序文
欠損補綴をテーマにするときに,どうしてもブリッジ,インプラント,義歯などの補綴方法ごとの切り口となってしまう.しかし今回の書籍の出版に当たり,「遊離端欠損」という観点から臨床をみる機会を得た.そこからみえてくるものは,日常臨床でよく目にする遊離端欠損ではあるが,その後の補綴治療如何により予後に大きく影響する重要な要素となることである.たとえ少数歯の遊離端欠損であっても,その対応法を誤ると欠損が拡大し,すれ違い咬合と呼ばれる難症例に移行する可能性を秘めている.
いい換えれば,遊離端欠損を早い時期に的確に診断し適切に補綴治療を行うことで,欠損拡大のスピードを緩めることができる.だからこそ本書で提案する戦略的な思考回路で遊離端欠損を攻略する必要が出てくる.
さらに気づくことは,臨床において「このような遊離端欠損の形態ならばこの補綴」と画一的には決められないことである.補綴の治療方針の決定には,口腔内の視診やエックス線画像診断のような,「目でみえる」情報だけでなく,患者の履歴や習慣,経済的なことなど,さまざまな「目にみえない」情報を勘案して考える必要がある.そして遊離端欠損に対する補綴方法は多種多様であり,広い範囲の補綴学的知識とテクニックを術者に要求するということである.本書にあげた臨床例をみても,パーシャルデンチャー,インプラント,IARPD,オーバーデンチャー,歯牙移植,SDAなどと,分野の垣根を越えた補綴方法が存在する.
近年では歯科の分野でも専門性の細分化が広まっており,患者もそれぞれの分野のエキスパートによる治療を受けることができる.そのようなことはよいことであるが,どの補綴がその患者に合っているのかを判断する総合医がいなければ,専門医が台無しになってしまう.広い視点でバランスのよい診断ができ,多くの患者にメリットを享受できるようにすることが本書の目的である.
本書を通じ臨床のなかで遊離端欠損に注目し戦略的な治療方法を考えることで,欠損の拡大を未然に防ぐ一助になっていただければ幸いである.
2017 年2 月吉日
執筆者代表 亀田行雄
欠損補綴をテーマにするときに,どうしてもブリッジ,インプラント,義歯などの補綴方法ごとの切り口となってしまう.しかし今回の書籍の出版に当たり,「遊離端欠損」という観点から臨床をみる機会を得た.そこからみえてくるものは,日常臨床でよく目にする遊離端欠損ではあるが,その後の補綴治療如何により予後に大きく影響する重要な要素となることである.たとえ少数歯の遊離端欠損であっても,その対応法を誤ると欠損が拡大し,すれ違い咬合と呼ばれる難症例に移行する可能性を秘めている.
いい換えれば,遊離端欠損を早い時期に的確に診断し適切に補綴治療を行うことで,欠損拡大のスピードを緩めることができる.だからこそ本書で提案する戦略的な思考回路で遊離端欠損を攻略する必要が出てくる.
さらに気づくことは,臨床において「このような遊離端欠損の形態ならばこの補綴」と画一的には決められないことである.補綴の治療方針の決定には,口腔内の視診やエックス線画像診断のような,「目でみえる」情報だけでなく,患者の履歴や習慣,経済的なことなど,さまざまな「目にみえない」情報を勘案して考える必要がある.そして遊離端欠損に対する補綴方法は多種多様であり,広い範囲の補綴学的知識とテクニックを術者に要求するということである.本書にあげた臨床例をみても,パーシャルデンチャー,インプラント,IARPD,オーバーデンチャー,歯牙移植,SDAなどと,分野の垣根を越えた補綴方法が存在する.
近年では歯科の分野でも専門性の細分化が広まっており,患者もそれぞれの分野のエキスパートによる治療を受けることができる.そのようなことはよいことであるが,どの補綴がその患者に合っているのかを判断する総合医がいなければ,専門医が台無しになってしまう.広い視点でバランスのよい診断ができ,多くの患者にメリットを享受できるようにすることが本書の目的である.
本書を通じ臨床のなかで遊離端欠損に注目し戦略的な治療方法を考えることで,欠損の拡大を未然に防ぐ一助になっていただければ幸いである.
2017 年2 月吉日
執筆者代表 亀田行雄
序文
臨床編 治療オプションの比較と選択のための戦略的考察
(担当:亀田行雄)
1 なぜ遊離端欠損か
1−遊離端欠損とは
2−遊離端欠損に注目する理由
3−遊離端欠損の分類法
1.Kennedyの分類
2.Eichnerの分類
3.宮地の咬合三角
2 遊離端欠損をパーシャルデンチャーでどう攻める
1−はじめに
2−支台歯の診査診断
3−パーシャルデンチャーの大原則
4−クラスプデンチャーの特徴
5−遊離端欠損に対するパーシャルデンチャーに求められる10 のポイント
Point 1 遊離端義歯は近心レスト
Point 2 できるだけレストで噛ませる(咬合接触に応じて)
Point 3 適正にレストや維持腕を位置させるためのブレーシング(把持)を設置する
Point 4 フルクラムラインを考慮した必要最小限の維持腕とする
Point 5 シンメトリー&シンプルな設計
Point 6 強固なフレーム:リジッドサポート
Point 7 適合を極める(オルタードキャスト法)
Point 8 ハイジーン優先の設計
Point 9 印象:役割に応じた床縁形態
Point 10 咬合:臼歯部咬合支持と奥噛み習慣
症例1 両側性の少数歯欠損への対応
症例2 片側性の少数歯欠損への対応
症例3 片側性の多数歯欠損への対応
症例4 両側性の多数歯欠損への対応
症例5 左右すれ違い咬合への対応
症例6 審美性ではアタッチメント義歯―両側性の多数歯欠損への対応
症例7 ノンメタルクラスプ義歯
3 遊離端欠損をインプラントでどう攻める
固定式インプラント補綴の優位性
1.片側性の少数歯欠損への対応
症例1 7 6 少数歯遊離端欠損に対しインプラントで対応した例
症例2 6 7 少数歯欠損に対しインプラントで対応した例
2.両側性の少数歯欠損への対応
3.片側性の多数歯欠損への対応
* インプラントと天然歯の固定について
4 遊離端欠損をIARPDでどう攻める
1−片側性の多数歯遊離端欠損(すれ違い咬合直前症例)への対応
症例1 すれ違い咬合直前の状態に対しIARPDで対応した例
* IARPDにてインプラントを遊離端欠損の近心に埋入するか,遠心に埋入するか
症例2 すれ違い直前の下顎前方遊離端欠損への対応
2−すれ違い咬合となった多数歯遊離端欠損への対応
症例1 前後すれ違い咬合への対応
症例2 左右すれ違い咬合への対応
3−IARPDの文献的考察
症例 コンビネーションシンドローム様欠損形態にIARPDにて対応した例
5 遊離端欠損をオーバーデンチャーでどう攻める
症例1 前後すれ違い咬合への対応
* オーバーデンチャーにするとき,上顎の歯を切断するか下顎の歯を切断するか
症例2 左右すれ違い咬合への対応
参考症例 左右すれ違い咬合をすべて抜歯し,IODとした症例
6 遊離端欠損を自家歯牙移植でどう攻める
症例1 智歯の利用―少数歯欠損への対応
症例2 転移歯を利用した歯牙移植症例
7 遊離端欠損を補綴しないという選択肢―SDA(短縮歯列)
症例1 片側性の少数歯欠損への対応
症例2 エクストラSDAへの対応
基礎編 それは遊離端欠損なのか,ショートデンタルアーチなのか エビデンスから紐解く遊離端欠損の捉え方
(担当:諸隈正和)
1 遊離端欠損をSDAとして捉える
1−はじめに
2−SDAの特徴を把握する
3−SDAを適用するときの注意点
4−SDAをどう捉えるか〜 SDAが十分に機能するための要件とは?〜
5−SDAが許容できる口腔機能の要件
1.臼歯部に5 以上のオクルーザルユニットがあること
2.残存歯数が20 本以上あること
3.過大な咬合力やブラキシズムなど力の影響が少ないこと
4.顎関節に問題がないこと
2 遊離端欠損を「欠損」として捉え補綴治療を行う
1−学術的な処置の優先順位
2−遊離端欠損にどのような補綴装置を適用するべきか
1.解剖学的要件・患者に合った適切な補綴選択
2.咀嚼
3.咬合
4.快適性および患者満足度
5.リコールとメインテナンス
6.ハイジーン(衛生面)
7.顎関節症(TMD)
8.生存率,成功率
文献
索引
臨床編 治療オプションの比較と選択のための戦略的考察
(担当:亀田行雄)
1 なぜ遊離端欠損か
1−遊離端欠損とは
2−遊離端欠損に注目する理由
3−遊離端欠損の分類法
1.Kennedyの分類
2.Eichnerの分類
3.宮地の咬合三角
2 遊離端欠損をパーシャルデンチャーでどう攻める
1−はじめに
2−支台歯の診査診断
3−パーシャルデンチャーの大原則
4−クラスプデンチャーの特徴
5−遊離端欠損に対するパーシャルデンチャーに求められる10 のポイント
Point 1 遊離端義歯は近心レスト
Point 2 できるだけレストで噛ませる(咬合接触に応じて)
Point 3 適正にレストや維持腕を位置させるためのブレーシング(把持)を設置する
Point 4 フルクラムラインを考慮した必要最小限の維持腕とする
Point 5 シンメトリー&シンプルな設計
Point 6 強固なフレーム:リジッドサポート
Point 7 適合を極める(オルタードキャスト法)
Point 8 ハイジーン優先の設計
Point 9 印象:役割に応じた床縁形態
Point 10 咬合:臼歯部咬合支持と奥噛み習慣
症例1 両側性の少数歯欠損への対応
症例2 片側性の少数歯欠損への対応
症例3 片側性の多数歯欠損への対応
症例4 両側性の多数歯欠損への対応
症例5 左右すれ違い咬合への対応
症例6 審美性ではアタッチメント義歯―両側性の多数歯欠損への対応
症例7 ノンメタルクラスプ義歯
3 遊離端欠損をインプラントでどう攻める
固定式インプラント補綴の優位性
1.片側性の少数歯欠損への対応
症例1 7 6 少数歯遊離端欠損に対しインプラントで対応した例
症例2 6 7 少数歯欠損に対しインプラントで対応した例
2.両側性の少数歯欠損への対応
3.片側性の多数歯欠損への対応
* インプラントと天然歯の固定について
4 遊離端欠損をIARPDでどう攻める
1−片側性の多数歯遊離端欠損(すれ違い咬合直前症例)への対応
症例1 すれ違い咬合直前の状態に対しIARPDで対応した例
* IARPDにてインプラントを遊離端欠損の近心に埋入するか,遠心に埋入するか
症例2 すれ違い直前の下顎前方遊離端欠損への対応
2−すれ違い咬合となった多数歯遊離端欠損への対応
症例1 前後すれ違い咬合への対応
症例2 左右すれ違い咬合への対応
3−IARPDの文献的考察
症例 コンビネーションシンドローム様欠損形態にIARPDにて対応した例
5 遊離端欠損をオーバーデンチャーでどう攻める
症例1 前後すれ違い咬合への対応
* オーバーデンチャーにするとき,上顎の歯を切断するか下顎の歯を切断するか
症例2 左右すれ違い咬合への対応
参考症例 左右すれ違い咬合をすべて抜歯し,IODとした症例
6 遊離端欠損を自家歯牙移植でどう攻める
症例1 智歯の利用―少数歯欠損への対応
症例2 転移歯を利用した歯牙移植症例
7 遊離端欠損を補綴しないという選択肢―SDA(短縮歯列)
症例1 片側性の少数歯欠損への対応
症例2 エクストラSDAへの対応
基礎編 それは遊離端欠損なのか,ショートデンタルアーチなのか エビデンスから紐解く遊離端欠損の捉え方
(担当:諸隈正和)
1 遊離端欠損をSDAとして捉える
1−はじめに
2−SDAの特徴を把握する
3−SDAを適用するときの注意点
4−SDAをどう捉えるか〜 SDAが十分に機能するための要件とは?〜
5−SDAが許容できる口腔機能の要件
1.臼歯部に5 以上のオクルーザルユニットがあること
2.残存歯数が20 本以上あること
3.過大な咬合力やブラキシズムなど力の影響が少ないこと
4.顎関節に問題がないこと
2 遊離端欠損を「欠損」として捉え補綴治療を行う
1−学術的な処置の優先順位
2−遊離端欠損にどのような補綴装置を適用するべきか
1.解剖学的要件・患者に合った適切な補綴選択
2.咀嚼
3.咬合
4.快適性および患者満足度
5.リコールとメインテナンス
6.ハイジーン(衛生面)
7.顎関節症(TMD)
8.生存率,成功率
文献
索引

















