やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版の序
 超高齢社会を迎え,口腔の健康と全身の健康との関わりが明らかにされるなか,口腔衛生に対する関心がますます深まっています.いわゆる8020達成者は2人に1人以上となり(平成28年歯科疾患実態調査),それに伴いTooth Wearに代表される「過労歯症候群」が飛躍的に増加しています.なかでも,酸性飲食物の頻繁摂取やストレス社会など昨今の時代の趨勢に伴い,象牙質知覚過敏症を訴える患者さんは増加する一方です.
 このように象牙質知覚過敏症は現代の生活習慣に非常に密着しており,知覚過敏抑制材を単に塗布するだけの処置では完治しない(再発する)場合も少なくありません.したがって,薬剤を最大限活かすように使用するのはもちろんのこと,発症した原因の除去や再発防止などのためのプロケアならびにホームケアを含めた三位一体の治療が必要です.
 このような状況下で,『象牙質知覚過敏症 第2版 目からウロコのパーフェクト治療ガイド』を刊行以降(2013年6月),各社から発売された製品を新たに収載し,さらに第2版では付録として添付していました「知覚過敏抑制治療,これだけは外せない!5か条!」を加筆修正し,生活習慣病としてとらえた象牙質知覚過敏症の治療法として新たに掲載し,ここに第3版を上梓するに至りました.本書における主な改訂点は以下のとおりです.
 1)リニューアルの1製品を含め7製品を新たに追加し(発売中止の1製品は外しました),現在容易に入手可能な知覚過敏抑制材をほぼすべて(全28製品)収載しました(第4章).
 2)生活習慣病としてとらえた知覚過敏症の抑制治療として,知覚過敏抑制材の塗布処置はもちろんのこと,原因除去や再発防止のためのプロケアならびにホームケアの三位一体のチーム医療についてまとめました(第6章).
 3)全章にわたって再度見直し,さらに理解しやすいよう修正を加えました.
 本書が,必ずや先生ならびに歯科衛生士の皆様のチーム医療に明日から役立つ,チェアサイドの治療ガイドとなるよう心より願っております.
 2017年9月
 編者 冨士谷盛興・千田 彰



改訂の序
 歯を含めた健康寿命の延伸や健康飲料ブームなどによる酸蝕症の増加,あるいはストレス社会など昨今の時代の趨勢に伴って,Tooth Wear(歯の損耗症)と称される生活習慣に密着した歯の硬組織疾患が話題を呼んでいます.なかでも,象牙質知覚過敏症を訴える患者さんが急増しており,その対応には頭を悩ませることも多く,さらにその治療剤(材)も「多社」多様で,どう使い分けていいのか混乱しているのではないでしょうか?
 その悩みにお応えするため,チェアサイドでいつでも簡易に参照できる治療ガイドブック『象牙質知覚過敏症 目からウロコのパーフェクト治療ガイド』を2011年9月に刊行しました.当時容易に入手できる代表的な治療剤(材)を16種ほど収載しましたが,その後各社から知覚過敏抑制材がかなり早いペースで続々と発売され,現在市場に出回っております.
 このような状況下で,それらの抑制材の使い分けと効果的使用順を解説して欲しいという要望が高まり,今般改訂版を上梓するに至りました.本書において改訂した点は,以下のとおりです.
 1)現在容易に入手可能な知覚過敏抑制材をほぼすべて収載し(リニューアルの2製品を含め10製品を新規追加しました),その特徴や作用機序はもちろんのこと,その材料の効果を最大限に活かすための使用上の注意点を,1ページ1製品となるようまとめました(第4章).
 2)収載した全23種の知覚過敏抑制材の作用機序や使用順が一目で理解でき,チェアサイドで簡易に使えるよう見開きで表にしました(第4章扉).
 3)知覚過敏抑制材を使用する上で「理解しておきたい3つの治療戦略」をほぼ書き直し,小見出しを多くしてより臨床的に読み易くしました(第1章).
 4)全章にわたって見直し,さらに理解しやすいよう修正を加えました.
 本書が,必ずや先生方の明日からの臨床にますます役立つ,チェアサイドの治療ガイドになるよう心から信じております.
 2013年5月
 編者 冨士谷盛興・千田 彰



刊行にあたって
 超高齢社会の到来のなか,オーラルヘルスプロモーションの浸透による口腔衛生状態の改善,あるいは歯科材料や治療技術の発展などにより,歯の寿命が格段に延びてきました.このように天然歯の保存が進む一方で,Tooth Wear(歯の加齢現象)や根面齲蝕が多くみられるようになってきており,象牙質知覚過敏症を訴える患者さんが急増しています.これは,咬耗や摩耗,あるいは歯肉の退縮による象牙質露出,また,昨今の健康ブームによる酸蝕症やストレス,咬合などが深く関与しています.
 象牙質知覚過敏症への対処には,まず患者教育と生活習慣改善が第一でありますが,症状を訴える患者さんに対し対症療法的に処置しなければならないのも現状です.
 最近,知覚過敏抑制を謳ったさまざまな材料が市場に溢れています.ところが,実際の患者さんを目の前にしたとき,どの材料が最も効果的なのか選択の手がかりとなる情報が少ないのが実情と思います.しかし,知覚過敏の多くは,各材料の作用機序等を理解し適切に使い分けることで,その症状改善がすばやく確実にできるのです.そして,それによって患者さんが不快症状から解放されるのみならず,信頼を獲得することで,患者数増加にもつながると思います.
 本書では,最新の基礎的・臨床的知識を基盤にして,象牙質知覚過敏症の病態,診断,ならびに治療法の基本戦略を解説するとともに,現在臨床で広く用いられている材料の作用機序や使い分け,あるいはそれらを駆使した対応法などについて症状別に情報を提供しています.
 また,第5章では,さらに読者の皆様のより深い理解のために,約10年前になりますが,歯界展望に掲載された象牙質知覚過敏症の生理学,形態学や機序などを中心にまとめた総説論文を再度紹介させていただきました.
 本書が,必ずや先生方の明日からの臨床に役立つ,チェアサイドの治療ガイドとなるよう心より願っております.
 2011年8月
 編者 冨士谷盛興・千田 彰
第1章 理解しておきたい3つの治療戦略(冨士谷盛興)
第2章 歯がしみる─こんな場合にはどうする?
 1.咬み合わせの部分がしみる(高見澤俊樹・宮崎真至)
 2.歯を削ってからしみるようになった(冨士谷盛興・千田 彰)
 3.最終の修復処置後にしみるようになった(田上順次)
 4.ホワイトニング後にしみるようになった(大森かをる)
 5.抜髄したくなるくらい悩ましい象牙質知覚過敏症への対処─究極の知覚過敏対策(冨士谷盛興・千田 彰)
第3章 象牙質知覚過敏症の治療に使えるレーザー(篠木 毅)
第4章 この患者さんにはこの材料─作用を知って正しく使おう
 1.シュミテクトシリーズ(冨士谷盛興)
 2.システマハグキプラスS(冨士谷盛興)
 3.ウルトライーズ(保坂啓一)
 4.システマセンシティブ ソフトペースト(中嶋省志)
 5.G・U・M Pro'sデンタルジェル センシティブ(高山真一)
 6.メルサージュヒスケア(寺田林太郎)
 7.Check-Up rootcare(冨士谷盛興)
 8.グルーマ ディセンシタイザー(宇野 滋)
 9.デセンシー(村岡宏祐・中島啓介)
 10.サホライド液歯科用38%(福島正義)
 11.Fバニッシュ歯科用5%(荒木久生)
 12.スーパーシール5秒(内山 茂)
 13.ティースメイト ディセンシタイザー(誉田雄司)
 14.ティースメイト APペースト(加藤正治)
 15.ナノシール(韓 臨麟・興地隆史)
 16.PRGバリアコート(寺田林太郎)
 17.G-ガード(吉山昌宏)
 18.ハイブリッドコートII(山本 寛)
 19.トクヤマ シールドフォース プラス(高橋英登)
 20.スコッチボンド ユニバーサル アドヒーシブ(冨士谷盛興)
 21.G-プレミオボンド(吉川一志)
 22.クリアフィルユニバーサルボンドQuick(小城賢一)
 23.フジフィルLCフロー(齋藤季夫)
 24.クリンプロXTバーニッシュ(冨士谷盛興・千田 彰)
 25.フジVII(日野浦 光)
 26.MSコートONE(山本 寛)
 27.MSコートF(鈴木司郎)
 28.MSコートHysブロックジェル(冨士谷盛興)
第5章 象牙質知覚過敏─その生理学,形態学,機序と治療法(Charles F.Cox・千田 彰ほか)
第6章 チーム医療としての知覚過敏抑制治療─生活習慣病としてとらえよう(冨士谷盛興)

 コラム1 象牙質知覚過敏症はなぜ起こる?(寺中敏夫・向井義晴)
 コラム2 歯がしみるのはすべて象牙質知覚過敏症か?(池田英治)

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