やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯科医院の新規開業に必要な手順やサポートは他業界に比べて充実している.
 しかし,多くの情報が新規開業をゴールとしており,開業後について記載がない.
 何のために歯科医院を開業するのか? 開業して終わりではない,むしろそこがスタートラインである.
 本書は,これまで焦点をあてられることがなかった“業績を上げる新規開業”に特化した書籍である.
 「業績を上げる」という表現は一見すると,収益性のみに偏った金儲け主義,あるいはビジネスに寄った表現だと思われがちであるが,そうではない.
 当社では,業績を上げることが世のため人のためになると確信している.歯科医院は労働集約型ビジネスであり,人がいなければ治療や予防を行うことはできない.では,少子高齢化が進み,生産年齢人口が減少しているこの日本においてどのように人を集めるのか? それは他院とは異なる独自の強みや理念,他院より良い雇用条件などを打ち出し魅力的な歯科医院にするしかない.また,患者により良い治療を提供するためには,日進月歩で進化する最新設備機器や治療情報がなければならない.
 雇用条件も最新設備も,収益性が高くなければ良くすることができない.とはいえ,歯科医療は収益性だけに偏って考えるべきではない.
 結局,患者に正しい歯科医療サービスを提供し収益性を高め,その収益を従業員の採用や教育,最新設備機器に投資して教育性を高め,世のため人のためになるように社会性を高めていくことが必要である.
 当社が目指す歯科医院像を「グレートクリニック」と命名しているが,これは「社会性」「収益性」「教育性」を兼ね備えた歯科医院のことである.つまり,「業績を上げる」ということは,働く従業員のためであり,来院いただく患者のためであり,地域のためであるということである.
 そこで,本書は“業績を上げる新規開業”に特化した内容として,
 第1章で歯科医院経営者が捉えておくべき業界動向を示し,
 第2章で新規開業に向けた具体的な準備を示し,
 第3章で開業後に著しい業績を上げた歯科医院の事例紹介を行う,という構成としている.
 新規開業するか迷っている方も,新規開業を進めていこうという方も,何度も読み返せる書籍であると自負している.
 本書をひとりでも多くの方に手に取っていただき,明日から実行に移していただきたい.その結果,「グレートクリニック」が日本に多く誕生することを願っている.
 令和5年9月
 株式会社船井総合研究所 谷口竜都
第1章 歯科医院経営者が捉えておくべき業界動向
 頭に入れておきたい基礎データ
  開院を上回る閉院数
  減少する現役歯科医師数
  増える歯科衛生士数
  患者数は増加?減少?
  医療制度改定からみる変化
  難しさが増す採用
  自費診療のマーケティングはスマートフォン向けが中心に
  歯科医院“経営者”は三刀流
  院長に求められるコスト意識,利益意識
  歯科医院の適切な経営数値指標
  歯科医院経営も生産性を意識する時代に
  “マネジメント”とは〜業績(生産性)を高めるために必要な従業員確保
  従業員の定着率を高めるメリット
 ロードマップを描いておこう
  成長の流れ〜3つのステップ
第2章 新規開業に向けた具体的な準備
 最高のスタートをきるために
  新規開業に向けた長期的な準備
   長期的な準備(開業まで約3年)
   中期的な準備(開業まで約1年)
 カウントダウン開始
  新規開業に向けた短期的な準備
   短期的な準備(開業まで1年以内)
   開業9ヵ月前
   開業6ヵ月前―診療体制の設計検討
   開業3ヵ月前に必要なこと
第3章 〈事例紹介〉開業後に著しい業績を上げた歯科医院
 事例1 開業前に培った技術と知識で幅広い患者層に対応
  医療法人社団Nature 桃のはな歯科クリニック
 事例2 医科-歯科連携で地域無双の体制を確立
  かすもり・おしむら歯科口腔機能クリニック
 事例3 「蒔かぬ種は生えぬ」をことごとく実践
  医療法人孝生会 かけまちコミュニティー歯科
 事例4 人生の波に寄り添い長期雇用者を1人ずつ積み上げる
  医療法人隆歩会 あゆみ歯科クリニック
 事例5 開業の経験が事業承継に生きる
  医療法人社団TDC タカムラ歯科医院