やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

巻頭言
 歯科臨床の場では,そのほとんどが歯科医師と歯科衛生士,歯科助手あるいは受付との共同作業となり,いろいろな発想から自分たち独自の共同作業を作り上げているのが現状となります.歯科衛生士教育の場では“歯科診療補助”を授業でしっかり学びます.歯科診療補助は歯科衛生士法では“歯科診療の補助”という用語が使われています.これは,歯科医師や医師の診療補助行為を目的とします.したがって,歯科医師や医師は,この診療補助を行う主体ではありません.診療補助を行うことを法的に認められている資格は,看護師,保健師,助産師,歯科衛生士,理学療法士,臨床検査技師,義肢装具士,救急救命士などなどです.特に歯科領域に限定して行うものを一般では“歯科診療補助”と呼んでいます.しかし,臨床の場で“歯科診療補助”があまり重要視されていない場合がありました.習わなくてもなんとかなってしまったことが理由としてあげられます.
 医療の現場は安全に効率よく患者の治療がなされるべきであるのに反して,上手なデンタルスタッフの共同作業がなされていない場合が少なくありません.今回,本書を読むことで我流でない基本に則った共同作業の知識と技術が習得できるきっかけとなり,デンタルスタッフ間の共通認識の基で歯科医療の効率的な臨床が可能となるはずです.
 その理解を得るために,本書はアシスタントワークの効率的共同作業の活用法を思考できるように,細心の注意を払いながら編纂しました.将来,歯科臨床の場でデンタルスタッフ間の共通認識をもち,あるいは教える立場となった場合でも,正しく伝えることにより効率の良い環境作りができるものと確信しております.
 最後に,この企画を実現できるようにご尽力いただいた医歯薬出版株式会社の関係各位に心より厚くお礼申し上げます.
I編 総論
 1.アシスタントワークを上手に使いこなす(別部智司)
 2.共同動作の基本(デンタルスタッフとの連携)(加藤保男)
  1.共同動作の意義
   1)共同動作の概念
    (1)安全性の確保
    (2)歯科診療の効率化
    (3)共同動作における行動パターンの確立
  2.共同動作における位置と姿勢
  3.診療時のライティング
 3.デンタルスタッフへの啓発法(別部智司)
 4.医療安全法と目的(医療事故,感染予防,医薬品の管理,機械器材の管理)(中島 丘)
  1.医療安全管理の確立
  2.医療事故
   1)医療訴訟の動向
    (1)医療事故訴訟件数,医療機関側の敗訴率
    (2)医療関係訴訟事件の平均審理期間
   2)歯科医療過誤の判例
   3)薬剤添付文書が判断材料とされた医事紛争(必読 最重要!)
  3.感染予防
   1)ユニバーサルプレコーションとは
   2)スタンダードプレコーションとは
  4.医薬品の管理
   1)毒物・劇物の管理の徹底
   2)薬剤相互作用や口腔内症状が出現する薬剤を確認
  5.機械器材の管理
II編 基礎知識
 1.アシスタントワークの考え方(浅野倉栄)
  1.診療前の器材・材料準備
  2.患者誘導
  3.問診
  4.責任者との連携
  5.アシスタントワーク
  6.術後の説明
  7.診療録記載
 2.診療の流れの理解(山口博康)
   1)治療方針
   2)器材の準備
   3)患者に対する術後の説明と配慮事項の理解
 3.使用器材(瀬英世)
  1.材料・薬品
  2.器材
   治療室を器材管理の面から考えてみましょう
 4.診療室の環境整備(別部智司)
  1.歯科外来診療環境体制加算に関する施設基準
 5.感染予防対策と滅菌法,消毒法(手技,器材,廃棄法)(中島 丘)
  1.感染予防対策と滅菌法,殺菌法,消毒法
   1)その他注意,滅菌の事項
   2)MRSA(Methicllin-resistant Staphylococcus Aureus)への対応例
  2.廃棄法
 6.器材の準備(ロールワッテ,綿球,カット綿,小折ガーゼの作製法)(別部智司)
   防湿用,綿球,小折りガーゼ作製の仕方
 7.各種器材の名称,用途,取り扱い(別部智司)
  1.バキュームチップ
   1)用途
   2)バキューム操作
   3)その他
  2.ラバーダム
   1)用途
   2)器材
    (1)ラバーシート
    (2)ラバーダムクランプ
    (3)ラバーダムパンチ
    (4)クランプフォーセップス
    (5)ラバーダムフレーム
    (6)ラバーダムテンプレート
    (7)デンタルフロス
   3)手順上のポイント
  3.印象用トレー
   1)既製トレー
    所用条件
    種類
    準備と後始末
   2)個人(各個)トレー
  4.スパチュラ
   1)セメントスパチュラ
   2)石膏用・印象用スパチュラ
   3)ワックススパチュラ
  5.ワックス
  6.寒天コンディショナー
   1)1槽型寒天コンディショナー
   2)全自動式乾式寒天コンディショナー
  7.練成充填器(成形充填器・ストッパー)
  8.歯間分離用器材
   1)即時歯間分離法に用いる器材
    (1)ウエッジ(くさび)
    (2)セパレーター
   2)緩徐歯間分離法に用いる器材
    (1)ラバー
    (2)セパレーティングワイヤ
  9.隔壁調整用器材
   1)マトリックスバンドとマトリックスバンドリテーナー
   2)Tバンド
  10.リーマー,ファイル
   1)リーマー
   2)ファイル
    (1)Kファイル
    (2)H型ファイル
  11.プライヤー
  12.歯肉圧排用器材
   歯肉圧排糸
 8.口腔内診査記録法(別部智司)
  1.受付の対応法
  2.医療面接
  3.口腔内診査および関連部位の触診
   SOAPの実施
III編 各論
 1.患者誘導法(山口博康)
 2.歯科治療の体制(トゥーハンド,フォーハンド,シックスハンド)(別部智司)
 3.共同動作のルール(行動パターンの必要性,行動パターンの確立)(浅野倉栄)
  1.行動パターンの必要性
  2.行動パターンの確立
 4.共同動作の位置関係(加藤保男)
  1.術者の位置
  2.補助者の位置
 5.術者の姿勢・患者の姿勢(山口博康)
  1.診療体位
  2.術者としての診療姿勢
 6.ライティング(瀬英世)
 7.治療動作の位置関係(立位,座位,印象などのチェアーの診療体位)(加藤保男)
  1.立位と座位
  2.水平位診療
 8.バキューム,スリーウェイシリンジの操作法(浅野倉栄)
  1.バキュームの目的
  2.種類
  3.把持法
  4.バキューム時の注意事項
  5.バキューム挿入禁忌部位
  6.スリーウェイシリンジ
  7.バキューム,スリーウェイシリンジの口腔内への挿入タイミングの一例
 9.受け渡し法(片手受け渡し法,両手受け渡し法)(別部智司)
   受け渡し法の基本
 10.修復材料の取り扱い(特に各種セメント材料の練和法,標準稠度と充填稠度)(加藤保男)
  1.合着用グラスアイオノマーセメントの取り扱い
  2.レジン添加型(配合型)グラスアイオノマーセメントの取り扱い
  3.成形修復用グラスアイオノマーセメントの取り扱い
 11.印象材の取り扱い(瀬英世)
  1.準備
    (1)問診
    (2)口腔内チェック
    (3)口腔内清掃
    (4)トレー選択・調整
    (5)患者の姿勢
    (6)トレーの試適
  2.実践
    (1)練和
    (2)シリンジの試し出し
    (3)トレーの挿入
    (4)トレーの保持
    (5)印象撤去
    (6)印象チェック・石膏注入
 12.アシスタントワークに使用する補助器具(加藤保男)
  1.ラバーダム防湿に使用する器具
  2.テンポラリークラウン(暫間被覆冠)の作製と装着,撤去に用いる器材
  3.歯間分離用器具
  4.歯肉排除に使用される器具
  5.隔壁に使用される器具
 13.アシスタントワーク以外に使用される補助器具(加藤保男)
  1.レーザー齲蝕診断器(DIAGNOdent(R))
  2.イソライト・プラス(R)
   イソライト・プラス(R)の特長
 14.診療前の機器・器材の始業点検(小林一行)
  1.供給源(ガス元栓,エアーコンプレッサーなど)のスイッチを入れる
  2.ユニットのメインスイッチを入れ,歯科用機器の作動確認
  3.フラッシング(感染予防対策)
  4.ユニットおよび周辺の清掃
  5.医療用パソコン(電子カルテ),受付用事務機器(パソコン・レジスター)の電源を入れる
 15.診療後の機器・器材の終了点検(小林一行)
  1.日常に行う終了点検
  2.定期的に行う点検
 16.器材の後始末(別部智司)
  1.チェアーユニット周辺
  2.キャビネット
  3.機械室エアーコンプレッサー
 17.口腔内写真撮影法(山口博康)
  1.正面観
  2.側方面観
  3.上顎歯列の撮影
  4.下顎歯列の撮影
IV編 特殊な場合のアシスタントワーク
 1.高齢者(瀬英世)
  1.受付
  2.準備
  3.問診
  4.治療・口腔清掃
  5.清掃指導
 2.障がい者の補助・介助(山口博康)
  1.薬物を用いない行動調整法
   1)通常法(トレーニング法)
   2)一般的な誘導による治療
   3)抑制下の方法
    (1)姿勢・原始反射の制御
    (2)物理的抑制法
  2.障がい者診療の補助・介助
   フォーハンド診療(術者の2本の手とアシスタントの2〜4本の手の診療)
   基本姿勢
    (1)術者の位置(基本的に水平位)
    (2)器具の受け渡しについて
    (3)頭部の固定
 3.精神障がい者の補助・介助(山口博康)
   薬剤と歯科診療への影響
 4.在宅,寝たきり患者のアシスタントワーク(瀬英世)
  1.事前診査
  2.プランニング
  3.訪問診療
  4.口腔ケア
  5.メインテナンス
 5.精神鎮静法患者のアシスタントワーク(別部智司)
  1.笑気吸入鎮静法
   1)笑気吸入鎮静法の準備
   2)笑気
   3)酸素
   4)インレット接続
   5)笑気吸入鎮静法の実際
  2.静脈内鎮静法
   1)準備
   2)輸液セット
   3)固定用粘着テープ
   4)薬と静脈確保
   5)次の準備
 6.全身麻酔時の患者のアシスタントワーク(別部智司)
 7.手術時の操作(別部智司)
  1.手術環境の整備
  2.手術衣の着用法
  3.患者導入時の操作
  4.手術時の器具受け渡し法
V編 その他
 1.医療事故に対する対処法(中島 丘)
  1.予測されるアクシデント・インシデント事故と対策
   1)抜歯時の事故
   2)小器具・補綴装置などの誤飲
   3)治療椅子への移乗時の事故
   4)顎関節脱臼
   5)切削器具による軟組織の損傷
   6)局所麻酔時の疼痛,三叉迷走神経反射
  2.事故への対応器材と手技の習得
   1)気道の確保
   2)器材・器具の一例
   3)緊急時対応のトレーニング
   4)心電図・胸部エックス線写真の知識と習得
  3.投薬後に副作用が出てしまったとの問い合わせ
  4.医療事故の被害者5つの願い
 2.感染に対する対処法(中島 丘)
   ・EPINETとは
 3.薬品管理の対処法(浅野倉栄)
  1.管理上の注意
  2.保存温度
  3.保存場所
 4.器材故障時の対応法(浅野倉栄)