序文
近年,歯内療法の分野では歯内療法の「三種の神器」と呼ばれるマイクロスコープ,歯科用コーンビームCT(CBCT),ニッケルチタン製ロータリーファイルをはじめとする多くの新しい器具器材が応用されるようになり,大きく様変わりしました.ここ20年の歯内療法の技術的な進歩・発展には目を見張るものがあり,まさにこれは「歯内療法レボーリューション」ともいうべき大きな変化を遂げています.特に,CBCTとマイクロスコープは相性がよく,使いこなせれば,歯内療法を正確な診断のもとに精密な治療を施すことができます.たとえば根管治療中にマイクロスコープ下で目にする根管内の画像は,CBCTの水平断像と重ね合わせると,より立体的にとらえることができます.根管治療を施す際,根管の複雑な解剖学的形態などの立体構造を正確に三次元的に再現できるCBCTと,狭小で真っ暗な根管内を明るく照らしながら拡大像として観察できるマイクロスコープとの併用は,相乗効果が非常に高いといえるでしょう.この二つの併用は,今まで治療困難であった難症例に対しても,高精度の診断と治療を可能にし,治療成績の向上をもたらすことが期待できます.
しかし,これらを使いこなすには知識と経験が必要であり,両者を使いこなして,初めて高精度な診断のもとに,高精度な治療を施すことが可能になるのです.特に歯内療法においてはどちらが欠けてもうまくいきません.歯内療法では,CBCTの読影で正確に診断できたとしても,それが治療結果に結びつかなければ,単に患者の発がんリスクを高めただけといえるかもしれません.CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法は,治療結果に結びついて,初めて患者に福音をもたらしたといえるのではないでしょうか.
MI(Minimal Intervention)の考え方の原点は天然歯の保存です.天然歯の保存にあたっては,CBCTで正確に診断し,マイクロスコープ下で精密な治療を行う歯内療法が重要となります.歯内療法の成否は天然歯保存の可否に直結するため,歯内療法が今,再注目され,脚光を浴びているのではないでしょうか?
そこで,本書では,CBCTとマイクロスコープの特徴を理解したうえでの機種選択のポイント,症例別に両者併用の診断・治療のポイントについて詳細に解説します.執筆陣には誰もがご存知な各領域のエキスパートをお迎えし,素晴らしい内容になったと自負しております.執筆者各位にはこの場をお借りして深謝いたします.
2018年4月吉日
北村和夫
近年,歯内療法の分野では歯内療法の「三種の神器」と呼ばれるマイクロスコープ,歯科用コーンビームCT(CBCT),ニッケルチタン製ロータリーファイルをはじめとする多くの新しい器具器材が応用されるようになり,大きく様変わりしました.ここ20年の歯内療法の技術的な進歩・発展には目を見張るものがあり,まさにこれは「歯内療法レボーリューション」ともいうべき大きな変化を遂げています.特に,CBCTとマイクロスコープは相性がよく,使いこなせれば,歯内療法を正確な診断のもとに精密な治療を施すことができます.たとえば根管治療中にマイクロスコープ下で目にする根管内の画像は,CBCTの水平断像と重ね合わせると,より立体的にとらえることができます.根管治療を施す際,根管の複雑な解剖学的形態などの立体構造を正確に三次元的に再現できるCBCTと,狭小で真っ暗な根管内を明るく照らしながら拡大像として観察できるマイクロスコープとの併用は,相乗効果が非常に高いといえるでしょう.この二つの併用は,今まで治療困難であった難症例に対しても,高精度の診断と治療を可能にし,治療成績の向上をもたらすことが期待できます.
しかし,これらを使いこなすには知識と経験が必要であり,両者を使いこなして,初めて高精度な診断のもとに,高精度な治療を施すことが可能になるのです.特に歯内療法においてはどちらが欠けてもうまくいきません.歯内療法では,CBCTの読影で正確に診断できたとしても,それが治療結果に結びつかなければ,単に患者の発がんリスクを高めただけといえるかもしれません.CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法は,治療結果に結びついて,初めて患者に福音をもたらしたといえるのではないでしょうか.
MI(Minimal Intervention)の考え方の原点は天然歯の保存です.天然歯の保存にあたっては,CBCTで正確に診断し,マイクロスコープ下で精密な治療を行う歯内療法が重要となります.歯内療法の成否は天然歯保存の可否に直結するため,歯内療法が今,再注目され,脚光を浴びているのではないでしょうか?
そこで,本書では,CBCTとマイクロスコープの特徴を理解したうえでの機種選択のポイント,症例別に両者併用の診断・治療のポイントについて詳細に解説します.執筆陣には誰もがご存知な各領域のエキスパートをお迎えし,素晴らしい内容になったと自負しております.執筆者各位にはこの場をお借りして深謝いたします.
2018年4月吉日
北村和夫
序章 歯内療法レボリューション(北村和夫)
はじめに
歯内療法レボリューション
歯内療法の羅針盤
CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法
1編 CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法に向けて
1.CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法(北村和夫)
1−マイクロスコープの利点
2−マイクロスコープの問題点
3−CBCT検査から得られる情報
4−CBCT検査の問題点
5−マイクロスコープとCBCTの併用がもたらす効果
6−非外科的歯内療法への応用例
7−外科的歯内療法への応用例
8−まとめ
2.CBCT選択のポイント(新井嘉則)
1−専用機から複合機へ
2−複合機の問題点
3−次世代複合機
4−画質評価
5−High resolution
6−多彩な撮影
7−選択のポイント
3.マイクロスコープの選び方(辻本真規,辻本恭久)
1−光源の違いについて
2−設置様式
3−操作性
4−記録様式
5−価格
6−まとめ
4.CBCTとマイクロスコープを用いたプレゼンテーション(三橋 純)
1−プレゼンテーションの必要性
2−マイクロスコープのプレゼンテーション
3−CBCTのプレゼンテーション
4−CBCTとマイクロスコープのプレゼンテーションの要点
2編 CBCTとマイクロスコープを用いた非外科的歯内療法
1.破折ファイル除去とその後の根管探索への応用(寺内吉継)
1−CBCTの歯内療法応用
2−なぜ破折器具除去にCBCTが必要か
3−破折器具除去に使用する器材
4−破折器具除去のテクニック
5−破折器具の除去法
6−破折器具除去後の根管形成
症例1 症例2
2.MTAを用いた根管充填(吉岡隆知)
1−はじめに
2−国内で発売されているMTA製品
3−充填方法
症例
4−MTA根管充填の不適応症例
5−MTA根管充填の予後
6−アピカルプラグと根尖部の肉芽について
7−まとめ
3.MTAを用いた穿孔部封鎖(澤田則宏)
1−尖孔部封鎖の原則
2−尖孔部封鎖の成功率
3−MTA直下の骨再生
症例:溢出したMTAに対する良好な骨再生症例
4−尖孔部封鎖処置とCBCT
5−Internal Matrix Technique
6−MTAによる尖孔部封鎖症例
7−MTAの問題点と各種MTA
4.樋状根への応用(木ノ本喜史)
1−はじめに
2−樋状根の根管解剖
3−樋状根の根管形成,根管充填について
4−症例
症例1:50歳女性,瘻孔を有する7
症例2:28歳女性,樋状根の7
5−まとめ
私の使用機器
5.MB2への応用(牛窪敏博)
1−近心頬側根におけるMB2の特徴
2−CBCTが用いられるまでのMB2に関する研究では
3−CBCT登場後のMB2に関する研究
4−臨床でのCBCTを用いたMB2探索
症例1 症例2 症例3
私の使用機器
6.複雑な根管形態を有する歯内歯の非外科的歯内療法(金子友厚,興地隆史)
1−歯内歯
2−歯内歯の分類
3−歯内歯に対する歯内療法
4−症例
5−おわりに
私の使用機器
7.内部吸収への応用(田中利典)
1−歯根吸収の分類と内部吸収(内部炎症性歯根吸収)
2−内部吸収の診査診断
3−治療法および治療における留意点
症例1 症例2
4−まとめ
私の使用機器
8.歯頸部外部吸収への応用(吉岡俊彦)
1−はじめに
2−外部吸収の診断
3−歯頸部外部吸収の原因
4−吸収窩の組織像
5−掻爬および充填材料の選択について
6−外部吸収の治療
症例1 症例2 症例3
7−おわりに
私の使用機器
9.Internal Apicoectomy─外科と非外科,二つの要素を併せ持つ新たな術式(長尾大輔)
1−Internal Apicoectomyとは?
2−IAの予後をCBCTで検証
3−三次元的な事前情報を活用したIA
4−すばらしい時代に歯科医師として従事
私の使用機器−当院のマイクロスコープとCBCT
私の使用機器−IAのリコメンドマテリアル
3編 CBCTとマイクロスコープを用いた外科的歯内療法
1.歯根端切除術への応用(三橋 晃)
症例1 症例2 症例3
私の使用機器
2.3Dモデルとピエゾサージェリーを活用した歯根端切除術(加藤広之)
1−はじめに
2−3DモデルによるCBCTの情報活用
3−ピエゾサージェリーによる歯根端切除術
4−おわりに
私の使用機器
3.CTガイデッドエンドドンティックマイクロサージェリー(佐藤暢也)
1−はじめに
2−GEMSの概説
3−症例によるGEMSの解説
4−GEMSの有用性を考える
5−まとめ
私の使用機器
4編 CBCTとマイクロスコープによる外傷歯への対応
1.CBCTとマイクロスコープを用いた外傷歯の治療(月星太介)
1−はじめに
2−外傷治療におけるマイクルスコープ利用の利点
3−歯根破折,脱臼性外傷におけるCBCTの有用性
4−外傷歯の分類(種類)
5−症例検討
症例1:脱落(即時型再植)/亜脱臼/歯冠破折
症例2:根完成歯の脱落(遅延型再植)
症例3:側方性脱臼
症例4:脱臼を伴う歯冠破折/生活歯の歯冠破折
症例5:歯冠破折を伴う歯根破折
症例6:外傷歯に生じた遅延型内部吸収
症例7:乳歯外傷による後続永久歯の形成異常
6−おわりに
私の使用機器
索引
はじめに
歯内療法レボリューション
歯内療法の羅針盤
CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法
1編 CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法に向けて
1.CBCTとマイクロスコープを用いた歯内療法(北村和夫)
1−マイクロスコープの利点
2−マイクロスコープの問題点
3−CBCT検査から得られる情報
4−CBCT検査の問題点
5−マイクロスコープとCBCTの併用がもたらす効果
6−非外科的歯内療法への応用例
7−外科的歯内療法への応用例
8−まとめ
2.CBCT選択のポイント(新井嘉則)
1−専用機から複合機へ
2−複合機の問題点
3−次世代複合機
4−画質評価
5−High resolution
6−多彩な撮影
7−選択のポイント
3.マイクロスコープの選び方(辻本真規,辻本恭久)
1−光源の違いについて
2−設置様式
3−操作性
4−記録様式
5−価格
6−まとめ
4.CBCTとマイクロスコープを用いたプレゼンテーション(三橋 純)
1−プレゼンテーションの必要性
2−マイクロスコープのプレゼンテーション
3−CBCTのプレゼンテーション
4−CBCTとマイクロスコープのプレゼンテーションの要点
2編 CBCTとマイクロスコープを用いた非外科的歯内療法
1.破折ファイル除去とその後の根管探索への応用(寺内吉継)
1−CBCTの歯内療法応用
2−なぜ破折器具除去にCBCTが必要か
3−破折器具除去に使用する器材
4−破折器具除去のテクニック
5−破折器具の除去法
6−破折器具除去後の根管形成
症例1 症例2
2.MTAを用いた根管充填(吉岡隆知)
1−はじめに
2−国内で発売されているMTA製品
3−充填方法
症例
4−MTA根管充填の不適応症例
5−MTA根管充填の予後
6−アピカルプラグと根尖部の肉芽について
7−まとめ
3.MTAを用いた穿孔部封鎖(澤田則宏)
1−尖孔部封鎖の原則
2−尖孔部封鎖の成功率
3−MTA直下の骨再生
症例:溢出したMTAに対する良好な骨再生症例
4−尖孔部封鎖処置とCBCT
5−Internal Matrix Technique
6−MTAによる尖孔部封鎖症例
7−MTAの問題点と各種MTA
4.樋状根への応用(木ノ本喜史)
1−はじめに
2−樋状根の根管解剖
3−樋状根の根管形成,根管充填について
4−症例
症例1:50歳女性,瘻孔を有する7
症例2:28歳女性,樋状根の7
5−まとめ
私の使用機器
5.MB2への応用(牛窪敏博)
1−近心頬側根におけるMB2の特徴
2−CBCTが用いられるまでのMB2に関する研究では
3−CBCT登場後のMB2に関する研究
4−臨床でのCBCTを用いたMB2探索
症例1 症例2 症例3
私の使用機器
6.複雑な根管形態を有する歯内歯の非外科的歯内療法(金子友厚,興地隆史)
1−歯内歯
2−歯内歯の分類
3−歯内歯に対する歯内療法
4−症例
5−おわりに
私の使用機器
7.内部吸収への応用(田中利典)
1−歯根吸収の分類と内部吸収(内部炎症性歯根吸収)
2−内部吸収の診査診断
3−治療法および治療における留意点
症例1 症例2
4−まとめ
私の使用機器
8.歯頸部外部吸収への応用(吉岡俊彦)
1−はじめに
2−外部吸収の診断
3−歯頸部外部吸収の原因
4−吸収窩の組織像
5−掻爬および充填材料の選択について
6−外部吸収の治療
症例1 症例2 症例3
7−おわりに
私の使用機器
9.Internal Apicoectomy─外科と非外科,二つの要素を併せ持つ新たな術式(長尾大輔)
1−Internal Apicoectomyとは?
2−IAの予後をCBCTで検証
3−三次元的な事前情報を活用したIA
4−すばらしい時代に歯科医師として従事
私の使用機器−当院のマイクロスコープとCBCT
私の使用機器−IAのリコメンドマテリアル
3編 CBCTとマイクロスコープを用いた外科的歯内療法
1.歯根端切除術への応用(三橋 晃)
症例1 症例2 症例3
私の使用機器
2.3Dモデルとピエゾサージェリーを活用した歯根端切除術(加藤広之)
1−はじめに
2−3DモデルによるCBCTの情報活用
3−ピエゾサージェリーによる歯根端切除術
4−おわりに
私の使用機器
3.CTガイデッドエンドドンティックマイクロサージェリー(佐藤暢也)
1−はじめに
2−GEMSの概説
3−症例によるGEMSの解説
4−GEMSの有用性を考える
5−まとめ
私の使用機器
4編 CBCTとマイクロスコープによる外傷歯への対応
1.CBCTとマイクロスコープを用いた外傷歯の治療(月星太介)
1−はじめに
2−外傷治療におけるマイクルスコープ利用の利点
3−歯根破折,脱臼性外傷におけるCBCTの有用性
4−外傷歯の分類(種類)
5−症例検討
症例1:脱落(即時型再植)/亜脱臼/歯冠破折
症例2:根完成歯の脱落(遅延型再植)
症例3:側方性脱臼
症例4:脱臼を伴う歯冠破折/生活歯の歯冠破折
症例5:歯冠破折を伴う歯根破折
症例6:外傷歯に生じた遅延型内部吸収
症例7:乳歯外傷による後続永久歯の形成異常
6−おわりに
私の使用機器
索引

















