やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 喫煙が健康を害することは,誰でも知っている事実です.しかし,つい数年前までは,わが国の成人男子の二人に一人は喫煙者でした.
 いま,喫煙をめぐる世の中の動きは,大きく変わってきています.喫煙は単なる個人の嗜好の問題という考え方から,喫煙で自分の身体を壊すのは自己責任ですが,受動喫煙の被害を撒き散らす社会悪として認識されるようになりました.2003年施行の健康増進法では,受動喫煙を防止することは努力義務でしたが,今後は職場環境の保持のため,より拘束力の強い労働安全衛生法による義務に格上げされようとしています.
 さらに,禁煙できない人を「ニコチン依存症」という病気と位置づけ,医療保険を適用する禁煙治療も開始されました.バレニクリンを数週間服用する禁煙治療は,いままでのニコチン・ガムやニコチン・パッチによる禁煙補助よりも,かなり有効というデータが出ています.さまざまな病気の原因,リスクファクターであることの裏づけが実証されていることが,禁煙治療を積極的に行う理由なのでしょう.
 歯科は全身からみれば,わずかなフィールドではあります.しかし,自分の肺を覗いて見ることは難しいけれども,口の中は,喫煙による悪影響を自分の眼で観察できる貴重な部位です.喫煙によって歯肉がどのように変化していくか,実例を見ていただき,もし,ご家族のなかに喫煙者がいらしたら,口の中を観察することで,喫煙の危険性に気づいていただきたいと思っています.
 2010年秋 新装版の発刊に寄せて
 松岡 晃
自分を守る
(1)喫煙が歯肉に及ぼす影響
(2)喫煙が全身に及ぼす影響
(3)喫煙開始年齢が低いほど強い影響が現れる
(4)喫煙開始前と喫煙開始後の歯肉の変化
(5)禁煙すると
(6)親が喫煙していると,子どもの喫煙を制止できない
(7)喫煙と歯周疾患
周囲への迷惑
(8)喫煙しない人への害
(9)子どもへの影響
(10)ベランダでの喫煙
(11)職場での喫煙・飲食店での喫煙
(12)「軽いたばこ」なら大丈夫?

 あとがき・参考資料