やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 昨年(2013年)3月末に昭和大学歯科病院を退職し,約40年にわたる歯科医師人生に一区切りがつきました.平日にも若干暇ができ,人が働いているときに遊ぶのは割安なうえに空いていて,なにより快感であることを知りました.
 東京医科歯科大学歯科麻酔科を皮切りに→都立豊島病院→東医歯大歯科麻酔科→同障害者歯科→豊島病院→都立荏原病院→昭和大学歯科病院と巡り,行く先々で人との出会いに恵まれ,見えない力によい方によい方にと導かれている自分を感じました.
 早いもので2004年10月に前著の『佐野晴男の病診連携まっしぐら』を出版して,9年が経ちました.おかげさまで好評を頂き,第3刷に至りました.ありがとうございました.
 今回の続編は,荏原病院時代に書き溜めた文章のうち,前著には掲載できなかったものと,昭和大学歯科病院に移ってから見聞し,感じたものから構成されています.
 続編も前著と同じく適当にページを開き,飲み物を片手に読み始めていただければと思います.ところによっては目を丸くしたり,共感を覚えたり,クスッと微笑みながら,すべてを読み終えて頂けたら最高に幸せです.
 元々が麻酔科出身で,歯科治療はアマチュアだった私です.行く先々の職場で同僚の技に触れ,地域の先生方からさまざまな難症例・珍症例(いわば症例の上澄み)を紹介頂くことで,見聞を広めることができました.
 歯科医師を志す学生さんには,歯科診療の日々にどんなことが待ち受けているかを垣間見てもらえると思います.元気も湧いてくるはずです.歯科は一生勉強と発見,そして出会いの連続の,とてもやりがいのあるステキな仕事です.
 結びに,平成6年に荏原病院に赴任以来,今に至るまで私を応援し続けて下さり,さまざまな患者さんをご紹介下さった,目黒区,大田区,品川区,世田谷区の城南7歯科医師会の皆様,ならびに川崎市,横浜市の歯科医師会の皆様に感謝申し上げます.
 そして,医歯薬出版株式会社の水島健二郎氏,鈴木トキ子氏に心から感謝申し上げます.
 お二人とは平成11年10月に東京・品川で開かれた,『第27回日本歯科麻酔学会総会』の地域医療に関するシンポジウムで,“病診連携”に関する私の発表を聞いて下さったのがご縁の始まりでした.その後,都立荏原病院の私の職場に見学にも訪れられ,病院の機関誌「連携便り」で連載していた「歯科のコラム」に興味を持たれ本にしたいと,私を世に出して下さいました.ありがとうございました.
 2014年1月3日
 佐野晴男
荏原病院編(病院機関誌「連携便り」掲載分)
有病者・リスク編
 呼吸停止からの生還・その1
 呼吸停止からの生還・その2
 呼吸停止からの生還・その3
 呼吸停止からの生還・その4
 全国死亡事故調査
 最近経験したガス壊疽の症例について
 抗血小板薬服用中の患者さんへの考え方
 抜いてもいいでしょうか?
エピソード編
 クラスプの誤嚥
 フランスパンが命のわかれ目
 NHKからの取材申し込み
 忘れられない歯肉出血の患者さん
 訪問診療同行記
 忘れられない拒食症の患者さん
 はるばる新潟県粟島からいらした高血圧の患者さんの抜歯
 抜歯後,顔面半側に麻痺をきたした症例
 病院歯科共同治療管理料
 難治性の口唇症状
 台湾からの康先生
 顔面の大きな腫脹症例と“障害者加算”症例
エッセイ編
 ある日の急患当番
 ゆでたまご−常識と立場の違い
 沖縄出張記・その1
 沖縄出張記・その2
 みんな働き蟻
 仕事も趣味もイメージが大切
 研修医マッチング制度
 生身を扱う仕事・インプラント,抜歯について思うこと
 市川先生,元気で!
 16年間お世話になりました
昭和大学・おもうこと編
有病者・リスク編
 歯科治療で突然患者さんが亡くなるケースとは
 抜歯後の出血はどこから出るか?
 浸潤麻酔が効かない
 障害者の全身麻酔下治療
 全身麻酔下の手術で患者さんが亡くなる確率
 心肥大患者の抜髄・有病者の治療の何が怖いのでしょうか
 ビスフォスフォネート製剤服用中の患者さんについて
 有病者対処へのヒント
エピソード編
 炎症はどこに?
 抜くのは簡単だが無痛で抜くのは難しいケース
 横綱級の歯科治療恐怖症の患者さん
 経験した数例の患者さん
 深い外傷への対処・不運な植木屋さん
 医療訴訟の経験
エッセイ編
 白菊の会での講演
 国保の審査に携わって
 動物は共食いをします
 常識と立場の違い
 潜水艦搭乗記
 昭和大学歯科病院地域連携歯科のご紹介