やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

口腔ケア認定試験にあたり
 誤嚥性肺炎の予防,口内炎や口腔乾燥などの改善,喫食(美味しく食べられる)できる口腔機能の回復などを期待して,口腔ケアが各分野で取り組まれています.とりわけ,看護界では,以前から,口腔ケアは看護の質をはかる最良の物差しといわれ,基礎看護教育で少なからず講義と実習が実施され,また介護教育でも同様に行われています.
 他方,口腔ケアを取り巻く環境は,少子高齢化社会の到来を迎え,医療費などの社会保障費の急激な膨張を押さえるため,生活習慣病の予防や介護予防を目指して,様々な施策が実施されています.
 その成果を達成するためには,栄養摂取の適正化や改善を図らなければならず,口腔機能の改善・維持・向上を避けて通ることができません.
 そこで,平成12年度に施行された介護保険制度には,口腔領域が調査項目や介護サービス計画を立案する項目に設けられ,一層口腔に関心が寄せられるようになりました.
 平成17年7月には,口腔ケアの実施を「医行為」の規制緩和に関わる一環として,無資格者,すなわち家族で介護を行っている家族などにも門戸を解放しました.
 平成22年4月には,一部の疾患で,入院中の口腔ケアに保険点数が付与され,今後の疾患に拡大が期待されます.
 しかし,理想と現実では,大きくかい離し,とても十分とはいえず,しかも,無資格者が,正確な知識を持ち合わせないまま,口腔ケアを実施するには危険性も伴います.また病院,医療スタッフごとで口腔ケアにも大きな差があり,なかには不適切な口腔ケアが行われているとの報告も学会に寄せられています.
 そこで,日本口腔ケア学会として,口腔ケアを実施する者の質の向上をはかるため,平成18年度から,認定制度を開始することにしました.対象は医療分野の全ての方々とし,5級については医療学生や口腔ケア用品をあつかう業者の方々,介護を行っている一般の方々にも知識の向上のため受験して頂けるように配慮致しました.令和3年4月よりCBTシステムと口腔ケアアンバサダー制度の導入を行いました.
 また,本試験制度は,公平を保つため,日本口腔ケア学会のみで行うのではなく,特定非営利活動法人日本医学歯学情報機構に委託し,実施しております.また最新の情報を提供するため,今回改訂を行うことと致しました.
 本書では,認定試験を受験される方をはじめ,これから取り組もうとされる方々にもわかりやすく,口腔ケアの基本から取り上げてみました.
 本制度が,口腔ケアを受ける方々への,福音になれば幸いです.
 終わりに,刊行の労をおとりいただいた医歯薬出版株式会社ならびに日本医学歯学情報機構の齋藤英彦理事長に深謝します.
 2021年8月
 一般社団法人 日本口腔ケア学会
 理事長 夏目長門
第1部 認定制度について
 1 口腔ケアの定義
 2 口腔ケアの経緯と展望
 3 口腔ケア認定制度
第2部 出題基準ならびに出題テーマ
 1 出題基準
 2 出題テーマ
第3部 問題ならびに解説
 I 基礎知識
 II 歯磨き
 III うがい
 IV 義歯について
 V 口臭
 VI 体に障害や病気のあるひと
 VII う蝕(むし歯)と歯周病
 VIII 出血
 IX 口腔乾燥
 X 摂食嚥下障害
 XI 在宅
 XII その他
  第3部索引

 付録
  口腔ケアアンバサダー試験対策正誤問題集
  認定資格試験の詳細および申込方法について
  執筆者一覧