と,山下敦助教授,奥田貫之講師をはじめ教室員全員の積極的な協力に対して深甚の謝意を表します.また,虫本栄子助手の図版原画のトレース,本文の起稿から最終校正にいたるまでの一貫した助力と,医歯薬出版株式会社の最大限のご理解と協力に対し,感謝します.
1979年9月
三谷春保
第2版 序
第1版の上梓以後10年を閲し,その間,アンダーグラジュエートコースの講義録として,たえず内容の添削が必要とあせりながらもほとんど手をつけることができず,今回ようやく改訂の気運にめぐまれたことは,わたくしにとってこの上もない喜びであり感無量なものがある.たまたま,昭和57年から60年ごろにかけて日本補綴歯科学会のカリキュラム委員会で独自に練られた補綴学教育要項は,歯科の学部教育の指針として全歯科大学(歯学部)の補綴学教育担当者のコンセンサスが盛られた貴重な資料であり,syllabus改訂のためのガイドラインともいえるものである.
改訂の直接的な契機は,わたくしの定年退職に当たって,本書を永年にわたり副読本などとして活用して下さった各大学の教授諸氏のお力添えをお願いしたところ,それぞれに快諾のお返事をいただいたことによる.
改訂版の特徴は,まず学会のカリキュラムに関するガイドラインに沿って用語と項目の流れを整理したことである.また,各分担執筆者にお願いした部分に,なるべく平易で一貫した流れをもたせるように編集者として配慮させていただいた.関連問題は,掲載ページに限度があるので各章につき代表的なもの15問以内に絞られている.
巻末の参考書目欄に掲載した論文または成書は,本書の文中に著者名を引用させていただいた記述の原著を主体とし,それに咬合学関連の理解を助ける内外の名著を数多く加えた,著者(訳者)のご業績に深く敬意をあらわしたい.
本書が時代の変遷と学問の進歩に遅れないように,今後も充実改訂されていくことを願うとともに,共著者としての川野襄二,田中久敏,旗手敏,羽生哲也,藤井弘之,虫本栄子,柳生嘉博の諸氏の永年にわたるご協力に深甚の謝意を表する次第である.
1988年1月20日
三谷春保
第3版 序
本書の初版は'79年,第2版は'88年,そして今回'99年の第3版まで,約10年の節目ごとに2度,著者諸氏の熱意に支えられて改定を重ねることができた.編者として感謝にたえない,第1,2版を通じて毎年のように合計20刷を重ねていて,実はその都度,大小種々の部分改定が加えられてきた.一見目立たない努力ではあったが,全著者の総意による協力と出版社のご理解がなければできないことであった.
昨年1月の第2版第11刷発行後の申し合わせに沿って,今年は改版と決まり,懸案の第1章のなかの「下顎の位置と運動」の項,第5章Cosmax咬合器に替わる「Denar MarkII咬合器」,および第30章のなかの「インプラント」の項目など一新の作業を主な目標として,わが国補綴学分野での指導的立場にあり最大限にご多忙な田中久敏教授と藤井弘之教授による新原稿をお願いして,羽生哲也教授と虫本栄子助教授に強力な補佐をお願いした.名誉教授の地位に就かれた川野襄二,旗手 敏,柳生嘉博3先生には,いつものように温かいバックアップをお願いした.その機会に編者より厚くお礼を申し上げたい.
医学界でPOS医療とそれに沿った医学教育改革が提唱されはじめて久しいが,歯科学にもその波が及んできた.患者を主体とする“evidence based medicine(dentistry)”が唱えられ,専門分野のバリヤは揺るぎはじめた.国家試験のガイドラインの見直しや卒後研修制度強化に迎合するのではなく,あらためてその基になる卒前教育で何をいかに教え,何を教えざるべきかの基本を見通さなければ本末転倒になる.このような情勢展開のなかでの改訂に当たって,高い識見と強い使命感をもつ別々の大学の著者間を飛び交った考え方が短期間に実り,「版」と「刷」を重ねて紙面に具現されてきたことに,いささかの満足感と自省の念が交錯する.われわれは,21世紀人類の福祉への献身を目指す若き学徒たちの道標となり得るかと.
最後に,医歯薬出版株式会社編集部のかたがたの永年にわたる真摯なご支援がなければ,本書20年間の成長の歴史は生まれなかったであろうことを銘記して謝辞にかえ,第3版の序とする.
1999年3月5日
三谷春保
第4版 序
歯学生諸君を対象とする局部床義歯補綴学(部分床義歯補綴学)の入門書として,初版の上梓以来3版23刷を重ねて25年の歳月を閲した.そして改版の都度,著者・編者としての責務の重さを痛感してきた.
さてこのたび,5年ぶりの改版にあたって,修正,強化を目指した主な内容は,(1)局部床義歯(部分床義歯)による治療の意義(信頼関係に基づく全人的医療→患者のQOL向上の達成)の重さを認識すること,(2)医療の質的向上を促す問題解決志向システム(POS)医療のインセンティブを高めること,(3)その実践に欠かせない治療術式のマニュアルとして役立つこと,(4)専門学会主導により軌道にのった統一用語への準拠に努めること,などである.読者諸氏に改版の意図をご理解いただき,益するところがあれば幸いである.なお,前版にならって20世紀における歯科医学の発達の歴史を回顧し,あるいはやや多様な伝統的コンセプトと術式について述べた部分があるが,その軽重・採否は指導教官ならびに読者諸氏の裁量にお任せするしかない.
本書で用いた専門用語のうち,ごく一部が上記の用語集の規範からはずれている理由は単純ではないが,歴史的な慣用語の使用,あるいは原語(主として英語)と翻訳語の字義の合致をやや重視した過渡的な判断の現れといわざるをえない.たとえば,本書では,“咀嚼系“のほか,書名の“パーシャルデンチャー”本文中の“局部床義歯“,一部の図の説明に“RPD”を用いている.詳細は巻末の「用語の解説」を参照されたい.
改版にあたり,諸般の事情で朝日大学名誉教授 川野襄二先生(故人),日本歯科大学名誉教授旗手 敏先生,および明海大学名誉教授柳生嘉博先生のご勇退を受けて著者の構成に異動を生じた.第2版第1刷(1988)以来今日までの三先生のご支援に対し深甚の謝意を表したい.
幸い,ご退任の三先生をはじめ多数の方がたからその空席を補う人材のご推挽をうけ,ここに21世紀の補綴学のリーダーとしてご活躍中の8氏にお願いして,あらたに共著者の隊列に加わっていただくことができた.章ごとの紙面の清新な改稿はもとより,全著者の一体感が生まれて,改版の意図を汲んだ一貫性のある記述の底流が醸しだされた.この力強い基盤に立って予期した成果を世に問うことの喜びを禁じえない.チームワークの成果は,チームメイトが“準備活動のひとつひとつをいかに創造的なやり方で…接触し合って…遂行したか”にかかっているという畏友 川喜田二郎(元東京工業大学教授)の論説(光文社刊「チームワーク」,1966)の一節に,編者として深い共感を覚えていることを申し述べて,著者諸氏への心からの敬意と謝意に代えたい.
2004年3月5日
三谷春保
歯科医学の進歩と医療内容の充実への寄与を重要な責務とする私たちは,とくに新進気鋭の歯学生諸氏の向学心に応えるため,本書の改訂を重ねてきた.多くの歯科大学教授のご支援を得て,本書刊行以来,ほぼ10年ごとに版を改め,刷を重ね,ときにはご退任による著者交替も経験しつつ,早や30年の年月を閲した.今日まで,学務ご繁忙のなか多大なるご支援を賜った著者諸先生方に対し,紙上を借りて衷心より謝意を表したい.
さて,このたびの改訂にあたり,最大の課題であった編者の選定(前版は三谷の1人編集であった)に際しては,第1要件として時代をリードする優れた現役指導者であること,かつ複数の先生にお願いする必要を感じた.結果,小林,赤川両先生を編者に迎えたことの意義は大きく,このうえない幸せと感謝している.
さて,大まかにみて,いまの時代は世紀の移行期ともいえよう.患者中心の医療システムへの医療体制転換期(DOSからPOSへ)にあたり,インフォームド・コンセント,セカンドオピニオン,EBMなどに象徴される新しい医療の流れに戸惑うこともある.また,国家試験の制度も様変わりし,コンピュータを用いた客観試験(CBT)や客観的臨床能力試験(OSCE)の導入など根本的な改変が行われた(2007年).卒直後研修として歯科医師臨床研修制度も導入されたが,いまだ改革の過程であり,歯学生や若手歯科医師を取り巻く情勢がめまぐるしく急速に進歩し続けているのが現状であろう.
さて,第5版の出版基準であるが,用語は,基本的に『歯科補綴学専門用語集 第2版(日本補綴歯科学会編,2004年)』に準拠した.類語の用法は,文中に定めた一定のルールに従い,外国語は原則カナとし併記を避け簡明な記載にした.
最初の6章は歯科補綴学総論ともいうべき章が続き,歯科補綴学を学ぶ前の心構え(フィロソフィ)を中心にまとめており,基盤になる部分である.人類発達の歴史や近世の歯科医療の発達過程を含め,歯科補綴学全般の根底をなす頭頸局所の解剖学と生理学をやや詳細に,しかも実際の歯科補綴臨床に直結させた形で述べられている.本書を読み進めていくうちに,この基礎的な知識がだんだん重みを増して効いてくる点が,本書の特徴の1つである.基礎医学の知識と臨床の医術とが,表裏一体の関係にあることはいうまでもない.
限られた紙面であるため略述するが,「30章:暫間義歯,即時義歯,移行義歯,診断用義歯,ならびに治療用義歯」と「31章:インプラント補綴」は他書に比類ない貴重な内容であり,まさに基礎医学と歯科補綴臨床との通底(底面での繋がり)が実感される章である.歯学生諸氏に有用な紙面になるよう努めた本書の構成意図と,章ごとの特徴の一部を記すことで,巻頭の言葉に代えたい.
2009年2月
編者を代表して 三谷春保
第1版 序
本書は,大阪,岐阜,城西の3歯科大学で従来おこなわれてきた可撤性局部義歯学の講義内容を骨子としてまとめたものである.表紙の書名に“パーシャル窶cfンチャー“の語を用いたのは,その邦訳がまちまちだからで,本書では章の見出しなどフォーマルなところでは“可撤性局部義歯”とし,文中では便宜上使いなれた“局部床義歯”に統一した.
この種の本はまず簡明ですじが通ってまとまっていることが必要であろうが,それにつけても,臨床歯学教育の一環に携わるものの一人としてつねづね思い悩むことは,なにを教え,なにを教えざるべきかということである.専門的内容の正確さとバランスのみでなく,その意義と動向についての示唆を含めなければ,学生諸君の心に生涯燃えつづけるモチベーションとはならないからである.彼ら一人ひとりの手によってそれが多数の患者に施され,学問や技術はたえず進歩していく,それを貫くフィロソフィーとコンセプトが必要なのである.
そこで本書では,基礎編と臨床編に分け,基礎編ではまず咬合をとりあげて,補綴処置に対する咀嚼系の反応を重視し,可撤性局部義歯の占めるシチュエーションと特徴を明らかにしたうえで,そのメリットをたかめ,デメリットをなくして用途をひろげるという動向を強調した.
臨床編は,当然ながら常に病者と歯科医師との人間関係を基礎にしていることに留意して学んでほしい.記載は,可撤性局部義歯に関する術式を主とするようにつとめたが,すべてブリッジや総義歯(全部床義歯)にも通ずると考えてよい.
各章の末尾に掲載した関連問題は,最近4ヵ年間の厚生省の歯科医師国家試験問題が主体になっているから,学生諸君の参考となれば幸いである.ただし,まだ数も少ないために,その内容はたまたまその出題者の教育上のコンセプトのレベルを反映したにすぎないという見方もできるだろう.それらが学問の正しい趨向を示すところまでリファインされることが望まれるゆえんである.
最後に,本書の出版にあたって,岐阜歯科大学窶p・二泣E授と城西歯科大学窶v帥J嘉博教授の適切なご助言と,山下敦助教授,奥田貫之講師をはじめ教室員全員の積極的な協力に対して深甚の謝意を表します.また,虫本栄子助手の図版原画のトレース,本文の起稿から最終校正にいたるまでの一貫した助力と,医歯薬出版株式会社の最大限のご理解と協力に対し,感謝します.
1979年9月
三谷春保
第2版 序
第1版の上梓以後10年を閲し,その間,アンダーグラジュエートコースの講義録として,たえず内容の添削が必要とあせりながらもほとんど手をつけることができず,今回ようやく改訂の気運にめぐまれたことは,わたくしにとってこの上もない喜びであり感無量なものがある.たまたま,昭和57年から60年ごろにかけて日本補綴歯科学会のカリキュラム委員会で独自に練られた補綴学教育要項は,歯科の学部教育の指針として全歯科大学(歯学部)の補綴学教育担当者のコンセンサスが盛られた貴重な資料であり,syllabus改訂のためのガイドラインともいえるものである.
改訂の直接的な契機は,わたくしの定年退職に当たって,本書を永年にわたり副読本などとして活用して下さった各大学の教授諸氏のお力添えをお願いしたところ,それぞれに快諾のお返事をいただいたことによる.
改訂版の特徴は,まず学会のカリキュラムに関するガイドラインに沿って用語と項目の流れを整理したことである.また,各分担執筆者にお願いした部分に,なるべく平易で一貫した流れをもたせるように編集者として配慮させていただいた.関連問題は,掲載ページに限度があるので各章につき代表的なもの15問以内に絞られている.
巻末の参考書目欄に掲載した論文または成書は,本書の文中に著者名を引用させていただいた記述の原著を主体とし,それに咬合学関連の理解を助ける内外の名著を数多く加えた,著者(訳者)のご業績に深く敬意をあらわしたい.
本書が時代の変遷と学問の進歩に遅れないように,今後も充実改訂されていくことを願うとともに,共著者としての川野襄二,田中久敏,旗手敏,羽生哲也,藤井弘之,虫本栄子,柳生嘉博の諸氏の永年にわたるご協力に深甚の謝意を表する次第である.
1988年1月20日
三谷春保
第3版 序
本書の初版は'79年,第2版は'88年,そして今回'99年の第3版まで,約10年の節目ごとに2度,著者諸氏の熱意に支えられて改定を重ねることができた.編者として感謝にたえない,第1,2版を通じて毎年のように合計20刷を重ねていて,実はその都度,大小種々の部分改定が加えられてきた.一見目立たない努力ではあったが,全著者の総意による協力と出版社のご理解がなければできないことであった.
昨年1月の第2版第11刷発行後の申し合わせに沿って,今年は改版と決まり,懸案の第1章のなかの「下顎の位置と運動」の項,第5章Cosmax咬合器に替わる「Denar MarkII咬合器」,および第30章のなかの「インプラント」の項目など一新の作業を主な目標として,わが国補綴学分野での指導的立場にあり最大限にご多忙な田中久敏教授と藤井弘之教授による新原稿をお願いして,羽生哲也教授と虫本栄子助教授に強力な補佐をお願いした.名誉教授の地位に就かれた川野襄二,旗手 敏,柳生嘉博3先生には,いつものように温かいバックアップをお願いした.その機会に編者より厚くお礼を申し上げたい.
医学界でPOS医療とそれに沿った医学教育改革が提唱されはじめて久しいが,歯科学にもその波が及んできた.患者を主体とする“evidence based medicine(dentistry)”が唱えられ,専門分野のバリヤは揺るぎはじめた.国家試験のガイドラインの見直しや卒後研修制度強化に迎合するのではなく,あらためてその基になる卒前教育で何をいかに教え,何を教えざるべきかの基本を見通さなければ本末転倒になる.このような情勢展開のなかでの改訂に当たって,高い識見と強い使命感をもつ別々の大学の著者間を飛び交った考え方が短期間に実り,「版」と「刷」を重ねて紙面に具現されてきたことに,いささかの満足感と自省の念が交錯する.われわれは,21世紀人類の福祉への献身を目指す若き学徒たちの道標となり得るかと.
最後に,医歯薬出版株式会社編集部のかたがたの永年にわたる真摯なご支援がなければ,本書20年間の成長の歴史は生まれなかったであろうことを銘記して謝辞にかえ,第3版の序とする.
1999年3月5日
三谷春保
第4版 序
歯学生諸君を対象とする局部床義歯補綴学(部分床義歯補綴学)の入門書として,初版の上梓以来3版23刷を重ねて25年の歳月を閲した.そして改版の都度,著者・編者としての責務の重さを痛感してきた.
さてこのたび,5年ぶりの改版にあたって,修正,強化を目指した主な内容は,(1)局部床義歯(部分床義歯)による治療の意義(信頼関係に基づく全人的医療→患者のQOL向上の達成)の重さを認識すること,(2)医療の質的向上を促す問題解決志向システム(POS)医療のインセンティブを高めること,(3)その実践に欠かせない治療術式のマニュアルとして役立つこと,(4)専門学会主導により軌道にのった統一用語への準拠に努めること,などである.読者諸氏に改版の意図をご理解いただき,益するところがあれば幸いである.なお,前版にならって20世紀における歯科医学の発達の歴史を回顧し,あるいはやや多様な伝統的コンセプトと術式について述べた部分があるが,その軽重・採否は指導教官ならびに読者諸氏の裁量にお任せするしかない.
本書で用いた専門用語のうち,ごく一部が上記の用語集の規範からはずれている理由は単純ではないが,歴史的な慣用語の使用,あるいは原語(主として英語)と翻訳語の字義の合致をやや重視した過渡的な判断の現れといわざるをえない.たとえば,本書では,“咀嚼系“のほか,書名の“パーシャルデンチャー”本文中の“局部床義歯“,一部の図の説明に“RPD”を用いている.詳細は巻末の「用語の解説」を参照されたい.
改版にあたり,諸般の事情で朝日大学名誉教授 川野襄二先生(故人),日本歯科大学名誉教授旗手 敏先生,および明海大学名誉教授柳生嘉博先生のご勇退を受けて著者の構成に異動を生じた.第2版第1刷(1988)以来今日までの三先生のご支援に対し深甚の謝意を表したい.
幸い,ご退任の三先生をはじめ多数の方がたからその空席を補う人材のご推挽をうけ,ここに21世紀の補綴学のリーダーとしてご活躍中の8氏にお願いして,あらたに共著者の隊列に加わっていただくことができた.章ごとの紙面の清新な改稿はもとより,全著者の一体感が生まれて,改版の意図を汲んだ一貫性のある記述の底流が醸しだされた.この力強い基盤に立って予期した成果を世に問うことの喜びを禁じえない.チームワークの成果は,チームメイトが“準備活動のひとつひとつをいかに創造的なやり方で…接触し合って…遂行したか”にかかっているという畏友 川喜田二郎(元東京工業大学教授)の論説(光文社刊「チームワーク」,1966)の一節に,編者として深い共感を覚えていることを申し述べて,著者諸氏への心からの敬意と謝意に代えたい.
2004年3月5日
三谷春保
第1編 基礎編
1章 医療のなかの歯科補綴学(三谷春保)
I 医の原則
1 患者の尊厳と医の倫理
2 歯科医師の責務
3 歯科医療における安全性への配慮と危機管理
II 歯科医師としての基本的態度と責任
1 生涯学習
2 コミュニケーション
3 診療に関する情報とその開示
4 保健・医療・福祉制度への理解
III 局部(部分)床義歯補綴治療の特徴
1 義歯装着直後の顎堤粘膜の疼痛
2 可撤性装置であること
3 義歯の清掃とアフターケア
4 リコール
2章 局部床義歯補綴の歴史と趨向(三谷春保)
I 歯科補綴臨床の発達史
II 20世紀における歯科補綴学進歩の足取り
1 20世紀前半の進歩
2 20世紀後半からの意欲的な動向
III 20世紀後半のグローバルな進歩
1 医用電子機器の普及
2 インプラントの役割
3 局部(部分)床義歯支台装置としてのインプラント
3章 局部床義歯補綴の目的と臨床的意義(赤川安正)
I 局部(部分)床義歯補綴の目的
II 局部(部分)床義歯補綴の臨床的意義
1 暫間義歯,診断用義歯,治療用義歯,移行義歯(短期間の装着)
2 最終義歯(長期間の装着)
3 即時義歯(短期間および長期間の装着)
III 義歯による高齢者の咬合管理
IV 歯科医師の心構えと責任
4章 顎口腔系の構成と機能運動(三谷春保)
I 顎関節(側頭下顎関節)
II 咀嚼・嚥下に関与する筋群
III 下顎骨に付着する靱帯
IV 下顎運動の神経制御機構
V 下顎の位置と運動
1 下顎の基本位
1)下顎安静位 2)咬頭嵌合位 3)下顎後退位と中心位
2 下顎の基本運動
1)矢状面における下顎運動 2)水平面における下顎運動 3)前頭面における下顎運動
3 顎運動のテコ
VI 咀嚼と嚥下運動
1 咀嚼運動の経路
2 嚥下
5章 咬合異常,歯の欠損などに続発する症候および局部床義歯補綴により回復される咬合(小林義典)
I 正常咬合
II 歯の支持組織
III 咬合異常
IV 咬合異常に続発する症候
V 咬合異常の背景
VI 加齢に伴う顎口腔系の変化
VII 顎口腔系の障害
1 顎関節症
2 オーラルディスキネジア
3 習慣性顎関節脱臼
4 摂食・嚥下障害
VIII 補綴学的咬合様式
1 咬頭嵌合位と対合関係
2 偏心位
1)前方滑走運動時 2)後方滑走運動時 3)側方滑走運動時
IX 局部(部分)床義歯補綴により回復される咬合
1 前処置
2 局部(部分)床義歯補綴により回復される咬合で留意すべき点
3 症例に応じた局部(部分)床義歯補綴の咬合の考え方
4 オーバーデンチャー補綴の咬合の考え方
6章 局部床義歯補綴にかかわる解剖学的事項(三谷春保)
I 審美性の回復
II 義歯床縁の形態と解剖
III 義歯研磨面の形態と解剖
7章 咬合器の一般的概念(古谷野 潔)
I 咬合器の分類
1 解剖学的咬合器
1)解剖学的咬合器の機能 2)解剖学的咬合器の調節性による分類 3)関節部の構造による分類
2 非解剖学的咬合器
II 咬合器の選択
III 半調節性咬合器の使用法の実際
1 フェイスボウトランスファー
1)基準点の設定 2)フェイスボウ記録 3)フェイスボウを用いた上顎模型の咬合器装着 4)フェイスボウトランスファーの必要性
2 下顎模型の咬合器装着
3 咬合器の調節
1)顆路 2)チェックバイト法 3)チェックバイト採得時の下顎の移動量 4)チェックバイト採得時の咬合挙上 5)顆路の調節(前方チェックバイト法) 6)顆路の調節(側方チェックバイト法)
8章 局部床義歯の特徴と構成要素(三谷春保)
I 局部(部分)床義歯の特徴
II 局部(部分)床義歯の8構成要素とそれらの役割
III 局部(部分)床義歯の臨床に特有の手順
9章 補綴装置の選択(赤川安正)
I 口腔以外の諸因子
II 固定性局部義歯(ブリッジ)の側からみた条件
III 局部(部分)床義歯の側からみた条件
10章 局部床義歯の設計に有用な症型分類(小出 馨)
I Kennedyの分類
II Eichnerの分類
11章 連結子の基本的考え方(三谷春保)
I 連結子の分類と目的
II 連結子の具備条件
III 大連結子製作上の注意事項
IV 大連結子の種類
12章 局部床義歯の支持の考え方(三谷春保)
I 義歯床下組織の生物力学
II 支台歯(歯根膜)の生物力学
III 咬合力負担形式の違いと義歯の設計
1 歯根膜負担義歯の床
2 粘膜負担義歯の床
3 歯根膜粘膜負担義歯の床
4 レストを介する歯根膜負担
5 その他の歯根膜負担
6 支台歯間線
7 緩圧法
13章 局部床義歯の把持の考え方(市川哲雄)
I 局部(部分)床義歯の把持の基本的考え方
II 把持機能(効果)を発揮する局部(部分)床義歯の構成要素
III ガイドプレーンと隣接面板
1 効果
2 所要条件
IV 局部(部分)床義歯の動きを最小にするための把持の意義
14章 局部床義歯の維持の考え方(市川哲雄)
I 局部(部分)床義歯の維持の考え方
II 維持機能を発揮する局部(部分)床義歯の構成要素
III 支台装置の所要条件
IV 支台装置の種類と分類
1 クラスプとアタッチメント
2 クラスプの分類
3 直接支台装置と間接支台装置
V クラスプの基本的理解
1 クラスプの一般的構造と機能
2 クラスプの歯面適合位置
3 鉤腕の維持力の発揮と弾性限界
4 クラスプの維持力低下の原因
VI クラスプ(維持力)の働き方
1 直線的な動きに対して
2 回転力に対して
VII 義歯床における維持
1 義歯の維持に役立つ筋
2 義歯床の維持を妨げるおそれのある筋
15章 局部床義歯用材料(三谷春保)
I 局部(部分)床義歯を構成する材料の種類
II 義歯床・フレームワーク用材料
1 義歯床用材料としての所要条件
2 義歯床用レジン
3 フレームワーク鋳造用金属
1)金合金(TypeIV) 2)コバルトクロム合金 3)純チタンおよびチタン合金 4)金合金,コバルトクロム合金,純チタンおよびチタン合金の比較 5)レジン床と金属床との比較
III クラスプ,連結子用材料
IV 人工歯材料
V リライン用材料
2編 臨床編
16章 診断と治療計画(佐々木啓一)
I 医療面接
1 医療面接とは
2 面接のはじめに
3 面接をスムーズに行うためのコミュニケーションスキル
4 病歴の聴取
5 その他
II 現症の診察と検査
1 口腔外の診察
2 口腔内の診察
3 模型上での検査
4 エックス線検査
5 チャートの記載
6 プロブレムリストの作成
III 診断
1 顎口腔系の状況
2 治療方法の選択
IV 治療計画
1 治療計画の基本的な順序
2 治療計画立案時の留意事項
3 初期(暫間的な)治療計画
4 最終的な治療計画の記録
5 診断,治療計画の提示とインフォームド・コンセント
V 問題志向型診療録(POMR)の導入
1 POMRの構造
2 SOAP方式の経過記録
3 POMRの特徴
17章 口腔内前処置(橋 裕)
I 咬合治療
1 咬合位の回復
2 咬合平面の修正
II 支台歯の前処置
1 歯冠形態の削除修正
2 レストシートの形成
3 支台歯のための歯冠補綴
18章 局部床義歯補綴治療の臨床ステップ(三谷春保)
19章 前処置としての咬合調整(橋 裕)
I 概説
1 咬合調整の目的
2 咬合調整の適応症
3 咬合調整の禁忌症
4 咬合調整の時期
5 咬合調整に用いる器材
II 咬合干渉の検査
1 口腔内の検査
2 咬合器上での検査と模型上での予備調整
III 咬合調整の法則と術式
1 咬合調整の基本原則
2 早期接触の削合調整
3 咬頭干渉の削合調整
4 前方運動時の干渉部の削合
20章 印象採得と模型製作(山内六男)
I 負担および維持様式と印象法の選択
1 歯根膜負担義歯のための印象
2 粘膜負担義歯のための印象
3 歯根膜粘膜負担義歯のための印象
II 印象材の種類と特徴,トレーおよび印象採得の準備
1 印象材の種類と特徴
2 トレー
3 印象採得の準備
III ハイドロコロイド印象材による印象
1 アルジネート印象材による概形印象
2 寒天アルジネート連合印象
IV 個人トレーと弾性印象材による機能印象
1 レジン製個人トレーの製作と調整
2 筋圧形成
3 シリコーンラバーによる機能印象
4 寒天アルジネート連合印象による機能印象
V オルタードキャスト法
VI 模型
1 模型の製作
2 基底部の形成
3 模型の複製
21章 サベイング(都尾元宣)
I サベイヤーの構造
II 研究用模型のサべイング(仮設計)
III 義歯着脱方向決定の要因
IV 歯冠修復物の成形法(ミリングテクニック)
V 作業用模型のサベイング(本設計)
22章 局部床義歯の設計とフレームワークの製作(大川周治)
I 局部(部分)床義歯設計の考え方
1 設計を左右する要件
2 設計の順序
3 設計に必要な一般的考え方
1)支台歯の選択 2)義歯床の外形 3)大連結子 4)直接支台装置 5)間接支台装置
II Kennedy分類に基づく設計の考え方
1 Kennedy ClassI症例の設計
2 Kennedy ClassII症例の設計
3 Kennedy ClassIII症例の設計
4 Kennedy ClassIV症例の設計
III 歯周衛生を考慮した設計
1 クラスプと鉤脚
2 大連結子
3 遊離端義歯の支台歯に隣接する人工歯
4 アルベオラーバーによる維持
IV 少数歯残存症例の設計
1 歯根膜粘膜負担義歯
2 オーバーデンチャー
V フレームワークの製作
1 金属床義歯とレジン床義歯の比較
2 フレームワークの設計
3 フレームワークの各部の形態
4 フレームワークの試適
23章 大連結子(櫻井 薫)
I 上顎の大連結子
1 パラタルバー
2 パラタルストラップ
3 パラタルプレート
4 ホースシュープレート
II 下顎の大連結子
1 リンガルバー
2 リンガルプレート
III 外側バー
24章 支台装置(櫻井 薫)
I 線鉤(屈曲鉤)
1 特徴
2 レスト付2腕鉤
3 1腕鉤(単純鉤)
II 鋳造鉤
1 特徴
2 鋳造鉤の製作法
3 鋳造鉤のデザイン
1)エーカースクラスプ 2)ローチクラスプ 3)リングクラスプ 4)RPIクラスプ 5)双子鉤 6)連続鉤 7)ヘアピンクラスプ 8)バックアクションクラスプ 9)リバース バックアクションクラスプ 10)ハーフアンドハーフクラスプ 11)延長腕鉤 12)コンビネーションクラスプ
III アタッチメント
1 特徴
2 構成と分類
(1)歯冠外アタッチメント (2)歯冠内アタッチメント (3)歯根アタッチメント (4)バーアタッチメント
IV フックとスパー
25章 咬合採得(中心咬合位の決定)(大川周治)
I 上顎模型の咬合器装着
II 咬合採得
1 咬合採得時の注意事項
2 咬合高径の決定
3 咬合採得の術式
1)上下顎作業用模型のみによる咬頭嵌合位の再現法 2)ワックスバイト法 3)旧義歯を用いる方法 4)咬合床を用いる方法
26章 人工歯の選択,排列,歯肉形成,ならびにロウ義歯の試適(小出 馨)
I 人工歯の選択
1 材質
2 前歯人工歯の形態と大きさ
3 臼歯人工歯の形態と大きさ
4 人工歯の色調
II 前歯部人工歯排列
1 前歯部人工歯排列の基本的原理と術式
2 前歯部人工歯の形態と歯列の関係
3 日本人の前歯歯列にみられる特徴
4 義歯はなぜ不自然にみえるのか
III SPA要素の表現法
1 性別要素の特徴と表現法
2 個性要素の特徴と表現法
3 年齢要素の特徴と表現法
IV 臼歯部人工歯排列
1 臼歯部人工歯排列の原則
2 臼歯部人工歯排列の術式
V 歯肉形成と陟沂`歯の試適
1 歯肉形成
2 陟沂`歯の試適
27章 埋没から義歯完成まで(都尾元宣)
I 埋没
1 単純埋没法
1)フランス式埋没(被覆)法 2)アメリカ式埋没(切痕)法 3)フランス(被覆)とアメリカ(切痕)併用式埋没法 4)流ロウ 5)レジンの填入と重合
2 分割埋没法
II コア法
III 研磨
IV 義歯付き模型の咬合器再装着
28章 義歯の装着,調整,ならびに指導(櫻井 薫)
I 義歯の装着
II 義歯の調整
1 新義歯装着時の調整
2 2回目以降の調整
III 患者の指導
29章 義歯装着後の管理(志賀 博(IIIIII)・櫻井 薫(IV))
I 義歯破損の背景と内容
1 義歯破損と病態進行のメカニズム
2 義歯破損の部位と内容
II 義歯の修理法
1 義歯床の破折
2 義歯床粘膜面の不適合
3 人工歯の脱落
4 人工歯の追補
5 支台装置の破損
6 支台歯歯冠の崩壊
III リラインとリベース
1 リラインとリベースの適応症
2 義歯床の適合試験
3 リライン
1)直接法 2)間接法 3)金属床義歯のリライン
4 リベース
IV リコール
30章 暫間義歯,即時義歯,移行義歯,診断用義歯,ならびに治療用義歯(小林義典)
I 概説
1 広義の暫間義歯の応用目的による分類
2 広義の暫間義歯応用の基本的概念
II 適応症と設計の要点
1 狭義の暫間義歯
2 即時義歯
3 移行義歯
4 診断用または治療用義歯
III 治療用義歯による顎関節症の保存療法
31章 インプラント補綴(赤川安正)
I 概説
1 インプラントとオッセオインテグレーションの歴史
2 オッセオインテグレーション
1)オッセオインテグレーションとは 2)オッセオインテグレーションの獲得 3)オッセオインテグレーションの維持
3 インプラントの基本構造
4 インプラントの埋入術式
II 各種補綴法
1 術者可撤性補綴装置
2 患者可撤性補綴装置
3 固定性補綴装置
32章 顎顔面補綴(古谷野 潔)
I 顎顔面補綴の分類
II 上顎欠損の補綴
III 下顎欠損の補綴
IV 舌・口底欠損の補綴
V 顔面欠損の補綴
VI 唇顎口蓋裂の補綴
VII インプラントを用いた顎顔面補綴
VIII 患者の生活指導と社会復帰
文献
索引
1章 医療のなかの歯科補綴学(三谷春保)
I 医の原則
1 患者の尊厳と医の倫理
2 歯科医師の責務
3 歯科医療における安全性への配慮と危機管理
II 歯科医師としての基本的態度と責任
1 生涯学習
2 コミュニケーション
3 診療に関する情報とその開示
4 保健・医療・福祉制度への理解
III 局部(部分)床義歯補綴治療の特徴
1 義歯装着直後の顎堤粘膜の疼痛
2 可撤性装置であること
3 義歯の清掃とアフターケア
4 リコール
2章 局部床義歯補綴の歴史と趨向(三谷春保)
I 歯科補綴臨床の発達史
II 20世紀における歯科補綴学進歩の足取り
1 20世紀前半の進歩
2 20世紀後半からの意欲的な動向
III 20世紀後半のグローバルな進歩
1 医用電子機器の普及
2 インプラントの役割
3 局部(部分)床義歯支台装置としてのインプラント
3章 局部床義歯補綴の目的と臨床的意義(赤川安正)
I 局部(部分)床義歯補綴の目的
II 局部(部分)床義歯補綴の臨床的意義
1 暫間義歯,診断用義歯,治療用義歯,移行義歯(短期間の装着)
2 最終義歯(長期間の装着)
3 即時義歯(短期間および長期間の装着)
III 義歯による高齢者の咬合管理
IV 歯科医師の心構えと責任
4章 顎口腔系の構成と機能運動(三谷春保)
I 顎関節(側頭下顎関節)
II 咀嚼・嚥下に関与する筋群
III 下顎骨に付着する靱帯
IV 下顎運動の神経制御機構
V 下顎の位置と運動
1 下顎の基本位
1)下顎安静位 2)咬頭嵌合位 3)下顎後退位と中心位
2 下顎の基本運動
1)矢状面における下顎運動 2)水平面における下顎運動 3)前頭面における下顎運動
3 顎運動のテコ
VI 咀嚼と嚥下運動
1 咀嚼運動の経路
2 嚥下
5章 咬合異常,歯の欠損などに続発する症候および局部床義歯補綴により回復される咬合(小林義典)
I 正常咬合
II 歯の支持組織
III 咬合異常
IV 咬合異常に続発する症候
V 咬合異常の背景
VI 加齢に伴う顎口腔系の変化
VII 顎口腔系の障害
1 顎関節症
2 オーラルディスキネジア
3 習慣性顎関節脱臼
4 摂食・嚥下障害
VIII 補綴学的咬合様式
1 咬頭嵌合位と対合関係
2 偏心位
1)前方滑走運動時 2)後方滑走運動時 3)側方滑走運動時
IX 局部(部分)床義歯補綴により回復される咬合
1 前処置
2 局部(部分)床義歯補綴により回復される咬合で留意すべき点
3 症例に応じた局部(部分)床義歯補綴の咬合の考え方
4 オーバーデンチャー補綴の咬合の考え方
6章 局部床義歯補綴にかかわる解剖学的事項(三谷春保)
I 審美性の回復
II 義歯床縁の形態と解剖
III 義歯研磨面の形態と解剖
7章 咬合器の一般的概念(古谷野 潔)
I 咬合器の分類
1 解剖学的咬合器
1)解剖学的咬合器の機能 2)解剖学的咬合器の調節性による分類 3)関節部の構造による分類
2 非解剖学的咬合器
II 咬合器の選択
III 半調節性咬合器の使用法の実際
1 フェイスボウトランスファー
1)基準点の設定 2)フェイスボウ記録 3)フェイスボウを用いた上顎模型の咬合器装着 4)フェイスボウトランスファーの必要性
2 下顎模型の咬合器装着
3 咬合器の調節
1)顆路 2)チェックバイト法 3)チェックバイト採得時の下顎の移動量 4)チェックバイト採得時の咬合挙上 5)顆路の調節(前方チェックバイト法) 6)顆路の調節(側方チェックバイト法)
8章 局部床義歯の特徴と構成要素(三谷春保)
I 局部(部分)床義歯の特徴
II 局部(部分)床義歯の8構成要素とそれらの役割
III 局部(部分)床義歯の臨床に特有の手順
9章 補綴装置の選択(赤川安正)
I 口腔以外の諸因子
II 固定性局部義歯(ブリッジ)の側からみた条件
III 局部(部分)床義歯の側からみた条件
10章 局部床義歯の設計に有用な症型分類(小出 馨)
I Kennedyの分類
II Eichnerの分類
11章 連結子の基本的考え方(三谷春保)
I 連結子の分類と目的
II 連結子の具備条件
III 大連結子製作上の注意事項
IV 大連結子の種類
12章 局部床義歯の支持の考え方(三谷春保)
I 義歯床下組織の生物力学
II 支台歯(歯根膜)の生物力学
III 咬合力負担形式の違いと義歯の設計
1 歯根膜負担義歯の床
2 粘膜負担義歯の床
3 歯根膜粘膜負担義歯の床
4 レストを介する歯根膜負担
5 その他の歯根膜負担
6 支台歯間線
7 緩圧法
13章 局部床義歯の把持の考え方(市川哲雄)
I 局部(部分)床義歯の把持の基本的考え方
II 把持機能(効果)を発揮する局部(部分)床義歯の構成要素
III ガイドプレーンと隣接面板
1 効果
2 所要条件
IV 局部(部分)床義歯の動きを最小にするための把持の意義
14章 局部床義歯の維持の考え方(市川哲雄)
I 局部(部分)床義歯の維持の考え方
II 維持機能を発揮する局部(部分)床義歯の構成要素
III 支台装置の所要条件
IV 支台装置の種類と分類
1 クラスプとアタッチメント
2 クラスプの分類
3 直接支台装置と間接支台装置
V クラスプの基本的理解
1 クラスプの一般的構造と機能
2 クラスプの歯面適合位置
3 鉤腕の維持力の発揮と弾性限界
4 クラスプの維持力低下の原因
VI クラスプ(維持力)の働き方
1 直線的な動きに対して
2 回転力に対して
VII 義歯床における維持
1 義歯の維持に役立つ筋
2 義歯床の維持を妨げるおそれのある筋
15章 局部床義歯用材料(三谷春保)
I 局部(部分)床義歯を構成する材料の種類
II 義歯床・フレームワーク用材料
1 義歯床用材料としての所要条件
2 義歯床用レジン
3 フレームワーク鋳造用金属
1)金合金(TypeIV) 2)コバルトクロム合金 3)純チタンおよびチタン合金 4)金合金,コバルトクロム合金,純チタンおよびチタン合金の比較 5)レジン床と金属床との比較
III クラスプ,連結子用材料
IV 人工歯材料
V リライン用材料
2編 臨床編
16章 診断と治療計画(佐々木啓一)
I 医療面接
1 医療面接とは
2 面接のはじめに
3 面接をスムーズに行うためのコミュニケーションスキル
4 病歴の聴取
5 その他
II 現症の診察と検査
1 口腔外の診察
2 口腔内の診察
3 模型上での検査
4 エックス線検査
5 チャートの記載
6 プロブレムリストの作成
III 診断
1 顎口腔系の状況
2 治療方法の選択
IV 治療計画
1 治療計画の基本的な順序
2 治療計画立案時の留意事項
3 初期(暫間的な)治療計画
4 最終的な治療計画の記録
5 診断,治療計画の提示とインフォームド・コンセント
V 問題志向型診療録(POMR)の導入
1 POMRの構造
2 SOAP方式の経過記録
3 POMRの特徴
17章 口腔内前処置(橋 裕)
I 咬合治療
1 咬合位の回復
2 咬合平面の修正
II 支台歯の前処置
1 歯冠形態の削除修正
2 レストシートの形成
3 支台歯のための歯冠補綴
18章 局部床義歯補綴治療の臨床ステップ(三谷春保)
19章 前処置としての咬合調整(橋 裕)
I 概説
1 咬合調整の目的
2 咬合調整の適応症
3 咬合調整の禁忌症
4 咬合調整の時期
5 咬合調整に用いる器材
II 咬合干渉の検査
1 口腔内の検査
2 咬合器上での検査と模型上での予備調整
III 咬合調整の法則と術式
1 咬合調整の基本原則
2 早期接触の削合調整
3 咬頭干渉の削合調整
4 前方運動時の干渉部の削合
20章 印象採得と模型製作(山内六男)
I 負担および維持様式と印象法の選択
1 歯根膜負担義歯のための印象
2 粘膜負担義歯のための印象
3 歯根膜粘膜負担義歯のための印象
II 印象材の種類と特徴,トレーおよび印象採得の準備
1 印象材の種類と特徴
2 トレー
3 印象採得の準備
III ハイドロコロイド印象材による印象
1 アルジネート印象材による概形印象
2 寒天アルジネート連合印象
IV 個人トレーと弾性印象材による機能印象
1 レジン製個人トレーの製作と調整
2 筋圧形成
3 シリコーンラバーによる機能印象
4 寒天アルジネート連合印象による機能印象
V オルタードキャスト法
VI 模型
1 模型の製作
2 基底部の形成
3 模型の複製
21章 サベイング(都尾元宣)
I サベイヤーの構造
II 研究用模型のサべイング(仮設計)
III 義歯着脱方向決定の要因
IV 歯冠修復物の成形法(ミリングテクニック)
V 作業用模型のサベイング(本設計)
22章 局部床義歯の設計とフレームワークの製作(大川周治)
I 局部(部分)床義歯設計の考え方
1 設計を左右する要件
2 設計の順序
3 設計に必要な一般的考え方
1)支台歯の選択 2)義歯床の外形 3)大連結子 4)直接支台装置 5)間接支台装置
II Kennedy分類に基づく設計の考え方
1 Kennedy ClassI症例の設計
2 Kennedy ClassII症例の設計
3 Kennedy ClassIII症例の設計
4 Kennedy ClassIV症例の設計
III 歯周衛生を考慮した設計
1 クラスプと鉤脚
2 大連結子
3 遊離端義歯の支台歯に隣接する人工歯
4 アルベオラーバーによる維持
IV 少数歯残存症例の設計
1 歯根膜粘膜負担義歯
2 オーバーデンチャー
V フレームワークの製作
1 金属床義歯とレジン床義歯の比較
2 フレームワークの設計
3 フレームワークの各部の形態
4 フレームワークの試適
23章 大連結子(櫻井 薫)
I 上顎の大連結子
1 パラタルバー
2 パラタルストラップ
3 パラタルプレート
4 ホースシュープレート
II 下顎の大連結子
1 リンガルバー
2 リンガルプレート
III 外側バー
24章 支台装置(櫻井 薫)
I 線鉤(屈曲鉤)
1 特徴
2 レスト付2腕鉤
3 1腕鉤(単純鉤)
II 鋳造鉤
1 特徴
2 鋳造鉤の製作法
3 鋳造鉤のデザイン
1)エーカースクラスプ 2)ローチクラスプ 3)リングクラスプ 4)RPIクラスプ 5)双子鉤 6)連続鉤 7)ヘアピンクラスプ 8)バックアクションクラスプ 9)リバース バックアクションクラスプ 10)ハーフアンドハーフクラスプ 11)延長腕鉤 12)コンビネーションクラスプ
III アタッチメント
1 特徴
2 構成と分類
(1)歯冠外アタッチメント (2)歯冠内アタッチメント (3)歯根アタッチメント (4)バーアタッチメント
IV フックとスパー
25章 咬合採得(中心咬合位の決定)(大川周治)
I 上顎模型の咬合器装着
II 咬合採得
1 咬合採得時の注意事項
2 咬合高径の決定
3 咬合採得の術式
1)上下顎作業用模型のみによる咬頭嵌合位の再現法 2)ワックスバイト法 3)旧義歯を用いる方法 4)咬合床を用いる方法
26章 人工歯の選択,排列,歯肉形成,ならびにロウ義歯の試適(小出 馨)
I 人工歯の選択
1 材質
2 前歯人工歯の形態と大きさ
3 臼歯人工歯の形態と大きさ
4 人工歯の色調
II 前歯部人工歯排列
1 前歯部人工歯排列の基本的原理と術式
2 前歯部人工歯の形態と歯列の関係
3 日本人の前歯歯列にみられる特徴
4 義歯はなぜ不自然にみえるのか
III SPA要素の表現法
1 性別要素の特徴と表現法
2 個性要素の特徴と表現法
3 年齢要素の特徴と表現法
IV 臼歯部人工歯排列
1 臼歯部人工歯排列の原則
2 臼歯部人工歯排列の術式
V 歯肉形成と陟沂`歯の試適
1 歯肉形成
2 陟沂`歯の試適
27章 埋没から義歯完成まで(都尾元宣)
I 埋没
1 単純埋没法
1)フランス式埋没(被覆)法 2)アメリカ式埋没(切痕)法 3)フランス(被覆)とアメリカ(切痕)併用式埋没法 4)流ロウ 5)レジンの填入と重合
2 分割埋没法
II コア法
III 研磨
IV 義歯付き模型の咬合器再装着
28章 義歯の装着,調整,ならびに指導(櫻井 薫)
I 義歯の装着
II 義歯の調整
1 新義歯装着時の調整
2 2回目以降の調整
III 患者の指導
29章 義歯装着後の管理(志賀 博(IIIIII)・櫻井 薫(IV))
I 義歯破損の背景と内容
1 義歯破損と病態進行のメカニズム
2 義歯破損の部位と内容
II 義歯の修理法
1 義歯床の破折
2 義歯床粘膜面の不適合
3 人工歯の脱落
4 人工歯の追補
5 支台装置の破損
6 支台歯歯冠の崩壊
III リラインとリベース
1 リラインとリベースの適応症
2 義歯床の適合試験
3 リライン
1)直接法 2)間接法 3)金属床義歯のリライン
4 リベース
IV リコール
30章 暫間義歯,即時義歯,移行義歯,診断用義歯,ならびに治療用義歯(小林義典)
I 概説
1 広義の暫間義歯の応用目的による分類
2 広義の暫間義歯応用の基本的概念
II 適応症と設計の要点
1 狭義の暫間義歯
2 即時義歯
3 移行義歯
4 診断用または治療用義歯
III 治療用義歯による顎関節症の保存療法
31章 インプラント補綴(赤川安正)
I 概説
1 インプラントとオッセオインテグレーションの歴史
2 オッセオインテグレーション
1)オッセオインテグレーションとは 2)オッセオインテグレーションの獲得 3)オッセオインテグレーションの維持
3 インプラントの基本構造
4 インプラントの埋入術式
II 各種補綴法
1 術者可撤性補綴装置
2 患者可撤性補綴装置
3 固定性補綴装置
32章 顎顔面補綴(古谷野 潔)
I 顎顔面補綴の分類
II 上顎欠損の補綴
III 下顎欠損の補綴
IV 舌・口底欠損の補綴
V 顔面欠損の補綴
VI 唇顎口蓋裂の補綴
VII インプラントを用いた顎顔面補綴
VIII 患者の生活指導と社会復帰
文献
索引








