やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者序文
 歯周病学の現状を俯瞰すると,病因論はもとより歯周病と全身疾患との関わりも明らかにされ,ペリオドンタルメディシンという言葉が人口に膾炙しています.また,治療においては,歯周病により破壊された歯周組織を元の健康な状態に回復させるという究極のゴールの実現のため,歯周組織再生療法が開発されています.すでに,骨移植,GTR法や生物学的根面処理(エナメルマトリックスタンパク質の適用)は臨床実施されており,サイトカイン療法や細胞移植療法の臨床応用が目前に迫っています.
 一方,デンタルプラーク(バイオフィルム)が歯周病発症のトリガーであり,歯周治療の基本は歯周病原細菌を含む歯肉縁下プラークの除去にあることは,将来も不変な確固たる中心原理です.したがって,臨床の場では原因除去療法としてプラークコントロールとともにスケーリング・ルートプレーニングにより,歯肉縁下プラークコントロールを行うことが基本となっています.歯周基本治療だけではなく歯周組織再生療法をはじめとするアドバンス治療の成否も,歯肉縁下プラークコントロールを適切に行えるか否かによって決定されますが,これを確実に行うことは容易ではありません.
 このような状況にあって,このたび,歯肉縁下プラークコントロールを主とする歯周基本治療について珠玉の書である“Fundamentals of Periodontal Instrumentation and Advanced Root Instrumentation“(Sixth edition)の日本語への翻訳が試みられました.これまでに,第I巻 ベーシックスキル,第II巻 アセスメントとインスツルメンテーション,第III巻 デブライドメントの3冊が出版されました.今回は,いよいよ第IV巻 アドバンススキルが上梓され,これで本書が完訳されたことになります.内容は,第I巻から第III巻で学んできた基本的な事柄を踏まえ,プロービング技術や歯根面デブライドメントに関してより発展的なテクニックが紹介され,日常何気なく使用している音波・超音波スケーラーに関する詳細な情報や,近年適応が拡大し,今後ますます増加するインプラントの基本構造とそのデブライドメント法,さらには歯面研磨のエビデンスに基づく変遷と審美的研磨の実際が掲載されています.これまでと同様に,それぞれの治療を行ううえで必須の情報・知識が秀逸なイラストや写真とともに満載されています.さらには,各章の初めにキーワード,学習目標が掲げてあり,何を学ぶのかを明確に意識することが可能となっています.また各パートの最終節に“スキル応用”が掲載してあり,「知るは悟りにあらず」という格言のごとく,本書で知識を得るだけでなく,得た知識を実践可能としているなどの工夫がなされています.推薦論文,参考文献も充実していますので,これらをひも解きさらに理解を深めて臨床に実践していくことをお勧めします.
 全編を通じて歯科衛生士の方々によって翻訳され「目で見るペリオドンタルインスツルメンテーション」となり,原文の意とするところを実際に即しかつ理解しやすい日本語で伝えられています.本書は第一線で活躍中の歯科衛生士の方々はもちろんのこと,初学者にとっては歯周基本治療の基礎知識を修得し実践するうえで,また歯周治療に改めて取り組もうとしている歯科衛生士や歯科医師の方々にとっても知識・技術の再確認・再構成をするうえで有用であると考えています.
 最後に,全編にわたりご多忙中にもかかわらず執筆ならびに度重なる編集にご協力いただきました歯科衛生士の皆様,また編集やレイアウトなどすべてを担当していただいた医歯薬出版株式会社の中村 伸氏,若林由紀子氏ならびに関係者各位に深謝申し上げます.
 平成22年3月
 和泉 雄一
 監訳者序文
 原著序文
 原著謝辞

第21章 プロービング技術 〈上級編〉
 1節 歯周組織の付着
 2節 目盛付きのプローブを用いたアセスメント
 3節 計算を必要とするアセスメント
 4節 ファーケーションプローブを用いたアセスメント
 5節 スキル応用
第22章 歯根面デブライドメント用インスツルメント
 1節 歯根面の解剖学
 2節 技術練習:歯根陥凹部と根分岐部の探知
 3節 歯根面デブライドメントのためのユニバーサルキュレット
 4節 歯根面デブライドメントのための改良型グレーシーキュレット
 5節 特別な歯根面インスツルメント
 6節 技術の進歩
 7節 技術練習:複数根を有する歯の基本的インスツルメンテーション
 8節 スキル応用
第23章 歯根面デブライドメント技術 〈上級編〉
 1節 固定技術
 2節 インスツルメンテーションを難しくする解剖学的形態
 3節 技術練習:水平ストローク
 4節 技術練習:上顎
 5節 技術練習:下顎
 6節 スキル応用
第24章 音波・超音波スケーラー
 1節 概説:音波・超音波スケーラー
 2節 作用機序
 3節 音波・超音波スケーラーの特徴
 4節 インスツルメントチップ
 5節 施術前の準備
 6節 インスツルメンテーション技術
 7節 細径インスツルメントチップ
 8節 技術練習:細径インスツルメントチップ
 9節 スキル応用
第25章 インプラントのデブライドメント
 1節 インプラント学
 2節 スキル応用
第26章 審美的手段としての研磨の手順
 1節 概説:ステイン除去
 2節 ラバーカップ法を用いたステイン除去
 3節 歯面清掃器を用いたステイン除去
 4節 技術練習:研磨
 5節 スキル応用

 索引