やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 『歯科医院必携 くすりの完全ガイド』を編集してから,10年が経ちました.
 この間,高齢社会の進展,薬剤情報のめまぐるしい改新,一般多処方促進等の一環として整備された処方箋記載方法変更,診療報酬の突合点検等,さまざまな時代の変化,臨床形態の変容があったといってもよいでしょう.そこでこの度,上記書籍の趣旨を引き継ぐ後継本を新たにまとめることにしました.
 投薬が安全に行われなくてはならないことは,いうまでもありません.医療の高度化が進んでいったとしても,歯科医師ら医療関係者の心構まえ,基本姿勢は変わりません.本書では,おもに診療所での薬剤処方を前提に,投薬を安全に行い,患者に良質な医療を提供するという目的を達成するためにこれだけは知っておいてほしい,という情報をまとめています.
 薬剤はどのように飲んでもらうのか,自院で処方する薬剤にはどのような特徴があるのか,副作用や相互作用とはどんなものなのか,こうした情報を一通り解説し,また,全身疾患を煩う患者が来院したときの注意事項,歯科で薬剤を処方するときの問題点,漢方の考え方と処方の実際などを,「くすりの完全ガイド」の方向性を踏まえてまとめました.
 前述のとおり,医療を取り巻く環境は変化していますが,そうしたいくつかの潮流に横串を通すキーワードをあげるとすれば,「より高い水準で安心・安全を追求していく」ということです.これはもちろん,薬剤処方一つをとっても例外ではありません.このような社会のなかで,臨床医は処方薬剤や基礎疾患について知識を深め,患者情報を把握し,ときには他の医療機関と連携をはかりながら,医療の質の確保に努めていかなくてはならないのです.本書が,そのようにして医療の底上げに日々専心されるみなさまの日常診療の一助となり,そしてひいては患者の幸せにつながれば幸いです.
 最後に,本書執筆にあたってご協力いただきました先生方と,医歯薬出版株式会社の皆様に,この場をお借りして,厚く御礼申し上げます.
 平成26年9月
 編著者代表 五十嵐治義
I編 薬剤服用時の注意事項
 (五十嵐 治義)
 ・薬剤の服用時間と服用時の注意
  (1)服用時間の解説 (2)服薬時の一般的注意事項 (3)薬剤は何で飲む?
 ・飲食物,嗜好品と薬剤の関係は?
  (1)喫煙の影響 (2)アルコールの影響 (3)牛乳の影響
 ・副作用と相互作用
  (1)副作用について (2)相互作用
II編 歯科処方薬剤
 ・抗菌薬(吉田和正,吉田和市)
  (1)抗菌薬とは (2)抗菌薬の選択と使い方について (3)歯科適応のある抗菌薬
 ・解熱鎮痛消炎剤(吉田和正,吉田和市)
  (1)解熱鎮痛消炎剤とは (2)解熱鎮痛消炎剤の分類
  (3)解熱鎮痛消炎剤の使い方(使用時の基本的注意事項)
  (4)おもな解熱鎮痛消炎剤の特徴
 ・その他の代表的な歯科処方薬剤(吉田和正,吉田和市)
  (1)外用薬とは (2)口腔用軟膏剤 (3)おもな洗口剤
  (4)その他の口腔用約
 ・歯科で処方する保険適用の漢方薬(今泉うの,吉田和市)
  (1)歯科適応の漢方薬の種類と適用
III編 麻酔薬等
 (今泉うの,吉田和市)
 ・局所麻酔薬の選択方法
  (1)留意せねばならない全身的作用 (2)局所麻酔薬に添加されている血管収縮薬
  (3)リドカイン塩酸塩製剤 (4)アドレナリンの配合のない歯科用局所麻酔薬
 ・精神鎮静法や全身麻酔で用いられるおもな薬剤
  (1)麻酔前投薬 (2)全身麻酔や鎮静法で用いる薬剤
IV編 全身疾患と薬剤
 (今泉うの,吉田和市)
 ・心疾患
  (1)虚血性心疾患 (2)不整脈 (3)心臓弁膜症 (4)心不全
 ・高血圧症
  (1)高血圧の治療薬 (2)歯科治療時の注意事項
 ・脳血管障害
  (1)脳血管障害の治療薬 (2)脳血管障害既往患者の歯科治療時の注意事項
 ・糖尿病
  (1)糖尿病の治療薬 (2)歯科治療時の注意事項
 ・気管支喘息
  (1)気管支喘息の治療薬 (2)歯科治療時の注意事項
 ・腎不全,人工透析
  (1)腎不全,人工透析に対して処方される薬剤 (2)歯科治療時の注意事項
 ・痛風と高尿酸血症
  (1)尿酸と全身疾患 (2)痛風,高尿酸血症の治療薬 (3)歯科治療時の注意事項
 ・甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症
  (1)歯科治療時の注意事項
 ・精神疾患・神経疾患
  (1)抗精神病薬 (2)抗うつ剤 (3)抗不安剤 (4)抗パーキンソン剤
  (5)抗てんかん剤 (6)不眠症治療薬
 ・胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  (1)胃腸疾患の治療薬 (2)歯科治療時の注意事項
V編 高齢者等への投与
 (今泉うの,吉田和市)
 ・高齢者への薬剤投与の注意事項
  (1)高齢者に使用頻度の高い薬剤の有害作用 (2)高齢者へのNSAIDsの使い方
  (3)歯科における高齢者へのNSAIDs以外の注意事項
 ・妊婦への投薬時の注意事項
  (1)妊婦に対する歯科治療時の注意事項 (2)授乳期の薬剤投与の注意事項
 ・小児への薬剤投与の注意事項
  (1)小児の解熱鎮痛消炎剤投与に際して (2)小児への抗菌薬投与に際して
VI編 救急時の対応
 (今泉うの,吉田和市)
 ・歯科治療中の偶発症に対する処方
  (1)脳貧血:失神,神経性ショック (2)過換気症候群
  (3)転換性障害,解離性障害 (4)アレルギー反応
 ・歯科医院に備えておきたい救急薬剤
  (1)おもな救急薬品
VII編 漢方薬の考え方
 (関口善太)
 ・歯科疾患と漢方薬
  (1)齲歯・根尖性歯周炎・歯髄炎による歯痛および知覚過敏への処方
  (2)歯肉炎・歯周膿瘍 (3)口腔粘膜の疾患(再発性口瘡=口内炎)
  (4)唇の疾患(口角炎) (5)唾液腺の疾患(粘液膿胞・舌下腺膿胞)
  (6)顎関節症 (7)舌痛症 (8)口臭 (9)味覚減退
  (10)唾液分泌過多

 文献
 索引