やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

DVD術者の視野で見るインプラント治療 発刊にあたって
 インプラントに関する情報は世にあふれ出ており,より先端的,審美的な治療に衆目が集まっている.しかし,日常臨床における基本的な治療のステップを確認しようとすると,参考となる有益な情報が少ないことに気づかされる.さらに,マニュアルに書いてあることを理解しても,治療技術の詳細な注意点はわからない場合も多い.
 最近では動画を使った技術伝達も徐々に出てきているが,当然のごとく術式の理解を深めるための撮影条件であるために,術者として手術を行う場合には,全く異なる視点,視線となる.それゆえ,実際に術者となると,狭窄した視野のために,折角収集した情報,技術も十分に発揮できない場合もでてくる.いわゆるシミュレーションが十分にできない状況下で,手術を迎えることとなってしまう.
 そこで,本シリーズでは,日常的な基本症例を対象とし,わかっていると思いがちなことについても,一つひとつ注意点を明確にして,さらに,術者の拡大鏡につけたカメラを用いて,術者と全く同じ視点,視野でインプラント治療の基本臨床術式を伝達することを企画した.
 本書で基本を理解していただき,動画で実際の臨床をご覧いただくことにより,確実な治療を行う手立てとなれば幸甚である.
 2009年初夏
 武田 孝之

Step by Step 下顎遊離端欠損・序
 インプラント治療に取り組みを始める代表的症例が下顎遊離端欠損であろう.
 その理由として,従来法と比較してインプラントの効果を患者さんが実感しやすく,かつ補綴的側面としての有効性が高いこと,そして,インプラント適用に対してリスクが低いと一般的に考えられていることがある.
 しかし実際は,後方領域では視野は限られ,器具の到達性も悪い場合も多く,さらに,下顎管およびオトガイ孔への神経損傷,舌側への穿孔に伴う動脈損傷など,高いリスクを伴う部位であるともいえる.
 最後方臼歯の影響を受けるため,起始点の付与一つとってみても,サージカルガイドを使用したにもかかわらず的確に位置づけることが難しい.さらに,任意の軸方向にインプラント窩を形成することも簡単ではない.また,補綴処置を進める場合も,開口量が制限された症例では,適切に処置を進めることも容易ではない.
 本書では,限られた視野のなかで実際に陥りやすい失敗も実感していただき,そのうえですべての動作を一歩一歩確実に進めるために確認すべきことを網羅した.初心者のみならず,手馴れた術者においても初心に戻って基本的動作の確認を行い,実際の臨床でのエラーを可及的になくすことに役立てていただければ幸いである.
 本書の作成にあたり,多大なる協力をいただいた東京歯科大学教授・矢島安朝先生,武田歯科・広瀬理子先生,そして井上貴詞先生はじめ後藤歯科医院のスタッフの方々,さらに機器の面で協力をいただいたオーラルケア,シロナデンタルシステムズ,デンツプライ三金の関係各位,撮影から発刊にわたってすべての面でご尽力いただいた医歯薬出版にあらためて感謝いたします.
 2009年6月 吉日
 武田 孝之
 井上 敬介
第1章 手術に臨む前の準備/手術の前に行っておくこと
 1 医療面接
 2 診察・検査
 3 下顎遊離端欠損症例における確認事項
 4 治療のゴールの設定
  ●column 1:診断用テンプレートの作製法
 5 植立計画の立案
 6 サージカルガイドへの改変
第2章 インプラント体の植立手術
 7 手術前準備
 8 切 開
  ●column 2:切開の基本(矢島安朝)
 9 フラップの剥離
 10 スターティングポイントの決定・植立窩の形成
 11 パイロットドリルによるドリリング
 12 植立深度の決定
 13 最終形成ドリリングと最終確認
 14 インプラント体の植立
 15 縫合・術直後の注意・投薬
  ●column 3:縫合の基本(矢島安朝)
 16 術後確認
 17 抜糸・洗浄
 18 オッセオインテグレーションの臨床的確認
  ●column 4:手術法としての1回法と2回法の選択
  ●column 5:起こりやすい失敗と原因
第3章 印象から装着まで
 19 補綴処置全体の流れの中でエラーを抑えるための対応法
 20 印象採得・咬合採得
 21 模型・アバットメントの作製
 22 フレーム試適と鑞着コアの採得
 23 プロビジョナルレストレーション
 24 メタルフレームの試適とシェードテイキング
 25 上部構造の作製
  ●column 6:固定法・材質・連結の是非
 26 上部構造のチェックと装着
 27 咬合・清掃性の確認
 28 メインテナンス

 付
  ・DVDについて
  ・アンキロスの特徴
  ・サージカムの特徴
  ・ガリレオスの特徴