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歯科理工学教育用語集の発刊に寄せて
 このたび,日本歯科理工学会用語検討委員会を中心に全国の歯科大学・歯学部の歯科理工学担当講座の協力を得て,歯科理工学関連用語について整理・統一を行い,厳選した用語に簡明な定義を加えた「歯科理工学教育用語集」を出版する運びとなりました.
 歯科理工学関連用語の整理・統一については,歯科理工学文献データベースの作成を容易に行うための「歯科理工学キーワード集」が本学会キーワード集作成委員会によって1995 年に発行されておりますが,当学会で用語の整理・統一を図り,適切な解説を加えた用語集の発刊は始めての事業であり,用語検討委員会ならびに関係各位の多大なご尽力に心より敬意と謝意を表します.
 日進月歩の科学技術の進展の中で,使用される専門用語に同義語,同意語が多々あったり,時代とともにその解釈の変遷や消長があることは,学術研究の進歩の鏡でもあり,研究分野においては致し方ないことと思います.しかし,新たな材料・器械や技術が出現するたびに新名称が出現し,同義語であっても学問分野や古今東西で解釈が異なっていたり,複数の用語が適切な定義もされずに曖昧なまま使用される状況は,情報化社会の中で学術情報の正確な伝達の妨げになるばかりでなく,歯科医学教育の現場でも混乱の原因となります.
 ISO1942 Dental vocabulary,日本工業規格( JIS),GMDN(GlobalMedical Device Nomenclature),JMDN(日本における医療機器の一般的名称),文部省「学術用語集」歯学編(1992 年発行)などにも歯科理工学に関連した用語や定義が示されておりますが,必ずしも共通して統一された用語が使用されておらず,共通のコンセンサスが得られている訳ではありません.
 本学会の用語検討委員会で整理・精査された専門用語に簡明な解説がほどこされた「歯科理工学教育用語集」をここに上梓できたことは,単に教育の現場のみでなく,国内外の規格や医療機器の標準化にも有効に活用できるものと考えます.
 用語の一つ一つの背景には幾多の研究や歴史があり,研究者の好悪もあって,いまだ整合性の不十分な箇所や理解の得難い箇所もあるかと推察されます.この用語集も,時に応じて見直し・再検討がなされ,新たな研究成果も加味されれば,さらに充実した用語集となるものと思います.今後の発展に向けて本学会の会員ならびに関係諸氏の御批判と御指導を賜れば幸甚です.
 2005年8月
 日本歯科理工学会
 会長 小田 豊

序文
 日本歯科理工学会が「歯科理工学キーワード集」を1995 年に発刊してから10 年になります.この10 年の間に多くの新材料・新技術が紹介され,キーワード集の改訂が強く求められて参りました.さらに,2001 年には「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」が作成され,これと軌を同じくして,コンピュータを利用した多肢選択方式の試験であるCBT(computer based test) と客観的な臨床能力試験であるOSCE(objiective structured clinical examination)が全国の歯科大学・歯学部で実施されることとなりました.このような状況の変化に対応するため,用語検討委員会では会員諸氏の全面的なご支援・ご助力の下に歯科理工学教育の中で用いられる専門用語の標準化を行うとともに,用語集の出版に向けて3 年以上にわたる作業を続け,この度の出版に漕ぎ着けることができました.教育や研究でご多忙な中,ご協力・ご尽力いただいた歯科理工学教育担当の会員各位ならびに執筆者各位に深く感謝します.
 用語の収録は,歯科理工学教育に基本的に必要な用語に焦点を絞り,隣接領域に属すると考えられる用語は除外することにいたしました.推薦用語の選定にあたり,同義語のある用語については,アンケート調査で基本的に選択頻度の高いものを優先させると同時に他分野における専門用語との整合性や歯科理工学領域内で関連する用語間の整合性を考慮して選択いたしました.執筆は全国29 の歯学部・歯科大学より推薦された歯科理工学教育担当の先生方にお願いし,執筆にあたっては,収録用語を8 グループ((1)無機材料・金属材料,(2)有機材料・複合材料,(3)物理的性質,機械的性質,(4)化学的生物学的性質,(6)成形・加工技術,(7)器械・器具,(8)その他)に分けて作業班を構成し,各作業班ごとの執筆作業を行いました.執筆内容につきましては作業班内部で検討を行い,その結果を用語検討委員会で討議して最終稿といたしました.
 本用語集は,現時点では歯科理工学教育に大きく貢献できると確信しております.しかし,言葉は生きており,時代の変遷とともに変化していく運命にあります.今回収録された用語も修正あるいは変更の必要を迎える時期がいずれ訪れるかと思います.したがいまして,今回出版となりました用語集をもとに学会内で継続的に議論を重ね,永続的に改訂されていくことを強く願っております.
 平成17年8月
 日本歯科理工学会
 用語検討委員会
 委員長 小倉 英夫
 委員 荒木 吉馬
 小園 凱夫
 橋 英和
 中嶌 裕
 久恒 邦博
 本郷 敏雄
 吉成 正雄
 (五十音順)