やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

『小児歯科学専門用語集』の発刊に寄せて
 このたび,日本小児歯科学会学術用語委員会を中心に全国の歯科大学ならびに歯学部の小児歯科学担当講座の協力のもとに『小児歯科学専門用語集』を出版する運びとなりました.この用語集は,日本歯科医学会の学術用語委員会が厳選した用語を母体とし,日本小児歯科学会の学術用語委員会(委員長:木裕三教授)を中心に小児歯科学に関連する用語を整理したものに簡明な解説を加えたものであります.
 わが国で小児歯科学の教育が始まってから,50年が経とうとしています.この間,科学技術は日進月歩の発展を遂げ,使用される専門用語の増加とともに,その解釈や内容の変遷は目まぐるしいものがあります.しかし,情報化社会のなかで,学術情報のあいまいさや誤解は,情報の混乱をきたし誤った知識や技術を増幅させる危険性もあります.また,「歯科医学教授要綱の改訂」,「歯科医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂」,「歯科医師国家試験出題基準の改定」などにともない,専門用語の見直しが喫緊の課題となりました.
 そのため現在までに,日本歯科医学会の多くの専門分科会がそれぞれの専門用語集や教育用語集をすでに発刊されています.
 さらに歯科界は,医学・歯科医学教育の変革のみならず,人口動態や社会構造の変化にともなう疾病構造の変化,医療制度改革への対応など難問山積の時代を迎えています.このような時代背景に適切に対応し,国民の口腔の健康の維持・増進に寄与できる歯科医を養成することは,歯科医学教育の重要な役割であると考えます.
 とりわけ小児歯科学は,成長発育過程にある小児の口腔保健に関与する領域であり,健全な口腔の機能と構造の維持・増進,生活習慣の基盤形成などライフステージの初期段階を担い,学問的には学際領域の臨床歯学,臨床的には小児期の包括医療を担うものであります.
 本用語集が,学会会員の皆様のみならず,小児歯科学を学ぶ学生,小児の歯科医療に携わる歯科医ならびに小児歯科専門医,さらには小児歯科学の研究や教育に携わる方々など,多くの皆様のお役にたちますことを心から期待しています.
 最後になりましたが,本用語集の出版にあたり,多大なご尽力,ご協力を頂いた本学会の学術用語委員の方々,用語の解説の執筆にご協力頂いた小児歯科学担当講座の方々,さらに医歯薬出版の方々に深謝します.
 平成20年5月
 有限責任中間法人日本小児歯科学会
 理事長 土屋 友幸

序文
 学術用語は科学に携わる者の共通言語であり,コミュニケーションの重要な手段になります.これらは科学の進歩のためだけでなく,次世代教育のための必須ツールでもあります.普通の言語は長い歴史を背景に,比較的恒常性が保たれたものになっていますが,学術用語は科学の進歩にともなう新しい用語の創造や,すでに存在するものの見直しなど,たえず変化するものであります.しかし一方,個々の用語は一定の基準にしたがい,内容を忠実に具現するもので,その分野の大多数が許容できるものでなくてはなりません.
 このような観点から,日本小児歯科学会は小児歯科学に関する用語集を学会選定用語集として1977年と1986年,2006年に発行し,学術発表,あるいは教育現場の基準としてきました.これらの用語集の改訂・発行により,小児歯科学をめぐるこれまでの大きな変化に対応し,多大な貢献がなされてきたと思います.ところが,近年の歯学教育をめぐる改革,すなわち2001年の「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」の作成と,それにもとづいたCBT(Computer Based Testing)やOSCE(Objective Structured Clinical Examination)の実施,あるいは歯科医師国家試験出題基準の改訂などでは,単に学術用語の整理だけでなく,内容に関する標準化も要求されるようになってきています.
 そこで,日本小児歯科学会学術用語委員会では,これらの状況に対応するため,2006年に佐々龍二前委員長のもとに発行された選定用語集に掲載された用語について,内容の標準化をはかり,同時に「小児歯科学術用語集」の出版を行うこととし,2006年度末より作業に取りかかってまいりました.本来であるなら2006年版選定用語集に掲載された約3,000語について,これらすべての内容の標準化をはかるべきではありますが,このなかには他分野と重複するものや類似語が多く含まれていることから,小児歯科学分野で使用頻度が高く,かつ小児歯科学に特徴的な性質の強いもの約1,000語を整理・抽出し,それぞれに200字前後の説明文を加えたものとしてまとめることとなりました.執筆は全国29歯科大学・歯学部の小児歯科学担当の講座・分野から推薦いただいた教員に依頼し,執筆内容については学術用語委員会で検討を行って,最終稿といたしました.これらの手順については日本小児歯科学会理事会での議を経て進めさせていただきました.
 本書の発行は,小児歯科学の研究・教育・臨床に多忙ななか,執筆・編集などにご協力いただいた各位,ならびに刊行を担当していただいた医歯薬出版のご尽力の賜物であります.ご協力に対し深く感謝いたします.
 本書の編集は計画から発刊まで1年半という大変短期間に進められたため,用語の抽出や説明文の検討などに十分な時間をかけたとは申せず,不都合な点も多々存在するかと思います.しかしながら,学術用語は時代とともに変遷するものという概念に立脚して,今後も修正あるいは変更を前提に,今回出版されたものをもとに学会内で継続的に議論を重ねていただくことを委員会一同,強く希望いたしております.
 平成20年5月
 有限責任中間法人
 日本小児歯科学会
 学術用語委員会
 委員長 木 裕三
 委 員 朝田 芳信
  井上美津子
  大嶋 隆
  前田 隆秀
  眞蛛@秀昭
  (五十音順)