序
コンポジットレジン修復は,ミニマルインターベンションを支える,重要な低侵襲の機能審美再生治療である.長年にわたる歯科保存学研究,接着歯学研究における産学連携の賜物である,接着性レジンおよびコンポジットレジンの飛躍・発展的進歩,使いやすい治療関連器材の充実,効率化につながる術式の改良によって,適切に治療を行えば,典型的な窩洞はもとよりチャレンジングな症例でも成功に導くことが可能になったと言えよう.コンポジットレジン修復は,適材適所のマテリアル選択,知識と経験に裏付けられた術者のテクニックにより,チェアサイドで患者さんを笑顔にすることができる治療法で,歯科医療従事者としてのやりがいや醍醐味を味わうことができる.しかし一方で,術式がシンプルなことから,一見容易にできそうではあるが,実際の臨床現場で上手くいかないこともしばしば経験する.この理由の一つとして,材料や器材そのものの特性,合理的な選択基準,実際の使用方法については既知のこととしてあまり詳しく知る機会が少なく,意外と知られていないからではないかと考えた.
そこで本書では,術式や器材選択・操作方法について,基本をおさえつつ“なぜそれを選ぶのか““臨床でどう使うのか”に焦点を絞り,コンポジットレジン修復をより成功に近づけるうえで役に立つ書籍を目指した.毎日の臨床を頑張っている若手歯科医師が学びやすい書籍になるよう,また一定のレベルに達した熟練歯科医師にとってもステップアップのためのヒントが得られるように執筆したつもりである.本書はコンポジットレジン修復が大好きで,もっともっと上手くなりたいと考えている筆者らが,1年半をかけて書き上げたものである.1つでも,2つでも読者の臨床の役に立つ内容があれば望外の喜びであり,その結果,多くの患者さんがコンポジットレジン修復のメリットを享受し,少しでも救われることを願っている.
最後にこの場を借りて,コンポジットレジン修復の大いなる可能性を示し,われわれに未来を与えてくださった恩師である東京医科歯科大学 田上順次先生,中島正俊先生にあらためて感謝の意を表したい.また,これまでずっと切磋琢磨してきた多くの仲間,特に本書では,模型製作にご協力くださった池田正臣先生,写真提供に応じてくれた高橋真広先生に御礼を申し上げる.
2022年2月 保坂啓一
コンポジットレジン修復は,ミニマルインターベンションを支える,重要な低侵襲の機能審美再生治療である.長年にわたる歯科保存学研究,接着歯学研究における産学連携の賜物である,接着性レジンおよびコンポジットレジンの飛躍・発展的進歩,使いやすい治療関連器材の充実,効率化につながる術式の改良によって,適切に治療を行えば,典型的な窩洞はもとよりチャレンジングな症例でも成功に導くことが可能になったと言えよう.コンポジットレジン修復は,適材適所のマテリアル選択,知識と経験に裏付けられた術者のテクニックにより,チェアサイドで患者さんを笑顔にすることができる治療法で,歯科医療従事者としてのやりがいや醍醐味を味わうことができる.しかし一方で,術式がシンプルなことから,一見容易にできそうではあるが,実際の臨床現場で上手くいかないこともしばしば経験する.この理由の一つとして,材料や器材そのものの特性,合理的な選択基準,実際の使用方法については既知のこととしてあまり詳しく知る機会が少なく,意外と知られていないからではないかと考えた.
そこで本書では,術式や器材選択・操作方法について,基本をおさえつつ“なぜそれを選ぶのか““臨床でどう使うのか”に焦点を絞り,コンポジットレジン修復をより成功に近づけるうえで役に立つ書籍を目指した.毎日の臨床を頑張っている若手歯科医師が学びやすい書籍になるよう,また一定のレベルに達した熟練歯科医師にとってもステップアップのためのヒントが得られるように執筆したつもりである.本書はコンポジットレジン修復が大好きで,もっともっと上手くなりたいと考えている筆者らが,1年半をかけて書き上げたものである.1つでも,2つでも読者の臨床の役に立つ内容があれば望外の喜びであり,その結果,多くの患者さんがコンポジットレジン修復のメリットを享受し,少しでも救われることを願っている.
最後にこの場を借りて,コンポジットレジン修復の大いなる可能性を示し,われわれに未来を与えてくださった恩師である東京医科歯科大学 田上順次先生,中島正俊先生にあらためて感謝の意を表したい.また,これまでずっと切磋琢磨してきた多くの仲間,特に本書では,模型製作にご協力くださった池田正臣先生,写真提供に応じてくれた高橋真広先生に御礼を申し上げる.
2022年2月 保坂啓一
CHAPTER 1 術前の診査診断
STEP 1 コンポジットレジン修復の適応診断
コンポジットレジン修復の利点・欠点
適応診断のチェックポイント
STEP 2 う蝕の診査
視診
X線診査
その他の診査
CHAPTER 2 フィールドコントロール
STEP 1 防湿
ラバーダム防湿とその簡略法
その他の簡易防湿
STEP 2 歯肉圧排
歯肉圧排に用いる器具
圧排糸を用いる際の注意点
歯肉圧排の実際
CHAPTER 3 う蝕除去と窩洞形成
STEP 1 う窩の開拡
どこから削るのか
隣在歯を削らない工夫
開拡のゴール
STEP 2 感染象牙質の除去とエナメル質の仕上げ
どの象牙質を除去するのか
急性う蝕と慢性う蝕の違い
感染象牙質の除去の実際
失活歯におけるう蝕除去
エナメル質の仕上げ
STEP 3 旧修復物の除去
インレーの除去
コンポジットレジンの除去
除去後のサンドブラスト
CHAPTER 4 マトリックスワーク(隔壁)
STEP 1 失敗しにくいマテリアル選択
マトリックスワークが必要な理由
マトリックスの種類と選択
ウェッジの種類と選択
リング状リテーナーの種類と選択
STEP 2 マトリックスワークの実際
基本的なマトリックスワーク
テフロンテープによる適合性の向上
前歯部におけるマトリックスワーク
CHAPTER 5 接着操作
STEP 1 接着システムの使い分け
接着とは?
2ステップシステムと1ステップシステムの特徴
どの接着システムが人気?
筆者らの使い分け
STEP 2 確実な接着のコツ
メーカー指示の読み方
ボンドは積層充填の第一層
具体的な使い方のコツ
STEP 3 状況に応じた接着処理
接着阻害因子の除去
リン酸エッチング
シラン処理
CHAPTER 6 前歯の充填
STEP 1 シェードセレクション
歯の色調
ターゲット歯の観察
シェードセレクション
シングルシェード
シェードで失敗しやすい症例とその対応
STEP 2 前歯の“かたち”への理解
審美性に与える影響
形態を理解する
STEP 3 前歯部充填のコツ
前歯部充填で考えるべきこと
充填の実際
新たな充填法の提唱
CHAPTER 7 臼歯の充填
STEP 1 臼歯の“かたち”への理解
咬頭数と裂溝の位置
典型的な咬合面形態への理解
STEP 2 臼歯部充填のコツ
臼歯におけるシェード選択のコツ
積層充填で考えること
光を窩底部に確実に届ける
臼歯部充填の実際
CHAPTER 8 形態修正・研磨
STEP 1 前歯の形態修正・研磨
形態修正の目的
形態修正の実際
研磨の目的
研磨の実際
STEP 2 臼歯の“仕上げ”・研磨
臼歯における“仕上げ”とは
仕上げと研磨の実際
CHAPTER 9 歯頸部修復
STEP 1 歯頸部欠損の種類
う蝕性歯頸部欠損における注意点
非う蝕性歯頸部欠損における注意点
STEP 2 非う蝕性歯頸部欠損修復のコツ
歯頸部修復における注意事項
歯頸部充填
形態修正・研磨
CHAPTER 10 術後評価と説明
STEP 1 術直後と再来院時の評価と説明
術直後の評価ポイント
修復当日の患者への説明
再来院時の評価ポイント
再来院時の患者への説明
起こりうるトラブル
Tool & Material
索引
STEP 1 コンポジットレジン修復の適応診断
コンポジットレジン修復の利点・欠点
適応診断のチェックポイント
STEP 2 う蝕の診査
視診
X線診査
その他の診査
CHAPTER 2 フィールドコントロール
STEP 1 防湿
ラバーダム防湿とその簡略法
その他の簡易防湿
STEP 2 歯肉圧排
歯肉圧排に用いる器具
圧排糸を用いる際の注意点
歯肉圧排の実際
CHAPTER 3 う蝕除去と窩洞形成
STEP 1 う窩の開拡
どこから削るのか
隣在歯を削らない工夫
開拡のゴール
STEP 2 感染象牙質の除去とエナメル質の仕上げ
どの象牙質を除去するのか
急性う蝕と慢性う蝕の違い
感染象牙質の除去の実際
失活歯におけるう蝕除去
エナメル質の仕上げ
STEP 3 旧修復物の除去
インレーの除去
コンポジットレジンの除去
除去後のサンドブラスト
CHAPTER 4 マトリックスワーク(隔壁)
STEP 1 失敗しにくいマテリアル選択
マトリックスワークが必要な理由
マトリックスの種類と選択
ウェッジの種類と選択
リング状リテーナーの種類と選択
STEP 2 マトリックスワークの実際
基本的なマトリックスワーク
テフロンテープによる適合性の向上
前歯部におけるマトリックスワーク
CHAPTER 5 接着操作
STEP 1 接着システムの使い分け
接着とは?
2ステップシステムと1ステップシステムの特徴
どの接着システムが人気?
筆者らの使い分け
STEP 2 確実な接着のコツ
メーカー指示の読み方
ボンドは積層充填の第一層
具体的な使い方のコツ
STEP 3 状況に応じた接着処理
接着阻害因子の除去
リン酸エッチング
シラン処理
CHAPTER 6 前歯の充填
STEP 1 シェードセレクション
歯の色調
ターゲット歯の観察
シェードセレクション
シングルシェード
シェードで失敗しやすい症例とその対応
STEP 2 前歯の“かたち”への理解
審美性に与える影響
形態を理解する
STEP 3 前歯部充填のコツ
前歯部充填で考えるべきこと
充填の実際
新たな充填法の提唱
CHAPTER 7 臼歯の充填
STEP 1 臼歯の“かたち”への理解
咬頭数と裂溝の位置
典型的な咬合面形態への理解
STEP 2 臼歯部充填のコツ
臼歯におけるシェード選択のコツ
積層充填で考えること
光を窩底部に確実に届ける
臼歯部充填の実際
CHAPTER 8 形態修正・研磨
STEP 1 前歯の形態修正・研磨
形態修正の目的
形態修正の実際
研磨の目的
研磨の実際
STEP 2 臼歯の“仕上げ”・研磨
臼歯における“仕上げ”とは
仕上げと研磨の実際
CHAPTER 9 歯頸部修復
STEP 1 歯頸部欠損の種類
う蝕性歯頸部欠損における注意点
非う蝕性歯頸部欠損における注意点
STEP 2 非う蝕性歯頸部欠損修復のコツ
歯頸部修復における注意事項
歯頸部充填
形態修正・研磨
CHAPTER 10 術後評価と説明
STEP 1 術直後と再来院時の評価と説明
術直後の評価ポイント
修復当日の患者への説明
再来院時の評価ポイント
再来院時の患者への説明
起こりうるトラブル
Tool & Material
索引