序文
歯科理工学は,歯科材料・器械の基礎科学と応用科学に関する学問であり,その領域は種々の素材の基礎科学から歯科臨床における歯科材料の使用方法にるまで非常に広い範囲を包含している.このように広範囲にわたる歯科理工学教育を系統的かつ効果的に行うため,日本歯科理工学会では教授要綱を策定している.本書は,教授要綱に提示されている内容のうち,臨床実習に必要な歯科理工学の知識に的を絞ったものである.いいかえると,書名にも示されているように,本書は歯科理工学のコア(中核部)を記載したものであり,臨床実習直前の歯科学生に必修の知識を提供することを目的としている.
本書の出版準備を進める際に大きな焦点となったのは,歯科理工学のコアとしてどのような範囲までを記載するかとういうことであった.編集委員会では,「歯科理工学教授要綱」ならびに「歯学教育モデルコアカリキュラム」の内容を検討し,「歯科理工学教授要綱」の項目から高度に専門的な内容を除外するとともに,「歯学教育モデルコアカリキュラム」の歯科材料・生体材料に記載されている内容はすべて本書に含むことにした.また,本書で用いる歯科理工学用語は日本歯科理工学会編『歯科理工学教育用語集』と一致させることにした.これらの検討結果に加え,歯科理工学を初めて学ぶ歯科学生にとってわかりやすく表現することを基本として執筆することにした.
上述したように,本書は臨床実習を行うにあたって必要な歯科理工学知識を記述したものであり,??の外側にある高度に専門的な歯科理工学知識は含まれていない.本書は全国29歯科大学・歯学部の歯科理工学教育担当者によって執筆されており,本書に含まれていない専門的知識は各歯科大学・歯学部の歯科理工学教育の中で付加され,それぞれ特色ある歯科理工学教育が行われると確信する.また,さらに高度な歯科理工学知識を求める読者には種々の歯科理工学専門書で研鑽を積むことを勧めたい.
歯科理工学は,新しい材料・器械の開発によって日進月歩で発展する学問である.また,現在は高度な専門知識とされているものもすぐに日常的に不可欠な知識となる.これらの観点から本書の改訂は最大5年程度で行うことが必要と考える.今後の5年間で歯科理工学がどのように変化していくかを十分に見極め,改訂に備えてたい.
最後に,ご多忙中にもかかわらず本書を執筆していただいた歯科理工学教育担当者ならびに出版にご協力いただいた医歯薬出版と担当者の方々に深謝する.
2008年3月
編集 小倉英夫 小田 豊 高橋英和 楳本貢三 宮崎 隆 小園凱夫
歯科理工学は,歯科材料・器械の基礎科学と応用科学に関する学問であり,その領域は種々の素材の基礎科学から歯科臨床における歯科材料の使用方法にるまで非常に広い範囲を包含している.このように広範囲にわたる歯科理工学教育を系統的かつ効果的に行うため,日本歯科理工学会では教授要綱を策定している.本書は,教授要綱に提示されている内容のうち,臨床実習に必要な歯科理工学の知識に的を絞ったものである.いいかえると,書名にも示されているように,本書は歯科理工学のコア(中核部)を記載したものであり,臨床実習直前の歯科学生に必修の知識を提供することを目的としている.
本書の出版準備を進める際に大きな焦点となったのは,歯科理工学のコアとしてどのような範囲までを記載するかとういうことであった.編集委員会では,「歯科理工学教授要綱」ならびに「歯学教育モデルコアカリキュラム」の内容を検討し,「歯科理工学教授要綱」の項目から高度に専門的な内容を除外するとともに,「歯学教育モデルコアカリキュラム」の歯科材料・生体材料に記載されている内容はすべて本書に含むことにした.また,本書で用いる歯科理工学用語は日本歯科理工学会編『歯科理工学教育用語集』と一致させることにした.これらの検討結果に加え,歯科理工学を初めて学ぶ歯科学生にとってわかりやすく表現することを基本として執筆することにした.
上述したように,本書は臨床実習を行うにあたって必要な歯科理工学知識を記述したものであり,??の外側にある高度に専門的な歯科理工学知識は含まれていない.本書は全国29歯科大学・歯学部の歯科理工学教育担当者によって執筆されており,本書に含まれていない専門的知識は各歯科大学・歯学部の歯科理工学教育の中で付加され,それぞれ特色ある歯科理工学教育が行われると確信する.また,さらに高度な歯科理工学知識を求める読者には種々の歯科理工学専門書で研鑽を積むことを勧めたい.
歯科理工学は,新しい材料・器械の開発によって日進月歩で発展する学問である.また,現在は高度な専門知識とされているものもすぐに日常的に不可欠な知識となる.これらの観点から本書の改訂は最大5年程度で行うことが必要と考える.今後の5年間で歯科理工学がどのように変化していくかを十分に見極め,改訂に備えてたい.
最後に,ご多忙中にもかかわらず本書を執筆していただいた歯科理工学教育担当者ならびに出版にご協力いただいた医歯薬出版と担当者の方々に深謝する.
2008年3月
編集 小倉英夫 小田 豊 高橋英和 楳本貢三 宮崎 隆 小園凱夫
第I編 歯科生体材料学
第1章 歯科材料の科学
I 高分子材料(小園凱夫)
1 生成と構造
2 特性
3 歯科材料に用いられている高分子材料
II 金属材料(久恒邦博)
1 純金属と合金
2 金属結合と構造
3 特性
4 歯科材料に用いられている金属材料
III セラミック材料(伊藤充雄)
1 構造と分類
2 成形法
3 特性
4 歯科材料に用いられているセラミックス
IV 複合材料(平野 進)
1 定義と構造
2 特性
3 歯科材料に用いられている複合材料
V 歯科材料に用いられる各種材料の特性比較(武田昭二)
第2章 歯科生体材料に望まれる特性
I 生物学的安全性(岡崎正之)
1 歯科生体材料の生物学的所要性質
2 歯科生体材料の生物学的反応
II 機械的性質(小倉英夫・米山隆之)
1 応力とひずみ
2 応力-ひずみ曲線
3 比例限と弾性係数
4 弾性限と耐力
5 強さと伸び
6 展性と延性
7 レジリエンス
8 超弾性と形状記憶
9 脆性と靭性
10 各種試験方法
11 クリープと応力緩和
12 フロー
13 硬さ
III 物理的性質(土井豊)
1 密度
2 寸法変化
3 熱的性質
4 色
5 エックス線不透過性
IV 化学的性質(遠藤一彦)
1 吸水
2 溶解
3 変色
4 腐食
5 不動態
6 反応速度
V 歯科生体材料の接着(鈴木一臣・西山典宏)
1 接着の基本
2 歯科用接着材料
3 歯との接着
4 修復材料との接着
第3章 歯科生体材料の用途と性質
I 成形修復材
1 コンポジットレジン(中嶌 裕)
2 グラスアイオノマーセメント(宮ア 隆)
3 歯科用アマルガム
4 成形修復材の物性の比較
II 歯冠修復材料
1 金合金(浅岡憲三)
2 金銀パラジウム合金
3 低融銀合金
4 陶材焼付用合金(伴 清治)
5 陶材
6 歯冠用硬質レジン(小田豊一)
III 合着接着裏層剤
1 リン酸亜鉛セメント(中嶌 裕)
2 合着用グラスアイオノマーセメント(宮ア 隆)
3 ポリカルボキシレートセメント(松家茂樹)
4 酸化亜鉛ユージノールセメント・EBAセメント(中嶌 裕)
5 水酸化カルシウムセメント
6 接着性レジンセメント(松家茂樹)
IV 義歯用材料
1 レジン系義歯床材料(荒木吉馬)
2 義歯床用金属材料(淺岡憲三)
1.貴金属合金
2.コバルトクロム合金(亘理文夫)
3.チタンおよびチタン合金(荘村泰治)
3 人工歯(伴 清治)
V 矯正用材料(亘理文夫)
1 歯の移動の原理
2 歯への移動力(矯正力)の付与
3 矯正用ワイヤー
4 ブラケット
第II編 歯科生体医用工学
第4章 歯と材料の切削研削研磨技術(楳本貢三)
I 切削,研削
II 切削研削工具
1 回転式切削機器
2 回転式切削機器の回転速度と周速
3 主な切削および研削工具の種類と特徴
4 歯質切削の注意
III 研磨
1 機械研磨
2 バレル研磨
3 電解研磨
第5章 生体における形態情報の収集
I 印象採得(橋英和)
1 印象材
2 印象用トレー
3 練和および軟化
4 印象の圧接と撤去
II 概形印象と精密印象
III 非弾性印象材
1 酸化亜鉛ユージノール印象材
2 モデリングコンパウンド
3 印象用石膏
4 印象用ワックス
IV 弾性印象材
1 寒天印象材
2 アルジネート印象材
3 ポリサルファイドゴム印象材
4 縮合型シリコーンゴム印象材
5 付加型シリコーンゴム印象材
6 ポリエーテルゴム印象材
V 印象材の性質
1 弾性ひずみと永久ひずみ
2 寸法変化
3 細部再現性
4 石膏模型との相性
VI 模型作製と模型材(石川邦夫)
1 模型作製
2 模型用石膏
VII 歯科用ワックス(青木春美)
1 歯科用ワックスの種類と成分
2 歯科用ワックスの使用方法と性質
第6章 成形加工技術
I 冷間加工と熱間加工(菊池聖史)
1 塑性加工の種類
2 加工度
3 再結晶と焼なまし
4 再結晶温度
II 歯科鋳造
1 歯科鋳造の原理(福井壽男)
2 鋳造収縮とその補償方法
3 鋳型の作製(渡邊孝一)
4 合金の融解と鋳造(福井壽男)
5 鋳造欠陥の原因とその対策
6 鋳造精度と適合性
III ろう付け(小田 豊・川島 功)
1 歯科用ろうの所要性質
2 ろう付け用合金の種類
3 ろう付け方法
IV 熱処理(菊池聖史)
1 合金の軟化熱処理
2 合金の硬化熱処理
V 高分子材料の成形加工
1 歯冠用硬質レジンの成形加工
2 義歯床用レジンの成形加工
3 レジン歯の成形加工
VI セラミック材料の成形加工
1 歯冠修復用陶材の成形加工
2 陶歯の成形加工
索引
第1章 歯科材料の科学
I 高分子材料(小園凱夫)
1 生成と構造
2 特性
3 歯科材料に用いられている高分子材料
II 金属材料(久恒邦博)
1 純金属と合金
2 金属結合と構造
3 特性
4 歯科材料に用いられている金属材料
III セラミック材料(伊藤充雄)
1 構造と分類
2 成形法
3 特性
4 歯科材料に用いられているセラミックス
IV 複合材料(平野 進)
1 定義と構造
2 特性
3 歯科材料に用いられている複合材料
V 歯科材料に用いられる各種材料の特性比較(武田昭二)
第2章 歯科生体材料に望まれる特性
I 生物学的安全性(岡崎正之)
1 歯科生体材料の生物学的所要性質
2 歯科生体材料の生物学的反応
II 機械的性質(小倉英夫・米山隆之)
1 応力とひずみ
2 応力-ひずみ曲線
3 比例限と弾性係数
4 弾性限と耐力
5 強さと伸び
6 展性と延性
7 レジリエンス
8 超弾性と形状記憶
9 脆性と靭性
10 各種試験方法
11 クリープと応力緩和
12 フロー
13 硬さ
III 物理的性質(土井豊)
1 密度
2 寸法変化
3 熱的性質
4 色
5 エックス線不透過性
IV 化学的性質(遠藤一彦)
1 吸水
2 溶解
3 変色
4 腐食
5 不動態
6 反応速度
V 歯科生体材料の接着(鈴木一臣・西山典宏)
1 接着の基本
2 歯科用接着材料
3 歯との接着
4 修復材料との接着
第3章 歯科生体材料の用途と性質
I 成形修復材
1 コンポジットレジン(中嶌 裕)
2 グラスアイオノマーセメント(宮ア 隆)
3 歯科用アマルガム
4 成形修復材の物性の比較
II 歯冠修復材料
1 金合金(浅岡憲三)
2 金銀パラジウム合金
3 低融銀合金
4 陶材焼付用合金(伴 清治)
5 陶材
6 歯冠用硬質レジン(小田豊一)
III 合着接着裏層剤
1 リン酸亜鉛セメント(中嶌 裕)
2 合着用グラスアイオノマーセメント(宮ア 隆)
3 ポリカルボキシレートセメント(松家茂樹)
4 酸化亜鉛ユージノールセメント・EBAセメント(中嶌 裕)
5 水酸化カルシウムセメント
6 接着性レジンセメント(松家茂樹)
IV 義歯用材料
1 レジン系義歯床材料(荒木吉馬)
2 義歯床用金属材料(淺岡憲三)
1.貴金属合金
2.コバルトクロム合金(亘理文夫)
3.チタンおよびチタン合金(荘村泰治)
3 人工歯(伴 清治)
V 矯正用材料(亘理文夫)
1 歯の移動の原理
2 歯への移動力(矯正力)の付与
3 矯正用ワイヤー
4 ブラケット
第II編 歯科生体医用工学
第4章 歯と材料の切削研削研磨技術(楳本貢三)
I 切削,研削
II 切削研削工具
1 回転式切削機器
2 回転式切削機器の回転速度と周速
3 主な切削および研削工具の種類と特徴
4 歯質切削の注意
III 研磨
1 機械研磨
2 バレル研磨
3 電解研磨
第5章 生体における形態情報の収集
I 印象採得(橋英和)
1 印象材
2 印象用トレー
3 練和および軟化
4 印象の圧接と撤去
II 概形印象と精密印象
III 非弾性印象材
1 酸化亜鉛ユージノール印象材
2 モデリングコンパウンド
3 印象用石膏
4 印象用ワックス
IV 弾性印象材
1 寒天印象材
2 アルジネート印象材
3 ポリサルファイドゴム印象材
4 縮合型シリコーンゴム印象材
5 付加型シリコーンゴム印象材
6 ポリエーテルゴム印象材
V 印象材の性質
1 弾性ひずみと永久ひずみ
2 寸法変化
3 細部再現性
4 石膏模型との相性
VI 模型作製と模型材(石川邦夫)
1 模型作製
2 模型用石膏
VII 歯科用ワックス(青木春美)
1 歯科用ワックスの種類と成分
2 歯科用ワックスの使用方法と性質
第6章 成形加工技術
I 冷間加工と熱間加工(菊池聖史)
1 塑性加工の種類
2 加工度
3 再結晶と焼なまし
4 再結晶温度
II 歯科鋳造
1 歯科鋳造の原理(福井壽男)
2 鋳造収縮とその補償方法
3 鋳型の作製(渡邊孝一)
4 合金の融解と鋳造(福井壽男)
5 鋳造欠陥の原因とその対策
6 鋳造精度と適合性
III ろう付け(小田 豊・川島 功)
1 歯科用ろうの所要性質
2 ろう付け用合金の種類
3 ろう付け方法
IV 熱処理(菊池聖史)
1 合金の軟化熱処理
2 合金の硬化熱処理
V 高分子材料の成形加工
1 歯冠用硬質レジンの成形加工
2 義歯床用レジンの成形加工
3 レジン歯の成形加工
VI セラミック材料の成形加工
1 歯冠修復用陶材の成形加工
2 陶歯の成形加工
索引








