はじめに
令和2年の春,世界中を新型コロナウイルスが襲いました.
各国のリーダーは「コロナとの戦争」を強調し,命運は団結にかかっていると述べました.世界中で経済,産業を止めながら感染拡大の阻止に臨み,その結果は不安定ではあるけれども,少しずつ平穏な社会に戻りつつあります.
しかし,私たちの生き方や生活は,以前とは違います.社会もまた新しい環境に対応すべき時がきています.
そのような変化の中で,私たち歯科業界は,歯科医療を通して健全な全身状態で安定した生活が送れるよう支援し続けています.混乱の中においても,継続した医療を提供し続けた皆様に感謝と敬意を払います.
さて,この「歯科医院をまとめるリーダーのための教科書」は,歯科医院という組織の中で,歯科医師であり経営者という立場におられる院長,初めて役職を与えられ院長と共に経営者側で行動する立場になった方々に読んでいただく本としてまとめました.
混乱が続く中,チーム一丸で医療提供できた歯科医院は,結束力が高まり団結されたところもあるでしょうが,多くの不安を抱え院長一人で悩まれた歯科医院もあったのではないかと推察いたします.だからこそ,この本は,社会や組織が不安定な時にこそ,読んでいただきたい本です.
なぜならば,100年の歴史を持つ経営学は,多くの社会変動を乗り越えながら確立されてきました.だから,実態に即した経営学は,組織の中での生き方,働き方,成長等,働く人の悩みを学問として導いてくれるはずです.
私は,幸せなことに単著・共著を合わせると医歯薬出版から28冊の本を出版していただきましたが,この本は経営に関する本として10冊目の節目となります.
最初の「輝く華の歯科衛生士 これからの歯科医院経営をチームで考える」(2007)は,「どうしてスタッフが経営なのか」「どうして経営をチームで話し合わなければならないのか」「どうしてスタッフは辞めてしまうのか」と,多くの声をいただきました.12年経った今読み返しても,内容は新鮮で過激です.編集部の山アさんから「この本は今読んでも納得できます.しかし,今だからこそ社会に適応した本として出版しなおすべきではないでしょうか」と,声をかけていただきました.
確かに,最初の本はまだ「机上の空論」の部分がありましたが,この12年の間に研修会でお会いした方は延べ2万人,約1000件の歯科医院の方々と語り合ってきました.私共と共に歯科医院変革を継続的に行っていただいている歯科医院は絶えず情報を公開し,互いに交流し,相乗効果で発展する集団になっています.その90%の歯科医院は,院長が思った方向でチーム一丸となり,安定した医療提供ができる「地域を代表する歯科医院」に発展されました.これは,経営学の基礎を学習している組織だからこその成長です.
私たちは,国の医療保険制度の中で守られているので,大きな無理をせずとも足元を固めることができます.国の施策に合わせて世の中の方向性を見極め,それに合わせて組織を固め,さらに独自性を磨き,地域と共にこれからの日本の在り方をいろいろな方々と語り合わなければなりません.2025年の地域包括ケアシステムの完備,2035年の生産年齢人口減少問題での大変厳しい中での医療体制整備,2040年前後に到来する死亡者数ピーク時をどのように乗り切っていくかは,今いる私たちが考え行動することです.
この本の出版に当たり,著者として日本医業経営コンサルタント協会歯科部門トップの角田祥子先生,サブパーソナリティの専門家であり先駆者である八尾芳樹先生,社会保険労務士としてご尽力いただいている松坂文則先生,また母として忙しい中,歯科医院変革をテーマに研究に取り組んだ河野佳苗さんにお礼を申し上げます.さらに,ご協力いただきました歯科医院の皆様,数字の解釈でご指導いただきました日本経営士会の角田崇文様,そして何よりもデンタルタイアップのメンバーに感謝いたします.
また,徹底的に私に寄り添い支えてくださった鈴木トキ子さんに深謝いたします.
さあ,時代は動いています.この本を読んでいただき,新しい歯科医院の在り方について語り合いましょう.
2020年6月 デンタルタイアップ 代表取締役 小原啓子
令和2年の春,世界中を新型コロナウイルスが襲いました.
各国のリーダーは「コロナとの戦争」を強調し,命運は団結にかかっていると述べました.世界中で経済,産業を止めながら感染拡大の阻止に臨み,その結果は不安定ではあるけれども,少しずつ平穏な社会に戻りつつあります.
しかし,私たちの生き方や生活は,以前とは違います.社会もまた新しい環境に対応すべき時がきています.
そのような変化の中で,私たち歯科業界は,歯科医療を通して健全な全身状態で安定した生活が送れるよう支援し続けています.混乱の中においても,継続した医療を提供し続けた皆様に感謝と敬意を払います.
さて,この「歯科医院をまとめるリーダーのための教科書」は,歯科医院という組織の中で,歯科医師であり経営者という立場におられる院長,初めて役職を与えられ院長と共に経営者側で行動する立場になった方々に読んでいただく本としてまとめました.
混乱が続く中,チーム一丸で医療提供できた歯科医院は,結束力が高まり団結されたところもあるでしょうが,多くの不安を抱え院長一人で悩まれた歯科医院もあったのではないかと推察いたします.だからこそ,この本は,社会や組織が不安定な時にこそ,読んでいただきたい本です.
なぜならば,100年の歴史を持つ経営学は,多くの社会変動を乗り越えながら確立されてきました.だから,実態に即した経営学は,組織の中での生き方,働き方,成長等,働く人の悩みを学問として導いてくれるはずです.
私は,幸せなことに単著・共著を合わせると医歯薬出版から28冊の本を出版していただきましたが,この本は経営に関する本として10冊目の節目となります.
最初の「輝く華の歯科衛生士 これからの歯科医院経営をチームで考える」(2007)は,「どうしてスタッフが経営なのか」「どうして経営をチームで話し合わなければならないのか」「どうしてスタッフは辞めてしまうのか」と,多くの声をいただきました.12年経った今読み返しても,内容は新鮮で過激です.編集部の山アさんから「この本は今読んでも納得できます.しかし,今だからこそ社会に適応した本として出版しなおすべきではないでしょうか」と,声をかけていただきました.
確かに,最初の本はまだ「机上の空論」の部分がありましたが,この12年の間に研修会でお会いした方は延べ2万人,約1000件の歯科医院の方々と語り合ってきました.私共と共に歯科医院変革を継続的に行っていただいている歯科医院は絶えず情報を公開し,互いに交流し,相乗効果で発展する集団になっています.その90%の歯科医院は,院長が思った方向でチーム一丸となり,安定した医療提供ができる「地域を代表する歯科医院」に発展されました.これは,経営学の基礎を学習している組織だからこその成長です.
私たちは,国の医療保険制度の中で守られているので,大きな無理をせずとも足元を固めることができます.国の施策に合わせて世の中の方向性を見極め,それに合わせて組織を固め,さらに独自性を磨き,地域と共にこれからの日本の在り方をいろいろな方々と語り合わなければなりません.2025年の地域包括ケアシステムの完備,2035年の生産年齢人口減少問題での大変厳しい中での医療体制整備,2040年前後に到来する死亡者数ピーク時をどのように乗り切っていくかは,今いる私たちが考え行動することです.
この本の出版に当たり,著者として日本医業経営コンサルタント協会歯科部門トップの角田祥子先生,サブパーソナリティの専門家であり先駆者である八尾芳樹先生,社会保険労務士としてご尽力いただいている松坂文則先生,また母として忙しい中,歯科医院変革をテーマに研究に取り組んだ河野佳苗さんにお礼を申し上げます.さらに,ご協力いただきました歯科医院の皆様,数字の解釈でご指導いただきました日本経営士会の角田崇文様,そして何よりもデンタルタイアップのメンバーに感謝いたします.
また,徹底的に私に寄り添い支えてくださった鈴木トキ子さんに深謝いたします.
さあ,時代は動いています.この本を読んでいただき,新しい歯科医院の在り方について語り合いましょう.
2020年6月 デンタルタイアップ 代表取締役 小原啓子
はじめに
1章 組織を理解する
1-歯科医院という組織
(1)人生思った通りに行かないこともある
(2)組織は他人の集団と考える
(3)人数が増えると難しい状況を作る
2-組織の中での管理職とは
(1)管理職とは誰なのか
(2)管理職としての仕事(トップの役割とチーフの役割)
(3)組織における理念
(4)組織の成り立ち
(5)組織の財産を意識する
(6)組織の中でのそれぞれの役割
2章 リーダーとしての役割
1-リーダーとしての心得
(1)リーダーに対してのイメージ
(2)リーダーシップの育て方
2-リーダーとしての活動
(1)リーダーとして活動するための基本
(2)リーダーとして知っておきたい3つのポイント
(3)リーダーとしての行動
3章 社会の変化と歯科医療界
1-日本という国
(1)外部環境の状況を理解する
(2)人口の変化から見えること
(3)人口構造の変化は歯科医院にも影響する
(4)今いる場所の人口を調べてみよう!
2-歯科医療業界の動き
(1)医療施設動態調査から見えること
(2)歯科医院の現状
3-経営を外部チームと共に考える
(1)税理士との付き合い方
(2)社会保険労務士との付き合い方
(3)コンサルタントとの付き合い方
4章 組織の成長
1-歯科医院を活性化させる変革
(1)ステップを踏む組織の成長
(2)マネジメントシステムを使ってステップを上げていく
(3)各ステップの勤務環境マネジメントシステムの応用
2-(1)-第1ステップ:組織としての基礎固め(5S活動)
(1)5S活動によって安心できる環境へ
2-(2)-歯科医院における5S活動
(1)整理
(2)整頓
(3)清掃
(4)清潔
(5)躾
3-第2ステップ:仕事の視える化(マニュアル作成・活用)
(1)個人の「暗黙知」を組織の「形式知」にしよう
(2)まずは共同化
(3)次に表出化
(4)そして連結化へ
(5)さらに内面化へ
(6)マニュアルの意味
4-第3ステップ:歯科医院としての基礎固め(仕事の明確化)
(1)患者への情報提供
(2)在庫管理の強化
(3)労働環境の整備
(4)人材育成を確実に行おう
(5)日本の中小企業が行っているカイゼン
5-第4ステップ:独自性の尊重(組織の強みを明確化)
(1)確かに診療が変わってきている
(2)専門性を明確にする
6-第5ステップ:独自性の確立(確固たる基盤づくり)
(1)ベクトルで示される成長
7-第6ステップ:新たなチャレンジ(新たな投資)
(1)組織の安定は衰退のはじまり
(2)組織が示す成長曲線
8-第7ステップ:さらなる成長(医療の質と量のバランス)
(1)粘り強い変革と人材確保
(2)高齢者を雇うという新しい意識
(3)組織の適正規模から社会との関わりを考える
5章 知っておきたい会計の基礎
1-数字を共有する意味
(1)全員参加型経営の実現のための数字
(2)「経営データ」は闇の中?
(3)会計の意味
(4)経営のPDCAサイクルの基本
(5)スタッフを生かす数字の活用方法
(6)経営判断のための会計へ
2-会計の仕組みを知ろう
(1)経営を表す3つの財務諸表
(2)貸借対照表ってなに?
(3)損益計算書ってなに?
(4)キャッシュフロー計算書ってなに?
(5)事例 H歯科医院の数字からイメージする
6章 人との関係
1-人への理解は難問
2-間違えてはいけない!! 個々を生かす方法
3-歯科医院の中での人間関係
(1)組織にエンパワーメントの考え方を活用する
(2)個人を生かすセルフ・エンパワーメント
(3)組織としての価値を生み出すチーム・エンパワーメント
4-スタッフの個性を理解する
(1)自己理解,他者理解の視点
(2)サブ・パーソナリティ(SP)とは
(3)自分自身やスタッフのSP特性を知る
(4)ワーキングSPの特性と仕事スタイル
(5)人間関係の持ち方を知る
(6)自分のマネジメントスタイルを知る
(7)SP特性とビジネススタイルの成長課題
5-抵抗への対応
(1)抵抗勢力の驚くべき言動
7章 人としての成長
1-管理職としての転換点
(1)他人の成果を引き出す役割
(2)管理職としての立ち位置
(3)国が援助している管理職への教育
2-求められる知識とスキル
(1)管理職のための3つのスキル
3-人を育てるための人事評価
(1)人事評価の考え方
(2)人事評価の歴史
(3)日本における人事評価の動き
(4)歯科医院における人事評価の考え方
8章 労働環境を整えるという意味
1-刻々と変わる国の制度
(1)労働に関する法律
(2)組織としての根幹──就業規則
(3)就業規則に載っていること
(4)雇用契約書で交わされる歯科医院とスタッフとの関係
(5)労働に関する整備──労働保険・社会保険・税金
(6)休暇の考え方
おわりに
1章 組織を理解する
1-歯科医院という組織
(1)人生思った通りに行かないこともある
(2)組織は他人の集団と考える
(3)人数が増えると難しい状況を作る
2-組織の中での管理職とは
(1)管理職とは誰なのか
(2)管理職としての仕事(トップの役割とチーフの役割)
(3)組織における理念
(4)組織の成り立ち
(5)組織の財産を意識する
(6)組織の中でのそれぞれの役割
2章 リーダーとしての役割
1-リーダーとしての心得
(1)リーダーに対してのイメージ
(2)リーダーシップの育て方
2-リーダーとしての活動
(1)リーダーとして活動するための基本
(2)リーダーとして知っておきたい3つのポイント
(3)リーダーとしての行動
3章 社会の変化と歯科医療界
1-日本という国
(1)外部環境の状況を理解する
(2)人口の変化から見えること
(3)人口構造の変化は歯科医院にも影響する
(4)今いる場所の人口を調べてみよう!
2-歯科医療業界の動き
(1)医療施設動態調査から見えること
(2)歯科医院の現状
3-経営を外部チームと共に考える
(1)税理士との付き合い方
(2)社会保険労務士との付き合い方
(3)コンサルタントとの付き合い方
4章 組織の成長
1-歯科医院を活性化させる変革
(1)ステップを踏む組織の成長
(2)マネジメントシステムを使ってステップを上げていく
(3)各ステップの勤務環境マネジメントシステムの応用
2-(1)-第1ステップ:組織としての基礎固め(5S活動)
(1)5S活動によって安心できる環境へ
2-(2)-歯科医院における5S活動
(1)整理
(2)整頓
(3)清掃
(4)清潔
(5)躾
3-第2ステップ:仕事の視える化(マニュアル作成・活用)
(1)個人の「暗黙知」を組織の「形式知」にしよう
(2)まずは共同化
(3)次に表出化
(4)そして連結化へ
(5)さらに内面化へ
(6)マニュアルの意味
4-第3ステップ:歯科医院としての基礎固め(仕事の明確化)
(1)患者への情報提供
(2)在庫管理の強化
(3)労働環境の整備
(4)人材育成を確実に行おう
(5)日本の中小企業が行っているカイゼン
5-第4ステップ:独自性の尊重(組織の強みを明確化)
(1)確かに診療が変わってきている
(2)専門性を明確にする
6-第5ステップ:独自性の確立(確固たる基盤づくり)
(1)ベクトルで示される成長
7-第6ステップ:新たなチャレンジ(新たな投資)
(1)組織の安定は衰退のはじまり
(2)組織が示す成長曲線
8-第7ステップ:さらなる成長(医療の質と量のバランス)
(1)粘り強い変革と人材確保
(2)高齢者を雇うという新しい意識
(3)組織の適正規模から社会との関わりを考える
5章 知っておきたい会計の基礎
1-数字を共有する意味
(1)全員参加型経営の実現のための数字
(2)「経営データ」は闇の中?
(3)会計の意味
(4)経営のPDCAサイクルの基本
(5)スタッフを生かす数字の活用方法
(6)経営判断のための会計へ
2-会計の仕組みを知ろう
(1)経営を表す3つの財務諸表
(2)貸借対照表ってなに?
(3)損益計算書ってなに?
(4)キャッシュフロー計算書ってなに?
(5)事例 H歯科医院の数字からイメージする
6章 人との関係
1-人への理解は難問
2-間違えてはいけない!! 個々を生かす方法
3-歯科医院の中での人間関係
(1)組織にエンパワーメントの考え方を活用する
(2)個人を生かすセルフ・エンパワーメント
(3)組織としての価値を生み出すチーム・エンパワーメント
4-スタッフの個性を理解する
(1)自己理解,他者理解の視点
(2)サブ・パーソナリティ(SP)とは
(3)自分自身やスタッフのSP特性を知る
(4)ワーキングSPの特性と仕事スタイル
(5)人間関係の持ち方を知る
(6)自分のマネジメントスタイルを知る
(7)SP特性とビジネススタイルの成長課題
5-抵抗への対応
(1)抵抗勢力の驚くべき言動
7章 人としての成長
1-管理職としての転換点
(1)他人の成果を引き出す役割
(2)管理職としての立ち位置
(3)国が援助している管理職への教育
2-求められる知識とスキル
(1)管理職のための3つのスキル
3-人を育てるための人事評価
(1)人事評価の考え方
(2)人事評価の歴史
(3)日本における人事評価の動き
(4)歯科医院における人事評価の考え方
8章 労働環境を整えるという意味
1-刻々と変わる国の制度
(1)労働に関する法律
(2)組織としての根幹──就業規則
(3)就業規則に載っていること
(4)雇用契約書で交わされる歯科医院とスタッフとの関係
(5)労働に関する整備──労働保険・社会保険・税金
(6)休暇の考え方
おわりに














