やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 近年,一般開業医におけるマイクロスコープの普及率は急速に高まっており,その応用は歯内療法を中心に,保存修復や歯冠補綴,そして歯周療法にまで広がっています.
 単に拡大して診るということが,いかに多くの重要な情報を私たちに与えてくれるかについては,すでに説明する必要はないでしょう.確かなことは,拡大することで不確実な情報が確実な情報に変化するということであり,それによって私たちの判断も確実なものへと変化します.さらに,私たちの手の動きも不確実な動きから確信をもった動きへと変化し,その結果,治療の質もより確実性の高いものへと変化するのです.その「変化」が,思いのほか劇的であることを,多くのマイクロスコープユーザーは気づいています.
 歯周療法へのマイクロスコープの応用については,1990年代後半から審美領域における歯周外科の有効性についていくつかの報告がなされていますが,本書のテーマはそうした専門的な内容ではありません.いわゆる歯周基本治療のような,一般開業医における基本処置への応用です.現在はまだそうした処置へのマイクロスコープの有効性は数多く示されてはおらず,つまり,現時点では歯周処置にマイクロスコープが不可欠というわけではありません.あくまでも,歯周治療は専門的知識と高い技術によって,従来の治療により成功へと導くことが可能です.
 しかし,一般に日々行われている歯周基本治療は,本当にイメージ通りにできているのでしょうか? 根面へのインスツルメンテーションによって,どの程度歯石やプラークが除去されているのでしょうか? 本書はそうした素朴な疑問から企画されたものであり,一般開業医に普及するマイクロスコープを,より確実なインスツルメンテーションのために,もう少し広い領域で有効活用してみませんか,という提案なのです.
 本書ではまず,インスツルメンテーションについてその歴史的背景から現在までの研究バックグラウンドと,現在認識すべき科学的根拠を整理して解説し,次にそれを基に臨床におけるインスツルメンテーションへのマイクロスコープの具体的応用方法と臨床症例を提示,さらに一歩踏み込んだ臨床対応として,歯周外科におけるマイクロスコープの応用についても解説しました.
 本書が一般開業医における歯周療法の質向上に,少しでも寄与することができれば,著者らにとってそれ以上の喜びはありません. 2017年5月
 阿部 修
Chapter 1 メインテナンスにおけるインスツルメンテーション
 (大野純一)
Chapter 2 インスツルメンテーションとマイクロスコープ
 (阿部 修)
Chapter 3 使用器材
 (阿部 修)
Chapter 4 マイクロスコープを応用したインスツルメンテーションテクニック
 (阿部 修)
Chapter 5 歯周病専門医としてマイクロスコープをどのように捉え活用するか
 (景山正登)
Chapter 6 歯周外科処置におけるウルトラソニックインスツルメンテーション
 (景山正登)
Chapter 7 ケースプレゼンテーション
 (景山正登)