やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の発刊にあたって
 私たちは2008年に『ブラキシズム-歯ぎしり・咬みしめは危険!!』を執筆し,多くの方に患者さんへの説明用として活用していただいたり,待合室に置いていただいたりしました.その後も研究を重ねるなかで,新たにわかってきたことや知っておいていただきたいことなどをもう一度整理したいと思い,改訂版として発刊することにいたしました.
 最近は歯を残す歯科医療の進歩や,健康への意識の高まりから,高齢になっても多くの歯が残っている方が増えてきています.その一方で,いまでも歯ぎしりや咬みしめが原因で,歯が欠けたり折れたりして歯を失う方や,義歯が壊れたり詰めものや被せものが外れた方がひっきりなしに歯科医院を訪れています.その多くが破壊的なダメージを受けてしまっているため,治療を受けていただくことになるのですが,残念なことに何年かすると,また同じ原因でトラブルを起こすことが非常に多いようです.
 問題はブラキシズムが無意識のうちに行われ,そのことに患者さんが気づいていないことです.残念ながら根本的な原因を取り除くことはかなり難しいのですが,まずはブラキシズムを意識することが解決の糸口になることを私たちは多く経験しています.
 本書が今後も多くの方々のブラキシズムの気づきに役立てば幸甚です.
 2016年春
 牛島 隆
 栃原 秀紀
 永田 省藏
 山口 英司

はじめに
 “歯ぎしり”については皆さんよく知っていることと思いますが,“咬かみしめ”についてはいかがですか?“歯ぎしり”や“咬みしめ”で歯を失うことがあるということをご存じでしょうか?
 昔から「歯を食いしばる」とか「歯ぎしりをする」という言葉は,「我慢をする」とか「いらいらする」というような意味で,日常的に慣用句として使われてきました.
 歯には食べる,発音するという役割のほかにも,歯ぎしりをすることで精神的なストレスを発散する役目もあると言われています.けれども,過度の“歯ぎしり”や“咬みしめ”は,「ギリギリ」音が鳴って周囲の人の迷惑になるというだけではなく,口の中や周囲の組織に大きな影響を及ぼし,歯を失う原因にもなりかねないのですが,そのことはまだあまり知られていません.
 “歯ぎしり”や“咬みしめ”のことを総称して“ブラキシズム”というのですが,私たちはこの“ブラキシズム”について,歯科医院に来院される患者さんを通じて,その実態や影響を研究しています.まだすべてを解明できたわけではありませんが,研究からわかってきたことを,この本で,わかりやすく解説してみようと考えました.
 ブラキシズムのことをもっと知っていただくことで,歯を守り,いつまでもご自分の歯でおいしく食事をし,明るい笑顔で,楽しい人生を送っていただきたいというのが,私たちの「ねらい」であり,「願い」なのです.
 2008年夏
 牛島 隆
 栃原 秀紀
 永田 省藏
 山口 英司
 第2版の発刊にあたって
 はじめに
(1)“ブラキシズム”を知っていますか?
(2)ブラキシズムはどうして問題なの?
(3)ブラキシズムは発見しにくい!
(4)チェックしてみましょう
 あなたはどのタイプ?
(5)ブラキシズム・タイプ別特徴
 歯ぎしり型(グラインディングタイプ)
 咬みしめ型(クレンチングタイプ)
 きしませ型(ナッシングタイプ)
 混合型(コンプレックスタイプ)
(6)なぜ発見することが大切なのか?
(7)歯科医院で行うブラキシズムへの対応
(8)家庭で行うブラキシズムへの対応
(9)睡眠時無呼吸症候群(SAS)
(10)日中の咬みしめ(歯牙接触癖-TCH)
(11)子どもの歯ぎしり・悪習癖
(12)ブラキシズム以外の悪習癖
(13)ブラキシズムの研究から
 あとがき

コラム
 ・骨の隆起:これって歯肉の腫瘍?
 ・防げるむし歯と歯周病
 ・歯がなくなってもなくならないブラキシズム