やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

この本を手に取った皆さんへ
 この本を手に取ったみなさんは,おそらく,歯科医院に来院中だと思います.
 みなさんが歯科医院に来た理由は何でしょうか?歯が痛いから治療してほしい?詰め物が取れてしまったから,新らしくしてほしい?顎が痛い?親知らずを抜いてほしい?……歯科医院に来る理由はさまざまですね.もしかすると,この本を手に取ったあなたは単なる付き添いで,いま治療している患者さんを待合室で待っているだけかもしれません.
 歯科医院では歯を削ったり,削ったところを埋めたりします.歯の抜けてしまったところに差し歯を入れたり,たとえ顎に歯が残っていなくても入れ歯も作ってもらうことで,「噛む」という能力を取り戻すことができるのです.
 8020運動,というものがあります.「80歳までに20本の歯を残そう」という目的の運動です.ヒトには通常,上下の顎に14本ずつ(親知らずは含みません)歯があり,合計28本の歯が揃っているのが理想です.ただし,多少歯が欠けていても食事をとることができますし,先ほどご紹介したように,入れ歯を入れることだってできます.
 この8020運動,かなり達成されているようで,80歳で20本の歯が残っている方は年々増加して2人に1人が達成しています.みなさん,歯をしっかり残すことができているのですね.
 ところで,歯が残っていることだけが,健全な食生活やそこから始まる日常生活を送れる条件なのでしょうか?
 じつは,歯が残っていることだけが健全な食生活を営む条件ではありません.
 「口腔機能の低下」「フレイル」「オーラルフレイル」.こうした言葉を聞いたことはないでしょうか?こうしたことをひと言でいうと「お口が弱る」ということです.
 本書はお口が弱ることによる全身への影響や,歯科医院でできることへの対応を紹介した本です.
 もし気になることがあったら,歯科医院の先生にご相談をしてみてください.
 お口からはじまる,健やかな生活が待っています.
 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック 菊谷 武
1章 お口,弱っていませんか?
 1 食べものを飲み込むまでの流れ 「口腔機能」の具体的な場所
 2 歯磨きやうがいがうまくできない
 3 お口がいつも乾いている,唾液が出ない
 4 噛みくだく力が落ちている
 5 食べものが口からこぼれる,口のなかに食べものが残る
 6 舌でうまく送りこめない
 7 うまく噛めない
 8 うまく飲み込めない,ムセたり時間がかかる
 お口の症状と口腔機能の関係
2章 口の機能が弱るって…?その仕組みと対応例
 1 口腔不潔
 2 口腔乾燥
 3 咬合力低下
 4 舌口唇運動機能低下
 5 低舌圧
 6 咀嚼機能低下
 7 嚥下機能低下
 さあ!!歯科医院で検査してもらいましょう!!
3章 口が弱ると身体も弱る〜「オーラルフレイル」と「フレイル」
 1 フレイルってどんなこと?
 2 フレイルとオーラルフレイル 全身とお口の関係
 3 オーラルフレイルと口腔機能低下症の関係
 オーラルフレイルと口腔機能の低下を予防することで,フレイル,口腔機能低下症を防げます
4章 お口が弱る原因とは
 1 加齢
 2 病気の影響
 3 放置された口
 4 薬の影響
 5 認知症

 参考文献・図表出典